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「監督!なんで豪炎寺を追い出すんですか!!?」


遠くで染岡の声が聞こえる。
一人、森の中にある木に背を凭せ掛けた円堂は、ずるずると身を崩しながらひゅっと息を飲み込む。
強面で頑固者だが、人一倍義理人情に厚い染岡は、監督に詰め寄らずに居られないのだろう。
彼を中心に揃った仲間たちも同じ気持ちに違いない。

だが円堂は違った。
試合前から豪炎寺の様子はおかしかった。
視線はいつの間にか姿を現していた明らかに怪しい三人組に釘付けでシュートするたびにちらちらと彼らを窺っていた。
彼らしくない卑屈な態度でぴんと来た。
豪炎寺は、彼が最大の弱点とするものを奴らに握られてしまっていると。

監督の瞳子がそこまで気がついたか知れないが、彼女の判断は英断だったと思う。
少なくとも本気で地上最強のチームを作る気でいるなら、『今の』豪炎寺では無理だ。

冷や汗を流しながら考えていると、不意に背後の草が擦れる音に気がついた。
弱った獣が必要以上に敏感になるのと同じで、びくりと円堂も体を揺らす。
呼吸を整えようとしてもぜいぜいと鳴る喉は言うことを聞かず、不規則な鼓動を立てる心臓に眉根を寄せた。


「・・・守、俺だよ」
「かずや・・・」
「薬と酸素と水を持ってきた。大丈夫、なんて聞かないよ。大丈夫じゃないのなんて見たら判る。あれだけ心臓に負担が掛かるからって連続で使わないようにしていたマジン・ザ・ハンドを連発したんだ。当然のしっぺ返しだよ」
「ははっ・・・弱ったな。強がりすら言わせてもらえないか」


背中を預けていた木から体がずり落ちそうになり、慌てて一之瀬が支える。
無理やりに口内に薬を入れられ冷たい水を流し込まれた。
強引な手法に眉根を寄せながらもやっとの思いで嚥下する。
ごくりと飲み込んだのを見届けて、漸く一息ついたらしい彼は、酸素を円堂の口に当てるとそのままゆっくりと背中を撫でた。

供給される酸素に呼吸が徐々に落ち着き、嫌な汗も止まる。
差し出されたタオルで顔を拭う余裕も出てきたところで、深呼吸をして息を整えた。


「・・・あっちはどうなった?」
「憤る染岡を鬼道が宥めてる。けど腹の虫が収まらないって感じかな」
「予想通りの展開だな。あいつ、仲間想いだから」
「守はよかったの?豪炎寺が抜けたのは、本当に痛いと思う」
「いいも悪いもないだろ?正直、俺は監督に感謝しているよ。先を急ぐ仲間を止めてくれただけじゃなく、板ばさみになってた豪炎寺を開放してくれたんだから」
「開放?」
「一哉も気づいてただろ?今の豪炎寺は点が取れない。シュートも無意識だろうが意図的に外れるように打っていた。あれじゃ遅かれ早かれ豪炎寺と俺たちの間で摩擦が起きていたと思う。若しくは、耐え切れなくなった豪炎寺の心が潰れていたかもしれない」
「・・・・・・」
「どちらにせよ、もう豪炎寺は居ないんだ。現状のメンバーで進むしかないだろ。俺たちは、エイリア学園と戦うと決めたのだから」


激しい眩暈が治まったのを見計らうと、よっと掛け声をあげて立ち上がった。
ふらつく体を支えようとした一之瀬の手を断り、背筋を伸ばして真っ直ぐに歩き出す。


「差し当たりすべきなのはあいつらを宥めることだな。監督を責めても豪炎寺は帰って来ない」
「だね。でもあの状態の染岡を宥めるのは大変そうだよ?」
「何とかするさ」


心配そうに瞳を細めた一之瀬に微笑みかけると、声の中心へ向かう。
一歩一歩何とか踏み出し、彼らの影が見えたところでもう一度深呼吸をして体の調子を確認した。
軽い眩暈は続いているが我慢しきれないほどじゃない。
がさりとわざとらしく音を立てて出て行くと、監督に詰め寄っていた仲間の視線がこちらに集中した。


「円堂!」
「豪炎寺は?」
「あいつは、行っちまったよ」
「なんで止めなかった!?」
「絶対に帰ってくるからだ。あいつは絶対に帰ってくる。そう信じてるから見送った。イナズマキャラバンを去ったのはあいつの意思だ」
「違う、監督が言ったから・・・」
「お前が知る豪炎寺修也はそんなに意思が弱い奴か?納得のいかない言葉に無抵抗で従うとでも?」
「っ、けど」
「・・・何だよ、豪炎寺の奴。一人でゲームセットか」


反論しかけた染岡は、中途半端なところで言葉を区切ると黙り込んだ。
代わりに苦々しげに土門が呟く。
しかしそれを肯定する気は全くない。
豪炎寺のために、そして、彼を信じる自分のために。


「違うよ。別れはゲームセットじゃない」
「円堂」
「俺たちがすべきなのは今ここで居なくなった豪炎寺について論議することじゃない。あいつを信じて、もっと強くなるための努力をすることだ。今日の別れは再会のためのキックオフだ」


静まり返った仲間に、いつもの調子でウィンクする。
唖然とした表情の彼らは戸惑うように瞳を瞬かせた。
怒りに満ちた空気は宥められ、穏やかな雰囲気が流れ始めたときに、甲高い機械音が鳴り響いた。

音の中心を辿り、瞳子の取り出した携帯を見詰める。
メールだったらしく、それを読み解いた艶やかな唇から、唐突な言葉が宣言された。


「北海道、白恋中のエースストライカー、吹雪士郎をチームに引き入れ戦力アップをはかれ」


どうやら送り主は遠く離れた稲妻町の響木からだったらしい。
あまりにもドンピシャなタイミングにじとりと眉根を寄せる。
予め戦力アップに目をつけていたのか、それとも瞳子が連絡して急遽ストライカーを探したのか。
豪炎寺が抜けたからには新たに点を取るストライカーが必要だと納得出来ても、あまりに悪すぎるタイミングにうんざりと息を吐き出した。

白恋中の吹雪士郎。
脳内のデーターベースを探しても見つからない名前に、フットボールフロンティアの出場校の選手ではないなと当たりをつける。
予選も含め出場したチームの名前、選手共に記憶しているので、きっと響木が目をつけたのはフットボールフロンティアに出場しなかった強豪チームなのだろう。若しくはチームではなく単純に一人の優れた選手なのかもしれない。
それなら宇宙人にいきなり襲われる可能性も低いし、穴場と言えば穴場だ。

ちらり、と視線を背後に向けると、難しい顔で黙り込んだ染岡が居て、ふうと息を吐き出す。
どれだけ優れたストライカーでもチームプレイが上手くいくかは別問題だ。
少なくとも染岡の心の折り合いがつかない限り新たな戦力を入れても代わらないだろう。
本当は彼だって判っているはずだ。
エースの豪炎寺が抜けた以上、彼に負けない新たな戦力が必要だと。


「・・・とりあえず、情報収集といかないか?相手が誰か判らないままじゃ、判断しようがないしな。音無、データの収集頼めるか?」
「あ、はい!!」
「監督、今日はあがりでいいですか?俺たちも俺たちなりに『吹雪士郎』がどんな相手か知りたいんです」
「構わないわ」


頷いた瞳子に肩の力を抜くと、仲間たちに向かって手を鳴らした。


「じゃあ、皆。一旦イナズマキャラバンの中に入ろうぜ。もしかしたら夜間の移動になるかもしれないし、休めるうちに少し休もう」
「あ、俺トイレに行きたいっす」
「俺もでやんす」
「・・・僕もです」


慌てて去っていく背中を見送ると残りのメンバーをキャラバン内へと誘導する。
大人は大人同士の話があるだろう。ちらりと瞳子を一瞥してから自身も階段を上る。
最終的に判断をするのは瞳子だし、実際に目で見ないとどんな人間か判らないが、予備知識は持っていて損はない。
気難しい表情の仲間を宥めるように肩を叩いた円堂は、先が思いやられるなと、痛む胸を摩りながら苦笑した。


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「いやあ、体中痣だらけだ」


からからと笑いながらイナズマキャラバンから降りてきた円堂に、仲間たちが群がる。
大丈夫かと心配そうにする彼らに大丈夫と暢気に笑った彼女は、一人静かに落ち込んでいる塔子の前に立った。
びくり、と華奢な体が揺れる。だがお構い無しに彼女の頭に手を乗せると、くりくりと撫でた。


「どうした、塔子。落ち込んじゃってさ」
「───ごめんよ、皆。あたしが一緒に戦おうなんて言わなけりゃ、こんなことにはならなかったんだ」
「ふむ」


沈痛な面持ちで顔を伏せた塔子に、僅かに考え込んだ円堂は徐に頬に手を沿わせ───むにっと引っ張った。


「いきなり、はにすんはよ!」
「うーん・・・塔子のほっぺはもちもちだな。羨ましい美肌だ」
「へんほう!!」
「・・・勘違いするな塔子。お前に協力するって決めたのは俺たちだし、お前が居ようと居まいと初めからあいつと戦うつもりでいたんだ。勝手に俺たちを背負おうとするな」
「円堂」
「女の子は笑ったほうが可愛いぞ。ほれ、にこっとしてみな。笑う角には福来るって言うだろ?」
「・・・それ、昔俺にも言ってましたよね」
「有人も可愛いからな」
「可愛くないです」
「いーや、可愛いよ」


突然始まった遣り取りに浮かんでいた涙を引っ込ませた塔子は、くしゃくしゃの顔で笑った。
痛みも酷いだろうに、笑って他人を気遣う円堂を遠巻きにし、豪炎寺は俯く。
悪いのは塔子じゃない。
本当に悪いのは、仲間の信頼を裏切り続けている自分だ。


「でも守、本当に無理しないで」
「ああ、判ってる」
「本当に大丈夫か?円堂、相当ボールくらってただろ?」
「大丈夫だって言ってるだろ、土門。俺はお前らとは鍛え方が違うの」


へらへら笑う円堂の頭を、苦笑しながら土門が撫でる。


「でも、納得いかねぇぜ!なんなんだよ監督のあの作戦は!!ディフェンスをあんなとこまで上げるなんて、どうぞ点とって下さいって言ってるようなものじゃねえか。折角鬼道が奴らの攻撃パターン見抜いたのによ!」


いつもどおりの円堂に安堵したことで先ほどの怒りが湧き上がってきたのか、染岡が傍にあった木を殴った。
それに同意するように仲間も頷く。


「結果は惨敗。円堂君のお陰で辛うじて七点しか取られてませんが、それでも負けは負けです」
「SPフィクサーズのときは、凄い監督だと思ったのに」
「理事長に連絡して監督を変えてもらう!!」
「待て、染岡」
「何だよ、鬼道。まさかお前、あの監督の肩を持つ気じゃねえだろうな?あんなわけわかんない奴を!」
「そういうわけじゃない。ただ、結論を出すのは監督の考えを知ってからでも遅くない」


訴える鬼道に、ざわめきが広がる。


「監督も言っていただろう?俺たちは前半を終えた時点で体力が限界に達していた。もしあのまま俺の作戦で試合を続けていたらどうなっていたと思う?」
「それは・・・」
「よくて病院送り、悪いと二度とサッカーが出来ない、かな」
「円堂?」
「お前らは夢中になるあまり引き際を弁えない危うい状態だった。俺はああやって指示してくれた監督に感謝してるよ」
「でも!それで本当によかったのか?どんな状況でも全力で戦う!それが俺たちのサッカーだろう?」
「土門の言うとおりだぜ。円堂を犠牲にして俺たちだけ助かったって、そんなの雷門のサッカーじゃねえ」
「・・・それは違う」


土門の訴えに頷いた染岡を否定したのは、先ほどの試合で一番ダメージを受けた円堂本人だった。
何を、と訝しげな顔をする仲間を諭すようにゆったりとした口調で続けた。


「どういうことなんだよ?」
「あの試合、目的は勝つことじゃなかったってことだよ」
「・・・勝つことじゃない?」
「ああ。ジェミニストームとの試合、俺は今回が初めてだった。敵の強さも何も知らない、情報だって持ってない。何もかも真っ白な状態で一番効率のいい特訓をしてもらったようなものだ」
「効率のいい、特訓?」
「実践ほど実力をつけるのに勝る特訓はない。見てたろ?俺はあいつらのボールをゴッドハンドではじけても、受け止めることは出来なかった。けど最後のほう、集中的にボールを浴びたお陰であいつらのスピードに体がついていけるようになった。幾度繰り返しても間に合わなかったマジン・ザ・ハンド、最後にはぎりぎりで間に合ってたろ?」
「そう言えば」
「それに奴らの必殺技も体験できた。受けてわかった。俺は、あのボール、捕れるってな」
「本当か、円堂?」
「おう、とーぜんよ。もっと特訓して力をつければ必ず捕れる」


ぱちり、とウィンクした円堂に仲間は沸き立つ。


「つまり監督は次の試合に勝つために今日の試合を捨てて僕たちの身を守り円堂君のキーパーの特訓をしてたって訳ですね?」
「鬼道、そうなのか?」
「ああ、俺もそう思う」
「・・・そういうことだったのか」
「やっぱり、監督って凄い人っす」


否定的な態度から一転し、好意的になった彼らは瞳を輝かせた。
その様子を眺めて顔を俯かせる。
今回の試合を捨ててさせたのは、自分の気がしてならなかった。
体の脇で拳を握り黙り込んでいると、何処からともなく瞳子が姿を現す。
そして豪炎寺を見据え、宣言した。


「豪炎寺君、あなたにはチームを離れてもらいます」
「っ」
「い、今なんて言ったでやんすか?監督、離れろとかなんとか・・・」
「ど、どういうことですか?」
「さあ」


唐突な宣告に仲間たちの瞳が揺れる。
漸く収まっていた動揺が再び立ち上り、戸惑いがちな眼差しで豪炎寺と瞳子を繰り返し眺めた。

奥歯を噛み締めながら瞳子を見据えていた豪炎寺は、彼女の瞳に浮かぶ色に気がつき驚く。
思い付きではない深みがそこにはあり、息を吐き出すと円堂たちに背を向けた。


「待ってください、監督!」
「どういうことですか、豪炎寺に出て行けなんて!!」
「そうですよ、監督!豪炎寺は雷門のエースストライカー。豪炎寺が居なきゃ、あいつらには」
「もしかして今日の試合でミスったからか?」
「そうなんですか、監督。だから豪炎寺に出て行けって」


怒りを露に監督にぶつける仲間に背を向けたまま、拳を握りこむ。
こうしていなければ今にも叫びだしてしまいそうで、ただひたすらに感情を抑えるのに必死だった。


「私の使命は地上最強のチームを作ること。そのチームに豪炎寺君は必要ない。それだけです」


冷淡に響く声に、感謝したい気持ちだ。
そこまで言い切ってもらえれば、自分もチームを離れることができる。
実際に瞳子が言うとおり、今の豪炎寺は足手まといになりこそすれ戦力にはなりえない。
シュートを打つたびに病院で眠る夕香の姿が脳裏にちらつく。
そのたびに仲間を裏切る重圧に耐えながら、彼らと旅を続ける自信はなかった。
背中を向けて歩けば、迷いは途切れる気がして、引き止められる前に歩みだす。


「豪炎寺」


奈良シカ公園の崩れたシンボルの前で呼びとめられ、足を止めた。
その声が他の誰かのものだったら振り切れただろうに、豪炎寺の心をこの地に繋ぎとめようとするただ一人のもので、凍らされたように足が動かない。
先ほどは傍観の姿勢をとっていた円堂は、ここに来て初めて豪炎寺に声を掛けた。
責める心など欠片もない声に、どうして、と唇を歪ませる。
彼女ならきっと気がついている。さっきの試合で故意に豪炎寺がシュートを外したことに。


「本当に行く気か、豪炎寺」
「ああ」
「そうか」


気がついていて何も言わない円堂に、心が締め付けられるようだ。
本当は、一緒に戦いたい。もっともっと彼女と一緒にサッカーをしたい。
けれど夕香を見捨てれない。たった一人の妹なのだ。

再び歩き始めると、凛とした声が背中に響いた。


「一つだけ約束して欲しい」
「・・・何を」
「俺は俺が守りたいもののために全力で戦う。だからお前も、お前が守りたいもののために全力で戦え」
「円堂」


何もかもお見通しと言わんばかりの言葉に、思わず後ろを振り替える。
驚きに目を見開く豪炎寺に向かい、珍しく眼鏡を外した円堂は、いつもと変わらぬコケティッシュな笑顔を浮かべていた。
振り向いた豪炎寺の瞳をしっかりと見据えると、ぱちりとウィンクをして親指を立てる。


「そんでケリがついたらちゃんと戻って来い。なんてったって、お前はイナズマイレブンのエースストライカーだからな」


そのまま自分の胸をとんとんと叩いた円堂に、くしゃりと顔を歪ませた。
自然と涙が溢れそうになり慌てて前を向き瞬きを繰り返す。
返事はしない。もしかしたらあいつらが傍に居るかもしれないから。
戻ると言質を取られれば、夕香がどんな目に合うか判らない。
けれど。

背を向けたまま、すっと腕を上げて胸を叩く。
言葉はなくともこの行動で全てが通じる気がした。


「またな、豪炎寺!」


たった三言に全てを篭めた円堂に、ゆるりと口角を持ち上げる。
信じてくれる彼女の元に、何が何でも戻りたい。
視界の端にこちらを見詰める瞳を見つけ、思い切り睨み付けた。
諦念を抱いていた自分はもう居ない。
守りたいものを守りきって、胸を張って帰るべき場所が豪炎寺にはあるから。


「待っててくれ、円堂」


誰にも聞こえないくらいの小さな声で呟く。
最後まで笑って見送ってくれた円堂に貰った勇気を胸に、最初の一歩を踏み出した。

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試合開始と同時に、ジェミニストームが蹴りだしたボールが豪炎寺と染岡の間を抜ける。
気がつけば通り過ぎていた軌跡に息を呑むうちに、あっという間にフォワードの面々に攻め込まれた。


「皆!ぼやぼやしている暇はない!全員で攻め込むぞ!!」


鬼道の言葉に固まっていた仲間たちが弾かれたように走り出す。
だがボールはすでに円堂の前にあり、敵はシュート体勢に入っていた。


「マジン・・・」
「遅い!!」


心臓に胸を当てていた円堂目掛けてボールが放たれる。
マジン・ザ・ハンドの体勢に入っていた円堂の背中にボールが当たると、華奢な体はゴールネットを押す勢いで弾かれた。


「姉さん!」
「守!」
「円堂!!」


仲間たちの悲鳴が上がる。
無防備にボールを受けた姿を見るなど初めてに等しく、まさか、という想いが募った。
風丸が俊足の足を利用し一番に駆けつけると手を差し出す。
だがその手を取らずに立ち上がった円堂は、心持ち青褪めた顔色でそれでも笑った。


「痛ってぇ。やっぱモロに受けると利くな」
「利くな、じゃない!どうしてゴッドハンドで受け止めなかったんだ!?」
「この先必要になるのはゴッドハンドじゃなくマジン・ザ・ハンドだ。気づいてるか?ゴッドハンドじゃあいつらのボールを弾くだけで精一杯だって。完璧に止められなきゃ、お前らにボールは回せない」
「でもそんなこと続けたら守はっ」
「同じサッカー馬鹿のお前なら判るだろ、一哉?」
「っ・・・」


円堂の一言で唇を噛み締め黙り込んだ一之瀬は、そのまま俯いた。
そんな彼らを尻目に塔子が鬼道へと噛み付く。


「どうすんだよ、鬼道!このままじゃ円堂が持たないよ!」
「・・・・・・姉さん、試合の継続は可能ですか?」
「おう。見ての通りぴんぴんしてる。心配してくれてありがとな。でも一回弾き飛ばされたくらいで世界の終わりみたいな顔をするな。お前ら全員、俺を誰だと思ってる?俺は雷門の守護神、円堂守だぞ?」


暫く黙り込んでから問いかけた鬼道に、コケティッシュな笑みを浮かべてウィンクをした円堂は、どこまで行っても円堂のままだった。
胸を撫で下ろす仲間たちにポジションに戻れと言うと、ずれた眼鏡を掛けなおす。
強気な発言に安心したらしい面々と違い、ゲームメイクをする鬼道と、未だに円堂から目を離さない一之瀬だけが渋い表情をしていた。


「俺なら大丈夫だ!お前らは監督に言われたとおりにプレイすればいい」
「・・・姉さん」


円堂の言葉に鬼道が唇を噛み締める。


「攻撃だけでゲームを組み立てるなんて不可能だ。つまりは、そういうことなんですね?」


俯きがちの鬼道の囁きが偶々近くに居た豪炎寺には聞こえた。
瞳を見開き笑っている円堂に視線を戻す。
鬼道の言葉が本当ならば、彼女はこうなると判っていて現状を受け入れたことになる。
だが、何故───?

幾度も幾度もボールが奪われ、マジン・ザ・ハンドを繰り出そうとする円堂が弾かれる。
体中ボロボロで最早立っているだけで必死になっているように見えた。
それでも唇に刷いた笑みや、好戦的な瞳はきらめきを失わない。
これ以上は我慢ならないと悲鳴を上げたのは塔子だった。


「駄目だよ、皆!これ以上やったら、今度はホントに円堂が!」


彼女の言葉は豪炎寺の心の奥深いところに突き刺さった。
ボールを奪い、シュートをして点を上げたい。
しかしもう現状がそれを許してくれなかった。


「円堂は言っても聞かない奴だと判ってる。───っ、とにかく一点だ!何が何でも取っていくぞ!」
『おう!』


それでも何かせずに居られない。
染岡の叫びに頷いた仲間は、仕切りなおしとばかりに気合を入れなおした。


「ふん、愚かな」


諦めないと足掻くイナズマイレブンを冷淡な瞳で眺めたレーゼにパスが渡る。
ノーマークの状態でボールを受け取った彼は、淡々と円堂に告げた。


「地球にはこんな言葉がある。井の中の蛙大海を知らず。己の無力、思い知るがいい!!」


叫んだレーゼを中心に、空気が集まる。
まさか、と瞳を見開いた。


「あいつらの、必殺技!?」


裏返った声は誰のものだっただろうか。
絶大な威力のボールは先ほどまでのシュートなど目じゃない速さで打ち込まれる。


「アストロブレイク!!」
「面白い。勝負といこうじゃないか」


円堂は恐ろしい勢いで迫り来るボールから目を離さず、ぺろりと唇を舐めた。
そして心臓に手を当てるとぐっと拳を握る。


「マジン・ザ・ハンド!!」


地面を抉りながら突き進んだボールが当たる寸前で出現した魔人は、正面から受け止められないながらもボールの軌跡を反らした。
吹き飛んだ魔人と共に地面に叩きつけられた円堂に駆け寄るのと同時に、試合終了のホイッスルが鳴り響く。
そうして背後で怪しげな光が浮かんだと思ったときには、彼らの姿は消えていた。

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シュートを放つ瞬間、脳裏を掠める人物に豪炎寺は唇を噛み締めた。
試合に集中出来ていない。
その理由も嫌になるほど理解しながら、無理やりに足を動かしてボールを蹴る。

渾身の力を篭めて放ったシュートは、ゴールポストに当たって彼方へと飛んでいった。


「外したぁ!?豪炎寺がファイアトルネードを外しました!!」


実況中継の声が響き不甲斐無さに瞳が揺れる。
折角鬼道がゲームを読み取りいいリズムを作り出してくれたのに、自分は一体何をしているのか。
以前弟の鬼道相手に揺れていた円堂に向かって『全力でプレイしろ』と言ったのは豪炎寺本人なのに。


「ご、豪炎寺が」
「ファイアトルネードを外すなんて」


仲間たちにも静かに動揺が広がっていく。
気持ちが波立つ彼らの空気を打ち破るように、手を打ち鳴らす音が聞こえた。


「焦るな!たった一本!一本外しただけだ!時間はまだある!」


円堂の声にはっと我に返った仲間たちが、慌ててそうだなと頷いた。
無理やり動揺を押さえ込もうとする姿に俯きかけるとすかさず円堂の叱咤が飛んだ。


「背筋を伸ばせ豪炎寺!雷門のエースストライカーはお前だろ!!」


言葉に篭められた想いの深さに、ごくりと喉を鳴らす。
そうだ。自分は雷門のエースストライカー。
点を取るのが自分の役目で、信頼してくれる仲間に応える義務なのに。

再び鬼道がボールをカットし豪炎寺と風丸へとパスが回った。
今度こそ、と意気込みシュート体勢に入る。
だが。


「・・・・・・っ」


病室で眠る妹の姿が脳裏に浮かび、体が不自然に強張った。
この点を入れれば、夕香は───。


『炎の風見鶏!!』


風丸と打ったシュートが炎を纏い、羽を生やして飛んでいく。
しかし迷いを浮かべながらのシュートは今度はゴールポストにすら掠めずに外れた。

着地の態勢すら整えずに無防備なままで地面に落ち、したたかに体を打ち付ける。
一瞬呼吸が止まり、ずくずくとした痛みが脳髄まで響いた。


「豪炎寺!!」


風丸が駆け寄ってくる足音がする。
芝生が擦れる音を耳にしながら、悔しさに臍をかんだ。

───この試合、きっと自分は全力で戦えない。
仲間の信頼を裏切ってでも、守りたい相手が豪炎寺には居た。
病室で眠る幼い妹は今回のこととは何も関係ないのに、傷つけられるのは見過ごせない。
これでは宇宙人に消極的な加担をしているようなものだ。

今度こそ決定的に走る動揺に、チーム内がざわめいた。
ホイッスルにより前半終了が伝えられ、無念の想いを抱いたままベンチへと戻る。
そこで鬼道に彼らには攻撃パターンがあると教えられたが、彼を囲う仲間の下へ足を踏み入れることが出来なかった。
盛り上がる仲間を尻目に、ちらりと視線をフィールド脇にやる。
あの日見た異形の三人組は並んで立っていて、何も言わないししてこないが、だからこそ脅威を感じた。


「───知り合いか、豪炎寺?」
「っ!!?円堂?」
「試合中、何を気にしてるかと思えば、あいつらに何か言われたのか」
「・・・いや、何も」
「そうか。てっきりシュートする瞬間に無駄に力が入るのはあいつらの所為かと思ってたけど、違うんだな?」
「ああ」


黒縁眼鏡の奥から真っ直ぐな視線を寄越す円堂から心持ち視線をそらしつつ頷く。
真っ直ぐに目が見れないのはやましい部分があるからだ。
彼女の大きな栗色の瞳に正面から覗きこまれて嘘を突き通す自信は豪炎寺にはなかった。

きゅっと眉根を寄せて返事をすれば、深く突っ込まずにそのまま円堂は離れる。
ほっと胸を撫で下ろして呼吸を整えていると、監督が攻撃のリズムを割り出したことで逆転できると盛り上がっていた仲間に水を指すように一歩踏み出した。


「甘いわね。確かに鬼道君の言う通りよ。ジェミニストームの攻撃には一定のパターンがある」
「監督?」
「でもそれは見ていれば判ることよ。あなたたち今自分がどんな状態だがわかってるの?」
「・・・状態?」


戸惑うような土門の声に、それぞれの姿を確認しあう。
円堂だけが腕を組みひっそりとその様子を眺めていて、無言の視線が痛かった。


「今のあなたたちじゃ相手のスピードにはついていけない。攻撃パターンが判ったくらいで倒せる相手じゃないのよ」
「じゃあ、どうしろと言うのですか」


責めるように鬼道が問えば、うっすらと笑みを浮かべた瞳子は説明を始めた。
現在雷門のゴールは辛うじて割られていない。
円堂が身を張って守ってくれているからぎりぎりで守られていたが、それもいつまで続くか判らない状態だった。
点を取らなければ試合では勝てない。
だがその攻撃の基点を見つけた途端の言葉に、鬼道だけじゃなく他の仲間の視線も鋭くなる。


「こちらのディフェンスをすべて上げて、全員攻撃するのよ」
『え?』
「そんなに上げるんですか?」
「でもそれじゃディフェンスがいないも同然。それこそ奴らに抜かれでもしたら終わりじゃないですか!!」
「だったら抜かれないようにすることね」


言いたいことだけ言って踵を返した瞳子に、塔子を初めとしたメンバーが怒りを露にする。
そんな中一人冷静に事態を見守っていた円堂が組んでいた腕を解くと徐に口を開いた。


「俺は監督の意見に賛成だ」
「どうしてですか?」
「理由は、プレイしてみれば判るよ。ほら皆、やってみようぜ。忘れたのか?SPフィクサーズに勝てたのだって監督の作戦があったからだろ?」


にっと笑った円堂に不承不承ながら皆頷く。
彼女への信頼は絶大で、だからこそ仲間たちは納得しきっていない戦略に乗った。
それがどういう意味を持つかも知らないで。

拍手[4回]

たった七人で自分たちを相手に勝利を収めた相手を見て、詰めていた息を吐き出すと塔子は笑った。
元々少なかった人数が減ったときは馬鹿にされているのかと思ったが、『作戦だ』と言い放った鬼道の言葉通りそれからの彼らの動きは段違いによかった。
動きが鈍い選手が抜けることでパスが通るようになり、鮮やかなテクニックとチームワークで点を奪われたのには悔しさよりむしろ先に感心してしまったほどだ。
やはり、彼らは強い。

どうしますか、と指示を仰ぐSPフィクサーズの仲間を後ろ手に止め、塔子は一人彼らに近寄る。
黒縁眼鏡の奥から大きな栗色の瞳でこちらの様子を観察していた『円堂守』の前に立つと、すっと右手を差し出した。


「負けたよ・・・流石は日本一のイナズマイレブンだ!」
「ありがと。そう言って貰えてホッとしたよ」


にっと口角を持ち上げて笑った人は、後ろで奇声を上げた仲間たちと違い欠片も驚いていない。
やはり彼らを知っているのはお見通しだったかと苦笑すると、握っていた手を放した。


「どういうことだ?」
「初めから俺たちがイナズマイレブンだって知ってたのか!?」
「もしかしてキャプテンは始めから気づいてたっすか?」
「当然。財前総理のサッカー好きは庶民にも有名だろ?SPにまでサッカーを勧めてるくらいだ。その愛娘がサッカー嫌いなんて考え辛いし、そうなると同年代の日本一を決めるフットボールフロンティアくらいは見てるだろ?」


飄々と肩を竦めて仲間に告げた円堂は、『違う?』と小首を傾げて問うて来た。
全く持って言われたとおりだったので頷いて肯定する。
自分の名前を知っている時点で薄々気がついていたが、見た目以上に聡い人物らしい。
サッカーの腕前もチームワークも申し分ない。
これなら、と心を決めると、円堂へ一歩詰め寄った。


「ねえ、円堂。頼みがあるんだ」
「何?」
「あたし宇宙人からパパを助け出したい。そのために超強力な仲間が欲しいんだ」
「───やっぱり、今回のは力試しだった訳か」
「ごめん、試したりして」
「いいさ。どうせ監督に力を示さなきゃいけなかったし、こっちも利用させてもらったようなもんだ。お互い様だから気にすんなよ」


鮮やかなウィンクを決めた円堂の言葉に、泣きたくなる気持ちをぐっと堪える。
これが日本一になった雷門イレブンのキャプテンの器かと唇を噛み締めた。
会場の観客席で彼らのプレイを見たとき心が震えた。
特に終盤。円堂が黄金色の魔人を呼び、すさまじい気迫で負けなしだったアフロディのボールを受けきったときはこちらが泣きそうになったくらいだ。
ニュースで彼らが宇宙人に負けたと聞いたのは信じられなかったが、例え負けていたとしても彼らの瞳に諦めや絶望はなく、この人たちなら、とより強く思った。


「あんたたちならエイリア学園に勝てるかもしれない。あたしと一緒に戦って欲しいんだ!パパを助けるために」


万端の想いを篭めて訴えると、仲間を振り返った円堂は一人一人の顔を見てからもう一度正面を向いた。
にいっと子供みたいな悪戯っぽい笑顔を浮かべると、眼鏡を指の腹で押し上げた。


「勿論、喜んで!なあ、皆!!」
『おう!!』
「彼女の実力は見ての通りです。監督も宜しいですね?」
「───ええ。これは公式の試合でもないし、女でも戦力になるなら構わないわ」
「ありがとうございます」


クールな女性を監督と呼んだ円堂は、許可を得て嬉しげに頷く。
そして改めて、と今度は円堂から右手を差し出してきた。


「俺、円堂守!これでも雷門サッカー部のキャプテンだ」
「あたしは財前塔子。塔子って呼んでよ!」
「リョーカイ。宜しくな、塔子」


差し出された手を力強く握り上下に振る。
分厚いキーパーグローブで包まれた手の体温なんて判らないはずなのに、何故か温もりが伝わってくる気がして少し微笑む。
和やかな空気が流れたその瞬間。


『地球の民たちよ。我々は宇宙からやってきたエイリア学園だ』


奈良シカ公園にあった電光掲示板から、聞き覚えのある声が流れてきた。
繋いでいた手を振りほどき後ろを振り返ると、先ほどまで何も映っていなかったそこに映像が流れている。
特徴的な髪型とスタイルの少年に、塔子は唇を噛み締めた。


『お前たち地球人に我らの大いなる力を示すため、この地球に降り立った。我々は野蛮な行為は好まない。お前たちの星にあるサッカーと言う一つの秩序に元により逆らう意味はないと示して見せよう』
「・・・だから、なんでサッカー?」


円堂の声が聞こえた気がしたが小さすぎて聞き取れず、顔を向けて疑問を訴えるとなんでもないと苦笑された。
そんな遣り取りをしている間にも仲間の一人に連絡が入り、放送の発信源を知る。
奈良シカテレビは奈良では中心的な放送局で、電波はそこから発信されているらしい。
知り得た情報に雷門イレブンを見ると、心得た様子で彼らは頷いた。





「ほらね、やっぱりすぐに無理しなきゃいけない時が来た」


渋い顔をしている円堂の言葉に、鬼道は振り返る。
独り言のつもりだったようだが耳に入ってしまえば気になるもので、小首を傾げた。
窓際に座る円堂の呟きは仲間を押しのけて隣に座った鬼道にしか聞こえていなかったようだが、どうもそこはかとなく不機嫌な気がしないでもない。
伊達に長年弟をしてきたわけじゃない。このメンバーの中で一番彼女の感情の揺れに敏感なのは鬼道だろう。
だが何故苛立っているか、不機嫌になっているかの理由までは悟れない。
二年前なら違ったのに、と歯がゆい気持ちになっていると、頭に優しい感触の掌が降ってきた。


「どうした、有人?随分渋い顔だな」
「渋い顔をしているのは姉さんの方でしょう?俺は姉さんの感情が伝染しただけです」


つん、と顎を反らすと苦笑した気配が伝わってきた。
子供っぽい態度に自然と顔が赤らむ。どうにも彼女相手だと気が緩んで昔に戻ってしまう。
恥じ入る鬼道の頭をもう一度撫でた円堂は、『そりゃ悪かった』と全く悪びれない口調で謝罪してきた。


「理由は判らなくても俺の態度に敏感なのは昔のまま、か。ある意味成長してないな、有人」
「余計なお世話です。それより、本当にどうしたんですか?」
「別にどうもしてないよ。ただ本調子でない仲間に無理をさせなきゃいけないだろうことが嫌なだけだ」
「無理・・・ですか?」
「ああ。もし奈良シカテレビに行ったとき、レーゼだったっけか?宇宙人たちが居たら、そこで試合をすることになるだろう。俺はあいつらの実力を知らないが、お前らがあれだけ手ひどくやられたんだ、強いのはわかってる。そんな奴らと負傷した仲間を戦わせたくない。根本的にSPフィクサーズ戦とは違う───二度とサッカーが出来ない体にはなって欲しくないが、あいつらは良くも悪くも引き際を知らな過ぎる。どうにも嫌な予感がするんだ」


心持ち顔色を青褪めさせた円堂の発言に、瞳を丸めた。
彼女が弱気な言葉を吐くなど本当に珍しい。

安心させるように笑みを浮かべた鬼道は、頭を撫でる掌を掴むと胸の前できゅっと握った。
そして姉とは違い普段からつけているゴーグルを外すと、栗色の瞳を覗きこむ。


「大丈夫です、姉さん。俺たちなら勝てます」


はっきりと断言した鬼道に、それでも円堂は曖昧な笑みを浮かべただけだった。
繋がれた掌からの温もりに安堵したのは、もしかしたら鬼道の方だったのかもしれない。

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