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青嵐
--お題サイト:afaikさまより--



抱き上げた腕の中で無駄な抵抗を続ける少女に思わず笑う。
どれだけもがいたところで意味はないのに、ルキアは顔を真っ赤にして抵抗した。
修兵はどちらかと言えば犬派だが、ルキアを見ると猫が欲しくなる。

真っ黒で可愛い小さな子猫。
気を引こうと努力しても全く気のないそぶりを見せて、そのくせ愛らしい仕草でこちらを翻弄する。
華奢でしなやかな体に釣り上がり気味の綺麗な瞳。毛並みは艶やかで品もある。

そこまで考えて思わず自分に笑ってしまう。
欲しいのは単なる黒猫じゃない。
目の前の、愛らしくも愛しい無邪気な子猫。


「なあ、ルキア」
「・・・何ですか」
「俺が嫌いか?」
「っ!?その聞き方は卑怯です!」


器用にも更に顔を赤く染め上げたルキアは、修兵の掌に爪を立てた。
かりりと表皮を削られる感覚に眉根を寄せる。
だが手は絶対に放さない。
放した瞬間に踵を返して逃げられるのは真っ平ごめんだ。
猫の逃げ足は素早く、また逃げ道も見つけずらいもの。
手放して後悔するのは一度で十分だ。

そこまで考え、柳眉を寄せた。
同じ少女に恋をする、赤毛の後輩を思い出したのだ。
もしかしたら彼も同じように心に決めていたのかもしれない。
だからこそ血反吐を吐く努力を続け、短期で副隊長までのし上がり、そして先日の騒ぎでも死神を裏切ってでも少女を探した。

修兵と恋次は陰と陽の存在だ。
彼がルキアを独占する間、修兵は近寄ることも出来なかった。
修兵がルキアを独占している間は、恋次は指を咥えて見ているだけだった。
ならば同じ位置に立つ今は、一体これからどうなるのだろうか。

また彼に独占されるのか、と考えた瞬間に血が煮えくり返るような怒りが湧き、持ち上げていた体を腕に抱きこんだ。


「檜佐木副隊長殿・・・?」
「・・・修兵って呼べって言ってんだろ。俺は、絶対に諦めたりしねえからな」


戸惑う少女の体温を感じ、ひっそりと瞼を閉じる。
誰ともなく囁いた宣言は自分自身に言い聞かせるもの。

彼女と恋次の絆がどれほどのものか知っている。
ずっとずっと見ていたのだ。
離れる前の距離も、離れてからの視線の行き場も、再び見えてから当たり前に縮まった距離に焦りを感じないはずがない。
それでも諦められるはずがない。
一度手にしたものを手放せるほど、修兵は心が広くない。


「言っただろ?俺は俺しか選ばせないって。覚悟しておけよ、ルキア。まだ試合は始まったばかりだ」


小首を傾げるルキアに微笑み、隙を突いて口付けた。




猫、猫、子猫。

小さな黒猫。

諦める時期はとうに過ぎてる。

君が選ぶのは、俺一人だけ。

余所見なんて絶対させない、したいなんて思わせない。

猫、猫、子猫。

可愛い子猫。

噛み付くのは俺だけにして。

擦り寄るのも俺だけにして。

その分の愛を俺はあげるよ、愛しい可愛い小さな子猫。

戦いはまだ始まったばかり。

他の男を選んだら、俺はどうかにかなってしまう。

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