×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
「あーあ、面白くないの」
長い髪を一本に結い上げオレンジ色のバンダナをつけた少女は、ぶしつけなまでに不遜な様子で頭を掻いた。
着ている衣服はユニフォームですらない。既製の黒のジャージを何気なく着こなし、首から似合わぬごついゴーグルを提げている。
「嘘だろ・・・、相手は小学生だぞ!?」
「マジかよ」
「この俺たちが、五対一で手も足もでねえだと!!?」
場違いともいえる暢気な態度に、帝国学園のユニフォームを身に着けた少年たちが戦慄した。
フットボールフロンティアで常勝無敗を誇る帝国学園。
自身が選んだエリートの無様な様子に、影山は口角を持ち上げる。
「───これでは、レギュラー陣の見直しを考えなくてはならないな」
「そうしなよ、総帥。この人たちのシュートぬる過ぎ」
「そう言うな、守。お前が特別なんだ」
「これなら有人とプレイしてるほうが百倍は楽しいよ。あーあ、詰まんない。こいつらのサッカーには楽しみがない」
特殊ルールとして攻守共に一人で賄う守は、愛らしい顔立ちを歪めて不機嫌に嘯く。
足元に転がっていたボールをリフティングで眼前まで持ち上げて、右から振り抜いた手でキャッチする。
器用に指先で転がしたボールを眺めながら、こてりと首を傾げた。
「それで、総帥。俺はまだ付き合わなきゃ駄目なの?」
「ああ。・・・西野」
「は、はい!」
「お前、先日皇帝ペンギン1号をマスターしたと言ったな?」
「はい、総帥!」
「ならば見せてみろ」
「ですが、相手はまだ子供でっ」
「その子供相手に押されているのは誰だ。私はお前を現在の帝国イレブンのエースとして育てたつもりだが、その期待を裏切るか?」
「っ、いいえ!」
「守、ボールを」
「はいはい、リョーカイ」
しなやかな仕草でボールを蹴った守は、正確無比なコントロールで西野と呼ばれた少年の足元でボールを止める。
並々ならぬ技術に瞳を見開いた少年は、唇を噛み締めると右の人差し指と親指を合わせて緩い輪を作った。
「見せてやる、俺の実力・・・!」
唇で軽く指を咥えた少年は、高らかと口笛を吹き鳴らした。
帝国学園のサッカーフィールドに甲高い音が響く。
間を置かずしてオレンジがかった赤色のペンギンが五羽飛び出ると、少年の足に喰らいついた。
「喰らえ、俺の必殺技。───皇帝ペンギン1号!!」
額から冷や汗を流しながら一直線に蹴られたボールは、今までの勢いを嘲笑う強さで放たれた。
風を切り呻るような音を響かせて守へと向かう。
少しだけ意外そうに瞳を瞬かせた教え子は、嘆息すると足を肩幅に開いて構えた。
「これが皇帝ペンギン1号ねぇ。総帥は一体あなたに何を教えてるんだか」
「・・・負け惜しみを。この技を取れた奴なんて今まで一人もいない」
「なら俺が最初の一人だ。未完成の技で胸を張るようじゃまだまだだね」
「何を───」
「ビーストファング!」
「っ!!?」
息を呑む音がここまで聞こえた気がした。
驚くのも無理はないだろう。組んでいた足を代え、サングラスを指先で持ち上げると影山は嗤った。
今の帝国学園に影山が考案した『ビーストファング』を扱えるキーパーは居ない。
名の通り獣を思わせる技は扱いが難しく、対象者に多大な負荷が掛かる。
技術的な面でも体力的な面でも、そして天性の才能も含め何もかも求める基準に達していない。
名前だけは聞いたことがある技を発揮した守を、信じられないと目を見開いて見ている彼らに影山は嘆息した。
「守」
「何、総帥」
「攻守交替だ。キーパーなどはやめて元のポジションに戻り、本物の皇帝ペンギン1号を見せてやれ」
「・・・ったく、始めはキーパーの真似事をしろって言った割りに、俺がキーパーしたら不機嫌になるのはやめてよね。あと俺、夕方までに家に戻って準備しなきゃいけないから、1ゴール決めたらお終いにしてよ」
「良かろう。・・・聞こえたように今から攻守を代える。守から五分でもゴールを守りきれたら良し、そうでなければお前らは一軍から外す」
「そんな!総帥、俺たちは」
「口答えはいい。出来るか、出来ないか?」
「───っ、出来ます!」
「なら、スタートだ。守」
名を呼べば、心得たと一つ頷いた少女は、首に提げていたゴーグルを顔に嵌めた。
厳つい装備品は守には似合わないが何故かしっくりと様になる。
手に持っていたボールを足元へ落とすと、キーパーグローブを口を使って外してポケットに仕舞って一つ伸びをした。
「それじゃ行くよ、先輩方。あんまり詰まらないサッカー、しないでよね」
唇だけで不適な笑みを浮かべた少女は、次の瞬間信じられないスピードで走り出した。
あっという間にゴールを守る一人を抜いた四人中二人が抜かれる。
呆然と背中を見つめたのは一瞬。そこは帝国学園のレギュラーを勤める意地を見せすぐに後を追う。
「あんなの、ドリブルするスピードじゃねえだろっ・・・!」
ボールを持たない状態で全力疾走しているのに、一向に追いつかない背中に舌打ちする。
視線で合図するとまだ辛うじて抜かれていないディフェンスの二人が守目掛けて走り出した。
彼らにとってもレギュラーを奪われるかどうかの背水の陣だ。
時計を見ればまだ一分を少し過ぎたところ。
どうやらまたスピードが上がったらしい。
教え子の成長に頬を緩ませた影山は、『守』の動向だけを視線で追う。
「キラースライド!!」
左右同時のキラースライド。あれも影山が考案した技の一つだ。
息の合った一糸乱れぬ動きは、正確無比な狙いで守の脛を狙った。
しかし。
「甘いね。イリュージョンボール!!」
ボールを足ではさんだ守が、どんと地面を踏みしめる。
瞬間ボールが分裂し増え、イリュージョンの言葉通りに神秘的な動きを見せる。
道化師が操るお手玉のように軽やかなボールに、ディフェンス二人が戸惑った瞬間を狙い宙を飛んだ。
「キラースライドはもっと足の動きを繊細に、膝を中心に動いたほうがいいよ」
「っ!!?」
すたり、と真横に着地した守に瞳を見開いたディフェンスの少年に笑いかけると、首だけ曲げて背後を見た。
無邪気で子供っぽい雰囲気を放つが、あの子供の本質はそんな生易しいものではない。
それをこの場の誰より知る影山は、組んだ手の上に顎を乗せて喉を奮わせた。
年を追うごとに可愛くなく成長する教え子は、誰より影山の理想に近い。
むしろ理想を具現化したといっても過言ではないだろう。
何処までも傲慢で、頼まなければ恩師である影山の意図も汲もうとしない。
今回の遣り取りも態々時間を作らせるのに実に骨が折れた。
だがその我侭で傲岸な部分も気に入っている。
「ねえ、先輩。本物の皇帝ペンギン、見せてあげます」
「どういう意味だ」
「そのままだよ。キーパーの人、気をつけ下さいね。この技、コントロールは出来るけど威力の制御は出来ないから」
指名を受けたキーパーが額から汗を流し息を呑む。
あんながちがちの体では捕れるボールも取れまい。
呆れたとため息を吐き出し、意識を切り替える。
イタリアへ留学してもうすぐ一年。乾いた砂が水を吸うように成長する彼女の実力はどこまで伸びたのか、そちらの方が重要だ。
緩く輪を描いた指を口へ咥えて高らかと笛を鳴らす。
顔を出したペンギンはどれもこれも混じりけない赤一色。
凶暴に瞳を光らせて舞い上がると、守の足へ喰らいつく。
「これが本家本元の皇帝ペンギン1号だ!!」
振り抜かれた威力のボールは、先ほど西野が放ったものとスピードも威力も比べ物にならない。
一瞬でゴールネットに突き刺さったボールに、キーパーは情けなく腰を抜かした。
立ち上がることすら出来ずにいる年上の少年の姿に肩を竦めると、そのまま右手でゴーグルを外す。
柳眉を顰め、大きな栗色の瞳を不機嫌そうに眇めた守は緩く首を振った。
「・・・やっぱり詰まらない。良くこんなサッカー好んで続けてるね、先輩方」
「こんな、とは酷い言い草だな。お前も私から教えを受けているだろう?」
「俺が欲しいのはあなたの志じゃない。勝てば何をしてもいい、なんてナンセンスだ。こんなサッカー楽しくない」
「その割りに、容赦ないプレイをしていたがな」
「面白くないからって手抜きするほど子供じゃないよ」
「これで彼らはレギュラーから外れる。罪悪感は?」
「ないよ。実力不足なら仕方ないでしょ。それに彼らを外すのは俺じゃない、あなただ」
「クククっ、その通りだな」
地面に平伏す元・レギュラーに冷ややかな視線を送る。
負け犬に用はない。否、初めから負けるのは予想していたが、もう少し抵抗はあるかと思っていた。
帝国学園のサッカー部の層は厚い。彼らに代わる人材は幾らでもいる。
「お前らは明日から二軍で鍛えなおす。レギュラーの座が欲しければ、また技術を磨くのだな。・・・そうだな、皇帝ペンギン1号を完璧に扱えるようになれば、考えてもいい。行くぞ、守」
腰に手をやり守を促す。
一瞬だけ後ろを振り返った少女は、振り切るように前を向いた。
そして彼らに聞こえないよう、小声で囁く。
「俺はあなたを尊敬してるよ、総帥。サッカーを求める俺が望むままに技術を与え、環境を与え、場を与えてくれた」
「・・・そうか」
「でもあなたのサッカーは嫌いだ。勝つためなら、仲間も選手も犠牲にしろって考え方、俺には合わない」
「そうか。だから公の場で私の教えた技を使わないのか?」
影山の問いかけに、肩を竦めただけで守は何も答えない。
だが長くの付き合いから知っていた。
飄々としている少女は、見た目以上に強かで頑固だ。
最高の才能と実力を持つ教え子は、技術面以外では全く思い通りに育たない。
柔らかな栗色の髪の上に手を置くと、くしゃりと撫ぜる。
その思い通りにならない部分も含め可愛がっている最高の弟子に、らしくないとひっそり自嘲した。
長い髪を一本に結い上げオレンジ色のバンダナをつけた少女は、ぶしつけなまでに不遜な様子で頭を掻いた。
着ている衣服はユニフォームですらない。既製の黒のジャージを何気なく着こなし、首から似合わぬごついゴーグルを提げている。
「嘘だろ・・・、相手は小学生だぞ!?」
「マジかよ」
「この俺たちが、五対一で手も足もでねえだと!!?」
場違いともいえる暢気な態度に、帝国学園のユニフォームを身に着けた少年たちが戦慄した。
フットボールフロンティアで常勝無敗を誇る帝国学園。
自身が選んだエリートの無様な様子に、影山は口角を持ち上げる。
「───これでは、レギュラー陣の見直しを考えなくてはならないな」
「そうしなよ、総帥。この人たちのシュートぬる過ぎ」
「そう言うな、守。お前が特別なんだ」
「これなら有人とプレイしてるほうが百倍は楽しいよ。あーあ、詰まんない。こいつらのサッカーには楽しみがない」
特殊ルールとして攻守共に一人で賄う守は、愛らしい顔立ちを歪めて不機嫌に嘯く。
足元に転がっていたボールをリフティングで眼前まで持ち上げて、右から振り抜いた手でキャッチする。
器用に指先で転がしたボールを眺めながら、こてりと首を傾げた。
「それで、総帥。俺はまだ付き合わなきゃ駄目なの?」
「ああ。・・・西野」
「は、はい!」
「お前、先日皇帝ペンギン1号をマスターしたと言ったな?」
「はい、総帥!」
「ならば見せてみろ」
「ですが、相手はまだ子供でっ」
「その子供相手に押されているのは誰だ。私はお前を現在の帝国イレブンのエースとして育てたつもりだが、その期待を裏切るか?」
「っ、いいえ!」
「守、ボールを」
「はいはい、リョーカイ」
しなやかな仕草でボールを蹴った守は、正確無比なコントロールで西野と呼ばれた少年の足元でボールを止める。
並々ならぬ技術に瞳を見開いた少年は、唇を噛み締めると右の人差し指と親指を合わせて緩い輪を作った。
「見せてやる、俺の実力・・・!」
唇で軽く指を咥えた少年は、高らかと口笛を吹き鳴らした。
帝国学園のサッカーフィールドに甲高い音が響く。
間を置かずしてオレンジがかった赤色のペンギンが五羽飛び出ると、少年の足に喰らいついた。
「喰らえ、俺の必殺技。───皇帝ペンギン1号!!」
額から冷や汗を流しながら一直線に蹴られたボールは、今までの勢いを嘲笑う強さで放たれた。
風を切り呻るような音を響かせて守へと向かう。
少しだけ意外そうに瞳を瞬かせた教え子は、嘆息すると足を肩幅に開いて構えた。
「これが皇帝ペンギン1号ねぇ。総帥は一体あなたに何を教えてるんだか」
「・・・負け惜しみを。この技を取れた奴なんて今まで一人もいない」
「なら俺が最初の一人だ。未完成の技で胸を張るようじゃまだまだだね」
「何を───」
「ビーストファング!」
「っ!!?」
息を呑む音がここまで聞こえた気がした。
驚くのも無理はないだろう。組んでいた足を代え、サングラスを指先で持ち上げると影山は嗤った。
今の帝国学園に影山が考案した『ビーストファング』を扱えるキーパーは居ない。
名の通り獣を思わせる技は扱いが難しく、対象者に多大な負荷が掛かる。
技術的な面でも体力的な面でも、そして天性の才能も含め何もかも求める基準に達していない。
名前だけは聞いたことがある技を発揮した守を、信じられないと目を見開いて見ている彼らに影山は嘆息した。
「守」
「何、総帥」
「攻守交替だ。キーパーなどはやめて元のポジションに戻り、本物の皇帝ペンギン1号を見せてやれ」
「・・・ったく、始めはキーパーの真似事をしろって言った割りに、俺がキーパーしたら不機嫌になるのはやめてよね。あと俺、夕方までに家に戻って準備しなきゃいけないから、1ゴール決めたらお終いにしてよ」
「良かろう。・・・聞こえたように今から攻守を代える。守から五分でもゴールを守りきれたら良し、そうでなければお前らは一軍から外す」
「そんな!総帥、俺たちは」
「口答えはいい。出来るか、出来ないか?」
「───っ、出来ます!」
「なら、スタートだ。守」
名を呼べば、心得たと一つ頷いた少女は、首に提げていたゴーグルを顔に嵌めた。
厳つい装備品は守には似合わないが何故かしっくりと様になる。
手に持っていたボールを足元へ落とすと、キーパーグローブを口を使って外してポケットに仕舞って一つ伸びをした。
「それじゃ行くよ、先輩方。あんまり詰まらないサッカー、しないでよね」
唇だけで不適な笑みを浮かべた少女は、次の瞬間信じられないスピードで走り出した。
あっという間にゴールを守る一人を抜いた四人中二人が抜かれる。
呆然と背中を見つめたのは一瞬。そこは帝国学園のレギュラーを勤める意地を見せすぐに後を追う。
「あんなの、ドリブルするスピードじゃねえだろっ・・・!」
ボールを持たない状態で全力疾走しているのに、一向に追いつかない背中に舌打ちする。
視線で合図するとまだ辛うじて抜かれていないディフェンスの二人が守目掛けて走り出した。
彼らにとってもレギュラーを奪われるかどうかの背水の陣だ。
時計を見ればまだ一分を少し過ぎたところ。
どうやらまたスピードが上がったらしい。
教え子の成長に頬を緩ませた影山は、『守』の動向だけを視線で追う。
「キラースライド!!」
左右同時のキラースライド。あれも影山が考案した技の一つだ。
息の合った一糸乱れぬ動きは、正確無比な狙いで守の脛を狙った。
しかし。
「甘いね。イリュージョンボール!!」
ボールを足ではさんだ守が、どんと地面を踏みしめる。
瞬間ボールが分裂し増え、イリュージョンの言葉通りに神秘的な動きを見せる。
道化師が操るお手玉のように軽やかなボールに、ディフェンス二人が戸惑った瞬間を狙い宙を飛んだ。
「キラースライドはもっと足の動きを繊細に、膝を中心に動いたほうがいいよ」
「っ!!?」
すたり、と真横に着地した守に瞳を見開いたディフェンスの少年に笑いかけると、首だけ曲げて背後を見た。
無邪気で子供っぽい雰囲気を放つが、あの子供の本質はそんな生易しいものではない。
それをこの場の誰より知る影山は、組んだ手の上に顎を乗せて喉を奮わせた。
年を追うごとに可愛くなく成長する教え子は、誰より影山の理想に近い。
むしろ理想を具現化したといっても過言ではないだろう。
何処までも傲慢で、頼まなければ恩師である影山の意図も汲もうとしない。
今回の遣り取りも態々時間を作らせるのに実に骨が折れた。
だがその我侭で傲岸な部分も気に入っている。
「ねえ、先輩。本物の皇帝ペンギン、見せてあげます」
「どういう意味だ」
「そのままだよ。キーパーの人、気をつけ下さいね。この技、コントロールは出来るけど威力の制御は出来ないから」
指名を受けたキーパーが額から汗を流し息を呑む。
あんながちがちの体では捕れるボールも取れまい。
呆れたとため息を吐き出し、意識を切り替える。
イタリアへ留学してもうすぐ一年。乾いた砂が水を吸うように成長する彼女の実力はどこまで伸びたのか、そちらの方が重要だ。
緩く輪を描いた指を口へ咥えて高らかと笛を鳴らす。
顔を出したペンギンはどれもこれも混じりけない赤一色。
凶暴に瞳を光らせて舞い上がると、守の足へ喰らいつく。
「これが本家本元の皇帝ペンギン1号だ!!」
振り抜かれた威力のボールは、先ほど西野が放ったものとスピードも威力も比べ物にならない。
一瞬でゴールネットに突き刺さったボールに、キーパーは情けなく腰を抜かした。
立ち上がることすら出来ずにいる年上の少年の姿に肩を竦めると、そのまま右手でゴーグルを外す。
柳眉を顰め、大きな栗色の瞳を不機嫌そうに眇めた守は緩く首を振った。
「・・・やっぱり詰まらない。良くこんなサッカー好んで続けてるね、先輩方」
「こんな、とは酷い言い草だな。お前も私から教えを受けているだろう?」
「俺が欲しいのはあなたの志じゃない。勝てば何をしてもいい、なんてナンセンスだ。こんなサッカー楽しくない」
「その割りに、容赦ないプレイをしていたがな」
「面白くないからって手抜きするほど子供じゃないよ」
「これで彼らはレギュラーから外れる。罪悪感は?」
「ないよ。実力不足なら仕方ないでしょ。それに彼らを外すのは俺じゃない、あなただ」
「クククっ、その通りだな」
地面に平伏す元・レギュラーに冷ややかな視線を送る。
負け犬に用はない。否、初めから負けるのは予想していたが、もう少し抵抗はあるかと思っていた。
帝国学園のサッカー部の層は厚い。彼らに代わる人材は幾らでもいる。
「お前らは明日から二軍で鍛えなおす。レギュラーの座が欲しければ、また技術を磨くのだな。・・・そうだな、皇帝ペンギン1号を完璧に扱えるようになれば、考えてもいい。行くぞ、守」
腰に手をやり守を促す。
一瞬だけ後ろを振り返った少女は、振り切るように前を向いた。
そして彼らに聞こえないよう、小声で囁く。
「俺はあなたを尊敬してるよ、総帥。サッカーを求める俺が望むままに技術を与え、環境を与え、場を与えてくれた」
「・・・そうか」
「でもあなたのサッカーは嫌いだ。勝つためなら、仲間も選手も犠牲にしろって考え方、俺には合わない」
「そうか。だから公の場で私の教えた技を使わないのか?」
影山の問いかけに、肩を竦めただけで守は何も答えない。
だが長くの付き合いから知っていた。
飄々としている少女は、見た目以上に強かで頑固だ。
最高の才能と実力を持つ教え子は、技術面以外では全く思い通りに育たない。
柔らかな栗色の髪の上に手を置くと、くしゃりと撫ぜる。
その思い通りにならない部分も含め可愛がっている最高の弟子に、らしくないとひっそり自嘲した。
PR
更新内容
|
(06/28)
(04/07)
(04/07)
(04/07)
(03/31)
(03/30)
(03/30)
(03/30)
(03/30)
(03/25)
(03/25)
(03/25)
(03/25)
(03/24)
(03/24)
(03/24)
(03/23)
(03/14)
(03/14)
(03/13)
(03/13)
(03/13)
(03/11)
(03/10)
(03/08)
カテゴリー
|
リンク
|
フリーエリア
|