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ぶわっとありえないくらいに膨れ上がった尻尾が、無言で不満を訴える。
右、左、真ん中。びったん、びったん、ばちっ。
床を勢い良く叩く尻尾は、言葉以上に彼の不満を訴えた。
ぶわぶわと逆立つ毛並み。
シャーだかフーだが威嚇音を鳴らす喉。
断言しよう。紛れもなく彼は怒っている。
曲線を描いた体は怒りで震え、戦闘モードになった爪は絨毯を掻き毟る。
毛足の長い赤い絨毯の一部が削れていくのをぼんやりとルキアは眺めた。
(あれはきっと、後で浦原にお仕置きされるな)
全力で不満と怒りを伝える一護に、ルキアは遠い目をした。
窓の外からは蝉の鳴き声。
仕事帰りのルキアは、不機嫌な契約魔獣の背をそっと撫でた。
そもそも何故一護がここまで拗ねているかというと、思いつく理由は一つしかない。
一見すると眉を顰め不機嫌そうに見えるが、その実所在無さげに室内に立っている存在。
ここら辺では見かけぬ衣服を纏った少年姿の半魔獣、日番谷冬獅郎。
彼の姿を見た瞬間、ルキアの足に擦り寄り頭を押し付け甘えていた一護は、毛を逆立てて部屋の隅へと走り去った。
それから幾度声を掛けてもずっと怒りを発散させるだけだ。
己の契約魔獣の不躾さにルキアは眉を下げて客人に頭を下げる。
「申し訳ありません、日番谷殿」
「いや───急に押しかけた俺も悪い。その、お前が迷惑なら、俺は別に浮竹のとこでも」
「いいえ、迷惑などとんでもありません!私の方からお願いしたのです。部屋は幾らでもございますし、どうぞご自宅と思い寛いでいただきたく」
「と言ってもな。ここは広すぎる」
「離れを用意させましょうか?」
「その感覚がおかしいって言ってるんだ。客室の一つ借りれれば十分ありがたい」
「ならば」
「だが、俺はどうも歓迎されていないように見える」
軽く息を吐き出した冬獅郎を見て、益々ルキアは眉を下げる。
契約主であるルキアから見ても一護の態度は歓迎ムードとはいえない。
「一護。いい加減にしないか」
「・・・ぶに」
「客人の前だぞ」
「シャーっ」
「シャーっ、じゃない。一護!」
ルキアが叱ったのに益々腹を立てたのか、一護の尻尾は更に膨らみ床を叩く音が激しくなる。
右、左、真ん中。びたん!びたん!ばちん!
怒れる一護は放置し、席に座ってもらっていた日番谷の前に腰掛ける。
本来なら席を離れること自体がマナー違反だが、そこは多めに見てもらっているのに一護は気づいているのだろうか。
否。気づいていないに違いない。
部屋の扉が軽快にノックされ、返事をするとすぐに執事服姿の浦原がお茶とお菓子を用意して入ってきた。
その際一護へと視線を巡らし、その瞳が不遜に光ったのをルキアは見逃さなかった。
やはりあれは後で説教だろう。
「申し訳ございません、お客様。部屋の準備は間もなく整います。───不躾な獣が一匹お目汚ししますが、どうぞ広い心でお許しください」
「・・・ああ」
「すぐに追い払いますから」
「あ、おい」
浦原の言葉に呆然としていた冬獅郎が我に返りとめようとする間もなく、つかつかつかと一護に寄った彼は首元を引っつかむと窓から遠慮なく投げ捨てた。
ちなみにルキアの部屋は三階だ。
思わず非難の声を上げ窓へ駆け寄ろうとすると、瞬間移動でもしたのかという速さで戻ってきた浦原に止められた。
睨み上げた顔は、絶対零度の微笑みで形作られている。
今の彼はルキアの執事ではなく、家庭教師もしくはマナー講師であるらしい。
「猫は身の丈より高い場所から落ちても上手に着地する生き物ですよ、お嬢様。それより誰が客を前に席を立って宜しいとお教えしましたか」
「だが、一護が」
「優しいのはあなたの美点かもしれませんが、拗ねて意地を張っている獣にその必要はありません。躾は重要だと飼う前にきちんと教授したはずです」
「・・・浦原」
「お客様の相手をするのはホステスとして当然のこと。その間主の客に対し失礼な態度をとった黒崎さんにはしっかりと反省してもらいましょう」
鮮やかな笑顔は嘘臭い。
だが言っていることは一々正論だったので、ルキアは大人しく彼に従った。
よくよく考えれば魔獣である一護なのだ。この程度の高さでは怪我一つ負うまい。
未だに戸惑いを浮かべたままの冬獅郎を前に、失礼を詫びると世間話から当たり触りない会話を始める。
少なくとも一月は滞在される客人なのだ。一護にも慣れてもらはなくてはいけなかった。
会話からぎこちなさが取れる頃、窓を引っかくような音が聞こえた気がしたが、笑顔の浦原が窓辺の様子を確認しに言った後からはその音もなくなった。
教育係は笑顔の仮面を被り、今日もスパルタだった。
右、左、真ん中。びったん、びったん、ばちっ。
床を勢い良く叩く尻尾は、言葉以上に彼の不満を訴えた。
ぶわぶわと逆立つ毛並み。
シャーだかフーだが威嚇音を鳴らす喉。
断言しよう。紛れもなく彼は怒っている。
曲線を描いた体は怒りで震え、戦闘モードになった爪は絨毯を掻き毟る。
毛足の長い赤い絨毯の一部が削れていくのをぼんやりとルキアは眺めた。
(あれはきっと、後で浦原にお仕置きされるな)
全力で不満と怒りを伝える一護に、ルキアは遠い目をした。
窓の外からは蝉の鳴き声。
仕事帰りのルキアは、不機嫌な契約魔獣の背をそっと撫でた。
そもそも何故一護がここまで拗ねているかというと、思いつく理由は一つしかない。
一見すると眉を顰め不機嫌そうに見えるが、その実所在無さげに室内に立っている存在。
ここら辺では見かけぬ衣服を纏った少年姿の半魔獣、日番谷冬獅郎。
彼の姿を見た瞬間、ルキアの足に擦り寄り頭を押し付け甘えていた一護は、毛を逆立てて部屋の隅へと走り去った。
それから幾度声を掛けてもずっと怒りを発散させるだけだ。
己の契約魔獣の不躾さにルキアは眉を下げて客人に頭を下げる。
「申し訳ありません、日番谷殿」
「いや───急に押しかけた俺も悪い。その、お前が迷惑なら、俺は別に浮竹のとこでも」
「いいえ、迷惑などとんでもありません!私の方からお願いしたのです。部屋は幾らでもございますし、どうぞご自宅と思い寛いでいただきたく」
「と言ってもな。ここは広すぎる」
「離れを用意させましょうか?」
「その感覚がおかしいって言ってるんだ。客室の一つ借りれれば十分ありがたい」
「ならば」
「だが、俺はどうも歓迎されていないように見える」
軽く息を吐き出した冬獅郎を見て、益々ルキアは眉を下げる。
契約主であるルキアから見ても一護の態度は歓迎ムードとはいえない。
「一護。いい加減にしないか」
「・・・ぶに」
「客人の前だぞ」
「シャーっ」
「シャーっ、じゃない。一護!」
ルキアが叱ったのに益々腹を立てたのか、一護の尻尾は更に膨らみ床を叩く音が激しくなる。
右、左、真ん中。びたん!びたん!ばちん!
怒れる一護は放置し、席に座ってもらっていた日番谷の前に腰掛ける。
本来なら席を離れること自体がマナー違反だが、そこは多めに見てもらっているのに一護は気づいているのだろうか。
否。気づいていないに違いない。
部屋の扉が軽快にノックされ、返事をするとすぐに執事服姿の浦原がお茶とお菓子を用意して入ってきた。
その際一護へと視線を巡らし、その瞳が不遜に光ったのをルキアは見逃さなかった。
やはりあれは後で説教だろう。
「申し訳ございません、お客様。部屋の準備は間もなく整います。───不躾な獣が一匹お目汚ししますが、どうぞ広い心でお許しください」
「・・・ああ」
「すぐに追い払いますから」
「あ、おい」
浦原の言葉に呆然としていた冬獅郎が我に返りとめようとする間もなく、つかつかつかと一護に寄った彼は首元を引っつかむと窓から遠慮なく投げ捨てた。
ちなみにルキアの部屋は三階だ。
思わず非難の声を上げ窓へ駆け寄ろうとすると、瞬間移動でもしたのかという速さで戻ってきた浦原に止められた。
睨み上げた顔は、絶対零度の微笑みで形作られている。
今の彼はルキアの執事ではなく、家庭教師もしくはマナー講師であるらしい。
「猫は身の丈より高い場所から落ちても上手に着地する生き物ですよ、お嬢様。それより誰が客を前に席を立って宜しいとお教えしましたか」
「だが、一護が」
「優しいのはあなたの美点かもしれませんが、拗ねて意地を張っている獣にその必要はありません。躾は重要だと飼う前にきちんと教授したはずです」
「・・・浦原」
「お客様の相手をするのはホステスとして当然のこと。その間主の客に対し失礼な態度をとった黒崎さんにはしっかりと反省してもらいましょう」
鮮やかな笑顔は嘘臭い。
だが言っていることは一々正論だったので、ルキアは大人しく彼に従った。
よくよく考えれば魔獣である一護なのだ。この程度の高さでは怪我一つ負うまい。
未だに戸惑いを浮かべたままの冬獅郎を前に、失礼を詫びると世間話から当たり触りない会話を始める。
少なくとも一月は滞在される客人なのだ。一護にも慣れてもらはなくてはいけなかった。
会話からぎこちなさが取れる頃、窓を引っかくような音が聞こえた気がしたが、笑顔の浦原が窓辺の様子を確認しに言った後からはその音もなくなった。
教育係は笑顔の仮面を被り、今日もスパルタだった。
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