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いろは順お題
--お題サイト:afaikさまより--



「あー・・・、だから違うって言ってんだろ!」


響いた怒声に、一護はびくりと首を竦める。
見下ろす魔獣は赤色の瞳を怒りで眇め、うるうると喉を鳴らした。

上体を低くして耳をピンと立てた一護は、いつでも逃げれるよう後ろ足を踏ん張る。
珍しいオレンジ色の長毛が芝生について草を巻き込むが、そんなの関係ない。
意識せずに警戒音を出す喉を呻らせたまま、びったんびったんと尻尾を叩き付けた。

だがそんな一護の様子を見て嘆息して前足で土を掻いた恋次は、すかさず傍に居た浦原が横から指導を入れる。
勿論、一護ではなく恋次に。
風の力で浮き上がらせた石を頭部に喰らった恋次は蛙が潰れるような声を出し撃沈した。


「いってぇ!何するんだよ!」
「芝に穴を開けないでくれますか。誰が手入れしてると思ってるんです」
「え?───まさか浦原さんが」
「そんなわけないでしょ。庭師に決まってるでしょうが。朽木さんつきの私が、そんな時間あると思ってるんですか?」
「・・・・・・じゃあ、紛らわしい言い方するなよ」
「聞こえてますよ。庭を荒らす駄犬は当屋敷には相応しくありません。躾のし直しですか?」
「いや、すんませんでした!心を改め気をつけます!!」


胡散臭い笑みを深めた浦原に、狼に似た姿でびしりと姿勢を正した恋次は声を裏返し叫ぶ。
一護にとっては人語や人の常識を教える浦原より、力の使い方や人への変化を教える恋次のほうが余程怖い。

きっちりと上下関係が定まっているように見える二人を未だに身を低くして眺めていれば、不意に背後から抱き上げられた。


「ぶなうぅ!?」
「・・・私だ、一護」
「なーん」
「ああ、あれか?あれは毎度のことだ、気にするな。浦原は躾には五月蝿いんだ。私も朽木に相応しい振る舞いをと口がすっぱくなるほど言われている。四角四面なことが苦手な恋次は、そのままあやつも苦手にしているだけだ」


腕に抱いた一護の喉を指先で擽りながら教えるルキアは、人語など話せずとも十分意思が通じる。
何故彼女にいいたことが判るのかとじっと綺麗な紫紺色の瞳を覗き込めば、ひょいと器用に眉を上げたルキアは顔を近づけて一護の額と額をあわせた。


「あれはな、一護。仲良し喧嘩と言うものだ。お前も早く仲間入りできるよう頑張るのだな」


話す振動が伝わるくらいの近距離で見つめあった瞳に、一護はぱちりと目を瞬かせた。
仲良し喧嘩がどんなものかわからないが、もう一度未だに喧々囂々とやりあう二人をじっと見詰める。
何事か恋次が気に障ることを言ったのか、再び風の力で石を持ち上げた浦原が爽やかな笑顔で恋次を攻撃していた。

いつか見た流星のように綺麗に落ちていく石を眺めてふるりと尻尾を振る。
悲鳴を上げる恋次を目に、一護はぽつりと呟いた。


「ぶにゃああん」


その一言は、恋次が聞いたら激怒間違いなしの響きを持っていたが、尻尾を股に挟んで逃げ惑う彼には幸いにも届いていなかった。

拍手[13回]

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いろは順お題
--お題サイト:afaikさまより--



『それ』からすると見上げるくらいの体は、人にしては華奢な部類に入るらしい。
癖の強い黒髪を揺らし、釣り目がちの瞳を細めて笑う人に小首を傾げる。
細い腕に抱き上げられた体はだらりと伸びて、尻尾がぶらぶらと揺れた。

視線を下げればそこには先日力を分けてくれた魔獣が一匹。
秋の夕日のような毛並みと瞳を持つ彼は、たしたしと尻尾で床を叩いている。
不満げに鼻をふんふんと鳴らし『それ』の匂いを嗅ごうとするので、拒絶するように足を動かしたら丁度顔の正面に当たった。
虚をつかれ目を丸めた彼は、次の瞬間にぶわりと尻尾を膨らませる。


「ぐるぅぅうウウぅ」
「よさんか、恋次。今のは貴様が悪い」
「どうしてだよ!どう考えてもこいつが悪いだろ!」
「いや、阿散井さん。あなたが悪いですよ。誰だって親しくもない相手に近づかれたくないもんです」
「って、ルキアなんか抱き上げてるじゃねえか!」
「朽木さんは飼い主だから別なんでしょ」


そう言いながら、少女が脇に手を入れて抱き上げていた『それ』の首を掴むと、年齢不詳の男は何食わぬ顔でひょいと持ち上げた。
くぐもった声が上がるが、全く取り合ってもらえない。


「お嬢様。服に毛がつくから抱き上げないようにと言っているでしょ」
「何を言っておる。それこそ今更だ。私の部屋には恋次が居るし、花太郎だっているのだから」
「それとこれとは別です。阿散井さんの毛も花太郎さんの毛も硬くてつきにくいですが、この猫は違うでしょう。ほら見てみなさい。お気に入りのワインレッドのワンピースが毛だらけです」
「別に私は気に入ってない」
「私のお気に入りなんですよ。ったくこれだから動物っていうのは」
「動物ではなく魔獣だ」
「似たようなものですよ」


ふん、と鼻を鳴らし、ぽいっと宙に放り投げられた。
慌てて空中で体制を整え足から着地すると、ぱちぱちと少女が手を鳴らす。
しかしながら感動しているのは少女のみで、彼女の両隣に居る男たちの反応は冷静そのものだった。
特にスーツ姿の男は、一見すると態度は恭しいが行動は乱雑。
丁寧なのは少女に対してのみで、『それ』や狼系の魔獣には一線を画した態度を取っている。
判りやすい位置づけに、この屋敷に来て日が浅い『それ』もなんとなく人間関係が読めた。


「ぶにゃうううなぁん!」
「───ほら見なさい。お嬢様がきっちりと躾をしないからですよ」


不満を訴えて毛が生えている床を爪を立てて掻けば、再び首の後ろを掴まれて持ち上げられた。
また投げられるのかと身を竦めると、柳眉を顰めた少女は一つかつかと距離を詰めると首を掴まれていた『それ』を男から奪い取った。
つり上がり気味の紫紺の瞳を半眼にして、苛立ちを篭めて睨み付ける姿は小さくても勇ましい。
優しく耳の付け根を撫でられ自然と喉が鳴る。


「・・・甘やかしすぎです」
「今は甘やかすことが必要だ。何も鞭ばかりが躾ではないだろう」
「お嬢様」
「しつこいぞ、浦原。こやつは私の魔獣となるのだ。私の好きにさせろ。それに、私には恋次も居るしな」
「俺?」
「ああ。お前は今日からこやつの兄だ。こやつの見本となるよう、兄様のように規律正しくしろ」
「朽木のご当主と同じように?俺に出来ると思ってんのか?」
「出来なくともやれ。契約主としての命令だ」
「───ああ、はいはい。ったく、お前!あんまり世話かけんじゃねえぞ!」
「よし。・・・おい、お前」


呼びかけられて顔を上げる。
紫紺色の瞳がひたりと『それ』を見詰め、綺麗な色に暫し見惚れた。
そんな『それ』の気持ちを見透かすように瞳を細めて喉を鳴らした少女は、『それ』の頭を指先で撫でる。


「お前の名前は『一護』。一つのものを護り抜くと書いて『一護』だ」
「んなぅ?」
「ああ、お前の名だ。私の名は朽木ルキア。こっちは恋次で、そこの胡散臭いのが浦原だ。これから私たちがお前の家族だ」
「なぅぅう?」
「ふむ、そうだな。まずは人語を話せるように練習しろ。丁度いいことに浦原は無駄に知識が深い。教師役には適しているだろう」
「結局私も手を貸すんですか?」
「当然だ。貴様は私に仕えているんだろう?」
「・・・はいはい。その代わりびしばしと教えますから、そのつもりで。甘やかすのは私の担当じゃありません」
「ほどほどにしろよ。そして人に変化する術は恋次から学べ。戦闘においてもこやつなら丁度いい指南役だ」
「きっちりとついてこいよ」
「そして私はお前の母親だ。いつでも甘えてくるがいい」
「・・・母親?」
「ルキアが?」
「何か問題が?」
『いいえ、何も』


鋭い眼差しで睨み据えられた二人が、そっぽを向いて否定する。
突然にいろいろなことが決まり戸惑っている一護の頭に頬を摺り寄せると、『ルキア』は笑った。


「歓迎するぞ、新しい『家族』よ」


心底嬉しそうに目を細めて告げたルキアに、一護の尻尾がふらりと揺れる。
『母親』がどんなものだったか、もう思い出せないけれど、今日から彼女が『母親』らしい。
幾らでも甘えろと胸を張るルキアは、言葉通り甘やかすように一護の喉を指先で擽る。

新しい日常の幕開けに、一護は小さく声を上げた。

拍手[14回]

青嵐
--お題サイト:afaikさまより--



抱き上げた腕の中で無駄な抵抗を続ける少女に思わず笑う。
どれだけもがいたところで意味はないのに、ルキアは顔を真っ赤にして抵抗した。
修兵はどちらかと言えば犬派だが、ルキアを見ると猫が欲しくなる。

真っ黒で可愛い小さな子猫。
気を引こうと努力しても全く気のないそぶりを見せて、そのくせ愛らしい仕草でこちらを翻弄する。
華奢でしなやかな体に釣り上がり気味の綺麗な瞳。毛並みは艶やかで品もある。

そこまで考えて思わず自分に笑ってしまう。
欲しいのは単なる黒猫じゃない。
目の前の、愛らしくも愛しい無邪気な子猫。


「なあ、ルキア」
「・・・何ですか」
「俺が嫌いか?」
「っ!?その聞き方は卑怯です!」


器用にも更に顔を赤く染め上げたルキアは、修兵の掌に爪を立てた。
かりりと表皮を削られる感覚に眉根を寄せる。
だが手は絶対に放さない。
放した瞬間に踵を返して逃げられるのは真っ平ごめんだ。
猫の逃げ足は素早く、また逃げ道も見つけずらいもの。
手放して後悔するのは一度で十分だ。

そこまで考え、柳眉を寄せた。
同じ少女に恋をする、赤毛の後輩を思い出したのだ。
もしかしたら彼も同じように心に決めていたのかもしれない。
だからこそ血反吐を吐く努力を続け、短期で副隊長までのし上がり、そして先日の騒ぎでも死神を裏切ってでも少女を探した。

修兵と恋次は陰と陽の存在だ。
彼がルキアを独占する間、修兵は近寄ることも出来なかった。
修兵がルキアを独占している間は、恋次は指を咥えて見ているだけだった。
ならば同じ位置に立つ今は、一体これからどうなるのだろうか。

また彼に独占されるのか、と考えた瞬間に血が煮えくり返るような怒りが湧き、持ち上げていた体を腕に抱きこんだ。


「檜佐木副隊長殿・・・?」
「・・・修兵って呼べって言ってんだろ。俺は、絶対に諦めたりしねえからな」


戸惑う少女の体温を感じ、ひっそりと瞼を閉じる。
誰ともなく囁いた宣言は自分自身に言い聞かせるもの。

彼女と恋次の絆がどれほどのものか知っている。
ずっとずっと見ていたのだ。
離れる前の距離も、離れてからの視線の行き場も、再び見えてから当たり前に縮まった距離に焦りを感じないはずがない。
それでも諦められるはずがない。
一度手にしたものを手放せるほど、修兵は心が広くない。


「言っただろ?俺は俺しか選ばせないって。覚悟しておけよ、ルキア。まだ試合は始まったばかりだ」


小首を傾げるルキアに微笑み、隙を突いて口付けた。




猫、猫、子猫。

小さな黒猫。

諦める時期はとうに過ぎてる。

君が選ぶのは、俺一人だけ。

余所見なんて絶対させない、したいなんて思わせない。

猫、猫、子猫。

可愛い子猫。

噛み付くのは俺だけにして。

擦り寄るのも俺だけにして。

その分の愛を俺はあげるよ、愛しい可愛い小さな子猫。

戦いはまだ始まったばかり。

他の男を選んだら、俺はどうかにかなってしまう。

拍手[7回]

青嵐
--お題サイト:afaikさまより--



往来できゅっと後ろから抱きしめると、小さな体で無駄な抵抗を試みる少女に喉を震わす。
人に慣れない子猫を腕にした感覚と似ている。
こちらからしたら抵抗など些細なものでむしろ擽ったいくらいなのに、本人は必死で、その様子がとても可愛らしい。
癖のある艶やかな黒髪が喉を掠め、心臓を鷲掴みされたように痛みが走り呼吸が辛くなる。

何故、と自分でも思わないでもない。
自分の好みは乱菊のようにメリハリのついた体つきの色っぽい女性で、余裕を持った大人の女だ。
反してルキアは細すぎる体どおりに胸も掌に収まる程度だし、腰など力を篭めれば簡単に折れるだろう。
好みとは正反対にいる華奢すぎる彼女なのに、それでもどうしたってルキアがいい。


今更だけれど、もしかしたらあれも一目惚れになるのだろうか。
別の男と一緒にいた笑顔に惚れるなどシチュエーションは最悪だが、あけすけに浮かんだ喜怒哀楽に瞳が吸い寄せられた。
白皙の美貌や流れる雰囲気じゃなく、恋次の前で見せた素直なルキアに落ちたのだ。


「檜佐木副隊長殿!離して下さい!」
「───駄目だな。お前、言ってるだろ?『修兵』って呼んでみろって」


後ろから抱きついたまま耳元で囁くと、首筋が一気に赤くなった。
肌が白いと照れているときがわかりやすくてとてもいい。

ほんの一年前のルキアならこれくらいで反応しなかったのに、今の彼女は随分と感情表現が豊かになった。
きっかけは死神代行の少年で、膨らませたのは縁を取り戻した幼馴染と誤解がとけた義兄との関係だろう。
悔しいが修兵では駄目だった。
何十年掛けても、体を抱きしめたとしても、心を抱くことは出来なかった。
それでも諦めきれず、体だけの関係にしがみ付き、最後は全てを壊してしまおうとしたけれど。


「なあ、『ルキア』。呼んでみな」


恥ずかしさに声すら殺して悶えるルキアを子供にするよう脇に手を入れて抱き上げる。
反転させて正面を向いた少女は、紫紺色の瞳を潤ませかわいそうなくらい紅潮していた。
可愛いと思わず漏らせば、変なことは言わないでくださいと叱られた。
きらきらと光る瞳や、ころころ変わる表情はあの日の彼女を思わせて、くつり、と喉を震わせ小さく笑った。




猫、猫、子猫。

小さな黒猫。

君は知らないだろうけど、始まりはもう遥かな昔。

綺麗な空気を纏わせて、凛と佇む姿より。

子供みたいに無邪気な笑顔、ずっとずっと憧れた。

長い年月と引き換えの、その表情こそ欲しかったもの。

拍手[7回]

青嵐
--お題サイト:afaikさまより--



些細な悪戯で剥れたままの少女の後ろをついて歩きながら、へらりと笑う。
ほんの一年前まで想像もしなかった距離は、意外と楽しく飽きないものだ。

浅黄色の小袖の裾が翻り、まるで蝶のようだとひらひら動くのに見惚れる。
癖の強い黒髪が揺れ動き天辺に覗く渦を指先で突きたくなる衝動に駆られたが、怒り狂うさまが目に浮かんでくつくつと喉を奮わせた。
本当は怒った顔も好きなのだけれど、こちらを見てくれないのは少しばかり寂しすぎる。

去年の今頃は、こうして日中から共に歩くなどと考えてもなかった。
短くない付き合いだが、顔を合わせるのは仕事以外では夜の帳が落ちてからで、月夜に照らされた無感情で綺麗な顔はいつだって修兵の心を波立たせた。
放っておけなくて、腕に抱きしめて閉じ込めたくて、守ってやりたくて、恋しくて仕方ない。
不思議な魅力を持つ儚げな麗人を独占する時間は幸せだったけれど、今のほうが好きだ。
日のあたる道でころころと無邪気に表情を変える少女こそ、始めに見惚れた姿だったのだから。


瞼を閉じれば今も鮮やかに思い出せる。
赤髪の後輩の前でだけ喜怒哀楽を露にする、普段は物静かな少女。
孤立しながらも独特の雰囲気を纏い、凛と背筋を伸ばして佇んでいた。
とって代わりたいと願ったのは、鎧を脱いでじゃれる子猫と笑い合えるあの近しい距離。
けれど腕を伸ばせる距離になって初めて気がついた。
言葉を交わすより、手に抱くよりも、ただその心を得たかったのだと。
きっと、興味とか関心とかそんな容易な部分はとうに通り越していて、気がついたらもう落ちていた。
独占欲だけではなく想いを認めたのはリョカ騒ぎがあってからで、違う立場に惑ううちに、欲したい場所は取り戻された。
星に向かって吼えるだけだった野良犬は、地べたを這いずりながらも駆けていた。
悔しくて、苦しくて、妬ましくて、羨ましくて。
例え心が得れずとも、奪われるくらいなら消えてしまえばいいと狂気の狭間で漂ったものだ。

今でもその欲望がなくなったとは決して言えない。
大切に慈しみたい気持ちと、独占できないなら壊したい気持ち。貨幣の裏と表のように、相反して存在する。


「なあ、朽木」
「───なんです?」
「膨れた面も、可愛いだけだぞ」
「!!?」


訝しげにこちらを振り返った顔が、たった一言でみるみる赤らむのを見て、修兵は幸せな気持ちに浸った。
いつか独占した夜よりも、日の当たる場所での些細なやり取りは、ずっと心の奥を奮わせた。




猫、猫、子猫。

小さな黒猫。

愛しさを孕む消えない狂気。どうか隠したままで居させて。

拍手[5回]

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