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青嵐
--お題サイト:afaikさまより--
些細な悪戯で剥れたままの少女の後ろをついて歩きながら、へらりと笑う。
ほんの一年前まで想像もしなかった距離は、意外と楽しく飽きないものだ。
浅黄色の小袖の裾が翻り、まるで蝶のようだとひらひら動くのに見惚れる。
癖の強い黒髪が揺れ動き天辺に覗く渦を指先で突きたくなる衝動に駆られたが、怒り狂うさまが目に浮かんでくつくつと喉を奮わせた。
本当は怒った顔も好きなのだけれど、こちらを見てくれないのは少しばかり寂しすぎる。
去年の今頃は、こうして日中から共に歩くなどと考えてもなかった。
短くない付き合いだが、顔を合わせるのは仕事以外では夜の帳が落ちてからで、月夜に照らされた無感情で綺麗な顔はいつだって修兵の心を波立たせた。
放っておけなくて、腕に抱きしめて閉じ込めたくて、守ってやりたくて、恋しくて仕方ない。
不思議な魅力を持つ儚げな麗人を独占する時間は幸せだったけれど、今のほうが好きだ。
日のあたる道でころころと無邪気に表情を変える少女こそ、始めに見惚れた姿だったのだから。
瞼を閉じれば今も鮮やかに思い出せる。
赤髪の後輩の前でだけ喜怒哀楽を露にする、普段は物静かな少女。
孤立しながらも独特の雰囲気を纏い、凛と背筋を伸ばして佇んでいた。
とって代わりたいと願ったのは、鎧を脱いでじゃれる子猫と笑い合えるあの近しい距離。
けれど腕を伸ばせる距離になって初めて気がついた。
言葉を交わすより、手に抱くよりも、ただその心を得たかったのだと。
きっと、興味とか関心とかそんな容易な部分はとうに通り越していて、気がついたらもう落ちていた。
独占欲だけではなく想いを認めたのはリョカ騒ぎがあってからで、違う立場に惑ううちに、欲したい場所は取り戻された。
星に向かって吼えるだけだった野良犬は、地べたを這いずりながらも駆けていた。
悔しくて、苦しくて、妬ましくて、羨ましくて。
例え心が得れずとも、奪われるくらいなら消えてしまえばいいと狂気の狭間で漂ったものだ。
今でもその欲望がなくなったとは決して言えない。
大切に慈しみたい気持ちと、独占できないなら壊したい気持ち。貨幣の裏と表のように、相反して存在する。
「なあ、朽木」
「───なんです?」
「膨れた面も、可愛いだけだぞ」
「!!?」
訝しげにこちらを振り返った顔が、たった一言でみるみる赤らむのを見て、修兵は幸せな気持ちに浸った。
いつか独占した夜よりも、日の当たる場所での些細なやり取りは、ずっと心の奥を奮わせた。
猫、猫、子猫。
小さな黒猫。
愛しさを孕む消えない狂気。どうか隠したままで居させて。
--お題サイト:afaikさまより--
些細な悪戯で剥れたままの少女の後ろをついて歩きながら、へらりと笑う。
ほんの一年前まで想像もしなかった距離は、意外と楽しく飽きないものだ。
浅黄色の小袖の裾が翻り、まるで蝶のようだとひらひら動くのに見惚れる。
癖の強い黒髪が揺れ動き天辺に覗く渦を指先で突きたくなる衝動に駆られたが、怒り狂うさまが目に浮かんでくつくつと喉を奮わせた。
本当は怒った顔も好きなのだけれど、こちらを見てくれないのは少しばかり寂しすぎる。
去年の今頃は、こうして日中から共に歩くなどと考えてもなかった。
短くない付き合いだが、顔を合わせるのは仕事以外では夜の帳が落ちてからで、月夜に照らされた無感情で綺麗な顔はいつだって修兵の心を波立たせた。
放っておけなくて、腕に抱きしめて閉じ込めたくて、守ってやりたくて、恋しくて仕方ない。
不思議な魅力を持つ儚げな麗人を独占する時間は幸せだったけれど、今のほうが好きだ。
日のあたる道でころころと無邪気に表情を変える少女こそ、始めに見惚れた姿だったのだから。
瞼を閉じれば今も鮮やかに思い出せる。
赤髪の後輩の前でだけ喜怒哀楽を露にする、普段は物静かな少女。
孤立しながらも独特の雰囲気を纏い、凛と背筋を伸ばして佇んでいた。
とって代わりたいと願ったのは、鎧を脱いでじゃれる子猫と笑い合えるあの近しい距離。
けれど腕を伸ばせる距離になって初めて気がついた。
言葉を交わすより、手に抱くよりも、ただその心を得たかったのだと。
きっと、興味とか関心とかそんな容易な部分はとうに通り越していて、気がついたらもう落ちていた。
独占欲だけではなく想いを認めたのはリョカ騒ぎがあってからで、違う立場に惑ううちに、欲したい場所は取り戻された。
星に向かって吼えるだけだった野良犬は、地べたを這いずりながらも駆けていた。
悔しくて、苦しくて、妬ましくて、羨ましくて。
例え心が得れずとも、奪われるくらいなら消えてしまえばいいと狂気の狭間で漂ったものだ。
今でもその欲望がなくなったとは決して言えない。
大切に慈しみたい気持ちと、独占できないなら壊したい気持ち。貨幣の裏と表のように、相反して存在する。
「なあ、朽木」
「───なんです?」
「膨れた面も、可愛いだけだぞ」
「!!?」
訝しげにこちらを振り返った顔が、たった一言でみるみる赤らむのを見て、修兵は幸せな気持ちに浸った。
いつか独占した夜よりも、日の当たる場所での些細なやり取りは、ずっと心の奥を奮わせた。
猫、猫、子猫。
小さな黒猫。
愛しさを孕む消えない狂気。どうか隠したままで居させて。
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