×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
「よう、坊(ぼん)。何でそんなに泣いてんだ?」
泣きはらした顔を上げれば、浅黒い肌をした金髪の美青年の姿。
良く知る人の登場に、子供はぱっと顔を輝かせた。
「ちあきくん!」
嬉しくて手を伸ばせば、にっと唇を上げた彼は心得たとばかりに子供を抱き上げる。
彼の腕にすっぽりと納まった子供は、千秋の肩口に顔をつけるとぼろぼろとまた涙を零し始めた。
「どうしたんだよ、坊?お前が泣いてるのにかなでは何処に行ったんだ?」
「おかあはんはおかいもの」
「んじゃ、蓬生は?」
「おとんなんてしらん!」
ぷいっと顔を背ければ、またかよと呆れ交じりの微笑を浮かべる。
定期的に遊びに来る彼が、またかよと言うくらいに彼ら親子は下らない喧嘩を繰り返していた。
原因はいつも同じで、彼にとっての母親で父にとっての妻に当たる人物だ。
今度はどうしたと優しく促す声に、子供は勢いよく口を開いた。
「きいてよ、ちあきくん!おとんはおれとおかあはんはけっこんできひんっていうんや!おれはおかあはんとずっといっしょにいたいのに!」
「何だよ、今回はそんなんか。ま、でもいつか来ると思ってた話だな」
「ちあきくんはそんなこといわへんよね?おれとおかあはんはずっといっしょっていうてくれるよね!」
ぼろぼろと泣きながら訴える子供に暫し思案し、千秋はゆっくりと口を開いた。
「あんな、坊。母親と結婚は出来ないが、お前はずっと家族でかなでの大事な子供だ。それじゃ駄目なのか?」
「やって!おかあはんなだけやと、おとんがおかあはんをひとりじめしようとするもん!」
「───あの馬鹿、子供にこんなこと言わせるくらい独占しとるんかい」
呆れ交じりの吐息に、子供は勢いよく頷く。
その姿を見て千秋は悪戯を思いついたような顔でにっと笑った。
「それなら、俺がおとんになってやろうか?そしたら、お前もかなでも平等に可愛がってやるぞ」
「ほんま?」
「おう。かなでをお前にもちゃんと貸してやる」
「ほんまに、ほんま?」
「ほんまや。な、俺がおとんになる手伝いしてみるか?」
「───うん!!」
それがどれだけ重大な内容か気づかぬまま、子供は嬉しげにこくりと頷く。
リビングから泣いている子供を迎えに来た蓬生が、ありえない子供の発言に度肝を抜かれ、尚且つ要らぬ知恵を植えつけた千秋に怒るのはこのすぐ後。
意外に子煩悩な父親であることを、可愛がられる本人だけは未だに気づいていなかった。
泣きはらした顔を上げれば、浅黒い肌をした金髪の美青年の姿。
良く知る人の登場に、子供はぱっと顔を輝かせた。
「ちあきくん!」
嬉しくて手を伸ばせば、にっと唇を上げた彼は心得たとばかりに子供を抱き上げる。
彼の腕にすっぽりと納まった子供は、千秋の肩口に顔をつけるとぼろぼろとまた涙を零し始めた。
「どうしたんだよ、坊?お前が泣いてるのにかなでは何処に行ったんだ?」
「おかあはんはおかいもの」
「んじゃ、蓬生は?」
「おとんなんてしらん!」
ぷいっと顔を背ければ、またかよと呆れ交じりの微笑を浮かべる。
定期的に遊びに来る彼が、またかよと言うくらいに彼ら親子は下らない喧嘩を繰り返していた。
原因はいつも同じで、彼にとっての母親で父にとっての妻に当たる人物だ。
今度はどうしたと優しく促す声に、子供は勢いよく口を開いた。
「きいてよ、ちあきくん!おとんはおれとおかあはんはけっこんできひんっていうんや!おれはおかあはんとずっといっしょにいたいのに!」
「何だよ、今回はそんなんか。ま、でもいつか来ると思ってた話だな」
「ちあきくんはそんなこといわへんよね?おれとおかあはんはずっといっしょっていうてくれるよね!」
ぼろぼろと泣きながら訴える子供に暫し思案し、千秋はゆっくりと口を開いた。
「あんな、坊。母親と結婚は出来ないが、お前はずっと家族でかなでの大事な子供だ。それじゃ駄目なのか?」
「やって!おかあはんなだけやと、おとんがおかあはんをひとりじめしようとするもん!」
「───あの馬鹿、子供にこんなこと言わせるくらい独占しとるんかい」
呆れ交じりの吐息に、子供は勢いよく頷く。
その姿を見て千秋は悪戯を思いついたような顔でにっと笑った。
「それなら、俺がおとんになってやろうか?そしたら、お前もかなでも平等に可愛がってやるぞ」
「ほんま?」
「おう。かなでをお前にもちゃんと貸してやる」
「ほんまに、ほんま?」
「ほんまや。な、俺がおとんになる手伝いしてみるか?」
「───うん!!」
それがどれだけ重大な内容か気づかぬまま、子供は嬉しげにこくりと頷く。
リビングから泣いている子供を迎えに来た蓬生が、ありえない子供の発言に度肝を抜かれ、尚且つ要らぬ知恵を植えつけた千秋に怒るのはこのすぐ後。
意外に子煩悩な父親であることを、可愛がられる本人だけは未だに気づいていなかった。
PR
「・・・おい」
「何、玲士さん」
「・・・あれは何だ」
この上なく深い溝を眉間に刻み込んだ夫の指差す先には、彼が眼に入れても痛くないと口にせずとも思っている愛娘の姿。
学芸会の主演を務める光栄を射止めた我が子を眺め、かなではこてりと首を傾げる。
玲士がこれほど不機嫌そうにする要素は見つけられない。
繰り広げられる子供達の可愛らしい演技に、ただただ微笑ましい。
「何って、何がですか?」
「惚けるな。あれだ」
「あれ?」
夫が指差す先に、違和感は何もない。
全く持って不思議に思い疑問符を顔全体に浮かべれば、憤りを無理やり押さえ込んでいる唸るような低音を発した。
「あの男だ!一体何をしてる!」
器用にも小声で怒鳴りつけた玲士に目を丸くし、再び舞台へと視線を戻す。
可愛らしい白雪姫を演じる愛娘の隣には、愛らしい容姿を笑顔で綻ばした王子様の姿。
小人に囲まれた彼らは、今まさにクライマックスを演じきったところだった。
手に手をとって微笑みあう姿に、シャッターチャンスとカメラで激写すれば、怒りの形相も露な玲士にすぐさま取り上げられた。
見上げれば表情は益々険しく、まるで般若のようだ。
今更かなでがその表情を恐れることはないが、ちらちらと様子を伺っていた父兄が一気に身を引く。
だが何処までもマイペースな夫妻は周りに気づかない。
「何故あの男は俺の娘にキスなんてするんだ!?」
「ああ・・・玲士さん、そんなことで怒ってたんですか?」
「そんなこと!?そんなことと言ったか!?」
「そんなことですよ。白雪姫なんですから王子様のキスで目覚めるのは当然じゃないですか。それに口じゃなくてほっぺですよ?凄く可愛かったですよね」
「・・・可愛くなんかない!!」
激情のままに席を立とうとした玲士の服を、かなでは慌てて掴む。
怒り心頭とばかりに青筋を浮かべた彼に、漸く怒りの深さを悟った。
「玲士さん、学芸会ですよ?」
「それを理由に俺の娘にふしだらな内容を強制させたとしたら、俺はやつらを訴える」
「訴えるって・・・何処にですか」
「PTAに決まっているだろう。いや、もっと上の」
腕を組みぶつぶつと考え出した玲士に、かなでは一つため息を吐き出した。
子供が生まれてから割りと慣れてしまった事象に、対処法も心得ている。
「玲士さん」
くいっと服の袖を引き、彼の注意がこちらを向いたのを確認する。
そのまま瞼を閉じ、ちゅっとリップ音を立て頬に口付けた。
がちり、と固まった玲士にかなでは微笑む。
結婚してから何年も経っているのに、未だに彼はスキンシップに慣れない。
興奮を収めた夫に、昔から変わらぬ少女のように柔らかな微笑みを向けた。
「カーテンコールです。激写のチャンスですよ」
にこにこしながらカメラを渡せば、ぎこちない動きで前を向いた彼は機械の様に写真を撮り始める。
納まってくれた夫の発作に、また一つ新しい思い出が出来たなぁと暢気に笑った。
こうしてかなでの日記に頁が追加される。
「何、玲士さん」
「・・・あれは何だ」
この上なく深い溝を眉間に刻み込んだ夫の指差す先には、彼が眼に入れても痛くないと口にせずとも思っている愛娘の姿。
学芸会の主演を務める光栄を射止めた我が子を眺め、かなではこてりと首を傾げる。
玲士がこれほど不機嫌そうにする要素は見つけられない。
繰り広げられる子供達の可愛らしい演技に、ただただ微笑ましい。
「何って、何がですか?」
「惚けるな。あれだ」
「あれ?」
夫が指差す先に、違和感は何もない。
全く持って不思議に思い疑問符を顔全体に浮かべれば、憤りを無理やり押さえ込んでいる唸るような低音を発した。
「あの男だ!一体何をしてる!」
器用にも小声で怒鳴りつけた玲士に目を丸くし、再び舞台へと視線を戻す。
可愛らしい白雪姫を演じる愛娘の隣には、愛らしい容姿を笑顔で綻ばした王子様の姿。
小人に囲まれた彼らは、今まさにクライマックスを演じきったところだった。
手に手をとって微笑みあう姿に、シャッターチャンスとカメラで激写すれば、怒りの形相も露な玲士にすぐさま取り上げられた。
見上げれば表情は益々険しく、まるで般若のようだ。
今更かなでがその表情を恐れることはないが、ちらちらと様子を伺っていた父兄が一気に身を引く。
だが何処までもマイペースな夫妻は周りに気づかない。
「何故あの男は俺の娘にキスなんてするんだ!?」
「ああ・・・玲士さん、そんなことで怒ってたんですか?」
「そんなこと!?そんなことと言ったか!?」
「そんなことですよ。白雪姫なんですから王子様のキスで目覚めるのは当然じゃないですか。それに口じゃなくてほっぺですよ?凄く可愛かったですよね」
「・・・可愛くなんかない!!」
激情のままに席を立とうとした玲士の服を、かなでは慌てて掴む。
怒り心頭とばかりに青筋を浮かべた彼に、漸く怒りの深さを悟った。
「玲士さん、学芸会ですよ?」
「それを理由に俺の娘にふしだらな内容を強制させたとしたら、俺はやつらを訴える」
「訴えるって・・・何処にですか」
「PTAに決まっているだろう。いや、もっと上の」
腕を組みぶつぶつと考え出した玲士に、かなでは一つため息を吐き出した。
子供が生まれてから割りと慣れてしまった事象に、対処法も心得ている。
「玲士さん」
くいっと服の袖を引き、彼の注意がこちらを向いたのを確認する。
そのまま瞼を閉じ、ちゅっとリップ音を立て頬に口付けた。
がちり、と固まった玲士にかなでは微笑む。
結婚してから何年も経っているのに、未だに彼はスキンシップに慣れない。
興奮を収めた夫に、昔から変わらぬ少女のように柔らかな微笑みを向けた。
「カーテンコールです。激写のチャンスですよ」
にこにこしながらカメラを渡せば、ぎこちない動きで前を向いた彼は機械の様に写真を撮り始める。
納まってくれた夫の発作に、また一つ新しい思い出が出来たなぁと暢気に笑った。
こうしてかなでの日記に頁が追加される。
更新内容
|
(06/28)
(04/07)
(04/07)
(04/07)
(03/31)
(03/30)
(03/30)
(03/30)
(03/30)
(03/25)
(03/25)
(03/25)
(03/25)
(03/24)
(03/24)
(03/24)
(03/23)
(03/14)
(03/14)
(03/13)
(03/13)
(03/13)
(03/11)
(03/10)
(03/08)
カテゴリー
|
リンク
|
フリーエリア
|