忍者ブログ
初回の方は必ずTOPの注意事項をご確認ください。 本家はPCサイトで、こちらはSSSのみとなります。
Calendar
<< 2025/06 >>
SMTWTFS
1234 567
891011 121314
15161718 192021
22232425 262728
2930
Recent Entry
Recent Comment
Category
67   68   69   70   71   72   73   74   75   76   77  
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

>>にゃんこ様

こんばんは、にゃんこ様。
召喚士を読んでくださってありがとうございますw
何回も読んでいただけるなんて、書き手としてこれ以上嬉しいことはありません。

長かった冬獅郎君シリーズを漸く一区切り終えて、またルキアは家に帰ってきました。
久しぶりに本編で花太郎以外の魔獣を登場させたのですが、出てきた彼は浦原さんにつまみ出されるし本人的に散々です(笑)
冬獅郎君のファーストインパクトは最悪に違いないでしょうw
更新できるように頑張りますので、また是非遊びにいらして下さいw
Web拍手、ありがとうございました!



>>スイミー様

こんばんは、スイミー様w
コメントに名前を入れてくださってありがとうございます。
また遊びに来てくださり、凄く嬉しいです!

嵐くんとのデート再開ですか。彼は自然体でぺろりと凄い発言しますよね。管理人は彼とのEDは親友告白を残してラブEDは全部見たので頑張り続ける所存です。
ちなみにやはり先輩コンビには未だに手が出てない現状。浮気性な自分が憎いです。
実際のGS3で二人が道場破りをすることはついぞ無かったのですが、私の中の桜井兄弟は心配で柔道部に顔を出したりしています。(笑)
琥一君とどっちにしようか迷ったのですが、やはり琉夏君をぶつけてみましたw
嵐くん、私の中でナチュラルブラックな部分があるんです★
強い相手と対戦するのは勿論、仲良すぎる幼馴染に無言で嫉妬してます。
もちろん、無自覚(←これは重要)
ひっそりとシュールな弟と遣り合って欲しいですw
すると自然と新名の相手は琥一君ですが、彼らの絡め方にはもう暫し頭を悩ませます。
リアルタイムも読んでくださってありがとうございますw
嵐くんは登場させるたびにコメントを頂くことが多くて、嬉しい悲鳴です。
嵐くんと新名君以外の先輩コンビもこれから出していく『予定』ですので、管理人が攻略するまで気長にお待ちください。
また遊びに来てくださると嬉しいです。
Web拍手、ありがとうございました!!



>>朝霞夜月様

こんばんは、朝霞様w
また遊びに来てくださってありがとうございます。
過去篇読破、ありがとうございます。
捏造しまくってる過去ですが、更に増える予定です★
朝霞様のサイトとは違って順不同で読みにくいかと思いますが、そこは笑って許してくださいませw
シリーズとは言え短編連作なので、一話限りの読み切りと考えていただければ幸いです。

WJ、銀魂もちろん読みましたよ。
炸裂気味のネタに、結構笑いましたが最後の落ちに少しジーンと来ました。
親父、マジパないっす★

また是非遊びにいらして下さいw
Web拍手、ありがとうございました!



>>通りすがり様

こんばんは、通りすがり様w
コルダ3SSS読んでくださってありがとうございます。
SSSなので設定も何もなしに好きな部分だけ書きなぐっているので、喧嘩の原因は楽しく想像してくださるとありがたいですw
一応恋人設定で書いているのですが、これがばれたら彼は無事にすまないでしょうし、あえて罰を受けそうですね。
何が原因でもかなでちゃんを泣かせたのには変わりないですし。
許してもらう方法は恋人同士の秘密です(笑)
東金さんのプライドのためにw
これからも突発SSSを増やしていきたいです。

また是非遊びにいらして下さい!
Web拍手、ありがとうございました!

拍手[0回]

PR
黒目がちの大きな瞳が少しだけ潤む。
その姿を見て琥一は歯軋りをして彼女の前で血を流しながらふら付く男を睨み付けた。
薄暗く視界の利かない場所は身動きすらままならない。
小さく呻く琉夏の声に、冬姫の体がびくりと震えた。
恨み辛みを篭めた視線は怨念が宿り、反射的に腕を伸ばして彼女を庇う。
琥一より一回り以上小さな体は、すっぽりと収まる。

「こう、いちくん」

たどたどしい発音で呼ばれた名は、自分のものではないようだった。
護らなければ、と琥一の中の本能が叫ぶ。
父性と庇護欲が掻き立てられ小さな白い手をしっかりと握り、安堵させるよう笑いかけた。
その仕草は、普段の琥一が見たら悶絶しそうなくらい格好よかった。




「・・・てかさ、二人とも大げさだし」

漸く終わった悪夢の時間。
ふるふると震える冬姫を気遣いつつ歩いていた琥一は、その発言の主であるKYな弟をギロリと睨み付けた。

「あぁん?」

威嚇する声が自然と普段よりも低音を這う。
その理由は簡単で、冬姫がこうなったのも自分があんな目にあったのも、全ては能天気極まりない琉夏の所為だからだ。
苛立ちに引きつる琥一の顔を見ても琉夏は取り立てて慌てない。
兄弟として育ったのだから当然かもしれないが、それがさらに琥一の苛立ちを呷った。

子ウサギのように怯える冬姫を見て彼は何も感じないのか。
否、琥一とは遙かかけ離れた感性を持つ琉夏のことだ。
『怯える冬姫も可愛い・・・』などと戯けた考えを抱いたに違いない。
それを肯定するように、未だ震える冬姫を見る琉夏の眼は、桃色のオーラを垂れ流しだ。
不埒な目で見るなと、ぶん殴ってしまいたいほどに。

「誰の所為でこんな目に合ったと思ってる」

唸るような声に、琉夏は飄々と肩を竦める。

「俺?」
「判ってんなら、お前にどうこう言う権利はねぇって気づけ」

冬姫を自分の背後に隠しながら告げれば、心外だとばかりに彼は頬を膨らませた。
綺麗な顔立ちに幼げな仕草。
見るものが見れば垂涎の的かもしれないが、生憎今更琥一の心は動かない。
良くも悪くも見慣れた顔だ。
美醜を考えれば明らかに見るに耐える顔でも、間違っても男に目を奪われる感性は持ち合わせていなかった。

怒りを募らせる琥一を前に、琉夏は唇を窄め訴える。

「でもさ。これ、ただのホラー映画じゃん」

それが重大な問題なんだよ!!

声に出せない分心の中で大きく突っ込んだ琥一は、益々眉を吊り上げる。

冬姫はお化け関係が嫌いだ。
遊園地のお化け屋敷程度なら行こうかと言っても、間違ってもホラー映画を見たいと言い出すタイプではないし、琥一も秘密にしてるが彼女と大体同じ感覚だ。
琉夏には知られていないし、冬姫にも黙っているが、お化けだの妖怪だのスプラッターだの大嫌いだ。
血を見ても平気な性質であるから喧嘩は平気だが、それとこれとは別問題だ。
だが繊細そうな顔をして、全く大雑把な弟に琥一の気持ちが伝わる日はきっと来ないだろう。
隠したいのだからそれでいいはずだけど、時折声を大にして叫びたい。

お前、少しは空気読め、と。

今回は自分以上に怯える冬姫を宥めるので一杯でセーフだったが、これが二人きりだったらと想像したくも無い。
それ以前に映画館に男二人なんて寒い状況はありえないだろうけど。

未だにダメージが大きいらしい冬姫は、普段の気丈な雰囲気から一転し護ってやらねばと強く思わせる。
普段でも良くそう思うのだが、怯えて震える様子は彼女を可憐でひ弱に見せ、着ている清楚な服装から一層同情心が膨らむ。
元々容姿は良いとこのお嬢様風の冬姫だ。
子供の頃は本当にお姫様かもしれないと疑ったほどの美貌の持ち主は、昔憧れた正義のヒーローのヒロインにぴったりだった。
そう、琥一は今ヒーローにならなくてはいけなかった。
悪気全くなしの、悪の権化を前にして。

「でも、俺別の映画も見たい」
「・・・今度はなんだ」
「ゾンビがスリラー踊る感じのB級ホラー。超受ける」
「受けねぇよ!!」

唾を飛ばす勢いでがなり立てるが暖簾に腕押しとばかりに流された。
珍しく映画を見に行きたいと言う琉夏に、何も疑わずついて来た自分が恨めしい。
この場所がホラー専門のマイナー映画館と知ってれば、絶対にそんな愚行を起こさなかったのに。

血管が千切れんばかりに叫ぶ琥一に琉夏はにたり、と唇を持ち上げた。
瞬間警戒警報が脳裏に鳴り響く。
こんな顔をした琉夏は、いいことをしたためしがない。

「コウ、怖いの?」

挑発するような声音。
判りきってるのに反射的に応じそうになった自分を何とか宥める。
ここで乗ったら全てがおしまいだ。

ぺろりと乾いた唇を舐め湿らせる。
眉間の皺が深くなるのを自覚し、額に青筋が浮いてるだろうことも自覚した。
だが右手を握る小さな掌の力が強まるのに、深く瞼を閉じて怒りを納める。
深呼吸を繰り返すと、敗北発言とも取られかねない言葉をそっと舌に乗せた。

「ああ、怖いね。だから俺らはもう帰る」

きょとりと目を見開いた弟に笑いかけると、つながれたままの手を引き踵を返す。
縋りつくように強められたそれに勇気付けられ、さっさと足を速めた。

「ありがとう」

今にも消えそうな声で囁かれ、目を丸くする。
そしてくすぐったさに思わず微笑んだ。

「言ったろ。俺もこえぇんだよ」
「うん。・・・私も、凄く怖かった」

歩調を緩めると隣に並んだ冬姫がおずおずと顔を上げ、ぎこちない笑顔を浮かべた。
儚げな笑みは可哀想だが愛らしく、たまにはプライドを曲げるのも悪くないと思わせた。

結局寂しくなった琉夏は、すぐに二人を追いかけ三人でまた別の映画を観に行くことにしたのだが。
意識せずに繋いだままだった手を不貞腐れた顔で指摘され、火傷したように慌てて琥一が放したのは、携帯でその姿を激写された後だった。

拍手[9回]

「東金さんなんて」

大きな瞳にみるみると薄い膜が張る。
突付けば零れ落ちてしまいそうなそれに、千秋は怯んだ。
卑怯だ、と思う。
普段笑顔の印象が強いかなでだからこそ、今にも涙が零れそうな姿はインパクトがあり罪悪感に胸が痛んだ。

暢気でおっとりとしたかなでが、激しい部分を持っているのは知っていた。
けれど射抜くように自分を見る彼女と、普段ほえほえと笑っている彼女とは姿が重ならず混乱しそうになる。
だが幾度目を瞬いても現実は変わらず、無表情の裏で混乱する。

たかだか女の涙だ。
今まで幾度も見てきたし、泣かせたことがないとは言わない。
けれどここまで動揺したのも、胸が痛くなるのも初めてで、ひっそりと眉を顰める。
そうするとかなでの大きな瞳は潤み、悪循環を辿っていた。

桜色の小さな唇が震えながらゆっくりと持ち上げられる。
ひゅっと息を飲み込む音が痛々しく、千秋はどんどん渋い顔になる。
そんな彼を睨み付けたかなでは重い息を吐き出した。

「東金さんなんて、大嫌いです」

言葉と同時に涙が零れた。
地味子と呼ばれても花がないと蔑んでも、涙一つ零さなかった彼女が泣いた。
胸が締め付けられ、呼吸が難しくなる。
苦しくて切なくてどうすればいいか判断が下せない。
けれど、零された涙以上に。

「───頼むから」

それ以上に。

「嫌いなんて、簡単に言うな」

放たれたその一言が痛いなんて。
自分勝手な自分に、どうにも嫌気が差すけれど。
涙を零す彼女に手を差し伸べずに告げるには厚かましいけれど。
判っていても、敢えて言いたい。

「嫌いなんて、言うな」

涙を零し続けるかなでを前に、壊れたレコーダーのように繰り返す。

そんな千秋を見て、かなではまた一粒涙を零し、千秋は無言でそれを拭った。

拍手[10回]

いつも通りにHR後の部活動、がらりと開けた扉の中にはいつもと違う光景が広がっていた。
鞄を肩から提げた状態で、新品の部室の入り口でぱちぱちと目を瞬かせる。

普段から人気のない部室は、マネージャーと嵐二人きりの聖域だった。
なので冬姫が畳の上で正座しているのは良く判る。
だが判らないのはその状況だ。

「───何、やってるんだ?」

こてりと首を傾げ、判らないなら聞いてしまえと素直に疑問を発すると、その最要因は綺麗な顔を嵐に向けた。

「何って。道場破り?」
「はぁ?」

長い髪を揺らして応えた桜井兄弟の弟は、すぐさま後ろからぱしりと叩かれ首を竦めた。
彼の背後で櫛を持った冬姫は不愉快そうに眉を顰めている。
人当たりはよくとも噂を知っている人間からして、彼にこんな態度が取れる存在は少ないに違いない。

「馬鹿なこと言わないの。柔道は嵐くんにとって大事なんだから」
「冬姫にとっても?」
「私にとっても。この柔道部にどれだけ思いいれあるか知ってるでしょ」

そう言って出来たばかりの柔道部の部室を眺める彼女の視線は何処までも柔らかく優しい。
それが嬉しくて嵐の表情も自然と綻ぶ。
彼女が言う通り柔道部は嵐の聖域であり、二人の努力の成果だ。
嵐一人で成し遂げたものではなく、影に日向にルールも知らなかった柔道を勉強し支えてくれた冬姫の存在があってこそのもの。

自分の直感を信じてスカウトした時の冬姫の様子を今でも覚えている。
突拍子もない嵐の言葉に目を丸くした彼女は、考えさせて欲しいと応えた。
すぐに断られてもおかしくない状況だと誰よりも嵐が知っていたのに、瞳を真っ直ぐに覗きこんだ彼女は大した面識もない自分相手に微笑みかけた。
それまでチラシを配った誰も嵐の目を見なかったのに、その時漸く気がついた。
真剣に取り合ってくれたのは、きっと彼女だけだったと思う。
だから嵐は彼女が良いと思った。他の誰でもなく、彼女が一緒に居てくれたら良いと。
断られてもしつこく付きまとう気満々だったが、冬姫は三日間悩んだ後、『是』と返答をくれた。
高校に入って一月足らず。一番嬉しい出来事だった。

それから二人三脚で進めた部活動。筋トレメインだったが木を相手に投げ技の練習もした。
不足な練習は多いけれど、充足感は常にある。
性別は超えた相棒だと、彼女を心から信じている。

だからこそ、嵐は不思議に思う。
桜井兄弟が冬姫に多大な関心を抱いているのは、同級生の中で知らないものが居ないくらい広まっているが、彼らが積極的に嵐に接触した事はない。
一、二度琥一の方とは一緒に筋トレをしたことはあるが、それも例外中の例外で冬姫が関連していた。
ならば、とここで初めて思い至る。
琉夏がこの場に居るのも、冬姫が関係するのかもしれない。

大人しくしない弟をたしなめる姉の表情で琉夏を宥めた冬姫は、再び彼の背後に回って櫛を動かしている。
よくよく見てみれば、肩を超える髪を一本に結わえている最中らしい。
じっと見詰めすぎたのか、目が合ってしまった。
ゴムでなく紐で髪を結ばれた彼は、綺麗な顔に性質の悪い笑みを浮かべる。

「頼まれたんだ」
「は?」
「冬姫に、不二山の相手して欲しいって。俺、お前と体格が似てるから」

はい出来上がり、と小さく微笑んだ冬姫は、状況に戸惑っている嵐ににこりと笑いかけた。

「受身や筋トレも大事だけど、やっぱり人相手の乱取りもしたいでしょ?今日は琉夏君バイト休みだし」
「冬姫の手料理と交換条件に引き受けた。今夜はカレーとホットケーキだ」
「・・・それって食い合わせどうなんだ?」
「ははは・・・琉夏君、こう見えてお子様舌なんだ」

苦笑して琉夏の頭に手を置いた冬姫は、ねーと琉夏と仲良く頷く。
その姿は、幼馴染というよりも。

「・・・言っとくけど、組み手になったら手加減できないかもしれないぞ」

頭に浮かんだ言葉に、何故か不愉快になった嵐は唇を尖らせた。
そして自分の部室であるのに遠慮して敷居を跨いでいなかったのに気がつくと、スニーカーを脱ぎ畳に上がる。
そんな嵐の様子を見て、琉夏は楽しげに笑った。

「大丈夫。俺、痛いの平気だから。それよりも、手とか足が出たらごめん。俺、専門空手だから」

へらりと笑った彼は、嵐をじっと見詰めた。
こくり、と喉を鳴らして視線を強くする。
今気がついたが、彼の目は欠片も笑っていない。

嵐は予備の胴着を彼に放った。

「怪我してもしらないぞ」
「そっちも」

ふふふと笑った彼は、やはり噂通りの桜井兄弟の片割れだった。
笑顔の裏で爪を研いだ獣が潜んでいる。
油断ならない存在に、嵐はひっそりと笑った。

「マネージャー」
「はい」
「練習メニューの用意頼む」
「はい!」

嵐の声に呼応し立ち上がった冬姫は、さっと用意してある机の方へ走っていった。
残された琉夏は、その背中を見送ると嵐から受け取った胴着を片手に立ち上がる。


その日の練習は男の意地のぶつかり合いになり、冬姫が強制的にストップをかけるまで両者一歩も引かなかった。
満足いく厳しい練習内容に、嵐が次を頼んだのは当然予測できる未来だった。

拍手[11回]

日を暮らす
--お題サイト:afaikさまより--



■ひ  筆跡のせいでなんとなく、ただの紙切れが捨てられない

アップに纏めた髪に解れが無いのを確認し、鏡の前で瞬きを繰り返す。
上品且つ色気を漂わせ、コンセプトは媚びないセクシーさ。
これに拘ったの髑髏ではなく、むしろ彼女の主である骸だったが、選ばれたそれは彼のセンスの良さを繁栄していて彼女に良く似合った。
カクテルドレスではなくイブニングドレスにしたのは、単純に髑髏の好みだ。それに、彼女のボスである彼も華美な装いよりシックな美しさを好む。
スレンダールックのロングドレスは体に纏わりつくようなシフォンシルクを素材にしており、肌触りは勿論見た目も美しく最高の一品だ。
足元は前身ごろが後ろよりも短くなっており、蝶の羽のような繊細なレースが幾重にも重なっている。
背中は大胆に開けられ、滑らかな肌が露出していた。
敢えて選ばれた白いドレスは、マフィアに対する骸なりのブラックジョークらしいが、犬と千種に言わせれば単純に髑髏に一番似合う装いだからそうだ。


「完璧です、クローム。会場の視線は君に釘付けですね」


満足そうに腕を組んだ骸が、髑髏を見て笑顔になった。
それが嬉しくて着飾った髑髏も少し微笑む。
イブニングドレスは着こなすのが難しい大人の女性の衣装だ。フェミニンでガーリッシュなものもあるが、髑髏が着たいのはあくまで優雅で繊細なもの。
可愛さではなく威厳のある美しさを強調したかった。
華奢な体のラインをくっきりと強調するイブニングドレスは少し気恥ずかしいが、その分背筋が伸びる気分だ。


「これでエスコートが彼ではなく、もっと君につりあう男なら良かったのですが」


苦々しく骸は呟くが、髑髏は欠片もそんな不満は抱いていない。
この姿を見て欲しいのも、多少無理して大人びた格好をしたのも、一重に彼のためであったから。

机の上に乗せておいた真珠のネックレスと揃いのイヤリングを丁寧につける。
誂えたようにぴったりとドレスに似合い、鏡の前でにこりと笑った。


「私は、ボスがエスコートしてくれるの、嬉しい」


ぽつりと呟くと、鏡に映った骸は難しい表情を浮かべ、千種は一つため息を落とし、犬は暢気に相槌を打った。
この姿を見た綱吉は、何と言ってくれるだろうか。
叶うなら。
骸が好み、髑髏が愛して止まない、眉を下げた情けなくも見える瞳を細めた優しい笑顔が嬉しいと思う。
手製のカードに書かれた右肩上がりのイタリア語が、少しばかり擽ったかった。



■を  おいしくもないコーヒーを、なぜかおかわりした日のこと

「んー、幸せ」
「うん」


共もつけずに出向いた街中。大学に行く道から僅かにそれた場所に、綱吉お勧めの店はあった。
ごちんまりとしたその店は、細い路地に挟まれるようにひっそりとあり、看板すら出ていない。
だが髑髏の手を引いた綱吉に迷いはなく、少し早足になりながら彼の後についていく。
少しの躊躇いも見せずにドアを開けると、にぱっと子供みたいに笑顔になった。


「こんにちは、おじさん居る?」
「なんじゃい、小僧。また来たんかい」
「来た来た。俺、おじさんのケーキの大ファンだもん」
「・・・珍しいな。連れがおるのか」
「うん。可愛いでしょ?クロームって言うんだ」
「お前さんのこれか?」
「違うよ。クロームはそういう子じゃないから、下ネタはやめてね」


軽快な遣り取りの後、案内もされないのに勝手に机を選んだ彼は、一つ椅子を引くと髑髏を促した。
エスコートに慣れた仕草は出会った頃と違うけど、浮かんだ笑顔は変わらないから微笑み返して席に掛ける。
何食わぬ顔でいそいそと髑髏の前に腰掛けた彼は、何が食べたい?と小首を傾げた。
小動物を髣髴とさせる仕草が可愛くて、くすりと笑う。
彼は髑髏の感情を引き出すのがとても上手い。
それは決して大きなふり幅ではないけど、ぽこりぽこりと起こる温かい感情は柔らかく愛しい。


「でもボス。この店にメニューが無いわ」
「あ、そっか。クローム初めてだもんね。ここの店はね、ケーキを扱う専門店なんだけど適当に食べたいケーキを言えばいいんだ。俺の今日の気分はイチゴタルト。で頼むと、それがあれば出してくれるの」
「なければ」
「店長お勧め」


あははは、と頭を掻いた彼は、本当に甘味大王だ。
並盛に居た頃はそうでもなかったはずだが、イタリアに来てストレスが溜まりすぎたのだろうか。
密かに疑問に思っているが、賢明な髑髏がそれを口にすることはない。
イタリアへ行きは彼にとって良くも悪くも変化を齎したらしい。
少なくとも、並盛に住んでいた綱吉は、一人でこんな店を見つけなかっただろうし、ロシアンルーレットみたいなケーキの選び方はしなかった。


「なら、私はチョコレートケーキ」
「ん、了解。あ、飲み物は」
「何があるの?」


飲み物のくだりで渋く眉を寄せた綱吉は、顔に手をあてないしょ話するときと同じに声を潜めた。


「ここ、コーヒーしか出さないんだ。激マズだけど我慢できる?」
「・・・うん。頑張る」
「おかわり自由だけど、おかわりする人なんかきっといないよ」


くすくす笑う彼の頭に、ごんと拳が落とされた。
いつの間に近寄ってきていたのか、デミタス二つとケーキを乗せた店主が苦い顔で綱吉を睨む。


「おじさん、俺たちまだ注文してない」
「うるさい。黙ってこれを食え」


どん、と勢いよく机に並べられたのは濃厚なチョコレートが美しいケーキ。


「オペラ?」
「正解じゃ。今日のお勧めのサービスじゃよ」
「俺の時には無かったくせに」
「サービスする間もなく食ってるだろうが」


気の置けない遣り取りは、彼らの親しさを現している。
それが面白くて、やはり髑髏は笑った。
学校帰りの寄り道は初めてだった。


■く  くたびれてるのを見破って無理やり労うっていう嫌がらせ

「ボス」


執務室の机で仕事をこなす彼を見て、髑髏はひっそりと眉を寄せる。
積み上げられた書類の数は普段と変わらず、彼の右腕が嘆く姿が眼に浮かぶ。
だからこそ髑髏が召集されたのだろう。
一度名を呼んだくらいでは顔を上げない彼の執務机の前まで近寄ると、頬を両手で挟みこんで無理やりに持ち上げた。
くえっと変な声を上げたけれど気にしない。
手に入れた力に加減はなく、首筋を違えようとも気にしない。

髑髏は今、怒っているのだ。


「ボス」
「・・・やぁ、クローム」


もう一度、今度は目を見詰めて強い声で呼びかければ、へらり、と情けなく眉を下げ目を細めて彼は笑った。
普段であれば好む笑顔も今日は苛立ちに一役買うだけだ。
目元にくっきりと隈を刻み、顔は生気が無い土気色。さらに頬はこけて、ぱっと見ても病人にしか見えない彼は、それでも机に噛り付く。
その様は欲しいゲームが手に入り、三日三晩徹夜した千種と似通ったものがある。
化粧でも誤魔化せないのではないかと危ぶまれる彼には、今夜も夜会の日程が入っていた。


「どうして仕事をしてるの?」
「どうしてって・・・そりゃ、これが俺の仕事だからだよ」
「今日は夜会があるから、仕事は切り上げるように嵐の守護者に言われたはずよ」
「そうだけどさ。でも、これだけ終わらせたいんだ」


困ったように、まるで我侭を言う小さな子供を見る瞳で綱吉は言った。
これは獄寺が髑髏を召集するはずだ。
柳みたいな柔軟性を持つ彼は、自身の考えを曲げることはあっても折ることはほぼない。
きっぱりと拒絶している間は押し切れる場合もあるが、話を流しつつ自分を押し通す場合はそのほとんどが意思を通した。
だから髑髏が呼ばれた。獄寺や、他の守護者に出来ない離れ業を披露するために。


「ボス」
「・・・何」
「その仕事は、嵐の守護者が代理で受け持てるものだと聞いたわ」
「獄寺君め。余計なことを」
「ボス」
「・・・うぅ・・・。だってさ、クローム。獄寺くんだって大量の仕事を抱えてるんだ。それに、俺は今やらなかったことで後悔したくない」
「ボスは自分の右腕を信用してないの?」
「まさか!俺以上に獄寺君を信用してる人間はいないさ」
「ならちゃんと休んで。この仕事は休めても夜会は休めないのよ」
「クローム」
「そんな顔しても駄目。・・・ボスがそのつもりなら、私にも考えがあるわ」
「え?・・・まさか」


髑髏の言葉に、綱吉が嫌そうに顔を顰める。
それに飛び切りの笑顔で応えた髑髏は、桃色の唇をゆっくりと持ち上げた。


「骸様にボスの代わりに言ってもらうわ。大丈夫、幻覚を使えばばれないわ」
「ちょちょちょちょっと、待って!あいつが俺の代わりなんてしたら、どうなると思ってるの」
「さあ?心配しないで、ボス」
「え?」
「骸様は、やる気よ」
「───っ!!!?」


琥珀色を瞳を見開いた彼は、がくり、と肩を項垂れた。


■ら  来客用カップはいつの間にか使われなくなって

「いらっしゃい、クローム」


おずおずと三叉槍を手にしたまま訪れた自分に、玄関のドアを開けた彼は嬉しそうに微笑んだ。
その笑顔は飾り気ない無防備なもので、握っていた三叉槍を命綱とでもいわんばかりに手が白くなるまで握る。
友達の家どころか知り合いの家にも上がりこんだ経験がほとんどない髑髏にとって、沢田家の敷居は高かった。


「●△■◎★△」


戸惑っていると奥からイーピンが顔を出し、綱吉のズボンを握ると髑髏を見上げてにこりと笑う。
そんなイーピンを手馴れた仕草で抱き上げた綱吉は、まるで年の離れた兄弟みたいだった。
抱かれ慣れているのか綱吉の腕の中で器用に体勢を変えると髑髏に向かい手を伸ばす。
ぱちぱちと目を瞬いて見ていれば、小さな掌は髑髏の掌の上に重なるときゅっと握った。


「抱っこして欲しいってさ」
「でも」
「俺はもう一人相手にしなきゃいけない奴がいるからさ。良かったらお願いできる?」
「・・・・・・」


躊躇っていると、牛の着ぐるみを着た騒がしい子供が綱吉の頭の上に振ってきた。
何故か大泣きし鼻水を盛大に撒き散らす子供に、綱吉はため息を一つ吐くとやはり手馴れた様子で頭から彼を引き剥がす。


「ほら髑髏、頼むよ。ランボの鼻水がイーピンにまでついちゃう」
「う、うん」


綱吉の言葉に咄嗟に腕を伸ばすと、小さな子供を抱き止める。
想像したより少しだけ重くてずっと暖かな体温に驚いて目を瞬けば、照れたように笑ったイーピンと目が合った。


「イーピンからさ、髑髏にプレゼントがあるんだよ。ずっと髑髏が遊びに来てくれるの楽しみにしてたんだ」
「■△◎△★!」


大泣きする子供を飴玉一つで宥めた綱吉は、体でドアを押さえると髑髏とイーピンを促した。
片手を伸ばされ三叉槍を掴み取られる。
それは決して素早い動きでも強引な動きでもなかったのに、抵抗一つ出来なかった。
無くなってしまった支えの代わりに、暖かな子供を両手で抱きしめる。

用意されていた自分専用のコップに、嬉しさで頬が熱かった。


■す  すべてのおわかれより、ひとつのであいのために

「骸様の気配が消えた」


自分の胸の中にいつも存在していた暖かな繋がりが感じられず、髑髏は悲しげに眉を下げる。
霧の守護者専用の執務室には、彼女以外の気配は何一つなかった。

ムクロウも犬も千種もいない。
本来なら異分子である彼らだが、ここは居場所と定めていたはずなのに。
置いていかれたと理解した瞬間泣きたくなった。


「骸様」


胸に手を当てて何度も声をかけるが、一切応答は無い。
なくならない内臓に見放されたわけではないと知るが、それでも寂しさは埋められなかった。
三人では少し広く、四人で丁度いいこの部屋は一人きりでは悲しすぎる。

だがこの部屋を出るのはもっと嫌だった。


「・・・ボス」


昨日、遺体として返却された特別な人。
骸はきっと髑髏より話を早く掴んでいたに違いない。
嫌な予感はずっとしていた。最近は外に出るときな臭い話ばかりで、ボンゴレ狩りに合う確率も高かった。
新興勢力ミルフィオーレ。
その中の幹部の一人に目をつけられた髑髏に、一人では絶対に出歩かないようにと眉を顰めて心配性の父兄さながら訴えたのは綱吉の方であったのに。
何があっても守るからと笑っていたのはつい先日だったのに。


「ボス」


指輪の痕が残る根元へ指を滑らす。
嘗ては存在し、肌身離さず身につけていた指輪は彼の命令で破壊された。
もっとも深く判り易かった絆の証。
失った時には気にしなかったのは、それがなくとも自分たちは大丈夫だと信じたからだ。

何故こうなったのか髑髏には判らない。
どうしてボンゴレ狩りが始まったのか、自分たちが狙われなくてはいけないのか、綱吉がいないのかも判らない。

胸に手を当ててもう一度骸に呼びかけるが、やはり返事は無くてじわりと視界が歪んだ。
涙などどれくらいぶりだろう。
客観的に自分を眺めるもう一人の自分に不意に笑いたくなった。


「寂しいよ、ボス」


居てくれるだけで幸せになれる。
そんな彼は消えてしまった。
残ったのは、崩壊寸前に追い篭められた心と、離れ離れになる守護者の存在。


■日を暮らす

自分の前に立つ敵を憎しみを込めて睨み付けた。
何故か執拗に髑髏を追い回す彼は、ミルフィオーレの幹部の一人と名乗っていた。
ならば仇討ちとして妥当な相手に違いない。

三叉槍を手に力を溜める。
霧のボンゴレリングはなくなっても、刺し違えてでもこの男を倒す気でいた。
髑髏にとってミルフィオーレは、破壊の象徴。
愛した日常を壊した相手でしかない。

彼女とてマフィアの一員だ。いつ何が起こっても仕方ないと理解している。
実際自分も誰かにとってはミルフィオーレと同じ存在で、憎まれているだろうと知っている。
だがそれでもマフィアだからこそ赦せない。
血の繋がらない家族は誰よりも大事にすべきものだと、彼女のボスは言っていた。
そして宣言どおりに動いていたし、彼を慕う家族は限りなく多い。

奪われた存在は、自分たちにとってボスであり、家族であり、父である人だった。
誰よりも慕い、彼を中心に生きていた。

大空が見えなくなってから、天候はいつだって定まらない。
嵐は狂う前の静けさに沈み込み、雨は絶えず赤い色で降り注ぐ。
晴は全てを乾かさんと活性し、雷は轟を響かせるばかり。
そして自分たち霧は別たれ意思の疎通も叶わない。
唯一雲だけが何かの目的があるらしく独自に活動していたが、誰とも群れない彼の胸中を知るものは幹部の中にすら居ない。
足並みは揃わず誰が何をしているのかすら捕らえきれないのが現状だ。

綱吉が居るときは、違ったのに。

眉を下げ限りなく金に近くなった薄茶色の髪を揺らし、琥珀色の瞳を濃く染めた彼の情けなくも見える笑顔が懐かしい。
泣きたくなる気持ちを抑え、敵対する人物に三叉槍を向ける。


「私は、あなたたちを絶対に赦さない」


彼を倒しても失われた存在は戻ってこないと知っている。
それでも何もしないで居るなんて無理だった。
人間一人がいなくなっても、世界は滞りなく進む。
それが髑髏にはとても悲しい。

いっそ世界が止まればいいのにと願うのに、それでも時間は過ぎていく。
ああ、今日も。無為な一日は終わりに近づき、きっと日は暮れていく。

拍手[31回]

フリーエリア
Template & Icon by kura07 / Photo by Abundant Shine
Powered by [PR]
/ 忍者ブログ