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愛してる
--お題サイト:afaikさまより--
■あ 朝焼けの裾を引っぱって【エース→アリス←ユリウス】
時間は有限であり無限だ。
狂った時計が支配する国でもそれは同じで、矛盾しているのに破綻しない論理だ。
珍しく夜の次に来た朝の日の出に、エースはひっそりと眉を細める。
テントの布を少しだけ開ければ、僅かな隙間から豊かな光が溢れた。
「・・・ああ。もう、タイムリミットなのか」
ぽつり、と呟きテントの中に視線を戻す。
直射日光こそ当たってないものの、明るくなった室内に眉間に皺を寄せた少女が小さく唸って布団を顔まで持ち上げた。
その声が子犬の鳴き声に似ていて、エースは一つネタが出来たと嘘がない笑顔を浮かべる。
寝入った時に漏らす声が子犬のようだと、ここには居ない根暗な親友に教えたなら、彼はどんな反応をするだろうか。
引越しの前は彼の塔に住んでいたのだからそれくらいは知っているだろうが、きっとじっとりと眉を寄せて嫌な表情をするのだろう。
早くその顔が見たい。今からとても楽しみだった。
東の空が赤く染まる。
まるで、自分の服と同じ色に、エースはひっそりと息を漏らした。
■い 椅子に残った温もりは【ディー→アリス←ダム】
「寂しいね、兄弟」
「うん。寂しいね、兄弟」
温もりの残る椅子に凭れて、ディーとダムは詰まらなそうに呟く。
実際とても詰まらなかった。
門番の仕事は割が合わないので折角自主的に休暇を得て遊びに来たのに、部屋の主は入れ違いで仕事だと出て行ってしまった。
安い賃金なんだから休めば良いと勧めたのに、居候の身だからだめだと首を振った頑固な少女は、この部屋の滞在許可だけ与えてもういない。
寂しくて、詰まらなくて、なんだか悪い子になってしまいそうだ。
「暇だね、兄弟」
「うん、暇だね兄弟」
ハートの城に遊びに行こうか。追いかけっこは楽しいよ。
遊園地に遊びに行こうか。遊具は刺激的で面白いよ。
ひよこウサギを構おうか。渋柿がたくさん手に入ったし。
他愛もない会話をしながら、それでも二人は動かない。
部屋の主は居ないのに、仄かな温もりが酷い引力を持って二人をこの場に縛り付けた。
「何だかとっても寂しいね」
■し 神域でないかと思えるような【ブラッド→アリス←ビバルディ】
夕暮れ時の薔薇園はとても美しい。
全てが赤く染まった光景はビバルディの心を落ち着かせ凪いだ気分にさせてくれる。
取り分け血を別けた弟が手入れする秘密の花園は、ビバルディのお気に入りだった。
「なんじゃ。今日はお前だけか」
「・・・悪いか」
「いいや?ただ、もの足りぬとは思うがな」
口にしながらビバルディは自分の変化に驚いていた。
この場所は二人きりの世界だった。
誰も知らず、誰も立ち入らず、誰にも秘密の、特別な花園。
いつしか弟の案内でこの場所に姿を見せるようになった少女は、いつの間にか日常としてビバルディの心に食い込んでいた。
警戒心の塊のような自分の心にこれほどするりと入り込んできた存在は未だなく、そしてこれほど心許せる存在もいなかった。
それはきっと、隣に並ぶ弟も同じに違いない。
静かに夕日を眺めているが、その横顔は拗ねた子供と重なった。
きっと、またどうしようもなく下らない内容で喧嘩でもしたのだろう。
それならきっと、次は彼が居ない時間帯を狙って少女はこの場所に来てくれる。
弟ではなく、ビバルディに会いに。
それがとても楽しみで、それがとても面白い。
いつだってクールで気だるげな雰囲気を保とうとするブラッドの、余裕がない態度は酷く愉快だった。
「早く、会いにおいで」
弟ではなく、この自分に。
呟きが聞こえたのだろう。
酷く気難しい表情をしたブラッドは、面白くなさそうに鼻を鳴らした。
■て 低気圧が残していったもの【ゴーランド→アリス←ボリス】
遊園地の一角に低気圧が発生したのはつい先ほどのことだ。
低気圧はゴーランドとボリスに直撃すると、おどろおどろしい空気を発して去っていった。
「・・・行っちゃったね」
「ああ。行っちまったな」
姿が見えなくなっても未だ呆然とその場に立ち尽くしていた二人は、怒り狂った少女の背中を思い出しふるりと体を震わせる。
般若のように、と表現するのが的確な恐ろしさだった。
武器も持たない殺しをしたことがない少女が放つには怒りは迫力がありすぎて、結局何一つ反論できぬままに全てが終わった。
「こんな怪我、すぐ治るのにね」
「・・・ああ、本当にな」
少女の怒りは良く判らない。
持っている基準が違うのだから仕方ないのだが、変に現実主義なくせに割り切らないのが少女の特徴だ。
血だらけのボリスはいつも通りだし、彼の言うとおり怪我もすぐに治る。
覚悟があれば殺すのは簡単。
役持ちの自分たちが死ぬのは余程油断しないとないのだし、心配するなと軽口を叩いただけなのに。
「和ませようと思ったんだけどなぁ」
「おっさんの軽口が気に入らなかったんじゃないの?」
「いや、俺が来る前から怒ってただろうがお前に。むしろ巻き込まれたのは俺だろう」
「いーや。おっさんが来てから酷くなった」
どっちが悪いと擦り付け合いながら、二人は同時に歩き出す。
放っておけばネガティブな少女の思考が際限なく下降するのが目に見えていたし、何より泣きそうに顔を歪めた少女を放っておけなかった。
軽口を叩きながら思案する。
少女の心を傷つけず、和解する方法は果たして見つかるだろうか。
■る 流転する万物の中の一片【ナイトメア→アリス←グレイ】
「おや?彼女はどこに行ったんだ?」
珍しく真面目に書類仕事をしていた上司が顔を上げると、きょろきょろと周りを見て首を傾げた。
その表情は無防備に見えグレイはひょいと肩を竦める。
目の前の彼がどこまで自分を作っていて、どこからが本心なのか、読める人間は世界に存在しない。
だが母親を見失った子供のような表情は嘘に思えず、グレイは書類で口元を隠すとそっと苦笑した。
「彼女なら買い物に行きました。町で評判のケーキ屋で新作を入手すると張り切っていましたよ」
「何!!?一人で出掛けたのか!外は危険だ。私も一緒に───」
そうして今まさに書類を放り投げようとした上司の腕を、がっしりと掴む。
貼り付けた笑顔は鉄壁だ。
「確かに安全といい難いですが彼女なら平気です。俺の部下を護衛につけましたし、大丈夫です。何よりあなたが一緒に居れば、休憩なのに休めないでしょう」
「それはどういう意味だ!?」
「そのままの意味です」
血色の悪い顔を赤らめてまで怒りを訴えるナイトメアをさらりと流すと、笑顔を深めた。
ぐっと喉を詰まらせた彼は、渋々もう一度書類に手を伸ばす。
ここ最近では類を見ないほどの集中力だったのに、ついに飽きが来てしまったらしい。
普段の三倍は仕事をこなしたが、決裁待ちの書類はまだ束になって存在する。
これも日頃の行いの所為だと心から思うが、珍しく真剣に書類を処理している様を目にすれば、僅かばかりの仏心も芽生えよう。
「お土産は新作モンブランだそうです」
「え?」
「帰ってくるまでに仕事が済んでいたら、彼女からのご褒美としてプレゼントすると言ってましたよ」
さらり、と情報を与えると、先ほどまでの仏頂面をあっという間に消し去ったナイトメアは、再び書類へ向き直った。
ほくほくとした表情であの『ナイトメア』に仕事をさせる少女を思い浮かべ、グレイは淡い笑みを浮かべる。
上司にとって特別な少女は、自分にとっても同じ意味で特別で。
「俺にはコーヒーゼリーらしいです。楽しみですね」
だからついつい立場は平等だと言外にきっちりと念押ししてしまうのは、恋する男としては仕方ないだろう。
--お題サイト:afaikさまより--
■あ 朝焼けの裾を引っぱって【エース→アリス←ユリウス】
時間は有限であり無限だ。
狂った時計が支配する国でもそれは同じで、矛盾しているのに破綻しない論理だ。
珍しく夜の次に来た朝の日の出に、エースはひっそりと眉を細める。
テントの布を少しだけ開ければ、僅かな隙間から豊かな光が溢れた。
「・・・ああ。もう、タイムリミットなのか」
ぽつり、と呟きテントの中に視線を戻す。
直射日光こそ当たってないものの、明るくなった室内に眉間に皺を寄せた少女が小さく唸って布団を顔まで持ち上げた。
その声が子犬の鳴き声に似ていて、エースは一つネタが出来たと嘘がない笑顔を浮かべる。
寝入った時に漏らす声が子犬のようだと、ここには居ない根暗な親友に教えたなら、彼はどんな反応をするだろうか。
引越しの前は彼の塔に住んでいたのだからそれくらいは知っているだろうが、きっとじっとりと眉を寄せて嫌な表情をするのだろう。
早くその顔が見たい。今からとても楽しみだった。
東の空が赤く染まる。
まるで、自分の服と同じ色に、エースはひっそりと息を漏らした。
■い 椅子に残った温もりは【ディー→アリス←ダム】
「寂しいね、兄弟」
「うん。寂しいね、兄弟」
温もりの残る椅子に凭れて、ディーとダムは詰まらなそうに呟く。
実際とても詰まらなかった。
門番の仕事は割が合わないので折角自主的に休暇を得て遊びに来たのに、部屋の主は入れ違いで仕事だと出て行ってしまった。
安い賃金なんだから休めば良いと勧めたのに、居候の身だからだめだと首を振った頑固な少女は、この部屋の滞在許可だけ与えてもういない。
寂しくて、詰まらなくて、なんだか悪い子になってしまいそうだ。
「暇だね、兄弟」
「うん、暇だね兄弟」
ハートの城に遊びに行こうか。追いかけっこは楽しいよ。
遊園地に遊びに行こうか。遊具は刺激的で面白いよ。
ひよこウサギを構おうか。渋柿がたくさん手に入ったし。
他愛もない会話をしながら、それでも二人は動かない。
部屋の主は居ないのに、仄かな温もりが酷い引力を持って二人をこの場に縛り付けた。
「何だかとっても寂しいね」
■し 神域でないかと思えるような【ブラッド→アリス←ビバルディ】
夕暮れ時の薔薇園はとても美しい。
全てが赤く染まった光景はビバルディの心を落ち着かせ凪いだ気分にさせてくれる。
取り分け血を別けた弟が手入れする秘密の花園は、ビバルディのお気に入りだった。
「なんじゃ。今日はお前だけか」
「・・・悪いか」
「いいや?ただ、もの足りぬとは思うがな」
口にしながらビバルディは自分の変化に驚いていた。
この場所は二人きりの世界だった。
誰も知らず、誰も立ち入らず、誰にも秘密の、特別な花園。
いつしか弟の案内でこの場所に姿を見せるようになった少女は、いつの間にか日常としてビバルディの心に食い込んでいた。
警戒心の塊のような自分の心にこれほどするりと入り込んできた存在は未だなく、そしてこれほど心許せる存在もいなかった。
それはきっと、隣に並ぶ弟も同じに違いない。
静かに夕日を眺めているが、その横顔は拗ねた子供と重なった。
きっと、またどうしようもなく下らない内容で喧嘩でもしたのだろう。
それならきっと、次は彼が居ない時間帯を狙って少女はこの場所に来てくれる。
弟ではなく、ビバルディに会いに。
それがとても楽しみで、それがとても面白い。
いつだってクールで気だるげな雰囲気を保とうとするブラッドの、余裕がない態度は酷く愉快だった。
「早く、会いにおいで」
弟ではなく、この自分に。
呟きが聞こえたのだろう。
酷く気難しい表情をしたブラッドは、面白くなさそうに鼻を鳴らした。
■て 低気圧が残していったもの【ゴーランド→アリス←ボリス】
遊園地の一角に低気圧が発生したのはつい先ほどのことだ。
低気圧はゴーランドとボリスに直撃すると、おどろおどろしい空気を発して去っていった。
「・・・行っちゃったね」
「ああ。行っちまったな」
姿が見えなくなっても未だ呆然とその場に立ち尽くしていた二人は、怒り狂った少女の背中を思い出しふるりと体を震わせる。
般若のように、と表現するのが的確な恐ろしさだった。
武器も持たない殺しをしたことがない少女が放つには怒りは迫力がありすぎて、結局何一つ反論できぬままに全てが終わった。
「こんな怪我、すぐ治るのにね」
「・・・ああ、本当にな」
少女の怒りは良く判らない。
持っている基準が違うのだから仕方ないのだが、変に現実主義なくせに割り切らないのが少女の特徴だ。
血だらけのボリスはいつも通りだし、彼の言うとおり怪我もすぐに治る。
覚悟があれば殺すのは簡単。
役持ちの自分たちが死ぬのは余程油断しないとないのだし、心配するなと軽口を叩いただけなのに。
「和ませようと思ったんだけどなぁ」
「おっさんの軽口が気に入らなかったんじゃないの?」
「いや、俺が来る前から怒ってただろうがお前に。むしろ巻き込まれたのは俺だろう」
「いーや。おっさんが来てから酷くなった」
どっちが悪いと擦り付け合いながら、二人は同時に歩き出す。
放っておけばネガティブな少女の思考が際限なく下降するのが目に見えていたし、何より泣きそうに顔を歪めた少女を放っておけなかった。
軽口を叩きながら思案する。
少女の心を傷つけず、和解する方法は果たして見つかるだろうか。
■る 流転する万物の中の一片【ナイトメア→アリス←グレイ】
「おや?彼女はどこに行ったんだ?」
珍しく真面目に書類仕事をしていた上司が顔を上げると、きょろきょろと周りを見て首を傾げた。
その表情は無防備に見えグレイはひょいと肩を竦める。
目の前の彼がどこまで自分を作っていて、どこからが本心なのか、読める人間は世界に存在しない。
だが母親を見失った子供のような表情は嘘に思えず、グレイは書類で口元を隠すとそっと苦笑した。
「彼女なら買い物に行きました。町で評判のケーキ屋で新作を入手すると張り切っていましたよ」
「何!!?一人で出掛けたのか!外は危険だ。私も一緒に───」
そうして今まさに書類を放り投げようとした上司の腕を、がっしりと掴む。
貼り付けた笑顔は鉄壁だ。
「確かに安全といい難いですが彼女なら平気です。俺の部下を護衛につけましたし、大丈夫です。何よりあなたが一緒に居れば、休憩なのに休めないでしょう」
「それはどういう意味だ!?」
「そのままの意味です」
血色の悪い顔を赤らめてまで怒りを訴えるナイトメアをさらりと流すと、笑顔を深めた。
ぐっと喉を詰まらせた彼は、渋々もう一度書類に手を伸ばす。
ここ最近では類を見ないほどの集中力だったのに、ついに飽きが来てしまったらしい。
普段の三倍は仕事をこなしたが、決裁待ちの書類はまだ束になって存在する。
これも日頃の行いの所為だと心から思うが、珍しく真剣に書類を処理している様を目にすれば、僅かばかりの仏心も芽生えよう。
「お土産は新作モンブランだそうです」
「え?」
「帰ってくるまでに仕事が済んでいたら、彼女からのご褒美としてプレゼントすると言ってましたよ」
さらり、と情報を与えると、先ほどまでの仏頂面をあっという間に消し去ったナイトメアは、再び書類へ向き直った。
ほくほくとした表情であの『ナイトメア』に仕事をさせる少女を思い浮かべ、グレイは淡い笑みを浮かべる。
上司にとって特別な少女は、自分にとっても同じ意味で特別で。
「俺にはコーヒーゼリーらしいです。楽しみですね」
だからついつい立場は平等だと言外にきっちりと念押ししてしまうのは、恋する男としては仕方ないだろう。
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更新内容
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