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いろは順お題
--お題サイト:afaikさまより--
どうして自分は死んでいないのだろう。
鈍い色をした厚く重い雲から降ってくる雫を瞼も閉じずに受けながら『それ』は自問する。
自分の体より一回りほど大きな平たい岩の上で、寒さに身を震わせる。
防寒対策として体を丸めるが、濡れた毛並みでは僅かな暖も取れなかった。
風が強くなり虚弱化した『それ』を容赦なく嬲る。
寒いと感じるより、最早風の襲撃は痛かった。
雨脚はどんどんと強くなる。
小さかった雨粒は成長を遂げ、今では音を立てて『それ』にぶち当たった。
だが啼く体力も、助けを求める相手もいない『それ』は、帰ってこないと判っている相手を待つためにただ小さくなる。
『それ』にとって何年も何年も繰り返した一日が、今日も通り過ぎるだけだった。
『それ』は物心ついたときにはすでに一人で居た。
否、正確に言えば一人ではない。
母親も彼女の主も、そして兄妹もきちんと存在した。
だが、その中で一人だった。
『それ』の母親は強大な力を持ち、『それ』の兄妹も母親に準じる力を持っていた。
見た目も艶やかで美しく、ただ派手なだけと称される『それ』とは見た目も中身も存在が違った。
確かに同じ血が流れていても、『それ』は名すら与えられず群れの中で独りだった。
『それ』の力は血統を誇る母親には汚点で、『それ』の存在は力を望む彼女の主からは不要だと断じられた。
『それ』がこの場所に置いていかれた日も、今日と同じで雨が降っていた。
雨風を避ける天上も壁もないこの場所で、きちんと座ったとき、『それ』は生まれて初めて母親とその主に誉められた。
”待て”と命令され、『それ』は言葉に従った。
母親と兄妹と、そして彼女達の主が去る姿をずっと独りで見送った。
置いてかれたのは、捨てられたのはわかっていた。
わかった上で『それ』は満足していた。
生まれて初めて誉められて、生まれて初めて笑いかけてもらえた。
『それ』にとって、これ以上の喜びはなく幸せはなかった。
だから『それ』は待ち続ける事にした。
いつか、もしかして母親達がこの場を通る時、自分がここに居ればまた誉めてもらえるかもしれないから、と。
涙を零すように雨を降らす雲をじっと見詰める。
別れたあの日からずっとこの場所に居るため、体力は著しく低下していた。
大気から必要な養分は摂取できるが、肉体を維持するだけで精一杯で、骨と皮だけになった体は毛艶も悪くみすぼらしい。
以前はこの道を通る人間が声をかけてくれていたが、今ではそれもなくなった。
誰からも必要とされない。
生きる理由を見つけられない。
それなのに、どうして───死ぬのは出来ないのだろう。
空の色が一層黒く染まっていく。
鈍色だった雲は闇色へと移行し始めた。
意識は朦朧として体の感覚は失われていく。
どうして自分は生まれたのだろう。
どうして自分は存在するのだろう。
どうして自分は望まれないのだろう。
どうして自分は拒絶されるのだろう。
どうして、どうしてどうして──────。
考えは纏まらず、意思を持った瞬間からの疑問はやはり解決できない。
「ぅ・・・」
声帯を震わせ声を出してみる。
雨音にすらかき消される音は、誰に届くわけでもない。
知っているのに声を出したのは、まだ残る生存本能故なのだろうか。
体から力が抜け、瞼を持ち上げる力もなくなった。
掠れた視界の奥で、自分に伸ばされた手があったなど。
そんなの夢にしか過ぎないだろう。
--お題サイト:afaikさまより--
どうして自分は死んでいないのだろう。
鈍い色をした厚く重い雲から降ってくる雫を瞼も閉じずに受けながら『それ』は自問する。
自分の体より一回りほど大きな平たい岩の上で、寒さに身を震わせる。
防寒対策として体を丸めるが、濡れた毛並みでは僅かな暖も取れなかった。
風が強くなり虚弱化した『それ』を容赦なく嬲る。
寒いと感じるより、最早風の襲撃は痛かった。
雨脚はどんどんと強くなる。
小さかった雨粒は成長を遂げ、今では音を立てて『それ』にぶち当たった。
だが啼く体力も、助けを求める相手もいない『それ』は、帰ってこないと判っている相手を待つためにただ小さくなる。
『それ』にとって何年も何年も繰り返した一日が、今日も通り過ぎるだけだった。
『それ』は物心ついたときにはすでに一人で居た。
否、正確に言えば一人ではない。
母親も彼女の主も、そして兄妹もきちんと存在した。
だが、その中で一人だった。
『それ』の母親は強大な力を持ち、『それ』の兄妹も母親に準じる力を持っていた。
見た目も艶やかで美しく、ただ派手なだけと称される『それ』とは見た目も中身も存在が違った。
確かに同じ血が流れていても、『それ』は名すら与えられず群れの中で独りだった。
『それ』の力は血統を誇る母親には汚点で、『それ』の存在は力を望む彼女の主からは不要だと断じられた。
『それ』がこの場所に置いていかれた日も、今日と同じで雨が降っていた。
雨風を避ける天上も壁もないこの場所で、きちんと座ったとき、『それ』は生まれて初めて母親とその主に誉められた。
”待て”と命令され、『それ』は言葉に従った。
母親と兄妹と、そして彼女達の主が去る姿をずっと独りで見送った。
置いてかれたのは、捨てられたのはわかっていた。
わかった上で『それ』は満足していた。
生まれて初めて誉められて、生まれて初めて笑いかけてもらえた。
『それ』にとって、これ以上の喜びはなく幸せはなかった。
だから『それ』は待ち続ける事にした。
いつか、もしかして母親達がこの場を通る時、自分がここに居ればまた誉めてもらえるかもしれないから、と。
涙を零すように雨を降らす雲をじっと見詰める。
別れたあの日からずっとこの場所に居るため、体力は著しく低下していた。
大気から必要な養分は摂取できるが、肉体を維持するだけで精一杯で、骨と皮だけになった体は毛艶も悪くみすぼらしい。
以前はこの道を通る人間が声をかけてくれていたが、今ではそれもなくなった。
誰からも必要とされない。
生きる理由を見つけられない。
それなのに、どうして───死ぬのは出来ないのだろう。
空の色が一層黒く染まっていく。
鈍色だった雲は闇色へと移行し始めた。
意識は朦朧として体の感覚は失われていく。
どうして自分は生まれたのだろう。
どうして自分は存在するのだろう。
どうして自分は望まれないのだろう。
どうして自分は拒絶されるのだろう。
どうして、どうしてどうして──────。
考えは纏まらず、意思を持った瞬間からの疑問はやはり解決できない。
「ぅ・・・」
声帯を震わせ声を出してみる。
雨音にすらかき消される音は、誰に届くわけでもない。
知っているのに声を出したのは、まだ残る生存本能故なのだろうか。
体から力が抜け、瞼を持ち上げる力もなくなった。
掠れた視界の奥で、自分に伸ばされた手があったなど。
そんなの夢にしか過ぎないだろう。
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