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>>朝霞夜月様

こんばんは、朝霞様。
また遊びに来てくださってありがとうございますw

過去篇の最初から読み直しですか。
お手間おかけいたします(汗)
気がつけば短編ばかりを連ねたGS3シリーズ、結構な数になっているので読み直しは大変かと思いますが、読み直していただけるなんて光栄の至りです。
ありがとうございますw
これからもマイペースに頑張りますのでまた是非遊びに来てやってくださいませw
Web拍手、ありがとうございました!

拍手[0回]

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琥一は心底困っていた。
普段はきりりと上げられている眉は情けなく下がり、年にしては大柄な体も小さくなっている。
素足で草の上に座っているので肌がちくちくと痒かった。
助けを求めるように視線を巡らせれば、笑いを堪えている弟と目が合う。
後で絶対に殴ってやると拳を固めると、すぐさま叱責が飛んできた。

「もう、コウくん聞いてる!?」
「───聞いてるよ」

むしろ聞きすぎて頭が痛い。
可愛い顔を怒りで赤くした冬姫は、見ていて微笑ましくなるくらい可愛らしい。
肩を僅かに越す髪がさらさら揺れて、頬は淡い桜色。
黒目がちの瞳は僅かに潤み、琥一が知る学校のクラスメイトとは比べ物にならない。
琉夏曰く『お姫様』みたいなレースのワンピースも良く似合っているが、その剣幕には辟易していた。


そもそもことの始まりは、琥一が怪我の手当てをせぬまま約束の場所に遊びに行ったのが発端である。
ガキ大将の本分を発揮し、琉夏を苛めていた奴ら相手に暴れたのは良かったが、大した怪我じゃないと血が滴るそれを舐めたまま放置したのが拙かった。
あの時琉夏が云うとおりに手当てをしていれば、現在これほど面倒な状況にならなかっただろうと思うと後悔してならない。

今日は習い事もなかったのか先に来ていて笑顔で二人を迎えた冬姫は、琥一の腕から流れる血を見た瞬間固まった。
よくよく考えれば彼女との遊びはいつもかくれんぼで、血を流すような激しいものはしたことがない。
ならば見た目通り大人しく卒倒してくれれば良かったのに。
実際そうなれば慌てるどころじゃ済まないだろうに、琥一はそこまで頭が回らない。

実のところ、不機嫌そうな顔のまま彼は混乱していた。
琥一が怪我をするのは日常茶飯事だし、それに一々目くじらを立てる相手は居ない。
クラスメイトは怯えて近寄ってこないし、親になれば慣れたもので救急箱を差し出される程度。
ここまで心配され、怒られるなんて久しぶりだった。

しかも相手は他の誰かではなく冬姫。
学校のクラスメイトや両親ともちょっと違う位置に居る、琉夏と琥一の特別な女の子だ。
その特別の意味を突き詰める気はなかったけれど、他の誰とも違う存在だとは認めている。
だからこそ、琥一は不機嫌そうな顔になる。
そうしないとどうしようもなく照れくさくて、変になった顔を二人に見られてしまいそうだった。

「コウくん」
「・・・おう」
「手、出して」

説教を続けていたはずの冬姫は、スイッチが切れたように大人しくなる。
それに些か慌てながら言われたとおりに手を出した。
すると琥一と同じ年であるはずなのに、小さくて白く柔らかな手がそっと掌を包み込み、胸がどくどくと脈打ち始める。

全く違う生き物みたいだ。

クラスメイトの女には感じたことがない胸の高鳴り。
急に頭がくらくらし始めて、そんなに今日は暑かっただろうかと首を捻る。
借りてきた猫のようにされるがままになっていた琥一の手の甲には、ピンクの熊がプリントされた愛らしい絆創膏がぺたりと張られた。

「!!?」

自分には似合わないそれに、琥一は息を呑む。
冬姫の後ろでついに限界を超えたらしい琉夏が、口元を押さえて蹲った。
この野郎。
額に一つ青筋が浮かぶ。
似合わないのなんて言われるまでもなく判っているが、笑われるのは腹立たしい。
取ってやろうと腕を伸ばせば、白い掌に阻止された。

何のつもりか問い詰めようと冬姫を見れば、少女はまるで宝物を握り締めるように琥一の手を両手で握り胸の前に持っていく。

「早くコウくんの傷が治りますように」

祈るような囁きは、琥一の胸の奥深く、どこか大事な場所を抉った。
琉夏の『お姫様』発言を常々馬鹿にしてきたが、少し撤回してもいいかもしれない。
剥がすタイミングを失った手の甲の絆創膏を眺め、琥一は思った。

背後では琉夏が怪我をしていないのに冬姫に絆創膏を求め、羨ましそうに琥一を眺める。
怪我してないから駄目だと断られた彼に、絆創膏を奪われないよう奮闘するのは仕方ないことだろう。

ちなみに後日冬姫に絆創膏をしてもらうために怪我をした琉夏は、その目論見があっさりと露見し冬姫に一週間口を聞いてもらえなかったのでその作戦は二度と繰り返さなかった。

拍手[6回]

ぶわっとありえないくらいに膨れ上がった尻尾が、無言で不満を訴える。
右、左、真ん中。びったん、びったん、ばちっ。
床を勢い良く叩く尻尾は、言葉以上に彼の不満を訴えた。
ぶわぶわと逆立つ毛並み。
シャーだかフーだが威嚇音を鳴らす喉。
断言しよう。紛れもなく彼は怒っている。
曲線を描いた体は怒りで震え、戦闘モードになった爪は絨毯を掻き毟る。
毛足の長い赤い絨毯の一部が削れていくのをぼんやりとルキアは眺めた。

(あれはきっと、後で浦原にお仕置きされるな)

全力で不満と怒りを伝える一護に、ルキアは遠い目をした。
窓の外からは蝉の鳴き声。
仕事帰りのルキアは、不機嫌な契約魔獣の背をそっと撫でた。




そもそも何故一護がここまで拗ねているかというと、思いつく理由は一つしかない。
一見すると眉を顰め不機嫌そうに見えるが、その実所在無さげに室内に立っている存在。
ここら辺では見かけぬ衣服を纏った少年姿の半魔獣、日番谷冬獅郎。
彼の姿を見た瞬間、ルキアの足に擦り寄り頭を押し付け甘えていた一護は、毛を逆立てて部屋の隅へと走り去った。
それから幾度声を掛けてもずっと怒りを発散させるだけだ。

己の契約魔獣の不躾さにルキアは眉を下げて客人に頭を下げる。

「申し訳ありません、日番谷殿」
「いや───急に押しかけた俺も悪い。その、お前が迷惑なら、俺は別に浮竹のとこでも」
「いいえ、迷惑などとんでもありません!私の方からお願いしたのです。部屋は幾らでもございますし、どうぞご自宅と思い寛いでいただきたく」
「と言ってもな。ここは広すぎる」
「離れを用意させましょうか?」
「その感覚がおかしいって言ってるんだ。客室の一つ借りれれば十分ありがたい」
「ならば」
「だが、俺はどうも歓迎されていないように見える」

軽く息を吐き出した冬獅郎を見て、益々ルキアは眉を下げる。
契約主であるルキアから見ても一護の態度は歓迎ムードとはいえない。

「一護。いい加減にしないか」
「・・・ぶに」
「客人の前だぞ」
「シャーっ」
「シャーっ、じゃない。一護!」

ルキアが叱ったのに益々腹を立てたのか、一護の尻尾は更に膨らみ床を叩く音が激しくなる。
右、左、真ん中。びたん!びたん!ばちん!

怒れる一護は放置し、席に座ってもらっていた日番谷の前に腰掛ける。
本来なら席を離れること自体がマナー違反だが、そこは多めに見てもらっているのに一護は気づいているのだろうか。
否。気づいていないに違いない。

部屋の扉が軽快にノックされ、返事をするとすぐに執事服姿の浦原がお茶とお菓子を用意して入ってきた。
その際一護へと視線を巡らし、その瞳が不遜に光ったのをルキアは見逃さなかった。
やはりあれは後で説教だろう。

「申し訳ございません、お客様。部屋の準備は間もなく整います。───不躾な獣が一匹お目汚ししますが、どうぞ広い心でお許しください」
「・・・ああ」
「すぐに追い払いますから」
「あ、おい」

浦原の言葉に呆然としていた冬獅郎が我に返りとめようとする間もなく、つかつかつかと一護に寄った彼は首元を引っつかむと窓から遠慮なく投げ捨てた。
ちなみにルキアの部屋は三階だ。
思わず非難の声を上げ窓へ駆け寄ろうとすると、瞬間移動でもしたのかという速さで戻ってきた浦原に止められた。
睨み上げた顔は、絶対零度の微笑みで形作られている。
今の彼はルキアの執事ではなく、家庭教師もしくはマナー講師であるらしい。

「猫は身の丈より高い場所から落ちても上手に着地する生き物ですよ、お嬢様。それより誰が客を前に席を立って宜しいとお教えしましたか」
「だが、一護が」
「優しいのはあなたの美点かもしれませんが、拗ねて意地を張っている獣にその必要はありません。躾は重要だと飼う前にきちんと教授したはずです」
「・・・浦原」
「お客様の相手をするのはホステスとして当然のこと。その間主の客に対し失礼な態度をとった黒崎さんにはしっかりと反省してもらいましょう」

鮮やかな笑顔は嘘臭い。
だが言っていることは一々正論だったので、ルキアは大人しく彼に従った。
よくよく考えれば魔獣である一護なのだ。この程度の高さでは怪我一つ負うまい。

未だに戸惑いを浮かべたままの冬獅郎を前に、失礼を詫びると世間話から当たり触りない会話を始める。
少なくとも一月は滞在される客人なのだ。一護にも慣れてもらはなくてはいけなかった。


会話からぎこちなさが取れる頃、窓を引っかくような音が聞こえた気がしたが、笑顔の浦原が窓辺の様子を確認しに言った後からはその音もなくなった。
教育係は笑顔の仮面を被り、今日もスパルタだった。

拍手[11回]

「はい、琉夏君」

笑顔で手渡されたそれに、琉夏はへにゃりと表情を崩す。
今にも泣きそうに歪められた目元に、嬉しそうに緩んだ唇。
泣きたいのか笑いたいのか、きっと本人にも判らないに違いないと冬姫は思う。
彼は器用なくせに、とんでもなく不器用な子供であったから。



六月に開かれる運動会は、地味に暑い中体力を使う。
じりじりと迫る太陽に、湿気を含んだ温い風。
それでも全力で青春を謳歌する学生達は些細な点の遣り取りに熱くなる人物が大半で、その分昼休憩に補給は必須だ。

高校生にもなると親が同伴なんてなく、弁当持参で仲良しグループで固まって食事を摂るのが恒例になる。
冬姫もご多分に漏れず親友二人から昼食に誘われていたが、先に約束を交わした相手が居たので断った。
一年生の時に騙まし討ちのような形でリレー出場した彼らは、今年は正当な報酬を先に寄越さないと出場しないと冬姫を脅し、多少ながらも罪悪感が痛む部分を持ちえた冬姫は彼らの言い分を飲んだ。
故に今朝は五時起きで弁当を作る嵌めになったが、元々料理は苦手でも嫌いでもない彼女にとってそれは苦労でもなんでもない。
むしろ多彩な料理を作る内に段々と楽しくなり、気がつけばタコさんウィンナーやウサギ林檎なども弁当に取り入れられていた。
キャラ弁にまで到らなかったのは準備不足と、兄弟の一方が激しく嫌がるだろうと想像したからだが、来年は取り掛かるかもしれない。

何はともあれ、六人分(三人分だと足らないかもしれないので)の弁当を拵えた冬姫は、待ち合わせの場所で腹を空かせる幼馴染の待つ場所にまで行ったのだが、その場には一人しか来てなかった。
理由はじゃんけんで負けた琥一が飲み物を自販機まで買いに行っているからだそうだが、ちゃんとお茶を持っていくと言っておいた筈だと考えれば、目の前のにこにこと機嫌良さそうにしている弟が兄を追い払い先に弁当に手をつけたかったからだろうと容易に察せれた。
そこまで弁当が楽しみなのかと思うと少しばかりくすぐったい。
眉を下げて笑った冬姫は、琉夏専用のイルカが描かれたハンカチで包んである弁当箱をバスケットから取り出すと差し出した。
そして冒頭へと到る。

「これ、おにぎりだ」
「そう。琉夏君好きでしょ?沢山作ってきたから一杯食べてね。余ったら家に持って帰ってもらうから」
「うん。俺、残しても全部一人で食べる」

嬉しそうな顔で三角おにぎりを握り締めた琉夏は、頂きますと一言呟くとかぷりと噛り付く。
暫し咀嚼し、ぱっと顔を明るくした彼はきらきらした眼差しを向けてきた。

「たらこ?」
「うん。他にも昆布、梅、オカカ、鮭、梅昆布、変り種だとウィンナーもあるよ」
「凄い、一杯だ。全部、俺の?」
「そう。全部琉夏君の。二段目はおかずになってるけど、足りなかったらおかわりあるから」

言いながらバスケットを指差すと、頷いた彼は猛烈な勢いで食いつき始めた。
箸も使わずに唐揚を手に取る彼を注意していると、漸く琥一が戻ってきて、呆れたように琉夏の頭を叩く。

「箸くらい使え」
「いいじゃん。手は洗ったんだから」
「んだ?今日の弁当はおにぎりか?」
「あれは琉夏君スペシャル」
「琉夏スペシャル?」
「そう。琉夏君はおにぎりが大好きだから。───琥一君のはこっち」

冬姫の言葉に複雑そうな顔をした彼に、ひょいと狼が描かれたハンカチで結んである弁当箱を差し出す。
中身はサンドイッチとハンバーガーだ。
ハンバーグは手作りの牛肉100%だし、サンドイッチの中に入っているヒレカツとタレも全て手作り。
一応シーチキンや卵も入れてあるが、彼は肉から手をつけるだろう。
それも見越しておかわりは、ハンバーガーとヒレカツサンドにしてある。

「おかずはそこに詰めてあるの以外は共用だから早い者勝ちね。余ったら持って帰って。ちゃんと保冷剤もあるから」
「サンキュー」

礼を言うのとほぼ同じタイミングで食べ始めた琥一に苦笑する。
買って来てくれた紅茶を礼を言って受け取ると、冬姫もお弁当の蓋を開けた。
ちなみに冬姫の弁当はおにぎりとサンドイッチが半々に入っている。
微妙な食べ合わせと判っていたが、何となくこうしなければいけない気がした。

次から次へと夢中に平らげていく琉夏に、満足気にゆったりとけれど相当なスピードで咀嚼する琥一。
それを横目で眺めていると、不意に琉夏と目が合った。

照れくさそうに目元を染めて頬を赤くした彼は、ありがと、とどこかぎこちなく呟く。
その仕草に、冬姫は思わず破顔した。


今年の運動会も、思い出にするには十分なものになりそうだった。


拍手[10回]

「おにいちゃん」

そう呼べば彼は嬉しげに微笑んで、自分とそう大して変わらない小さな手を精一杯伸ばしてユイナの頭を撫でてくれた。
いつでもどんなときでも、ユイナが望めば望むだけ暖かな掌をくれた大好きな人。
ユイナの世界は彼が基本で、彼が中心になって回っていた。

誰にも愛されず必要とされないユイナをただ一人特別だと、大事なんだと繰り返してくれる人。
ユイナは世界で一番彼が好きで、彼は世界で一番ユイナを愛してくれる人。

拍手[0回]

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