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シュートを放つ瞬間、脳裏を掠める人物に豪炎寺は唇を噛み締めた。
試合に集中出来ていない。
その理由も嫌になるほど理解しながら、無理やりに足を動かしてボールを蹴る。
渾身の力を篭めて放ったシュートは、ゴールポストに当たって彼方へと飛んでいった。
「外したぁ!?豪炎寺がファイアトルネードを外しました!!」
実況中継の声が響き不甲斐無さに瞳が揺れる。
折角鬼道がゲームを読み取りいいリズムを作り出してくれたのに、自分は一体何をしているのか。
以前弟の鬼道相手に揺れていた円堂に向かって『全力でプレイしろ』と言ったのは豪炎寺本人なのに。
「ご、豪炎寺が」
「ファイアトルネードを外すなんて」
仲間たちにも静かに動揺が広がっていく。
気持ちが波立つ彼らの空気を打ち破るように、手を打ち鳴らす音が聞こえた。
「焦るな!たった一本!一本外しただけだ!時間はまだある!」
円堂の声にはっと我に返った仲間たちが、慌ててそうだなと頷いた。
無理やり動揺を押さえ込もうとする姿に俯きかけるとすかさず円堂の叱咤が飛んだ。
「背筋を伸ばせ豪炎寺!雷門のエースストライカーはお前だろ!!」
言葉に篭められた想いの深さに、ごくりと喉を鳴らす。
そうだ。自分は雷門のエースストライカー。
点を取るのが自分の役目で、信頼してくれる仲間に応える義務なのに。
再び鬼道がボールをカットし豪炎寺と風丸へとパスが回った。
今度こそ、と意気込みシュート体勢に入る。
だが。
「・・・・・・っ」
病室で眠る妹の姿が脳裏に浮かび、体が不自然に強張った。
この点を入れれば、夕香は───。
『炎の風見鶏!!』
風丸と打ったシュートが炎を纏い、羽を生やして飛んでいく。
しかし迷いを浮かべながらのシュートは今度はゴールポストにすら掠めずに外れた。
着地の態勢すら整えずに無防備なままで地面に落ち、したたかに体を打ち付ける。
一瞬呼吸が止まり、ずくずくとした痛みが脳髄まで響いた。
「豪炎寺!!」
風丸が駆け寄ってくる足音がする。
芝生が擦れる音を耳にしながら、悔しさに臍をかんだ。
───この試合、きっと自分は全力で戦えない。
仲間の信頼を裏切ってでも、守りたい相手が豪炎寺には居た。
病室で眠る幼い妹は今回のこととは何も関係ないのに、傷つけられるのは見過ごせない。
これでは宇宙人に消極的な加担をしているようなものだ。
今度こそ決定的に走る動揺に、チーム内がざわめいた。
ホイッスルにより前半終了が伝えられ、無念の想いを抱いたままベンチへと戻る。
そこで鬼道に彼らには攻撃パターンがあると教えられたが、彼を囲う仲間の下へ足を踏み入れることが出来なかった。
盛り上がる仲間を尻目に、ちらりと視線をフィールド脇にやる。
あの日見た異形の三人組は並んで立っていて、何も言わないししてこないが、だからこそ脅威を感じた。
「───知り合いか、豪炎寺?」
「っ!!?円堂?」
「試合中、何を気にしてるかと思えば、あいつらに何か言われたのか」
「・・・いや、何も」
「そうか。てっきりシュートする瞬間に無駄に力が入るのはあいつらの所為かと思ってたけど、違うんだな?」
「ああ」
黒縁眼鏡の奥から真っ直ぐな視線を寄越す円堂から心持ち視線をそらしつつ頷く。
真っ直ぐに目が見れないのはやましい部分があるからだ。
彼女の大きな栗色の瞳に正面から覗きこまれて嘘を突き通す自信は豪炎寺にはなかった。
きゅっと眉根を寄せて返事をすれば、深く突っ込まずにそのまま円堂は離れる。
ほっと胸を撫で下ろして呼吸を整えていると、監督が攻撃のリズムを割り出したことで逆転できると盛り上がっていた仲間に水を指すように一歩踏み出した。
「甘いわね。確かに鬼道君の言う通りよ。ジェミニストームの攻撃には一定のパターンがある」
「監督?」
「でもそれは見ていれば判ることよ。あなたたち今自分がどんな状態だがわかってるの?」
「・・・状態?」
戸惑うような土門の声に、それぞれの姿を確認しあう。
円堂だけが腕を組みひっそりとその様子を眺めていて、無言の視線が痛かった。
「今のあなたたちじゃ相手のスピードにはついていけない。攻撃パターンが判ったくらいで倒せる相手じゃないのよ」
「じゃあ、どうしろと言うのですか」
責めるように鬼道が問えば、うっすらと笑みを浮かべた瞳子は説明を始めた。
現在雷門のゴールは辛うじて割られていない。
円堂が身を張って守ってくれているからぎりぎりで守られていたが、それもいつまで続くか判らない状態だった。
点を取らなければ試合では勝てない。
だがその攻撃の基点を見つけた途端の言葉に、鬼道だけじゃなく他の仲間の視線も鋭くなる。
「こちらのディフェンスをすべて上げて、全員攻撃するのよ」
『え?』
「そんなに上げるんですか?」
「でもそれじゃディフェンスがいないも同然。それこそ奴らに抜かれでもしたら終わりじゃないですか!!」
「だったら抜かれないようにすることね」
言いたいことだけ言って踵を返した瞳子に、塔子を初めとしたメンバーが怒りを露にする。
そんな中一人冷静に事態を見守っていた円堂が組んでいた腕を解くと徐に口を開いた。
「俺は監督の意見に賛成だ」
「どうしてですか?」
「理由は、プレイしてみれば判るよ。ほら皆、やってみようぜ。忘れたのか?SPフィクサーズに勝てたのだって監督の作戦があったからだろ?」
にっと笑った円堂に不承不承ながら皆頷く。
彼女への信頼は絶大で、だからこそ仲間たちは納得しきっていない戦略に乗った。
それがどういう意味を持つかも知らないで。
試合に集中出来ていない。
その理由も嫌になるほど理解しながら、無理やりに足を動かしてボールを蹴る。
渾身の力を篭めて放ったシュートは、ゴールポストに当たって彼方へと飛んでいった。
「外したぁ!?豪炎寺がファイアトルネードを外しました!!」
実況中継の声が響き不甲斐無さに瞳が揺れる。
折角鬼道がゲームを読み取りいいリズムを作り出してくれたのに、自分は一体何をしているのか。
以前弟の鬼道相手に揺れていた円堂に向かって『全力でプレイしろ』と言ったのは豪炎寺本人なのに。
「ご、豪炎寺が」
「ファイアトルネードを外すなんて」
仲間たちにも静かに動揺が広がっていく。
気持ちが波立つ彼らの空気を打ち破るように、手を打ち鳴らす音が聞こえた。
「焦るな!たった一本!一本外しただけだ!時間はまだある!」
円堂の声にはっと我に返った仲間たちが、慌ててそうだなと頷いた。
無理やり動揺を押さえ込もうとする姿に俯きかけるとすかさず円堂の叱咤が飛んだ。
「背筋を伸ばせ豪炎寺!雷門のエースストライカーはお前だろ!!」
言葉に篭められた想いの深さに、ごくりと喉を鳴らす。
そうだ。自分は雷門のエースストライカー。
点を取るのが自分の役目で、信頼してくれる仲間に応える義務なのに。
再び鬼道がボールをカットし豪炎寺と風丸へとパスが回った。
今度こそ、と意気込みシュート体勢に入る。
だが。
「・・・・・・っ」
病室で眠る妹の姿が脳裏に浮かび、体が不自然に強張った。
この点を入れれば、夕香は───。
『炎の風見鶏!!』
風丸と打ったシュートが炎を纏い、羽を生やして飛んでいく。
しかし迷いを浮かべながらのシュートは今度はゴールポストにすら掠めずに外れた。
着地の態勢すら整えずに無防備なままで地面に落ち、したたかに体を打ち付ける。
一瞬呼吸が止まり、ずくずくとした痛みが脳髄まで響いた。
「豪炎寺!!」
風丸が駆け寄ってくる足音がする。
芝生が擦れる音を耳にしながら、悔しさに臍をかんだ。
───この試合、きっと自分は全力で戦えない。
仲間の信頼を裏切ってでも、守りたい相手が豪炎寺には居た。
病室で眠る幼い妹は今回のこととは何も関係ないのに、傷つけられるのは見過ごせない。
これでは宇宙人に消極的な加担をしているようなものだ。
今度こそ決定的に走る動揺に、チーム内がざわめいた。
ホイッスルにより前半終了が伝えられ、無念の想いを抱いたままベンチへと戻る。
そこで鬼道に彼らには攻撃パターンがあると教えられたが、彼を囲う仲間の下へ足を踏み入れることが出来なかった。
盛り上がる仲間を尻目に、ちらりと視線をフィールド脇にやる。
あの日見た異形の三人組は並んで立っていて、何も言わないししてこないが、だからこそ脅威を感じた。
「───知り合いか、豪炎寺?」
「っ!!?円堂?」
「試合中、何を気にしてるかと思えば、あいつらに何か言われたのか」
「・・・いや、何も」
「そうか。てっきりシュートする瞬間に無駄に力が入るのはあいつらの所為かと思ってたけど、違うんだな?」
「ああ」
黒縁眼鏡の奥から真っ直ぐな視線を寄越す円堂から心持ち視線をそらしつつ頷く。
真っ直ぐに目が見れないのはやましい部分があるからだ。
彼女の大きな栗色の瞳に正面から覗きこまれて嘘を突き通す自信は豪炎寺にはなかった。
きゅっと眉根を寄せて返事をすれば、深く突っ込まずにそのまま円堂は離れる。
ほっと胸を撫で下ろして呼吸を整えていると、監督が攻撃のリズムを割り出したことで逆転できると盛り上がっていた仲間に水を指すように一歩踏み出した。
「甘いわね。確かに鬼道君の言う通りよ。ジェミニストームの攻撃には一定のパターンがある」
「監督?」
「でもそれは見ていれば判ることよ。あなたたち今自分がどんな状態だがわかってるの?」
「・・・状態?」
戸惑うような土門の声に、それぞれの姿を確認しあう。
円堂だけが腕を組みひっそりとその様子を眺めていて、無言の視線が痛かった。
「今のあなたたちじゃ相手のスピードにはついていけない。攻撃パターンが判ったくらいで倒せる相手じゃないのよ」
「じゃあ、どうしろと言うのですか」
責めるように鬼道が問えば、うっすらと笑みを浮かべた瞳子は説明を始めた。
現在雷門のゴールは辛うじて割られていない。
円堂が身を張って守ってくれているからぎりぎりで守られていたが、それもいつまで続くか判らない状態だった。
点を取らなければ試合では勝てない。
だがその攻撃の基点を見つけた途端の言葉に、鬼道だけじゃなく他の仲間の視線も鋭くなる。
「こちらのディフェンスをすべて上げて、全員攻撃するのよ」
『え?』
「そんなに上げるんですか?」
「でもそれじゃディフェンスがいないも同然。それこそ奴らに抜かれでもしたら終わりじゃないですか!!」
「だったら抜かれないようにすることね」
言いたいことだけ言って踵を返した瞳子に、塔子を初めとしたメンバーが怒りを露にする。
そんな中一人冷静に事態を見守っていた円堂が組んでいた腕を解くと徐に口を開いた。
「俺は監督の意見に賛成だ」
「どうしてですか?」
「理由は、プレイしてみれば判るよ。ほら皆、やってみようぜ。忘れたのか?SPフィクサーズに勝てたのだって監督の作戦があったからだろ?」
にっと笑った円堂に不承不承ながら皆頷く。
彼女への信頼は絶大で、だからこそ仲間たちは納得しきっていない戦略に乗った。
それがどういう意味を持つかも知らないで。
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