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*ルフィたちが海賊王になった後の設定です。
海賊王。
そう呼ばれる男が率いる海賊団にはずば抜けた金額を持つ賞金首の幹部たちが勢ぞろいしている。
個性的で、強くて、勇敢で、信念を持っている。
誰もかもが一級品の腕を持ち、若くして名声と富を手に入れた。
サニー号の甲板から岸を見下ろし、咥えている煙草に火をつける。
赤く灯った先端に、一度大きく息を吸い込んでゆっくり紫煙を吐き出した。
「頼むよ、助けてくれよ!!」
一瞬だけ白い煙で視界は邪魔をされたが、煙が晴れればやはり同じようにそこには人間が存在して、華奢な体を縮めて土下座する子供を無感動に眺める。
ちらり、と視線を横に向ければ、そこには船の縁の上で器用に胡坐を掻く船長が居て、ガラス玉のような瞳は何の感情も映していない。
もう一度煙を胸に吸い込むと、沈黙を続ける間を持たせるようにふうっと息を吐き出した。
「頼むよ、あんた海賊王なんだろ!?強いんだろ!?助けてくれよ!」
一方的に身勝手な願いを叫び続ける子供は、小さな顔を涙で歪めていた。
ここから村までは大人の足でも一時間は掛かる。
その距離を全力で走ってきたらしい子供の手足は擦り切れ血塗れだった。
狂ったように助けを求めるこの子供は、先日訪れた村の住人だろう。
確か、肉を買いに行った時に、道の端で擦れ違い様に石を投げられた。
いらっとしたが海賊である以上こんな経験も一度や二度じゃない。
大人の男なら遠慮なく蹴り倒したが、まさか自分の腰ほどの子供をぶっ飛ばすわけにも行かず見逃した。
この島は海軍と癒着があり、海賊への嫌悪感が強い。
必要物資の調達だけ済ましたらすぐに出立する予定だった。
それが地味に延期されているのは、目の前で土下座を続ける子供のせいであり、何も言わずに黙ってその光景を眺める船長が居るからだ。
海軍への癒着のある島は、それほどいい思い出がない。
大抵は島の権力者が海軍のカスと金でつてを作り、虎の威をかる狐状態で過ごしている場合が多いからだ。
かくいうこの島もその例外に漏れず、田舎であるくせに妙な権力意識があり、自分たちがに手が伸びなかったのは海賊王の一団だったからだろう。
それが何故、忌むべき海賊の前で土下座をしているかと言えば、欲をかいた人物がこの島に居たからだ。
海賊王の一味がこの島へ居ると連絡し、おかげで海軍が大挙して来た。
正義を背負う彼らは、必ずしも弱者の味方ではない。
むしろ上に昇れば昇るほど、大義の前の小事は仕方ないと嘯く輩ばかりだ。
この島に派遣された海軍も、そういう人物の指揮下にあったのだろう。
村から離れた場所に隠れるようにして船をつけた海賊王の一味に、まだ彼らは気付いていない。
だがこちらからは丁度彼らが村を攻める様子がよく見えた。
今こうしている間にも砲撃は続き、村は焼け家は破壊されている。
この子供が助けを請いに来たのも、海軍のあまりの酷さに耐えかねたからだろう。
しかし現状は理解できたが、子供の認識は甘すぎる。
「なぁ、お前」
「っ」
「何でおれたちがお前らを助けなきゃいけねぇんだ?お前ら、昨日おれたちに早く島を出てけって言ってたじゃねぇか。あの海軍だっておれらを捕まえに来た奴らだろ?どうしておれたちがそんな奴らの前にのこのこ出てかなきゃいけねぇんだ?」
「それはっ、確かにあいつらを呼んだのは村長だけど・・・でも、海軍があんな酷いことすると思わなかったんだ!このままじゃ皆海軍の奴らに殺されちまう!頼むよ、お前ら強いんだろ!?助けてくれよ!!」
一方的な押し付けをする子供に、サンジはじとりと眉を寄せた。
サンジだけではない。
この船に乗っているクルー達は、皆が皆大体同じ反応だ。
唯一おどおどしているのは心優しき船医くらいで、ナミとウソップは呆れを前面に出してるし、ゾロは嫌そうに顔を顰めている。
ロビンとブルック、フランキーは感情は顔に出していないが、助け舟を出す気はさらさらになさそうだった。
サンジとて彼らと同じ気持ちだ。
何故自分たちを排除しようとした奴らを好き好んで助けねばいけないのか。
あまりに図々しい願いに、うんざりとため息を吐く。
意味が判んねぇと呟いたルフィは、頭を掻きながら子供に問う。
「お前さ、自分を殺すために手引きした奴、進んで助けたいと思うか?」
「・・・でも、このままだと皆死んじゃうんだ!」
「それって自業自得って奴だろ?おれたちは海賊だ。正義の味方じゃねぇ」
「そんなのは知ってる!おれだってお前らなんかに懇願したくねぇ!でも、他に誰も居ないんだ!おれじゃ何も出来ずに死んじまう、だからっ」
「・・・都合がいいことばっか言うなぁ、お前。確かにおれらは強いけどさ、別に始めから勝ち続けてきたわけじゃないぞ?何度だって死に掛けた。それでも諦めないから生きて此処に居る。───お前さ、さっきから助けて助けてって言ってるけど、お前は村の奴らのために何したんだ?」
「おれは・・・っ」
「自分は何もしないで助けを求めるなんて、甘い考えだと思わないのか?
自分は何も危険を冒さないで、おれたちだけに命懸けろって?知り合い未満のお前のために、どうしておれたちがそんなことしなきゃなんねぇんだ?意味が判んねぇ」
緩く首を振ったルフィに、子供は拳を握って俯いた。
噛み締めた唇からは血が流れ、青白い顔色をして今にも倒れそうだ。
「早く行ったらどうだ?こうしてる内にもお前の村の奴らは危険の中に居るぞ。絶対正義を背負った海軍はな、正義のためならなんだってする奴もいるんだぜ」
ルフィの言葉に、弾かれたように踵を返した子供は、また森の中へと駆け出した。
一直線に村へ向かい走る姿に迷いはない。
その背中を見送って、ルフィはのんびりと口を開く。
「さて、皆どうしたい?」
「おれはどうでもいい」
「私もよ。ルフィの決めたことに従うわ」
「そうだなぁ。昨日スーパー石を投げられたしなぁ」
「ヨホホホホ!確かにあれは痛かった。骨身に染みました、骨だけにっ」
「うっせーよ、テメェは!黙れ!でも、おれはちょっと気になるぜ。やっぱおれらが来なきゃこんなことにはなんなかったろうしな」
「おれは、助けに行きたい。あれじゃ一方的な侵略だ!怪我人が出るかもしれねぇし、そしたら医者はいるだろ?」
「甘いわねぇ、チョッパーは。───そうね、私なら地獄の沙汰も金次第。無償奉仕なら嫌よ」
「んー・・・おれは肉が欲しいな、肉。サンジ、昨日食料の調達はどうだった?」
「バッチリ・・・て言いてぇが、少し微妙だな」
「んなら、ナミの案を取って報酬制にするか?」
「面倒だな。それだと終わった後も関わらなきゃいけねぇだろ。おれたちは海賊だ。どさくさに紛れて奪えばいい」
「あ、それいいかも!海軍からも村からもせしめて、一気に大金持ちよ!」
「お前そんなのばっかだなぁ」
ししし、と頭の後ろで腕を組み、ルフィは面白そうに笑った。
視線だけでフランキーに指示を出すと、船は岸から徐々に離れる。
目標とする場所はそれぞれ判っており、各々の武器を取り出し構えた。
「んじゃ、ナミとゾロの案を採用だ。海賊らしく野蛮にいこう」
にっと好戦的な笑顔を浮かべたルフィに、同じような笑みを浮かべて仲間は頷く。
ルフィの本心がどこにあるかは知らないが、彼が決めたら船の総意だ。
近づくサニー号に軍艦が気付いたのか、威嚇ではなく大袍が撃たれた。
甲板に落ちそうになったそれは蹴り返し、横目で笑う船長の顔を伺う。
一瞬だけ視線が重なったルフィは、無言で小さく微笑んだ。
それは、海賊らしくない、とても無邪気で柔らかな笑みだった。
海賊王。
そう呼ばれる男が率いる海賊団にはずば抜けた金額を持つ賞金首の幹部たちが勢ぞろいしている。
個性的で、強くて、勇敢で、信念を持っている。
誰もかもが一級品の腕を持ち、若くして名声と富を手に入れた。
サニー号の甲板から岸を見下ろし、咥えている煙草に火をつける。
赤く灯った先端に、一度大きく息を吸い込んでゆっくり紫煙を吐き出した。
「頼むよ、助けてくれよ!!」
一瞬だけ白い煙で視界は邪魔をされたが、煙が晴れればやはり同じようにそこには人間が存在して、華奢な体を縮めて土下座する子供を無感動に眺める。
ちらり、と視線を横に向ければ、そこには船の縁の上で器用に胡坐を掻く船長が居て、ガラス玉のような瞳は何の感情も映していない。
もう一度煙を胸に吸い込むと、沈黙を続ける間を持たせるようにふうっと息を吐き出した。
「頼むよ、あんた海賊王なんだろ!?強いんだろ!?助けてくれよ!」
一方的に身勝手な願いを叫び続ける子供は、小さな顔を涙で歪めていた。
ここから村までは大人の足でも一時間は掛かる。
その距離を全力で走ってきたらしい子供の手足は擦り切れ血塗れだった。
狂ったように助けを求めるこの子供は、先日訪れた村の住人だろう。
確か、肉を買いに行った時に、道の端で擦れ違い様に石を投げられた。
いらっとしたが海賊である以上こんな経験も一度や二度じゃない。
大人の男なら遠慮なく蹴り倒したが、まさか自分の腰ほどの子供をぶっ飛ばすわけにも行かず見逃した。
この島は海軍と癒着があり、海賊への嫌悪感が強い。
必要物資の調達だけ済ましたらすぐに出立する予定だった。
それが地味に延期されているのは、目の前で土下座を続ける子供のせいであり、何も言わずに黙ってその光景を眺める船長が居るからだ。
海軍への癒着のある島は、それほどいい思い出がない。
大抵は島の権力者が海軍のカスと金でつてを作り、虎の威をかる狐状態で過ごしている場合が多いからだ。
かくいうこの島もその例外に漏れず、田舎であるくせに妙な権力意識があり、自分たちがに手が伸びなかったのは海賊王の一団だったからだろう。
それが何故、忌むべき海賊の前で土下座をしているかと言えば、欲をかいた人物がこの島に居たからだ。
海賊王の一味がこの島へ居ると連絡し、おかげで海軍が大挙して来た。
正義を背負う彼らは、必ずしも弱者の味方ではない。
むしろ上に昇れば昇るほど、大義の前の小事は仕方ないと嘯く輩ばかりだ。
この島に派遣された海軍も、そういう人物の指揮下にあったのだろう。
村から離れた場所に隠れるようにして船をつけた海賊王の一味に、まだ彼らは気付いていない。
だがこちらからは丁度彼らが村を攻める様子がよく見えた。
今こうしている間にも砲撃は続き、村は焼け家は破壊されている。
この子供が助けを請いに来たのも、海軍のあまりの酷さに耐えかねたからだろう。
しかし現状は理解できたが、子供の認識は甘すぎる。
「なぁ、お前」
「っ」
「何でおれたちがお前らを助けなきゃいけねぇんだ?お前ら、昨日おれたちに早く島を出てけって言ってたじゃねぇか。あの海軍だっておれらを捕まえに来た奴らだろ?どうしておれたちがそんな奴らの前にのこのこ出てかなきゃいけねぇんだ?」
「それはっ、確かにあいつらを呼んだのは村長だけど・・・でも、海軍があんな酷いことすると思わなかったんだ!このままじゃ皆海軍の奴らに殺されちまう!頼むよ、お前ら強いんだろ!?助けてくれよ!!」
一方的な押し付けをする子供に、サンジはじとりと眉を寄せた。
サンジだけではない。
この船に乗っているクルー達は、皆が皆大体同じ反応だ。
唯一おどおどしているのは心優しき船医くらいで、ナミとウソップは呆れを前面に出してるし、ゾロは嫌そうに顔を顰めている。
ロビンとブルック、フランキーは感情は顔に出していないが、助け舟を出す気はさらさらになさそうだった。
サンジとて彼らと同じ気持ちだ。
何故自分たちを排除しようとした奴らを好き好んで助けねばいけないのか。
あまりに図々しい願いに、うんざりとため息を吐く。
意味が判んねぇと呟いたルフィは、頭を掻きながら子供に問う。
「お前さ、自分を殺すために手引きした奴、進んで助けたいと思うか?」
「・・・でも、このままだと皆死んじゃうんだ!」
「それって自業自得って奴だろ?おれたちは海賊だ。正義の味方じゃねぇ」
「そんなのは知ってる!おれだってお前らなんかに懇願したくねぇ!でも、他に誰も居ないんだ!おれじゃ何も出来ずに死んじまう、だからっ」
「・・・都合がいいことばっか言うなぁ、お前。確かにおれらは強いけどさ、別に始めから勝ち続けてきたわけじゃないぞ?何度だって死に掛けた。それでも諦めないから生きて此処に居る。───お前さ、さっきから助けて助けてって言ってるけど、お前は村の奴らのために何したんだ?」
「おれは・・・っ」
「自分は何もしないで助けを求めるなんて、甘い考えだと思わないのか?
自分は何も危険を冒さないで、おれたちだけに命懸けろって?知り合い未満のお前のために、どうしておれたちがそんなことしなきゃなんねぇんだ?意味が判んねぇ」
緩く首を振ったルフィに、子供は拳を握って俯いた。
噛み締めた唇からは血が流れ、青白い顔色をして今にも倒れそうだ。
「早く行ったらどうだ?こうしてる内にもお前の村の奴らは危険の中に居るぞ。絶対正義を背負った海軍はな、正義のためならなんだってする奴もいるんだぜ」
ルフィの言葉に、弾かれたように踵を返した子供は、また森の中へと駆け出した。
一直線に村へ向かい走る姿に迷いはない。
その背中を見送って、ルフィはのんびりと口を開く。
「さて、皆どうしたい?」
「おれはどうでもいい」
「私もよ。ルフィの決めたことに従うわ」
「そうだなぁ。昨日スーパー石を投げられたしなぁ」
「ヨホホホホ!確かにあれは痛かった。骨身に染みました、骨だけにっ」
「うっせーよ、テメェは!黙れ!でも、おれはちょっと気になるぜ。やっぱおれらが来なきゃこんなことにはなんなかったろうしな」
「おれは、助けに行きたい。あれじゃ一方的な侵略だ!怪我人が出るかもしれねぇし、そしたら医者はいるだろ?」
「甘いわねぇ、チョッパーは。───そうね、私なら地獄の沙汰も金次第。無償奉仕なら嫌よ」
「んー・・・おれは肉が欲しいな、肉。サンジ、昨日食料の調達はどうだった?」
「バッチリ・・・て言いてぇが、少し微妙だな」
「んなら、ナミの案を取って報酬制にするか?」
「面倒だな。それだと終わった後も関わらなきゃいけねぇだろ。おれたちは海賊だ。どさくさに紛れて奪えばいい」
「あ、それいいかも!海軍からも村からもせしめて、一気に大金持ちよ!」
「お前そんなのばっかだなぁ」
ししし、と頭の後ろで腕を組み、ルフィは面白そうに笑った。
視線だけでフランキーに指示を出すと、船は岸から徐々に離れる。
目標とする場所はそれぞれ判っており、各々の武器を取り出し構えた。
「んじゃ、ナミとゾロの案を採用だ。海賊らしく野蛮にいこう」
にっと好戦的な笑顔を浮かべたルフィに、同じような笑みを浮かべて仲間は頷く。
ルフィの本心がどこにあるかは知らないが、彼が決めたら船の総意だ。
近づくサニー号に軍艦が気付いたのか、威嚇ではなく大袍が撃たれた。
甲板に落ちそうになったそれは蹴り返し、横目で笑う船長の顔を伺う。
一瞬だけ視線が重なったルフィは、無言で小さく微笑んだ。
それは、海賊らしくない、とても無邪気で柔らかな笑みだった。
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