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【7日目】



「今、何と仰りましたか・・・?」


ゆるゆると首を振りながら、掠れる声で問いかける。
今から幸せな睡眠タイムを貪ろうと、一緒に眠る子供に声を掛ければ、予想外の言葉で脳みそがショートした。

最近の獄寺の楽しみは疲れた仕事の後子供を腕に抱いて眠ることだった。
断じて言わせて貰うがそこに変態的な妄想はない。
小さな手が可愛いとか、頬を擽る髪が愛しいとか、腕の中に丸まる姿がたまらないとか、そんなのは当然の反応だからだ。
綱吉に重ねて変なことはしなかったし、この気持ちは子供を可愛がる感情に他ならないと断言できる。
もっとも、子供を可愛いと思ったこと自体が初めてなので、判断基準は少しだけあやふやだが。

とにかく、不埒なことは一切していないし、胸に抱きこみ香りを吸い込むだけで幸せだったのだ。
一日の疲れは癒えるし、睡眠時間が短くとも気力は補充できた。
そして更に言うなら子供に拒否をされたこともないし、嫌なことも何一つしていない・・・筈だ。
それなのに、ああそれなのに。
目の前の子供は何を言ったのだろうか。


「お別れだ、隼人」
「っ、どうしてですか!?毎日二時間の写真撮影が駄目でしたか!?それとも風呂場に設置した記録媒体ですか!?二十四時間状態で監視し続けたカメラですか!?着終わった後の衣装をコレクションしたことですか!?」


全力で己の罪状を吐き出し続ける彼は、今現在のこの状況すら監視カメラに捕らえられているのも忘れて必死だ。
だが獄寺の様子に僅かも心動かされないと緩く首を振った子供は、綱吉によく似た瞳でこちらを見た。


「違う。・・・隼人にはこの一週間良く尽くしてもらった。感謝している」
「なら、ずっとここに居てください!悪いところがあれば全部直しますし、お気に召すよう尽くしますからっ」
「・・・駄目なんだ、隼人。俺の中の十代目の炎が囁くんだ」
「っ、十代目の、炎が?」
「そうだ。先日摂取した彼の大空の炎が俺に言うんだ。『旅立ちの時が来た』と。俺は行かなければならない」


どうっと涙が溢れ出た。
涙腺は崩壊し視界がぶれる。
嗚咽すら上げられない勢いで滂沱の涙が溢れ、獄寺のパジャマは一気に水浸しだ。

子供の目は、綱吉のものとよく似ている。
彼が覚悟を決めたときの、凛として冷たく哀しい強い瞳をしている。
ならばもう曲げられないのだ。
誰よりも彼を知ると自認する獄寺は、問わなくても理解してしまう。
この子供は、行ってしまうのだ。


「俺は立派な『十代目』になるため、武者修行の旅に出る」
「・・・ぅ」
「今まで面倒を見てくれて、ありがとう隼人」


だくだくと涙を流す獄寺に向かい、額に炎を灯して見せた子供は、少しだけ笑った。
その笑顔は、獄寺が大好きな彼のものを写し取ったように美しく、そしてとても儚げだった。


「ウーノさぁぁぁぁぁん!!」


その日、一日獄寺の号泣が止むことはなかった。

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