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無欲な君 欲張りな僕より
--お題サイト:恋のお墓さまより--



「俺は、貴様の存在に慣れたくない」


言葉こそ常どおりに尖っているのに、そう言い放った彼は、まるで傷つくことに怯える小さな子供のようだった。


「俺はお前を憎んでいる」


憎んでいるといいながら、その瞳はどうしようもない切望を篭めている。
喉から手が出るほど欲していると、その目が訴えている。
あんな目で望まれて、心を動かさない者が居るだろうか。
言葉より有言に必要だと望まれて、否定的な態度と裏腹に熱の篭った眼差しは褪せない炎が燃えている。
傍に来るなと拒絶しながら、それ以上に離れるなと、離れてくれるなと言外に訴える。
あんな目で見ときながら、何故この手を放そうとするのだろう。


「他を望んでいない。望んでなどいない」


自分に言い聞かせるように、何度も何度も繰り返す。
暗示を掛けるように繰り返し、警戒心旺盛な獣のように毛を逆立てる。
何をそんなに怯えるのか。
何故、伸ばした手を取ってくれないのか。

自分はそこまで彼を突き落としてしまったのだろうか。
良かれと思った行動は、確かに間違った優しさだったかもしれない。
結果として彼にとってはいい方向に進んだはずなのに、彼の目から渇望は消えない。
飢え渇き苦しんでいる。


「俺は、貴様が憎い」


繰り返し、繰り返し。
心の奥底まで届けとばかりに、彼は囁く。
その怨嗟は、なまじの愛の言葉より甘ったるいというのに。

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