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無欲な君 欲張りな僕より
--お題サイト:恋のお墓さまより--
掴んだ腕は掌で軽く回るほど細く華奢だ。
その事実に改めて気がつき、力いっぱい握ったことを後悔した。
だが後悔はしても腕は掴んだまま放せない。
大きな瞳をめいっぱい見開いている様は小動物めいて可愛らしい。
常であれば瞳を和ませ笑うのだろうが、今はとてもそんな気になれない。
この瞳が零れ落ちてしまえば、誰も映さなくなるんだろうか、なんて、そんな危険思想が頭を巡る。
かなでが誰にでも愛想がいいのは知っている。
人懐っこく可愛がられるのがかなでの特徴だ。
小動物めいた仕草そのままで、つい構ってやりたい気持ちになる。
ペットを構うのと同じ感覚で手を伸ばし弄りたくなる。
───確かに、始めはそんなものだったのに。
「東金。小日向の手を放せ」
「・・・何でお前が俺に命令する。如月」
以前はただのライバルだった。
切磋琢磨し、自身を研磨するためのよき相手だった。
濁りなく対等で、競うのは楽しかった。
なのに。
「お前にその権利があるのか?小日向はただの幼馴染だろう」
「・・・そうだ。小日向は俺の幼馴染だ。だが、ただの幼馴染じゃない。大事な、特別な幼馴染だ」
「はッ」
腹の底から嘲笑してやる。
この男は自身に根付く感情に気付いてない。
気づいてないくせに、無意識で権利を主張する。
ただ幼馴染というだけで、隣に在れると信じている。
それがこの上なく、臓腑が沸き立つほどに不愉快だ。
かなでにだけ向けられる微笑みが気に入らない。
その笑顔が浮かぶときは、かなでが笑みを向けたときだと気付いたから。
かなでを呼ぶ甘い声が気に入らない。
その声で呼びかければ、かなでが他の何より優先して行ってしまうと気付いたから。
かなでとともに奏でる音楽が気に入らない。
二人の音が寄り添えば、普段より数倍聞いていて心地よい音楽が流れるから。
特別だと、言外に訴える態度が、その全てが苛立ちを覚えさせられ我慢ならない。
「言っておくが、お前は所詮幼馴染だ」
「何を」
「俺はお前の地位が欲しいんじゃない。その上が欲しい。行くぞ、小日向」
「え?でも、律くんが」
「───偶には俺を優先させろ」
「・・・?東金、さん?」
「幼馴染は夕方までには返す。息抜きくらい必要だろ」
返事を待たずしてその場を後にする。
おろおろと律と東金を交互に見やるかなでを、無理やりに引きずって歩いていれば、暫くして諦めたように従った。
未だ持ち得ぬ権利なら、取られる前に奪うまで。
--お題サイト:恋のお墓さまより--
掴んだ腕は掌で軽く回るほど細く華奢だ。
その事実に改めて気がつき、力いっぱい握ったことを後悔した。
だが後悔はしても腕は掴んだまま放せない。
大きな瞳をめいっぱい見開いている様は小動物めいて可愛らしい。
常であれば瞳を和ませ笑うのだろうが、今はとてもそんな気になれない。
この瞳が零れ落ちてしまえば、誰も映さなくなるんだろうか、なんて、そんな危険思想が頭を巡る。
かなでが誰にでも愛想がいいのは知っている。
人懐っこく可愛がられるのがかなでの特徴だ。
小動物めいた仕草そのままで、つい構ってやりたい気持ちになる。
ペットを構うのと同じ感覚で手を伸ばし弄りたくなる。
───確かに、始めはそんなものだったのに。
「東金。小日向の手を放せ」
「・・・何でお前が俺に命令する。如月」
以前はただのライバルだった。
切磋琢磨し、自身を研磨するためのよき相手だった。
濁りなく対等で、競うのは楽しかった。
なのに。
「お前にその権利があるのか?小日向はただの幼馴染だろう」
「・・・そうだ。小日向は俺の幼馴染だ。だが、ただの幼馴染じゃない。大事な、特別な幼馴染だ」
「はッ」
腹の底から嘲笑してやる。
この男は自身に根付く感情に気付いてない。
気づいてないくせに、無意識で権利を主張する。
ただ幼馴染というだけで、隣に在れると信じている。
それがこの上なく、臓腑が沸き立つほどに不愉快だ。
かなでにだけ向けられる微笑みが気に入らない。
その笑顔が浮かぶときは、かなでが笑みを向けたときだと気付いたから。
かなでを呼ぶ甘い声が気に入らない。
その声で呼びかければ、かなでが他の何より優先して行ってしまうと気付いたから。
かなでとともに奏でる音楽が気に入らない。
二人の音が寄り添えば、普段より数倍聞いていて心地よい音楽が流れるから。
特別だと、言外に訴える態度が、その全てが苛立ちを覚えさせられ我慢ならない。
「言っておくが、お前は所詮幼馴染だ」
「何を」
「俺はお前の地位が欲しいんじゃない。その上が欲しい。行くぞ、小日向」
「え?でも、律くんが」
「───偶には俺を優先させろ」
「・・・?東金、さん?」
「幼馴染は夕方までには返す。息抜きくらい必要だろ」
返事を待たずしてその場を後にする。
おろおろと律と東金を交互に見やるかなでを、無理やりに引きずって歩いていれば、暫くして諦めたように従った。
未だ持ち得ぬ権利なら、取られる前に奪うまで。
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