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好きだったよ、君が知っているより
--お題サイト:afaikさまより--
「さよならの言葉を聞きたくなかったと言ったら、それは愚かだと思うか?」
微苦笑を浮かべた幼馴染に、恋次は肩を竦める。
せいれいていを見下ろす丘の上で、夕日が沈むのを眺めながら囁きに似た言葉に何か返すか少しだけ迷い───結局何も言わぬまま風に靡く黒髪を見詰める。
ルキアの雰囲気は酷く凪いでいた。
それは死神になるのを決めた瞬間ととても似て、けれど絶対的に違う寂寥感が漂っていた。
自分の髪と同じ赤色の夕日が沈むのを、瞬きすら惜しんで眺めるルキアの心は今何を思っているのだろう。
今の時間よりもう少し前に見れた太陽の色の髪をした少年がルキアの心に影を残したのは判るのに、結局最後まで彼がどの程度ルキアの心を占めるか判断できなかった。
恋次やルキアより遥かに子供で、その分真っ直ぐで、頑固で前を見る強さを持った子供だった。
大人の論理など無視して、何が大事か見極められる、恋次が諦めた何かを持ち続けた少年だった。
子供だ、餓鬼だと言ったけれど、彼に憧れなかったと言えば嘘になる。
負け犬さながら尻尾を巻いて星に吠えるだけの自分に渇を入れ、何が一番大切か強制的に思い出させた悪友だった。
ルキアに笑顔を戻した男。
ルキアの命を救った男。
ルキアに心を思い出させた男。
本当なら全部してやりたい何もかもを、彼はルキアに甦らせた。
あの子供はルキアに救われたと言っていたけれど、同じだけ、否それ以上にルキアは救われていた。
腹の底から笑うルキアなど、もう何十年も見ていなかった恋次には奇跡に近い所業で、羨望を交え嫉妬した。
だがそれ以上に───彼には感謝していた。
幼馴染はきっと何も言わない。
彼をどう思っていたか、どの種類で好きだったのか。
本心を誰かに語る事無く、魂が散るのを待つのだろう。
静かに想いをしたためるのはこの幼馴染らしいが、引きずりやすい彼女は根っこまで想いを持ったまま普段は微塵も出さぬそれを、例えば太陽が眩しくて目を細めた瞬間や、月が冴え冴えと輝く夜空を見て、不意に思い出し微笑むのだろう。
彼女が彼を思い出して笑う瞬間、隣に在れたらいいと思う。
彼女が微笑んだ瞬間に、ああいう奴も居たなと二人で笑いあえればいいと思う。
それはきっと、きっととても幸せだと思うから。
紫紺色の瞳を細めうっとりと夕日を見送る少女に、恋次は笑った。
そして癖の強いしっとりした黒髪に手を潜らせると、思い切りわしゃわしゃと撫ぜる。
何をする、と噛み付いた彼女に微笑むと、闇の色が濃くなり始めた空を見上げた。
「さよならを聞きたいと、嘘をつくより愚かじゃねえな」
「・・・そうか」
ぽつりと呟き、彼女はまた黙り込む。
二人の時間はとても自然で、それが恋次の胸を高鳴らせた。
とても、とても幸せだ。
隣にこの温もりが存在するだけで今までの何もかもが報われる。
恋次の基点で恋次の全て。
嬉しいや幸せ、優しいや愛しいを具現化して人型を取らせた幼馴染は、ほうと一つため息を吐く。
そして切なさを籠めた声で、そっと囁いた。
「まだまだこの場に来るなよ、クソ餓鬼。お前の顔は当分見たくない。静かにくらしたい故、存分に現世を楽しんでからにしろ」
全く持って素直じゃない宣言に、恋次は声を大にして笑った。
天邪鬼な幼馴染は、きっとあの可愛くない子供が来ても健在に違いない。
--お題サイト:afaikさまより--
「さよならの言葉を聞きたくなかったと言ったら、それは愚かだと思うか?」
微苦笑を浮かべた幼馴染に、恋次は肩を竦める。
せいれいていを見下ろす丘の上で、夕日が沈むのを眺めながら囁きに似た言葉に何か返すか少しだけ迷い───結局何も言わぬまま風に靡く黒髪を見詰める。
ルキアの雰囲気は酷く凪いでいた。
それは死神になるのを決めた瞬間ととても似て、けれど絶対的に違う寂寥感が漂っていた。
自分の髪と同じ赤色の夕日が沈むのを、瞬きすら惜しんで眺めるルキアの心は今何を思っているのだろう。
今の時間よりもう少し前に見れた太陽の色の髪をした少年がルキアの心に影を残したのは判るのに、結局最後まで彼がどの程度ルキアの心を占めるか判断できなかった。
恋次やルキアより遥かに子供で、その分真っ直ぐで、頑固で前を見る強さを持った子供だった。
大人の論理など無視して、何が大事か見極められる、恋次が諦めた何かを持ち続けた少年だった。
子供だ、餓鬼だと言ったけれど、彼に憧れなかったと言えば嘘になる。
負け犬さながら尻尾を巻いて星に吠えるだけの自分に渇を入れ、何が一番大切か強制的に思い出させた悪友だった。
ルキアに笑顔を戻した男。
ルキアの命を救った男。
ルキアに心を思い出させた男。
本当なら全部してやりたい何もかもを、彼はルキアに甦らせた。
あの子供はルキアに救われたと言っていたけれど、同じだけ、否それ以上にルキアは救われていた。
腹の底から笑うルキアなど、もう何十年も見ていなかった恋次には奇跡に近い所業で、羨望を交え嫉妬した。
だがそれ以上に───彼には感謝していた。
幼馴染はきっと何も言わない。
彼をどう思っていたか、どの種類で好きだったのか。
本心を誰かに語る事無く、魂が散るのを待つのだろう。
静かに想いをしたためるのはこの幼馴染らしいが、引きずりやすい彼女は根っこまで想いを持ったまま普段は微塵も出さぬそれを、例えば太陽が眩しくて目を細めた瞬間や、月が冴え冴えと輝く夜空を見て、不意に思い出し微笑むのだろう。
彼女が彼を思い出して笑う瞬間、隣に在れたらいいと思う。
彼女が微笑んだ瞬間に、ああいう奴も居たなと二人で笑いあえればいいと思う。
それはきっと、きっととても幸せだと思うから。
紫紺色の瞳を細めうっとりと夕日を見送る少女に、恋次は笑った。
そして癖の強いしっとりした黒髪に手を潜らせると、思い切りわしゃわしゃと撫ぜる。
何をする、と噛み付いた彼女に微笑むと、闇の色が濃くなり始めた空を見上げた。
「さよならを聞きたいと、嘘をつくより愚かじゃねえな」
「・・・そうか」
ぽつりと呟き、彼女はまた黙り込む。
二人の時間はとても自然で、それが恋次の胸を高鳴らせた。
とても、とても幸せだ。
隣にこの温もりが存在するだけで今までの何もかもが報われる。
恋次の基点で恋次の全て。
嬉しいや幸せ、優しいや愛しいを具現化して人型を取らせた幼馴染は、ほうと一つため息を吐く。
そして切なさを籠めた声で、そっと囁いた。
「まだまだこの場に来るなよ、クソ餓鬼。お前の顔は当分見たくない。静かにくらしたい故、存分に現世を楽しんでからにしろ」
全く持って素直じゃない宣言に、恋次は声を大にして笑った。
天邪鬼な幼馴染は、きっとあの可愛くない子供が来ても健在に違いない。
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