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掻き乱す
--お題サイト:afaikさまより--
■か 寛容にも叱ってみせる
馬鹿なんじゃないかと本気で思う。
仮にも一国の、しかもアリスの国からしてみたら足を向けて眠れないほどの大国の王子の、厚かましくも図々しい仕草にアリスは目が半眼になる。
「ちょっと」
「ん?」
「ん?じゃないわよ。何優雅にお茶飲んでるの」
「私は好きなときに好きな場所でお茶を飲むと決めている」
「好きなときに好きな場所?」
かちん、ときた。
一応初対面から暫くは丁寧語を使っていたはずだが、今ではもうお山の彼方だ。
いらりとした雰囲気を隠しもせず、額に青筋を浮かべて堂々とした王子様に微笑んだ。
「知ってるかしら?ここは私の国の私の私室なのよ?」
糠に釘と理解しつつも、学習しないのは果たしてどちらだろうか。
■き 切られるように痛いはずの
例えば、コレがもう少し謙虚な性格をしていたら、アリスの対応も変わったかもしれない。
それが駄目でももう少し体面を気にして欲しい。
どれだけアリスが怒っても馬耳東風とばかりに右から左へ流す男は、ある意味大国の後継者らしいのかもしれない。
下々の言葉に耳を傾けず、どこまでもあくまでも自分本位。
彼には絶対王政を敷きそうだ。
しかも堂々と何故逆らうんだと小首を傾げながら。
勝手にセッティングされたテーブルの上のティーカップを弄び、至極楽しそうに微笑む男にアリスは苦い表情を浮かべた。
せめて、彼の顔がいつかの面影に重ならなければと考えながら。
■み 満ちてゆく煌めきはきっと
「君はもう少し私に甘えるべきだ」
当たり前の権利を主張するように、優雅に紅茶を嗜みながらされた発言に眉を上げる。
何のつもりかしらないが、いきなり何を言い出すのか。
整った顔立ちを美しく笑みへと変えて、余裕たっぷりに囁く男の膝を蹴る。
まさかの暴行だったのか、綺麗に脛に入ったらしく、少しだけ涙目でこちらを睨んで来た。
いい気味だと王女らしからぬ様子で嘲笑すれば、すいっと器用に眉を上げた。
「これが君の甘え方か?」
「そんなわけないでしょ。私は別にサドじゃないわ」
「それはよかった。私もマゾとは言い難い。上手く付き合っていけそうだ」
「無理よ」
「試す前からそんな弱気でどうする?」
「試したいと思えないの。恋愛なんてこりごりよ」
「こりごりと言える経験でもしたのか?」
「あなたには関係ないわ」
だから権利を主張しないで。
聡いはずの男が、言外の言葉に気付かないはずがないのに。
■だ ダーク・シークレットも今や
誰にだって言いたくない過去の一つや二つあると思う。
アリスにとってのそれは、過去の恋愛経験だ。
今となってはあれを恋愛と読んでもいいのか判らないが、アリスは恋をしていた。
優しくて、素敵で、穏やかな人。
好きになって、好きになって欲しいから、ほんの少しだけ無理をした。
今思えば、なんて無駄なことだったのか。
彼が好きなのはアリスではなく、アリスが一生かかっても超えられない人なのに。
苦い経験はアリスを学習させた。
傷つきたくないの。気付きたくないの。
唇を噛み締めて俯いて。きつく瞼を閉じたとしても。
失くせない過去は今も鮮やかに脳裏に刻まれ消えやしない。
■す 摺り寄せるそれは桜色
「忘れろ」
「え?」
唐突な言葉に遠くに行っていた意識が戻る。
気がつけば目と鼻の先に端整な顔があり、同じに見えるのに全く違う表情を浮かべた『ブラッド』に目を見張る。
本来ならこんな距離を許される関係じゃないのに、垣根などないように彼はアリスへ近づく。
それは目で見える距離だけじゃなく、見えないものについてもいえて、それが嫌で仕方ない。
それなのに、そんなアリスを知ってるはずの彼は、緩やかに口の端を持ち上げて実に彼らしく皮肉げな笑い方をした。
「私以外の記憶は留めておかなくていい」
「何を」
「君が気にしなくてはいけないのは、私だけだ。私だけを見て、私だけを意識していろ」
「無理よ」
「無理じゃない。なんなら協力してあげようか?私の城へ連れ帰り、私の所有する塔に幽閉させ、私てずから飼ってやろう。私が居なければ君は一日たりとも生きていけない。どうだ?」
「───最悪ね」
誰かに飼われる気はない。
しかも相手が彼なんて、最悪の極みだ。
彼は絶対に口にした通りに実行する。
自分以外にあわせずに、自分が居なければ生きていけないようにアリスを閉じ込める。
でもきっと飽きるに違いない。
アリスに飽きて、置いていくのだ。
自分が居なければ生きてけないように作り変え、興味がなくなれば捨ててしまう。
そんなの、絶対に御免だ。
「お断りよ」
「・・・そうか。いいアイデアだと思ったんだがな」
「やめて頂戴。そんなことする気なら、もう二度とあなたとお茶は飲まないわ」
アリスの言葉に虚をつかれたように目を丸めた青年は、くつくつと喉を震わせて笑った。
「なら駄目だな。私は君とのこの時間を大切にしている」
楽しげな笑みは嘘じゃない。
この表情は嫌いじゃない。
嫌いじゃないけれど、それだけだ。
誰に言い聞かすでもなく、アリスは苦々しい表情を浮かべる。
その顔を見て笑みを深める男を前に、思い切り深いため息を吐き出しても、嫌味すら流す彼は無駄に余裕たっぷりだ。
「早く飽きて」
「何にだ?」
「このお茶会よ」
全てを篭めて囁いた言葉に、ブラットは破顔した。
「無理だな」
--お題サイト:afaikさまより--
■か 寛容にも叱ってみせる
馬鹿なんじゃないかと本気で思う。
仮にも一国の、しかもアリスの国からしてみたら足を向けて眠れないほどの大国の王子の、厚かましくも図々しい仕草にアリスは目が半眼になる。
「ちょっと」
「ん?」
「ん?じゃないわよ。何優雅にお茶飲んでるの」
「私は好きなときに好きな場所でお茶を飲むと決めている」
「好きなときに好きな場所?」
かちん、ときた。
一応初対面から暫くは丁寧語を使っていたはずだが、今ではもうお山の彼方だ。
いらりとした雰囲気を隠しもせず、額に青筋を浮かべて堂々とした王子様に微笑んだ。
「知ってるかしら?ここは私の国の私の私室なのよ?」
糠に釘と理解しつつも、学習しないのは果たしてどちらだろうか。
■き 切られるように痛いはずの
例えば、コレがもう少し謙虚な性格をしていたら、アリスの対応も変わったかもしれない。
それが駄目でももう少し体面を気にして欲しい。
どれだけアリスが怒っても馬耳東風とばかりに右から左へ流す男は、ある意味大国の後継者らしいのかもしれない。
下々の言葉に耳を傾けず、どこまでもあくまでも自分本位。
彼には絶対王政を敷きそうだ。
しかも堂々と何故逆らうんだと小首を傾げながら。
勝手にセッティングされたテーブルの上のティーカップを弄び、至極楽しそうに微笑む男にアリスは苦い表情を浮かべた。
せめて、彼の顔がいつかの面影に重ならなければと考えながら。
■み 満ちてゆく煌めきはきっと
「君はもう少し私に甘えるべきだ」
当たり前の権利を主張するように、優雅に紅茶を嗜みながらされた発言に眉を上げる。
何のつもりかしらないが、いきなり何を言い出すのか。
整った顔立ちを美しく笑みへと変えて、余裕たっぷりに囁く男の膝を蹴る。
まさかの暴行だったのか、綺麗に脛に入ったらしく、少しだけ涙目でこちらを睨んで来た。
いい気味だと王女らしからぬ様子で嘲笑すれば、すいっと器用に眉を上げた。
「これが君の甘え方か?」
「そんなわけないでしょ。私は別にサドじゃないわ」
「それはよかった。私もマゾとは言い難い。上手く付き合っていけそうだ」
「無理よ」
「試す前からそんな弱気でどうする?」
「試したいと思えないの。恋愛なんてこりごりよ」
「こりごりと言える経験でもしたのか?」
「あなたには関係ないわ」
だから権利を主張しないで。
聡いはずの男が、言外の言葉に気付かないはずがないのに。
■だ ダーク・シークレットも今や
誰にだって言いたくない過去の一つや二つあると思う。
アリスにとってのそれは、過去の恋愛経験だ。
今となってはあれを恋愛と読んでもいいのか判らないが、アリスは恋をしていた。
優しくて、素敵で、穏やかな人。
好きになって、好きになって欲しいから、ほんの少しだけ無理をした。
今思えば、なんて無駄なことだったのか。
彼が好きなのはアリスではなく、アリスが一生かかっても超えられない人なのに。
苦い経験はアリスを学習させた。
傷つきたくないの。気付きたくないの。
唇を噛み締めて俯いて。きつく瞼を閉じたとしても。
失くせない過去は今も鮮やかに脳裏に刻まれ消えやしない。
■す 摺り寄せるそれは桜色
「忘れろ」
「え?」
唐突な言葉に遠くに行っていた意識が戻る。
気がつけば目と鼻の先に端整な顔があり、同じに見えるのに全く違う表情を浮かべた『ブラッド』に目を見張る。
本来ならこんな距離を許される関係じゃないのに、垣根などないように彼はアリスへ近づく。
それは目で見える距離だけじゃなく、見えないものについてもいえて、それが嫌で仕方ない。
それなのに、そんなアリスを知ってるはずの彼は、緩やかに口の端を持ち上げて実に彼らしく皮肉げな笑い方をした。
「私以外の記憶は留めておかなくていい」
「何を」
「君が気にしなくてはいけないのは、私だけだ。私だけを見て、私だけを意識していろ」
「無理よ」
「無理じゃない。なんなら協力してあげようか?私の城へ連れ帰り、私の所有する塔に幽閉させ、私てずから飼ってやろう。私が居なければ君は一日たりとも生きていけない。どうだ?」
「───最悪ね」
誰かに飼われる気はない。
しかも相手が彼なんて、最悪の極みだ。
彼は絶対に口にした通りに実行する。
自分以外にあわせずに、自分が居なければ生きていけないようにアリスを閉じ込める。
でもきっと飽きるに違いない。
アリスに飽きて、置いていくのだ。
自分が居なければ生きてけないように作り変え、興味がなくなれば捨ててしまう。
そんなの、絶対に御免だ。
「お断りよ」
「・・・そうか。いいアイデアだと思ったんだがな」
「やめて頂戴。そんなことする気なら、もう二度とあなたとお茶は飲まないわ」
アリスの言葉に虚をつかれたように目を丸めた青年は、くつくつと喉を震わせて笑った。
「なら駄目だな。私は君とのこの時間を大切にしている」
楽しげな笑みは嘘じゃない。
この表情は嫌いじゃない。
嫌いじゃないけれど、それだけだ。
誰に言い聞かすでもなく、アリスは苦々しい表情を浮かべる。
その顔を見て笑みを深める男を前に、思い切り深いため息を吐き出しても、嫌味すら流す彼は無駄に余裕たっぷりだ。
「早く飽きて」
「何にだ?」
「このお茶会よ」
全てを篭めて囁いた言葉に、ブラットは破顔した。
「無理だな」
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*ずっと以前に投稿した学パロアリスの再録です。
高校の制服を、何食わぬ顔で着こなす二人を見て、アリスは眉をしかめた。
またか、と思った。
アリスが彼らに気がつくよりもずっと早くアリスの存在に気がついていたらしい双子は、嬉しそうに駆け寄ってきた。
そして、そのまま勢いを殺す事無く。
全力でアリスに抱きついた。
「ぐっ!」
悲鳴を堪える。
尻から倒れこみ、下が柔らかい芝生でよかったと思った。
そうでなければ、今頃もっと痛い思いをしたに違いない。
涙目になりながら、首にしがみつく二人を睨んだ。
「ディー、ダム」
「何、お姉さん?」
「どうかしたの、お姉さん」
ステレオで声が聞こえた。
どっちがどっちの声か混乱しそうだ。
だが、頭を軽く振ると嬉しそうに目を輝かす彼らに。
「全力で抱きつくのは止めてって言ってるでしょう?」
苛立ちを隠さずに、きつく睨みながら伝えた。
だが。
「でも、僕たちお姉さんを見つけると嬉しくなっちゃうんだ」
「そうそう。自分達でも止められないんだ」
心持ち頬を染めて、嬉しそうに言う彼らに。
気力がどかっと奪われる。
悪気がないのが性質が悪い。
嘘でないから、嫌えない。
決して、いい子ではないと知っているのに。
甘いな、と自分でも思う。
罪のない笑顔の裏に、何があるか理解できないほど純粋でもないのに。
「ねえ、お姉さん。怒ったの?」
「もう、僕たちのこと、嫌いになっちゃった?」
何故、此処まで好意を抱いてくれるのかわからない。
けど、贈られる好意は本物で。
「お姉さん、嫌わないで」
「お姉さん、僕たちちゃんといい子に出来るよ」
「お姉さん、お願い」
「お姉さん、嫌いにならないで」
交互に囁かれ、ため息を殺した。
昼休みもほとんど終わった中庭には、生徒は他にはいない。
こんな光景を他人に見られなくて、本当に良かった。
目立つ事無く、地味に学園生活を送りたいアリスは、それを妨げる存在を見る。
睨む事はもう出来なかった。
「──嫌いになんて、なる訳がないじゃない」
年下の少年達の頭を優しく撫でた。
思ったより声が甘くなり、眉根を寄せる。
それに気づいたのか、気がつかなかったのか。
どちらにしても、素知らぬ顔で、彼らは笑いあった。
そして、囁くような声で。
似たような笑みを浮かべて。
「ねえ、お姉さん」
「僕たち、本当にお姉さんが大好きだよ」
思いもかけないほど強い力で、アリスを抱きしめ。
断言するように、そう言った。
「はいはい」
流すようにそれに頷いたアリスが。
彼らの本気を実感するのは、もう少し後のこと。
高校の制服を、何食わぬ顔で着こなす二人を見て、アリスは眉をしかめた。
またか、と思った。
アリスが彼らに気がつくよりもずっと早くアリスの存在に気がついていたらしい双子は、嬉しそうに駆け寄ってきた。
そして、そのまま勢いを殺す事無く。
全力でアリスに抱きついた。
「ぐっ!」
悲鳴を堪える。
尻から倒れこみ、下が柔らかい芝生でよかったと思った。
そうでなければ、今頃もっと痛い思いをしたに違いない。
涙目になりながら、首にしがみつく二人を睨んだ。
「ディー、ダム」
「何、お姉さん?」
「どうかしたの、お姉さん」
ステレオで声が聞こえた。
どっちがどっちの声か混乱しそうだ。
だが、頭を軽く振ると嬉しそうに目を輝かす彼らに。
「全力で抱きつくのは止めてって言ってるでしょう?」
苛立ちを隠さずに、きつく睨みながら伝えた。
だが。
「でも、僕たちお姉さんを見つけると嬉しくなっちゃうんだ」
「そうそう。自分達でも止められないんだ」
心持ち頬を染めて、嬉しそうに言う彼らに。
気力がどかっと奪われる。
悪気がないのが性質が悪い。
嘘でないから、嫌えない。
決して、いい子ではないと知っているのに。
甘いな、と自分でも思う。
罪のない笑顔の裏に、何があるか理解できないほど純粋でもないのに。
「ねえ、お姉さん。怒ったの?」
「もう、僕たちのこと、嫌いになっちゃった?」
何故、此処まで好意を抱いてくれるのかわからない。
けど、贈られる好意は本物で。
「お姉さん、嫌わないで」
「お姉さん、僕たちちゃんといい子に出来るよ」
「お姉さん、お願い」
「お姉さん、嫌いにならないで」
交互に囁かれ、ため息を殺した。
昼休みもほとんど終わった中庭には、生徒は他にはいない。
こんな光景を他人に見られなくて、本当に良かった。
目立つ事無く、地味に学園生活を送りたいアリスは、それを妨げる存在を見る。
睨む事はもう出来なかった。
「──嫌いになんて、なる訳がないじゃない」
年下の少年達の頭を優しく撫でた。
思ったより声が甘くなり、眉根を寄せる。
それに気づいたのか、気がつかなかったのか。
どちらにしても、素知らぬ顔で、彼らは笑いあった。
そして、囁くような声で。
似たような笑みを浮かべて。
「ねえ、お姉さん」
「僕たち、本当にお姉さんが大好きだよ」
思いもかけないほど強い力で、アリスを抱きしめ。
断言するように、そう言った。
「はいはい」
流すようにそれに頷いたアリスが。
彼らの本気を実感するのは、もう少し後のこと。
*ずっと以前に投稿した学パロアリスの再録です。
「無理無理」
目の前に差し出されたものを見て、アリスは思わず口にした。
オレンジの色も鮮やかなその物体は、俗に言う手作り弁当というものだ。
ちなみに作ったのはアリスではない。
目の前で、嬉しそうに微笑む彼はエリオットという名前の先輩だ。
学園一の不良と噂されているが、優しく明るい彼をアリスは嫌いじゃなかった。
だからこそ、お昼の誘いにこうしてひょいひょいと乗ってしまったのだが。
差し出されたものを見ると、また顔を背けた。
手作りのお弁当だなんて、やることが可愛い。
だが。
それは、内容にもよると思う。
誰もいない古びた教室。
窓の外からは、早くも昼食を片付けた生徒がグランドでサッカーをしていた。
シチュエーションとしては、完璧だと思う。
窓に向けていた視線を、目の前に戻した。
オレンジ。
オレンジ色以外の何も見えない。
何度見ても変わらない現実に、そろりと顔を上げる。
(──見なきゃ良かった)
アリスが何から食べるのか、興味深々と言った顔でじーっとエリオットはアリスを見つめていた。
「エリオット先輩」
「ん?」
呼びかけると、長い耳をピコリと動かした。
それを掴んでしまいたい衝動を堪えつつ、アリスは表向き愛らしく笑った。
その表情に、ポッとエリオットは頬を染める。
何て、わかりやすく、且つ可愛らしい先輩なのだろう。
転校するまで、自分がうさぎ耳の大男を見て可愛いと思う日が来るとは思っていなかった。
どうしよう、と悩む。
「なあ、アリス。まだ食べねぇの?」
期待に満ちた声は、アリスの罪悪感を刺激する。
目が、早く早くと訴えかけてくる。
冷や汗が流れた。
見れば、彼は自分の弁当に手をつけることもしていない。
(どうしろって言うのよ)
もう一度、視線を弁当箱に向けた。
可愛らしい兎の絵がプリントされた小さな弁当箱は明らかに女の子向けで。
きっと、アリスのために買ってきてくれただろうことが推測される。
だが、そんなの慰めにならない。
オレンジ色の物体は、『私を、食べて』と主張している。
けど。
だけど。
どう見ても、『生』なのだ。
何故今日に限って。
何回かエリオットの弁当を見ていたアリスは、いつもは生ばかりを食べている訳ではないことを知っている。
おいしそうなコンポート。
ニンジンのグラッセ。
甘煮に、バター焼き。
一工夫されたものばかりで、たまにアリスもご相伴に預かっていた。
「──エリオット先輩」
「何だ?」
「どうして、今日に限ってニンジンが生なんですか?」
アリスの問いかけに、良くぞ聞いてくれましたとばかりにエリオットは顔を輝かせた。
「このニンジン、凄く希少価値で八百屋のおっさんに無理言ってもらったんだ!凄く甘味が強くて、生が一番美味いんだ。八百屋のおっさんの言うとおりだぜ!」
(くそぅっ、八百屋の親父めっ!!)
女の子にあるまじき言葉を内心で連発する。
「迷惑、だったか?」
そんなアリスを見て、耳を下げたエリオットはおずおずと聞いてきた。
その目に。
『はい。生は嫌です、生は』
と、言う事も出来なくて。
仕方なしに、ニンジンを手に取ると一口口に入れた。
ポリ
音が響く。
「おいしい」
自然に口から言葉が出た。
その言葉に、エリオットの肩から力が抜ける。
「よかった。迷惑だったらどうしようかと思ったぜ」
ホッとした様子に、思わず顔を和ました。
だが。
スティック状のニンジンを5本食べても、10本食べても。
まだ、弁当の底は見えず。
アリスの表情が変わっていく。
(──やっぱり、無理無理!!)
15本、生のニンジンを食べた所でアリスはギブアップをした。
チラリと視線を上げると、アリスより遅く食べ始めたくせにとっくに弁当の中身を空にしたエリオットがキラキラとした目でアリスを見ていた。
いや。
正確に言うと、アリスの持っているニンジンを見ていた。
それを見て。
アリスの中でひらめいた。
殊更優しい微笑を浮かべると、甘い声でエリオットを呼ぶ。
頬を染めたエリオットに向かい。
「あーん」
普段の自分なら、絶対にやらないことをして見せた。
耳まで赤くなりながら、戸惑うように自分を見るエリオットに。
わざとらしく、哀しそうに目を伏せる。
「いや・・・だった?」
「!?そんなわけねぇ!!」
勢い込んであーんと大口を開けた彼に、ここぞとばかりにニンジンを突っ込む。
嬉しそうにそれを租借する彼を見て、にっこりと微笑んだ。
満足そうに食事を終えたエリオットに、笑みを向ける。
心底美味しそうに食べるエリオットは、見ていて厭きない。
もくもくと租借する様は、やっぱり可愛い。
嬉しそうなアリスを見て、エリオットも嬉しそうに笑った。
そして。
「また、持って来てやるからな!」
「え?」
純然なる好意を向けられ、それでもアリスは青くなった。
(無理無理。二度目は無理だってば)
それでも、二度目を断れず、結局同じようなパターンにアリスが慣れるまで。
そう、時間がかかることでもないだろう。
「無理無理」
目の前に差し出されたものを見て、アリスは思わず口にした。
オレンジの色も鮮やかなその物体は、俗に言う手作り弁当というものだ。
ちなみに作ったのはアリスではない。
目の前で、嬉しそうに微笑む彼はエリオットという名前の先輩だ。
学園一の不良と噂されているが、優しく明るい彼をアリスは嫌いじゃなかった。
だからこそ、お昼の誘いにこうしてひょいひょいと乗ってしまったのだが。
差し出されたものを見ると、また顔を背けた。
手作りのお弁当だなんて、やることが可愛い。
だが。
それは、内容にもよると思う。
誰もいない古びた教室。
窓の外からは、早くも昼食を片付けた生徒がグランドでサッカーをしていた。
シチュエーションとしては、完璧だと思う。
窓に向けていた視線を、目の前に戻した。
オレンジ。
オレンジ色以外の何も見えない。
何度見ても変わらない現実に、そろりと顔を上げる。
(──見なきゃ良かった)
アリスが何から食べるのか、興味深々と言った顔でじーっとエリオットはアリスを見つめていた。
「エリオット先輩」
「ん?」
呼びかけると、長い耳をピコリと動かした。
それを掴んでしまいたい衝動を堪えつつ、アリスは表向き愛らしく笑った。
その表情に、ポッとエリオットは頬を染める。
何て、わかりやすく、且つ可愛らしい先輩なのだろう。
転校するまで、自分がうさぎ耳の大男を見て可愛いと思う日が来るとは思っていなかった。
どうしよう、と悩む。
「なあ、アリス。まだ食べねぇの?」
期待に満ちた声は、アリスの罪悪感を刺激する。
目が、早く早くと訴えかけてくる。
冷や汗が流れた。
見れば、彼は自分の弁当に手をつけることもしていない。
(どうしろって言うのよ)
もう一度、視線を弁当箱に向けた。
可愛らしい兎の絵がプリントされた小さな弁当箱は明らかに女の子向けで。
きっと、アリスのために買ってきてくれただろうことが推測される。
だが、そんなの慰めにならない。
オレンジ色の物体は、『私を、食べて』と主張している。
けど。
だけど。
どう見ても、『生』なのだ。
何故今日に限って。
何回かエリオットの弁当を見ていたアリスは、いつもは生ばかりを食べている訳ではないことを知っている。
おいしそうなコンポート。
ニンジンのグラッセ。
甘煮に、バター焼き。
一工夫されたものばかりで、たまにアリスもご相伴に預かっていた。
「──エリオット先輩」
「何だ?」
「どうして、今日に限ってニンジンが生なんですか?」
アリスの問いかけに、良くぞ聞いてくれましたとばかりにエリオットは顔を輝かせた。
「このニンジン、凄く希少価値で八百屋のおっさんに無理言ってもらったんだ!凄く甘味が強くて、生が一番美味いんだ。八百屋のおっさんの言うとおりだぜ!」
(くそぅっ、八百屋の親父めっ!!)
女の子にあるまじき言葉を内心で連発する。
「迷惑、だったか?」
そんなアリスを見て、耳を下げたエリオットはおずおずと聞いてきた。
その目に。
『はい。生は嫌です、生は』
と、言う事も出来なくて。
仕方なしに、ニンジンを手に取ると一口口に入れた。
ポリ
音が響く。
「おいしい」
自然に口から言葉が出た。
その言葉に、エリオットの肩から力が抜ける。
「よかった。迷惑だったらどうしようかと思ったぜ」
ホッとした様子に、思わず顔を和ました。
だが。
スティック状のニンジンを5本食べても、10本食べても。
まだ、弁当の底は見えず。
アリスの表情が変わっていく。
(──やっぱり、無理無理!!)
15本、生のニンジンを食べた所でアリスはギブアップをした。
チラリと視線を上げると、アリスより遅く食べ始めたくせにとっくに弁当の中身を空にしたエリオットがキラキラとした目でアリスを見ていた。
いや。
正確に言うと、アリスの持っているニンジンを見ていた。
それを見て。
アリスの中でひらめいた。
殊更優しい微笑を浮かべると、甘い声でエリオットを呼ぶ。
頬を染めたエリオットに向かい。
「あーん」
普段の自分なら、絶対にやらないことをして見せた。
耳まで赤くなりながら、戸惑うように自分を見るエリオットに。
わざとらしく、哀しそうに目を伏せる。
「いや・・・だった?」
「!?そんなわけねぇ!!」
勢い込んであーんと大口を開けた彼に、ここぞとばかりにニンジンを突っ込む。
嬉しそうにそれを租借する彼を見て、にっこりと微笑んだ。
満足そうに食事を終えたエリオットに、笑みを向ける。
心底美味しそうに食べるエリオットは、見ていて厭きない。
もくもくと租借する様は、やっぱり可愛い。
嬉しそうなアリスを見て、エリオットも嬉しそうに笑った。
そして。
「また、持って来てやるからな!」
「え?」
純然なる好意を向けられ、それでもアリスは青くなった。
(無理無理。二度目は無理だってば)
それでも、二度目を断れず、結局同じようなパターンにアリスが慣れるまで。
そう、時間がかかることでもないだろう。
*ずっと以前に投稿した学パロアリスの再録です。
とさり
柔らかい感触の、保健室のソファに押し倒され。
アリスは一つ瞬きした。
目の前には、嫌味になるらい整った男の顔。
彼の顔を見ていると、思い出したくない過去までも思い出させられる。
感情が顔に表れていたのだろうか。
アリスの顔を見て、面白そうに男は目を煌かせた。
それを見て、アリスは益々渋い顔をする。
目の前の男に、娯楽を提供するのは癪だった。
「──先生」
「何だい?」
努めて冷静な声を出したアリスに顔を近づけ、男は返事をした。
吐息が顔にかかるくらいの至近距離。
だが、アリスは目を逸らす事無く男を見た。
「教師の癖に、生徒を押し倒していいんですか?」
その問に、ふっと微笑む。
「もちろんだ。私は、退屈しているのだよ、アリス」
嬉しそうな声に、無表情になった。
一切の感情を隠したアリスを興味深げに覗き込む。
「あなたが退屈しているからといって、私が付き合わなきゃいけない理由がないんですけど」
あくまで丁寧に。
それでもキッパリと言い放つ。
「私が退屈しているところに、君が現れた。まるで、何かに導かれたようにね」
「導かれていません。頭が痛いから、薬を貰いに来ただけです」
「そうか。なら、頭の痛みがわからない位気持ちよくしてやろう」
「結構です。薬だけ下さい」
「遠慮する事はない」
堂々巡りで話が通じない相手に、益々頭痛が酷くなる。
無表情でいるのも難しく、キッと目の前の存在を睨み付けた。
何故、ここまで執拗に構うのだろう。
放っておいて欲しいのに。
「──例え、他の誰としたとしても、あなただけは御免よ」
本気の声。
この顔に向かって、それが言えるなんて。
中身が彼でないとわかっていても、それでも胸がすく思いだ。
「わかった」
体から彼の重みが消え、ホッとため息を吐きそうな自分を自制した。
「薬はそこの棚だ。好きなだけ持っていくといい」
アリスから一切の興味を失くした様に自分の机に戻った男は、机の上の書類に目を落としたまま言った。
言われたとおりに棚を探すと、目的の物はすぐに見つかった。
許可を得ているのだからと、2回分の薬を手に取るとすぐに保健室を後にした。
退室する際の言葉に、彼は返事をくれなかった。
転校してきてから初めてのことに、少しだけ驚く。
先程の彼の様子を思い出し。
「気のせい、気のせい」
振り払うように首を振った。
アリスの一言に、彼の瞳が色を失くした様に見えただなんて。
そんなの、絶対に見間違いなのだから。
とさり
柔らかい感触の、保健室のソファに押し倒され。
アリスは一つ瞬きした。
目の前には、嫌味になるらい整った男の顔。
彼の顔を見ていると、思い出したくない過去までも思い出させられる。
感情が顔に表れていたのだろうか。
アリスの顔を見て、面白そうに男は目を煌かせた。
それを見て、アリスは益々渋い顔をする。
目の前の男に、娯楽を提供するのは癪だった。
「──先生」
「何だい?」
努めて冷静な声を出したアリスに顔を近づけ、男は返事をした。
吐息が顔にかかるくらいの至近距離。
だが、アリスは目を逸らす事無く男を見た。
「教師の癖に、生徒を押し倒していいんですか?」
その問に、ふっと微笑む。
「もちろんだ。私は、退屈しているのだよ、アリス」
嬉しそうな声に、無表情になった。
一切の感情を隠したアリスを興味深げに覗き込む。
「あなたが退屈しているからといって、私が付き合わなきゃいけない理由がないんですけど」
あくまで丁寧に。
それでもキッパリと言い放つ。
「私が退屈しているところに、君が現れた。まるで、何かに導かれたようにね」
「導かれていません。頭が痛いから、薬を貰いに来ただけです」
「そうか。なら、頭の痛みがわからない位気持ちよくしてやろう」
「結構です。薬だけ下さい」
「遠慮する事はない」
堂々巡りで話が通じない相手に、益々頭痛が酷くなる。
無表情でいるのも難しく、キッと目の前の存在を睨み付けた。
何故、ここまで執拗に構うのだろう。
放っておいて欲しいのに。
「──例え、他の誰としたとしても、あなただけは御免よ」
本気の声。
この顔に向かって、それが言えるなんて。
中身が彼でないとわかっていても、それでも胸がすく思いだ。
「わかった」
体から彼の重みが消え、ホッとため息を吐きそうな自分を自制した。
「薬はそこの棚だ。好きなだけ持っていくといい」
アリスから一切の興味を失くした様に自分の机に戻った男は、机の上の書類に目を落としたまま言った。
言われたとおりに棚を探すと、目的の物はすぐに見つかった。
許可を得ているのだからと、2回分の薬を手に取るとすぐに保健室を後にした。
退室する際の言葉に、彼は返事をくれなかった。
転校してきてから初めてのことに、少しだけ驚く。
先程の彼の様子を思い出し。
「気のせい、気のせい」
振り払うように首を振った。
アリスの一言に、彼の瞳が色を失くした様に見えただなんて。
そんなの、絶対に見間違いなのだから。
自室に篭ったブラッドは、部屋から見える夜空に一つため息を吐く。
つい一年ほど前の自分が今の自分を見たのなら、鼻で笑っているだろう。
誰かに振り回される人生など考えたこともなく、誰かに執着する自分など想像したこともなかったのに。
先日購入したばかりの紅茶を一口口に含む。
味も香りも最高級品のはずなのに、いつものように紅茶に酔えないのはきっとあのネガティブな少女の顔が離れないからだ。
いつだってブラッドに対して胸を張っていた彼女が見せた脆さは、未だに記憶に新しい。
別に何か特別なことをしていたわけじゃない。
いつものように彼女を誘い、午後のお茶会としゃれ込んでいただけだ。
普通に話し普通に紅茶を飲み、普通に過ごしていたはずなのに、気がつけば彼女は泣いていた。
何が切欠だったか未だに判らない。
それでも何かが切欠で、ブラッドの向こうに『誰か』を見たアリスは涙腺を崩壊させた。
それが酷く苛立たしく───とても胸糞悪い。
「・・・どうして彼女なのだろうな」
答えのない問いかけ。
理由が判るのなら、ブラッドだって知りたい。
だが何故か判らないが惹きつけられるのだ。
心が、魂が、彼女が欲しいと訴える。
それはまるで呪いにも似た想い。
捕らえられ囚われ、そして執着を抱いた。
自分でも気付かなかったが、ブラッドは束縛したいタイプだったらしい。
アリスが他の何も見ないように目を塞ぎ、自分の領域でずっと暮らして欲しい。
笑うのも泣くのもブラッドに関して以外は赦せない。
これは恋なんて生易しい感情ではない。
だから可哀想だがアリスには諦めてもらうしかない。
どうしたってブラッドが諦める気はないのだから、この手に堕ちて来てもらうしかない。
静かに空を見上げていれば、ノックの後に腹心が姿を現した。
「ブラッド、頼まれてた調べもん終わったぜ」
「そうか」
「なぁ、ブラッド。アリス、大丈夫かな?あれから一度も顔見せてくんねえし、向こうに行っても会ってくれねぇ」
「さてな。だが待つのも飽きた。そろそろ行動に移す」
「ってことはアリスに会えるのか?」
「ああ、そうだ。アリスとてそろそろ私の『顔』が見たいだろうしな」
皮肉を込めて呟けば、エリオットは不思議そうな顔をしてウサギ耳を動かした。
何を調査させたか知っているだろうに、その理由までは教えていないのでブラッドがいらついている理由が判らないのだろう。
暫く瞬きを繰り返していたが、一つ頷くとからりとした笑顔を浮かべた。
「んじゃ、俺はアリスのためににんじんケーキを用意してもらってくるぜ!出発が決まったら教えてくれよ」
「ああ。私の分は用意しなくていいからな。お前とアリスの分を増やしなさい。いいか、くれぐれも私の分は必要ない」
「ブラッド・・・お前ってなんていい奴なんだ!大丈夫だ!遠慮しなくてもブラッドの分もきっちりと用意させるからな!」
「おい、エリオット!私はいらないと・・・ッ」
先走り気味なエリオットを静止しようと伸ばされた手は、虚しくも宙を掴むだけだった。
つい一年ほど前の自分が今の自分を見たのなら、鼻で笑っているだろう。
誰かに振り回される人生など考えたこともなく、誰かに執着する自分など想像したこともなかったのに。
先日購入したばかりの紅茶を一口口に含む。
味も香りも最高級品のはずなのに、いつものように紅茶に酔えないのはきっとあのネガティブな少女の顔が離れないからだ。
いつだってブラッドに対して胸を張っていた彼女が見せた脆さは、未だに記憶に新しい。
別に何か特別なことをしていたわけじゃない。
いつものように彼女を誘い、午後のお茶会としゃれ込んでいただけだ。
普通に話し普通に紅茶を飲み、普通に過ごしていたはずなのに、気がつけば彼女は泣いていた。
何が切欠だったか未だに判らない。
それでも何かが切欠で、ブラッドの向こうに『誰か』を見たアリスは涙腺を崩壊させた。
それが酷く苛立たしく───とても胸糞悪い。
「・・・どうして彼女なのだろうな」
答えのない問いかけ。
理由が判るのなら、ブラッドだって知りたい。
だが何故か判らないが惹きつけられるのだ。
心が、魂が、彼女が欲しいと訴える。
それはまるで呪いにも似た想い。
捕らえられ囚われ、そして執着を抱いた。
自分でも気付かなかったが、ブラッドは束縛したいタイプだったらしい。
アリスが他の何も見ないように目を塞ぎ、自分の領域でずっと暮らして欲しい。
笑うのも泣くのもブラッドに関して以外は赦せない。
これは恋なんて生易しい感情ではない。
だから可哀想だがアリスには諦めてもらうしかない。
どうしたってブラッドが諦める気はないのだから、この手に堕ちて来てもらうしかない。
静かに空を見上げていれば、ノックの後に腹心が姿を現した。
「ブラッド、頼まれてた調べもん終わったぜ」
「そうか」
「なぁ、ブラッド。アリス、大丈夫かな?あれから一度も顔見せてくんねえし、向こうに行っても会ってくれねぇ」
「さてな。だが待つのも飽きた。そろそろ行動に移す」
「ってことはアリスに会えるのか?」
「ああ、そうだ。アリスとてそろそろ私の『顔』が見たいだろうしな」
皮肉を込めて呟けば、エリオットは不思議そうな顔をしてウサギ耳を動かした。
何を調査させたか知っているだろうに、その理由までは教えていないのでブラッドがいらついている理由が判らないのだろう。
暫く瞬きを繰り返していたが、一つ頷くとからりとした笑顔を浮かべた。
「んじゃ、俺はアリスのためににんじんケーキを用意してもらってくるぜ!出発が決まったら教えてくれよ」
「ああ。私の分は用意しなくていいからな。お前とアリスの分を増やしなさい。いいか、くれぐれも私の分は必要ない」
「ブラッド・・・お前ってなんていい奴なんだ!大丈夫だ!遠慮しなくてもブラッドの分もきっちりと用意させるからな!」
「おい、エリオット!私はいらないと・・・ッ」
先走り気味なエリオットを静止しようと伸ばされた手は、虚しくも宙を掴むだけだった。
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