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*ずっと以前に投稿した学パロアリスの再録です。





高校の制服を、何食わぬ顔で着こなす二人を見て、アリスは眉をしかめた。

またか、と思った。

アリスが彼らに気がつくよりもずっと早くアリスの存在に気がついていたらしい双子は、嬉しそうに駆け寄ってきた。

そして、そのまま勢いを殺す事無く。

全力でアリスに抱きついた。

「ぐっ!」

悲鳴を堪える。

尻から倒れこみ、下が柔らかい芝生でよかったと思った。

そうでなければ、今頃もっと痛い思いをしたに違いない。

涙目になりながら、首にしがみつく二人を睨んだ。

「ディー、ダム」

「何、お姉さん?」

「どうかしたの、お姉さん」

ステレオで声が聞こえた。

どっちがどっちの声か混乱しそうだ。

だが、頭を軽く振ると嬉しそうに目を輝かす彼らに。

「全力で抱きつくのは止めてって言ってるでしょう?」

苛立ちを隠さずに、きつく睨みながら伝えた。

だが。

「でも、僕たちお姉さんを見つけると嬉しくなっちゃうんだ」

「そうそう。自分達でも止められないんだ」

心持ち頬を染めて、嬉しそうに言う彼らに。

気力がどかっと奪われる。

悪気がないのが性質が悪い。

嘘でないから、嫌えない。

決して、いい子ではないと知っているのに。

甘いな、と自分でも思う。

罪のない笑顔の裏に、何があるか理解できないほど純粋でもないのに。

「ねえ、お姉さん。怒ったの?」

「もう、僕たちのこと、嫌いになっちゃった?」

何故、此処まで好意を抱いてくれるのかわからない。

けど、贈られる好意は本物で。

「お姉さん、嫌わないで」

「お姉さん、僕たちちゃんといい子に出来るよ」

「お姉さん、お願い」

「お姉さん、嫌いにならないで」

交互に囁かれ、ため息を殺した。

昼休みもほとんど終わった中庭には、生徒は他にはいない。

こんな光景を他人に見られなくて、本当に良かった。

目立つ事無く、地味に学園生活を送りたいアリスは、それを妨げる存在を見る。

睨む事はもう出来なかった。

「──嫌いになんて、なる訳がないじゃない」

年下の少年達の頭を優しく撫でた。

思ったより声が甘くなり、眉根を寄せる。

それに気づいたのか、気がつかなかったのか。

どちらにしても、素知らぬ顔で、彼らは笑いあった。

そして、囁くような声で。

似たような笑みを浮かべて。

「ねえ、お姉さん」

「僕たち、本当にお姉さんが大好きだよ」

思いもかけないほど強い力で、アリスを抱きしめ。

断言するように、そう言った。

「はいはい」

流すようにそれに頷いたアリスが。

彼らの本気を実感するのは、もう少し後のこと。

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