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淡いクリーム色のプリンセスドレスに身を包んだ守は、人影に混じる人物を見つけ瞳を輝かせた。
連日連夜続くクリスマスパーティーも残り二晩で終るという今日、許婚の実家のパーティーに招待された守は、実家の主宰する日本のパーティーにクリスマスに出席するのを条件に一人でイギリスに顔を出している。
鬼道財閥の娘として適当に大人たちに愛想をふりながら探していた少年は、珍しくも壁の花になっていた。
男にしておくには勿体無いほど綺麗な顔立をアンニュイに染め、きっちりとしたタキシードを上品に着こなしてジュースの入ったグラスを弄んでいる。
立場上人に囲まれることが多いはずなのに、まるで人払いでもしたような静けさに小首を傾げた。
「お久し振りです、エドガー様」
「・・・マモル」
「ご尊顔を拝謁するのは一月振りでしょうが?ご健勝でいらっしゃいましたか?」
彼のホームグランドで、わざと日本語で問いかければ、数度瞬きしてから淡い苦笑を浮かべた。
いつもなら一月ぶりの会合ともなればもっと嬉しそうにするのに、やはり何かあったのだとそれと判らぬよう眉根を寄せる。
近づいてみれば隠せぬ隈や肌の状態の悪さが明確になり、どうしたんだと瞳に疑問を篭めて問いかけた。
「───ベランダに出ないか?」
「ですが、外は寒いでしょう?」
「上掛けを用意させる」
近くに居たボーイに手を叩くと、バルチナス家の使用人である彼はあっという間に二人分の羽織を準備した。
手ずからアンゴラの上掛けをかけてくれたエドガーは、自身も羽織ると優雅な仕草で手を差し伸べる。
彼の手に掌を重ねてエスコートされるままにベランダへと出ると、肌を刺すような冷気に身が震えた。
冬のイギリスは、日本と比べ物にならないほど寒い。
片付いているベランダを除くと、バルチナス家ご自慢の庭は一面の銀世界。イルミネーションもついているが、派手さがないそれは自然に混ざる程度で見事だが過剰な派手さはない。
外気との温度差で曇る眼鏡を外すと、クリアな視界が一層目に染みる。
吐く息が真っ白に染まる中で無言で触れる掌の温かさに浸っていると、冬の空気の中で一段と美しく輝く白銀色の月を見上げたエドガーがひっそりと口を開いた。
「久し振りだな、マモル。元気にしていたか?」
「・・・ええ。健康だけが取り柄ですもの。エドガー様はいかがお過ごしでいらしたんですか?」
「私もいつもどおりだ。勉強に趣味に、あとサッカーを始めた。君には言っていなかったが、チームを作ったんだ」
吐息混じりに教えてくれるエドガーに、、守は微笑した。
恩師からの情報はやはりガセではなかったらしい。
初めから知らないフリをすると決めていたが、予想以上にテンションが低くて少しだけ驚く。
普段の彼を知るからこその違和感に嫌な予感を感じ取りつつ、それでも小首を傾げて微笑んだ。
「エドガー様が?サッカーに興味はお持ちでいらっしゃらないとばかり思ってましたわ」
「君が・・・君が好きなものを、理解したかった。プレイしてみると思ったよりも楽しいものだな。お陰で君の凄さが身に染みて理解できる。彼も、そんな君に憧れたのだろう」
「エドガー様・・・?」
今にも泣き出しそうな笑みに、予感は確信に変わる。
エドガーは悲しみに耐えている。それも、己を保てぬほど大きな悲しみに。
繋いでいた掌に力が篭り、痛みすら感じる強さに彼の余裕のなさを知る。
青緑の瞳は押さえきれない苦しみを湛え、白く細い息を吐き出してから柳眉を吊り上げた。
嫌な予感がした。
ふつふつと不安が湧き上がり、心臓が早鐘を打つ。
聞いてはいけない、聞きたくないと望む心と裏腹に、口は自然と問うていた。
「何が、あったのですか?」
「───先日顔を合わせたヒロトを覚えているか?」
「え?ええ、勿論。先日もメールをいただいて、今日のパーティーに出席するからエドガー様も交えてお話をしようと約束を。・・・そう言えば、まだヒロト様のお顔を拝見していませんわ。まだいらしていないのでしょうか」
「ヒロトは、今日のパーティーに来ない」
沈痛な眼差しでこちらを見詰めながら、エドガーは断言した。
あまりにもきっぱりとしすぎた否定は不自然に強すぎる。
顔を蒼くしたエドガーは真正面から守に向き合うと、繋いでいた手を放して肩へと移動させた。
「・・・体調でも崩されたのですか?つい二日前にメールをいただいたときにはそんな様子は感じられませんでしたけれど。でしたら、次にお会いできるのは冬休み開けですわね。三連休にスペインから足を伸ばしてイタリアへ来てくださるって」
「違う、マモル。ヒロトはもう、何処へも行けない」
「───どういう意味、ですか?」
「聡明な君なら私の様子を見て気がついているのだろう?」
酷く静かな瞳でエドガーは守を抱きしめた。
いいや、抱きしめた、と言うよりはしがみ付いたと表現するほうが適切だろう。
一人で悲しみを抱えるには耐え切れないとばかりに強い力に、ぎゅっと眉を寄せ痛みを堪える。
額を肩口に押し付けたエドガーは、あえぐように言葉を続けた。
「ヒロトは死んだ。昨日の昼、帰宅途中に事故に合ったらしい。現場の検証に寄ると恐らく即死だったそうだ」
「・・・・・・」
唇を噛み締めてきつく瞼を閉じた。
まだ知り合って日は浅いが、幾度もメールのやり取りはしている友達だった。
直接話をしたのは先日のパーティー一度きり。それでも彼の顔は鮮やかに思い出せる。
日に焼けない白い肌に、特徴的な切れ長の瞳。
利発そうな顔立ちに情熱的な赤い髪。
サッカーを語るときは澄ました顔が年相応に笑み崩れて、全身でサッカーを好きだと語っていた。
今日久し振りに顔を合わせたら、次にサッカーをする日を選ぼうと約束していたはずなのに。
抱きついてくるエドガーのタキシードを力いっぱい握りこむ。
皺になるとか、着崩れるとか、そんなことはもう脳裏になかった。
押し寄せる悲しみに流されないよう、必死に目の前の相手にしがみ付く。
ひやりとした空気が肩に当たり、いつの間にか上掛けが飛んでいたのに気がついたが、最早気にすることも出来なかった。
「犯人は見つかっていない。車に跳ねられた痕跡が残っているのに、車両が発見されないらしい」
「どうして?」
「───吉良財閥でも、追えない相手が犯人だということだ」
一言で彼の言いたいことが理解でき、あまりの悔しさに唇を噛み締める。
つまり、財閥の総帥ですら追えない高位にいる相手がヒロトを事故で死なせたのだ。
卑怯にも一人の人間の命を奪いながら、己大事で逃げ続けている。
もしかしたら、跳ねられた瞬間に助ければ命は繋いだかもしれないのに、何故見捨てて逃げたのだろう。
彼にはまだ未来があった。
将来は世界で活躍するサッカー選手になりたいと、メールで語り合ったばかりなのに。
「どうして、ヒロトが死ななければいけないんだ」
「エドガー・・・」
「ヒロトはまだ十二歳だ、私たちとたった三つしか違わない。彼は、来年にはジュニアユースのチームに入って、活躍するはずだったんだ」
「・・・・・・」
「何故ヒロトが死ななければならない。彼が一体何をしたと言うんだ。教えてくれ、───教えてくれ、マモル」
肩口がじんわりと暖かくなる。むき出しになった襟首が濡れる感覚に、エドガーが泣いているのに気がついた。
いつだって気高く凛として背筋を伸ばす彼の涙など初めてで、戸惑いつつも慰めるため頭を撫でる。
他の誰かの前でなく、きっと自分だからこそ見せてくれた弱みを、癒したいと心から願った。
守は吉良ヒロトをそれほど知らない。
サッカーが好きで、吉良財閥の嫡男で、利発で機転が利くスマートな少年という印象しか持ってない。
きっと時間さえあればもっともっと仲良くなれたはずの彼との付き合いは浅く、それでも心にはずっしりと悲しみが圧し掛かる。
守よりずっとヒロトを知っていたエドガーは、悲しみも一入だろう。
基本的に誰相手でも心を許さない彼が、ヒロト相手には対等に向かい合って話をしていた。
年相応の態度は珍しく貴重なもので、それを露にできるほど親しい関係だった。
「全部、俺が受け止めてやる。ここを出たら、お前はまたバルチナス財閥の嫡子の仮面をつけなきゃならない。それが、俺たちが居る世界だ。だから全部吐き出しちまいな。───俺も、お前の悲しみを半分背負うから」
「・・・マモル」
「友達が亡くなるのは哀しいな、エドガー。哀しくて、辛いよ」
温もりを分かち合うように、頬を摺り寄せて掠れる声で呟く。
悲しみや苦しみは弱みになる場合がある。
立場を知るからこそエドガーはぎりぎりまで堪え、守の前でだけさらけ出した。
涙を流した頬は寒さのせいだと誤魔化せる。赤らんだ瞳は瞬きすら惜しんで星を眺めていたからだと言い訳しよう。
瞼を閉じれば鮮やかに浮かぶ友人の笑顔。
本物の星になった彼は、地上に存在する二人の友人を見つけられるだろうか。
もっと時間が欲しかった。
サッカーを愛する彼となら、きっと親友にもなれた。
お互いの立場を理解しつつ上手く距離を計って付き合えたろう。
可能性のつぼみは摘み取られ、誰かの足で踏み躙られた。
それがとても悔しくて悲しい。
「私はサッカーを続ける。友の叶えられなかった夢を、叶えてみせる」
「・・・ああ」
財閥跡取りとしての責務や義務を抱えながら、それでも選んだエドガーにひっそりと頷く。
篭められた決意の固さに、どうしようもなく泣きたくなった。
きらりと輝く星が流れる。
白い軌跡を残したそれは、鮮烈な印象だけを心に残し瞬きの間に姿を消した。
連日連夜続くクリスマスパーティーも残り二晩で終るという今日、許婚の実家のパーティーに招待された守は、実家の主宰する日本のパーティーにクリスマスに出席するのを条件に一人でイギリスに顔を出している。
鬼道財閥の娘として適当に大人たちに愛想をふりながら探していた少年は、珍しくも壁の花になっていた。
男にしておくには勿体無いほど綺麗な顔立をアンニュイに染め、きっちりとしたタキシードを上品に着こなしてジュースの入ったグラスを弄んでいる。
立場上人に囲まれることが多いはずなのに、まるで人払いでもしたような静けさに小首を傾げた。
「お久し振りです、エドガー様」
「・・・マモル」
「ご尊顔を拝謁するのは一月振りでしょうが?ご健勝でいらっしゃいましたか?」
彼のホームグランドで、わざと日本語で問いかければ、数度瞬きしてから淡い苦笑を浮かべた。
いつもなら一月ぶりの会合ともなればもっと嬉しそうにするのに、やはり何かあったのだとそれと判らぬよう眉根を寄せる。
近づいてみれば隠せぬ隈や肌の状態の悪さが明確になり、どうしたんだと瞳に疑問を篭めて問いかけた。
「───ベランダに出ないか?」
「ですが、外は寒いでしょう?」
「上掛けを用意させる」
近くに居たボーイに手を叩くと、バルチナス家の使用人である彼はあっという間に二人分の羽織を準備した。
手ずからアンゴラの上掛けをかけてくれたエドガーは、自身も羽織ると優雅な仕草で手を差し伸べる。
彼の手に掌を重ねてエスコートされるままにベランダへと出ると、肌を刺すような冷気に身が震えた。
冬のイギリスは、日本と比べ物にならないほど寒い。
片付いているベランダを除くと、バルチナス家ご自慢の庭は一面の銀世界。イルミネーションもついているが、派手さがないそれは自然に混ざる程度で見事だが過剰な派手さはない。
外気との温度差で曇る眼鏡を外すと、クリアな視界が一層目に染みる。
吐く息が真っ白に染まる中で無言で触れる掌の温かさに浸っていると、冬の空気の中で一段と美しく輝く白銀色の月を見上げたエドガーがひっそりと口を開いた。
「久し振りだな、マモル。元気にしていたか?」
「・・・ええ。健康だけが取り柄ですもの。エドガー様はいかがお過ごしでいらしたんですか?」
「私もいつもどおりだ。勉強に趣味に、あとサッカーを始めた。君には言っていなかったが、チームを作ったんだ」
吐息混じりに教えてくれるエドガーに、、守は微笑した。
恩師からの情報はやはりガセではなかったらしい。
初めから知らないフリをすると決めていたが、予想以上にテンションが低くて少しだけ驚く。
普段の彼を知るからこその違和感に嫌な予感を感じ取りつつ、それでも小首を傾げて微笑んだ。
「エドガー様が?サッカーに興味はお持ちでいらっしゃらないとばかり思ってましたわ」
「君が・・・君が好きなものを、理解したかった。プレイしてみると思ったよりも楽しいものだな。お陰で君の凄さが身に染みて理解できる。彼も、そんな君に憧れたのだろう」
「エドガー様・・・?」
今にも泣き出しそうな笑みに、予感は確信に変わる。
エドガーは悲しみに耐えている。それも、己を保てぬほど大きな悲しみに。
繋いでいた掌に力が篭り、痛みすら感じる強さに彼の余裕のなさを知る。
青緑の瞳は押さえきれない苦しみを湛え、白く細い息を吐き出してから柳眉を吊り上げた。
嫌な予感がした。
ふつふつと不安が湧き上がり、心臓が早鐘を打つ。
聞いてはいけない、聞きたくないと望む心と裏腹に、口は自然と問うていた。
「何が、あったのですか?」
「───先日顔を合わせたヒロトを覚えているか?」
「え?ええ、勿論。先日もメールをいただいて、今日のパーティーに出席するからエドガー様も交えてお話をしようと約束を。・・・そう言えば、まだヒロト様のお顔を拝見していませんわ。まだいらしていないのでしょうか」
「ヒロトは、今日のパーティーに来ない」
沈痛な眼差しでこちらを見詰めながら、エドガーは断言した。
あまりにもきっぱりとしすぎた否定は不自然に強すぎる。
顔を蒼くしたエドガーは真正面から守に向き合うと、繋いでいた手を放して肩へと移動させた。
「・・・体調でも崩されたのですか?つい二日前にメールをいただいたときにはそんな様子は感じられませんでしたけれど。でしたら、次にお会いできるのは冬休み開けですわね。三連休にスペインから足を伸ばしてイタリアへ来てくださるって」
「違う、マモル。ヒロトはもう、何処へも行けない」
「───どういう意味、ですか?」
「聡明な君なら私の様子を見て気がついているのだろう?」
酷く静かな瞳でエドガーは守を抱きしめた。
いいや、抱きしめた、と言うよりはしがみ付いたと表現するほうが適切だろう。
一人で悲しみを抱えるには耐え切れないとばかりに強い力に、ぎゅっと眉を寄せ痛みを堪える。
額を肩口に押し付けたエドガーは、あえぐように言葉を続けた。
「ヒロトは死んだ。昨日の昼、帰宅途中に事故に合ったらしい。現場の検証に寄ると恐らく即死だったそうだ」
「・・・・・・」
唇を噛み締めてきつく瞼を閉じた。
まだ知り合って日は浅いが、幾度もメールのやり取りはしている友達だった。
直接話をしたのは先日のパーティー一度きり。それでも彼の顔は鮮やかに思い出せる。
日に焼けない白い肌に、特徴的な切れ長の瞳。
利発そうな顔立ちに情熱的な赤い髪。
サッカーを語るときは澄ました顔が年相応に笑み崩れて、全身でサッカーを好きだと語っていた。
今日久し振りに顔を合わせたら、次にサッカーをする日を選ぼうと約束していたはずなのに。
抱きついてくるエドガーのタキシードを力いっぱい握りこむ。
皺になるとか、着崩れるとか、そんなことはもう脳裏になかった。
押し寄せる悲しみに流されないよう、必死に目の前の相手にしがみ付く。
ひやりとした空気が肩に当たり、いつの間にか上掛けが飛んでいたのに気がついたが、最早気にすることも出来なかった。
「犯人は見つかっていない。車に跳ねられた痕跡が残っているのに、車両が発見されないらしい」
「どうして?」
「───吉良財閥でも、追えない相手が犯人だということだ」
一言で彼の言いたいことが理解でき、あまりの悔しさに唇を噛み締める。
つまり、財閥の総帥ですら追えない高位にいる相手がヒロトを事故で死なせたのだ。
卑怯にも一人の人間の命を奪いながら、己大事で逃げ続けている。
もしかしたら、跳ねられた瞬間に助ければ命は繋いだかもしれないのに、何故見捨てて逃げたのだろう。
彼にはまだ未来があった。
将来は世界で活躍するサッカー選手になりたいと、メールで語り合ったばかりなのに。
「どうして、ヒロトが死ななければいけないんだ」
「エドガー・・・」
「ヒロトはまだ十二歳だ、私たちとたった三つしか違わない。彼は、来年にはジュニアユースのチームに入って、活躍するはずだったんだ」
「・・・・・・」
「何故ヒロトが死ななければならない。彼が一体何をしたと言うんだ。教えてくれ、───教えてくれ、マモル」
肩口がじんわりと暖かくなる。むき出しになった襟首が濡れる感覚に、エドガーが泣いているのに気がついた。
いつだって気高く凛として背筋を伸ばす彼の涙など初めてで、戸惑いつつも慰めるため頭を撫でる。
他の誰かの前でなく、きっと自分だからこそ見せてくれた弱みを、癒したいと心から願った。
守は吉良ヒロトをそれほど知らない。
サッカーが好きで、吉良財閥の嫡男で、利発で機転が利くスマートな少年という印象しか持ってない。
きっと時間さえあればもっともっと仲良くなれたはずの彼との付き合いは浅く、それでも心にはずっしりと悲しみが圧し掛かる。
守よりずっとヒロトを知っていたエドガーは、悲しみも一入だろう。
基本的に誰相手でも心を許さない彼が、ヒロト相手には対等に向かい合って話をしていた。
年相応の態度は珍しく貴重なもので、それを露にできるほど親しい関係だった。
「全部、俺が受け止めてやる。ここを出たら、お前はまたバルチナス財閥の嫡子の仮面をつけなきゃならない。それが、俺たちが居る世界だ。だから全部吐き出しちまいな。───俺も、お前の悲しみを半分背負うから」
「・・・マモル」
「友達が亡くなるのは哀しいな、エドガー。哀しくて、辛いよ」
温もりを分かち合うように、頬を摺り寄せて掠れる声で呟く。
悲しみや苦しみは弱みになる場合がある。
立場を知るからこそエドガーはぎりぎりまで堪え、守の前でだけさらけ出した。
涙を流した頬は寒さのせいだと誤魔化せる。赤らんだ瞳は瞬きすら惜しんで星を眺めていたからだと言い訳しよう。
瞼を閉じれば鮮やかに浮かぶ友人の笑顔。
本物の星になった彼は、地上に存在する二人の友人を見つけられるだろうか。
もっと時間が欲しかった。
サッカーを愛する彼となら、きっと親友にもなれた。
お互いの立場を理解しつつ上手く距離を計って付き合えたろう。
可能性のつぼみは摘み取られ、誰かの足で踏み躙られた。
それがとても悔しくて悲しい。
「私はサッカーを続ける。友の叶えられなかった夢を、叶えてみせる」
「・・・ああ」
財閥跡取りとしての責務や義務を抱えながら、それでも選んだエドガーにひっそりと頷く。
篭められた決意の固さに、どうしようもなく泣きたくなった。
きらりと輝く星が流れる。
白い軌跡を残したそれは、鮮烈な印象だけを心に残し瞬きの間に姿を消した。
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