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「あれが、『鬼道守』」


遥か眼下のフィールドで笑う少女に目が奪われる。
圧倒的な実力差で仲間が次々と倒れていくのに、彼女の瞳からは輝きは失せない。
集中的に浴びせられるシュートを防ぎながら、体中傷だらけになりながら、それでも彼女は笑っていた。

ポジションはゴールキーパー。情報にずれはあるけれど、過去の呼び名を髣髴とさせるプレイは変わらない。
『不屈のポラリス』。
二年前、イタリアサッカー界から姿を消した天才ミッドフィルダー。
ジュニアユースチームで相棒のフィディオ・アルデナと共に最年少ながら将来を嘱望されていた鬼才。
フィールドの中を誰より自由に、誰より楽しげに駆け抜けて、性別の壁すら乗り越えたカリスマを持つ司令塔。


「そして、あそこに居るのは『円堂守』」


雷門の守護神と呼ばれる少女に、昔の精彩はない。
躍動感のある伸びやかなバネを活かして走らないし、盤上から操るように選手を動かした指令の声も聞こえないけれど、それでも彼女は『ポラリス』と呼ばれる人間だ。
絶対に大丈夫だと笑みを絶やさずゴールを守り、仲間に信頼を預け、そして仲間に信頼されている。
北極星が旅人の導になるように、彼女の存在自体が仲間にとっての導だった。


「例え苗字が変わっても、例えポジションが変わっても、君は君のままなんだね」


掌を天に掲げ、黄金色の魔人を操る少女に瞳を細め、少年は嬉しげに微笑んだ。
眼差しに篭められるのは狂気を含んだ憧れか。それとも単なる強すぎる思慕なのか。
もう少年本人にも判りはしない。

理解しているのは、あそこでプレイする少女だけが特別で、輝いているという事実。
そっと胸に手を当て淡く微笑む。
蕾が花開くようにゆっくりと艶やかに綻んだ笑みは、とても美しく哀しげだった。

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