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その昔、極東の地に神子を崇める一族が住む島があった。
島は神子を愛する龍神により守護を得て、どれだけ海が荒れようとどれだけ雨風が吹こうとも島は豊穣に溢れていた。
神子を愛する龍神は神子を守るため八人の守護者を選び自ら創造した玉を与えた。
玉を持つのは者は神子の力を借りて特殊な方法で神子を守り続けた。
そうして島は龍神と彼の愛する神子の尽力により長き間平和を保ち続けた。

───それは大陸に伝わった、神話に近い物語。



「これはいつの頃からか大陸に伝わった物語。東の国の存在がまだ確立されてない時代から私達の国にはこの話が受け継がれてきた」


真っ向から問い詰めても動揺一つ見せずに笑顔を保った少女に望美は苦笑する。
予想以上に度胸があるらしい彼女の顔色を読むのは至難の業で、それでも逃す気がない自分に嫌気が差す。

あかねは十中八九『鬼』の関係者だ。
すぐに気がつかなかったが、噂はそこかしこで聞いたことがある。
『鬼』の首領が掌中の珠として扱う唯一の姫。
龍に愛された神子であり、神通力と呼ばれる力を扱う不可思議な存在。
尊き存在でありながら、穢れていると呼ばれる『鬼』と行動しているのは『神子』が不完全であったから。
八人の守護者を持たなかった神子。そのおかげで侵略に足を伸ばした『鬼』に島は滅ぼされた。
何故『鬼』が島を滅ぼしたのか、その理由は判らない。
『鬼』として生きる彼らが『神子』を生かしたか判らない。
判らないけれど、確かに彼女こそが『神子』だと感じた。
『受け継がれる血』が、あかねが自らと同じ存在だと叫んでいた。


「『鬼』に愛された薄幸の『紫の姫』。どうして紫なのか、何の意味があるのかずっと考えていたけれど、あれはあなたの名前にかけた言葉だったんだね」


東の国には大陸にはない文化が発達している。
あかねの名前は茜色を語源にしているのだろう。
この言葉は東の国の歌に使われる枕詞というものにもなる。
『あかねさす』。この言葉が掛かるのは『日』、『昼』、『君』、そして『紫』。
他にもまだあるが、勉強不足な望美に浮かぶのはこれくらいで、だからこそ確信を得た。
凛と背筋を伸ばして座るあかねは、静かに微笑みを湛えている。


「もう一度聞くよ。私に、鬼の船の居場所を教えて」


遠い血縁に問いかければ、瞳を伏せた少女は物憂げに嘆息した。
儚げな様子は今にも消えてしまいそうで、泣き出す寸前の迷子の子供のようだった。

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