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【6日目】


「・・・貴方が十代目」

ぽつりと呟かれた言葉に琥珀色の瞳を僅かに見開いたその人は、しゃがみ込むと淡い微笑を浮かべた。
八の字に眉を下げているが、雰囲気は酷く穏やかだ。
年齢は違うがそっくりな顔が二つ並び、獄寺はうっとりと手を組んでその様子を眺めた。
本当ならカメラとビデオを装備したかったが、その装備はドン・ボンゴレの執務室では許可されていない。
だから代わりに心のメモリーに刻み込むことにした。
例え体が死しても、魂は永久に忘れないだろう。
夢のような光景は幸せと陶酔を獄寺にもたらす。


「十代目?どうしてこの子が俺を十代目って呼ぶのさ、リボーン」
「そりゃ育て親が獄寺だからな。学習しちまったんだろ」
「あー・・・獄寺君が親。親ね」

どこか遠い目をした綱吉に、隣に居たリボーンが楽しそうに口角を上げる。
室内でも手放さないボルサリーノを指先で上げると、その秀麗な顔をさらししげしげと子供を覗き込んだ。
そんなリボーンの様子も無視した子供は、ただ一心に綱吉だけを見詰める。
リボーンは先ほどとは違う笑みを一瞬だけ浮かべると、ボルサリーノで表情を隠した。

「さすが獄寺が育てた餓鬼だな。お前しか見ねぇ」
「・・・あー・・・獄寺君が育てた子供だもんねぇ。いくら俺の炎が元でも獄寺君混じってるもんねぇ」
「そんなっ、俺と十代目が混じってるなんて、俺、俺」
「変な意味じゃないから。君が想像してる意味じゃないから」


何処か疲れた様子の綱吉に、ククッと喉を鳴らして笑ったリボーンが獄寺を見る。
隣に並ぶのが自然に見える彼らの関係は獄寺の憧れで、同時に目標であった。
自分が綱吉の右腕の自覚はある。
誰よりも崇拝する主がそれを宣言し、そして獄寺自身がそれを喜び勇んで享受していた。
それはとても光栄で幸せな現実だが、獄寺の目標は彼の全幅の信頼を得ることだ。
リボーンと綱吉の関係はまさしくそれを表しており、獄寺にとって二人の関係は理想だった。
リボーン以外の誰かがその地位にあるなら激しく嫉妬しただろうが、彼が相手なら今更嫉妬も沸かない。
それくらい綱吉のリボーンに対する信頼は絶大で、羨ましいほど絶対だった。

「それにしても・・・この匣アニマルは、死ぬ気の炎を宿してるときのツナだな。間抜け面が少しは引き締まって見える」
「失礼な」
「何だ?否定できるのか?」
「───否定できないから、失礼だって言ってるんだよ」

一つため息を吐いた綱吉は、片腕に乗せるようにして子供を抱き上げる。
そうして瓜二つな顔立ちの子供を覗き込むと複雑な顔で苦笑した。

「それで、獄寺君。何故君はこの子を俺に会わせたかったの?」
「え?それは、その、ウーノさんが十代目に会いたがったからで・・・」
「ウーノさん?」
「はい。Un'ombraからとって、ウーノさんです」
「Un'ombra・・・影、か。中々いいネーミングセンスだが、ミニツナじゃダメだったのか?お前ならそう呼ぶかと思ったが」
「そうですね。リボーンさんが仰る通りウーノさんは十代目にそっくりです。ですが、十代目ではない。だから、ウーノさんなんです」
「・・・大した忠誠心だ」

くつくつと哂ったリボーンに、獄寺も僅かに口角を上げて見せた。
そう、この子供はどこまで行ってもUn'ombraでしかない。
他の誰が認めようと、獄寺にとってその事実は変わらない。
静かな眼差しを向ける子供に胸も痛まない。
それが、獄寺が獄寺たる所以だから。

子供は獄寺の闇すらも見透かすように目を細め、そして自分を抱き上げるその人に顔を向けた。
大人しいが何処か老成した雰囲気もあり、確かに彼は死ぬ気の炎を纏った綱吉に似ているかもしれない。
喜怒哀楽を前面に出すでもなく、ただ静かに存在した。

「俺が、隼人に頼んだ。俺が、十代目に会いたかった」
「───それは何故?」


「俺の、最後の成長のために、貴方の炎を分けてください」

彼の言葉に、獄寺は大きく目を見張った。

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