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■銀時→神楽←高杉

「神楽ちゃん、お願いだ!銀さんを・・・銀さんを助けてっ」

それほど長い間会わなかった訳でもないのに懐かしいと感じる少年に必死の面持ちで乞われ、神楽は一つ瞬きをした。

──────────────────────────────

「さて。あなたには、これ以上邪魔されたくないんですよ」
「邪魔?邪魔なんてした記憶はねぇな~。オレはオレのモンだけ返してくれりゃァ、後は文句はねぇよ」
「あなたのもの?この船に、あなたのモノなんかありましたか?」
「あるだろ?めちゃめちゃ可愛い、寂しがり屋のウサギがよぉ」
「・・・ウサギ、ですか。はてさて。そんな可愛らしい生き物が、この船に乗っていたかどうか・・・」

 はてさて。腕を組み、考え込む振りをしながら武市は目の前の男を観察した。
 銀色の髪に、人を食った笑み。捕虜の分際で、それでも何処までも真っ直ぐに自分を見上げる。以前、神楽を捕まえた時に使った留め具は夜兎の力でもびくともしなかった代物だ。そう簡単に人間が外せるものでもない。仲間が助けにこれる場所でもない。ここは空の上で、船には高杉を仰ぐ仲間が集結している。無事でいられる保証もない。それなのに、彼は何処までも不屈だ。
 どうしたものか。考え込んでいると、いきなりドアが蹴破れた。

「武市変態」
「・・・武市先輩と呼びなさい」

 いつも自分をこき下ろす後輩よりも心持ち高い声。少女然としたそれは、武市の好むものでもある。断じてロリコンではない。フェミニストなだけだ。
 幾人もの少女を観察してきた武市をして将来有望とする桃色の髪を揺らし空の色を映しこんだような大きな青い目の少女、神楽は無表情のまま彼の隣に並んだ。

「・・・誰に聞きました?」
「誰でもいいアル。これは、どういう事ネ?」
「邪魔者を捕らえた。ただ、それだけでしょう」
「──こんな死んだ魚のような目をした男、何の邪魔にもならないアル」
「・・・そうでしょうか?実際問題、彼には何度も計画の邪魔をされています。そろそろ処分してもいい頃合だと思いますが?」
「まだ、晋助には言ってないのカ?」

 聞かれた問に少し迷う。暫しの逡巡の後正直に答えた。決して神楽が武市好みの将来有望な顔をしているからではない。仲間を信頼する心故の行動だ。

「はい。まだ、捕らえたばかりですのでね」
「そうか。それなら、ちょうどいいアル」
 その愛らしい容姿にニヤリした悪人笑いを浮かべた神楽は、躊躇なく武市の腹にボディーブローを決め込んだ。
「ぐっ」

 油断していた武市の鳩尾にそれは綺麗に決まり、うめき声を漏らしその場に蹲る。口から泡を噴きながら一撃で沈んだ相手を見て、神楽はフンと鼻を鳴らした。

「コイツ、マジ弱いアル。RPGで言うなら、最初は苦労するけどすぐに経験値の足しにもならなくなるキャラそのものネ」
「おいおい。神楽ちゃん。何しちゃってんの?」

 武市にまたがり懐をあさくる神楽に、思わず突っ込みを入れてしまう。

「勇者は悪者を倒した後、賃金を強奪するものヨ。こうして世の厳しさと、己の無力さを雑魚に感じさせてやるアル」
「オイオイオイ。随分とシビアな勇者様だな」
「当たり前アル。渡る世間は鬼ばかりなのヨ。無償で他人に奉仕なんて余程のマゾくらいアル」

 出てきた財布を握りこむと、ポンと投げて宙で掴んだ。行動も悪戯っ子のような微笑も、一緒に暮らしていた頃と変わりなくガラにもなく安堵のため息が零れる。
 しかしながら覚えている面影と重なる部分も多い少女は、漆黒のチャイナドレスを見事に着こなし万事屋にいた頃よりも大人っぽく見えた。懐から酢昆布を取り出し加えた神楽はくちゃくちゃとやりながら銀時に近づく。無防備にも銀時の顔を覗きこみこてりと首を傾げた。

「──こんな所で何やってるアルカ、銀ちゃん」
「ああ?見てわかんねぇ?捕まっちゃってるんだけど」
「銀ちゃんマゾカ?こういうプレイが好きアルカ?これだから、天パは」
「ちょっとォォォ。何でもかんでも天パの一言で片付けないでくれないィィ?これでも銀さんグラスハートだから。硝子細工のような心を持ってるから」
「はっ。何図々しい事言ってンのヨ、このマダオ」

 呆れたと言わんばかりの眼差しを向けると、腕を思い切り引く。小さな掌は二つとも傘の柄を握り、その威力を良く知る銀時の額から汗が一筋流れ落ちた。

「え?ちょっ、待って神楽・・・」
「待ったなしヨ。将棋の世界は、厳しいアル」
「それ、将棋じゃなくて、勝負だから!さすがにここから命綱なしで落ちたら、銀さん死んじゃうから!」
「大丈夫ヨ!人類は滅しても天パは生き残るって誰かが・・・」
「誰かって誰だよ!?そんな訳わかんない情報で銀さんを船から落とすの?あ?ちょっ、待って、ねぇホントお願い神楽ちゃん!!」
「待ったなしヨ。──早くしないと、アイツが来るネ」
「アイツ・・・?ちょ、神楽!!行くなら、お前も一緒に」
「バイバイ。銀ちゃん」

 小さく微笑むと、傘を構えた。眇めた眼差しが銀時を捉える。それを見て瞳を丸めた。
 微笑んだ神楽の瞳は、悲しげな色が宿っていたから。

「悪い人に、態と捕まっちゃダメアルヨー」
「神楽!!」

 言われた言葉に、少し息を呑む。それは不器用な少女なりのさよならの言葉に他ならなかった。態と捕まったということを、少女はキチンと理解していた。
 拘束具で括られたままの腕がもどかしい。こんな目と鼻のような距離でも、まだ彼女に届かない。このままでは。

「ふんごぉー!!」

 メキリと音がして、拘束具が緩む。だが、それが外れるよりも先に、体が宙を舞っていた。

「ウッソォォォ!?」

 投げ出された感覚に、思わずギュと瞼を閉じた。

──────────────────────────────

 開いた穴から、叫びつつ落ちていく銀時を眺める。海に落ちる前に、平賀の作ったカラクリで彼と一緒に新八がキャッチしたのを見届け、顔を引っ込めた。

「・・・何してんだ?神楽ァ」

 後ろから聞こえてきた声に、無表情で振り返った。姿を現した晋助に驚く必要はない。気配は途中から感じていて、むしろ今更姿を現したことにこそ驚く。

「何ネ片目。覗き見カ?これだから、モテル女は辛いアル」
「オレにばれたらやばい事でもしてたのか?」
「──何も。お前にばれた所で痛くも痒くもないことしかしてないネ。私がばれて困るのは、ピン子のサインの隠し場所くらいアル」
「ふん・・・。こっちに来い、じゃじゃ馬」
「・・・・・・」

 無言で近づく。ただ視線を向けられているだけで肌がチリチリとした感触を訴えた。眺める眼差しは強いが晋助は何も言わない。しかし、言葉以上に目は有言だった。何もかも見透かすように、隠し事など許さないと。

「一度は許してやる。二度目はないと思え」
「っ」

 ねとりとした何かが触れ耳元に痛みが走る。思わず眉を寄せれば粘着質な音が鼓膜に広がった。
 噛み切ったそこをゆっくりと舐め、晋助は満足気に笑った。

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