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【一日目】


「はい、お小さい十代目。洋服の用意が出来ました」

蕩けるような笑顔を浮かべた獄寺は、仕事を即効で終わらす片手間で服屋を呼びつけた。
予め計っておいたサイズを電話で告げておいたため、持ってきた衣服はどれもミニ綱吉(名義上そう呼ぶことにした)にとてもよく似合っている。
若干サイズが合わないものはその場で全て手直しさせ、今では室内がちょっとした衣裳部屋状態になっていた。
普通に考えれば365日一枚ずつ着ても余る数を購入した彼はこの上なくご満悦だ。
揃えた衣装の中に女の子用のものも混じっているのは見てみぬ振りをするポイントの一つだろう。

琥珀色の瞳を震わせ、おどおどとした表情で自分を見上げるミニ綱吉を見て獄寺は鼻血を噴出しそうになったが気合で堪える。
そんなことをしたらただでさえ遠い距離が尚遠のくと、一度経験し理解した。

「どれがいいですか?どれもあなたに似合うので、どれを選んでも結構ですよ」
「・・・・・・」
「あ、申し遅れました。俺の名前は獄寺隼人。偉大なるドン・ボンゴレである沢田綱吉さんの右腕で守護者を勤めさせていただいております」
「・・・・・・」
「あなたのオリジナルの方ですが、強く麗しく格好よく頭が良く優しく柔らかで温かく穏やかで、───そして共にあるだけで俺を幸せにしてくれる最高のお方です」
「・・・・・・」
「あなたは十代目の炎を元に生まれたと伺いました。ならば俺をあなたの守護者と思い、どうぞ傍に置いてやってください」

にこにこと。普段の仏頂面が嘘であるかのように獄寺は幸せそうに怯える子供に告げる。
だが彼はずっと革張りのソファの後ろから顔を覗かせ、大きな琥珀色の瞳で獄寺を見上げる。
その瞳の色は現在の彼と同じで、過去の彼よりもずっと濃い。
小さな体を震わせ警戒するように見上げる姿に、獄寺は小さく微笑んだ。

それは、彼が綱吉だけに見せる甘く優しげな微笑み。
先ほどまで見せていたピンクのオーラ垂れ流しのものも綱吉専用だけれど、これは本当にプライベートな時にしか見せない、幸せだと嬉しいのだと全力で伝える崩れた笑顔。
綺麗な顔をほにゃりと崩し、あなたが好きですと全身で伝える獄寺に、彼の主はいつだって苦笑してこう告げる。
『美形台無しだね、獄寺君』と。
言葉だけ告げれば残念そうだが彼の表情は裏腹で、眉を下げた彼独特の情けなくも見える優しげな苦笑に変わるから、自分がどんな顔をしているか判らないがきっとそれはいいことなんだろうと判断している。

「俺は、あなたの味方です」
「・・・・・・」
「大丈夫です。俺は貴方を傷つける気はありません」

絨毯の上に膝を付くと、両手を広げる。
子供の相手など真っ平御免だ。昔大好きな人の周りにうろつく牛柄の餓鬼が最悪だったので今でも近くを通るだけで眉間に皺が寄る。
彼の命令がない限り絶対に近寄りたくないし、近寄る気もない。

「いらっしゃい」
「・・・・・・」

言葉こそ何も発さないが、おずおずとソファから身を乗り出した子供に一層笑みが深くなる。
彼がこんなにも愛しく感じられるのは、きっとその身から漏れる波動が、自分が一番と考える方と同じだからだ。
温かく優しく凛とした波動。
それは、まぎれもなく彼の主である沢田綱吉が持つもので、彼の分身と思えばこそ愛しさも募る。
ゆっくりと近づき様子を見ながら獄寺の腕に納まった子供の頭を撫でると、嬉しそうに瞳を細めた。
触り心地の良い髪に手を通し、幾度も幾度も梳く。

「あなたのお名前はどうしましょうか」
「・・・・・・」
「沢田さんは微妙だし、綱吉さんは恐れ多い。ツナなんてもっての他だし、十代目、はあの人をの呼称だし。───・・・十代目、十世、十代目の分身、影・・・Un'ombra」
「・・・・・・」
「Un'ombra。ウノンブラ(影)から取ってウーノで如何でしょうか?」

伺うように瞳を覗くと、こくり、と肯定の意が返った。

「ならばあなたは、ウーノさんです。宜しくお願いしますね、ウーノさん」

微笑めば控えめな笑みが返り、獄寺の胸はぽかぽかと暖かくなった。
これが彼との始まりの日だった。

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