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■桂&神楽


 目の前で炸裂した爆弾に、目を細める。この球体には見覚えがある。何だろうと首を傾げれば、背後に新たな気配が生まれた。
 何もないところから突然出現したように感じるそれに、ここまで見事に気配を隠し切る相手は久しぶりだと、そう思う。

「・・・また子」
「何スか」
「お前、晋助の方に行ったほうがいいアル」
「ああん?今日の作戦は武市先輩が立てたものっス。勝手に位置換えは出来ないっス。ロリコンの変態だけど、アイツはあれでいて策謀だけは上手いっス」
「──判ってるアル。でも、相手が悪かったネ。異分子が入り込んだみたいアル」
「・・・・・・」

 神楽の青い目が深くなる。その目を見てまた子は舌打した。夜兎族というだけあって、神楽の戦闘センスはぴか一だ。
経験は自分とそれほど変わらないだろうと思うが、勘という点では遙かに勝る。それを自覚しているから、躊躇を捨てて踵を返した。

「晋助様に怒られたら、全部お前の所為っスからね!卵かけご飯が食えなくなると思えよ!」

 捨て台詞と思しきモノを吐き去っていくまた子を見送ると、神楽は改めて傘を差しなおした。そして、暗くなっている場所に目を凝らす。神楽の考えが当たっているなら、そこに居るのは旧知の人物であるはずだった。

「──さっさと出てくるヨロシ、ヅラ」
「ヅラじゃない。桂だ」

いつもの決め台詞を静かに放った相手は、ゆっくりと姿を現した。今日は、普段潜伏しているときの僧の姿ではない。傍らにいるエリザベスは、『・・・・・・』と書かれた看板を持って立っていた。

「沈黙まで書くなんて、エリー馬鹿ネ」
「エリザベスを馬鹿にするなァァァ!これでも、エリザベスは一生懸命なんだぞ!」
「ハイハイー。わかったヨー」

 肩を竦める神楽は、ニヤリと笑みを浮かべた。

「お前らだけアルか?他の攘夷志士はどうしたアルか」
「邪魔になるので置いてきた。リーダー、止まる気はないのか?」
「男はドイツもコイツもオランダも。皆おんなじ事を言うアル」
「オランダは言わないだろう」
「──・・・私はもう、止まれないネ」

 音を立てて、弾を装てんする。狙いを定めるのに迷いはなく後は引き金を引くだけだ。その状態のままぶれることなく無造作に桂に傘を向けた。

『・・・桂さん・・・』
「ああ・・・、判っている」

 桂が呟くと同時に、エリザベスが炸裂弾を地面にたたきつけた。衝撃が走る。
 てっきり桂が先に動くと思っていた神楽は対応が数瞬遅れ、定めていた銃口を逸らし思わず傘で顔を庇う。そして間近に生まれた気配に目を見張った。

「ちっ」

 舌打をし、傘を投げる。煙も収まらぬままで、それでも寸分違わぬ方向に狂いなく飛んでいった傘は、金属音の後、弾かれた。

「・・・さすがネ」

 本気で感心して、声が漏れた。これが、銀時の仲間の実力。一撃でしとめれなかったなど、久しぶりだ。自分に向かい突進してくる桂を見て、神楽は目を細めた。
 獲物を狙う肉食獣のような表情を一瞬だけ浮かべ、身を低くする。

「!?」

 一瞬だった。桂が瞬きをするより早く、彼の胸の下に潜り込む。そしてそのまま、もてる限りの力で蹴りを放った。

「っ」

 声は上がらなかった。狙い定めたはずの神楽の蹴りを顔面すれすれで避けた桂は、真剣をそのまま神楽の肩に突き刺した。銀時と違い迷いのない刀は神楽の肩を貫通する。

「・・・・・・」

 地面に串刺しにされ、圧倒的な不利の状況でそれでも神楽は楽しげに笑った。無邪気な、まるで遊びの最中に子供が見せるような笑顔に桂の眉が顰められる。

「ヅラ。お前、凄いアル。私にここまで攻め込めた相手、久しぶりヨ」
「そうか」

 ポーカーフェイスを崩した神楽とは違い、依然表情を変えぬまま桂は返事をした。淡々とした口調は神楽の誉め言葉に微塵も反応を返さない。親しい相手を刺した動揺も感じられず、やはりさすがだと感心する。普段どれだけアホに見えようと、やはり彼は百戦錬磨の侍であるのだ。

「誉めてやるアル!お前、本気で強いアル」

 肩を串刺しにされているのに、痛みを感じさせぬ顔で神楽は平然と話す。どくどくと流れる血は地面を汚し土の色を変えていった。暫しその様子を観察していたエリザベスが近づいて、持っていた縄を桂に手渡す。両手で刀を押し込んでいた桂は、片方の手をエリザベスに向けた。
 その瞬間、目を細めた神楽は今度こそ思い切り桂を蹴り上げた。刀を押さえていた桂の手がぶれ鈍痛が体を巡る。だがそれは気にする要素に含まれない。
 エリザベスを巻き込み吹っ飛んだ桂を見て、神楽は肩に刺さっていた刀身を握って刀を一気に抜き取った。押し込まれた刀身が先ほどまでは失血の役割を果たしていたが、それが抜かれることで噴水のように血が溢れる。躊躇なく刀身を握ったお陰で掌まで赤く染った。体を起こしながら流れた血を舐めれば、鉄錆びのような味に不味いと眉をしかめる。ゆっくりと立ち上がると、身を起こそうともがく二人を眺めた。

「──お前、強いけど甘いネ。あそこで止めたら、ダメアル。忘れたカ?私は夜兎ヨ?こんな傷、刀さえ抜けばすぐに治るネ」

神楽の言葉通り、肩から溢れる鮮血はどんどんと量が少なくなる。鼓動と連動するように響く痛みも傷と同様に収まり始めた。
 歴戦の戦士と言えども純血の夜兎の蹴りを受けたのは衝撃が大きすぎたらしい。吹っ飛ばされた体勢を立て直すことすら出来ずにもがく二人を横目に、落ちていた傘を拾うと手が届くほどの間近まで近寄りしゃがみ込んだ。

「・・・晋助の方に皆を行かせたアルか?」
「・・・・・・」
「沈黙は雄弁ヨ。お前、馬鹿ネ。お前の仲間、きっとほとんど死んでるヨ」
「・・・それは、どうかな」
「・・・?」
「今回は、銀時も一緒に来ている」

 その言葉に、神楽は納得した。確かに、銀時なら晋助を止めているかもしれない。

「そうアルか。なら、私も晋助の方に行かなきゃダメアルな」
「・・・今更行っても遅い。高杉は、手を出してはいけないものにまで手を伸ばした。銀時が高杉を許すことはない」
「・・・・・・」
「リーダー。あんまり待たせると、銀時がぐれるぞ」
「・・・大丈夫ヨ。銀ちゃんがぐれそうになったら、皆が止めるアル」
「暴れん坊将軍になってしまうかもしれない」
「将軍?銀ちゃんが将軍アルか・・・。それも楽しいかもしれないアルな」

 寝転んだまま行動を起こさぬ桂を見て、そして神楽は立ち上がった。興味を失ったとばかりに何の未練も持たずに背を向け、爆音の響く方向へ向かう。

「──リーダー」
「何アルか?」
「お前は、幸せか?」
「・・・・・・」

 深い声で問う桂の問いかけに答えることなく、神楽はその場を後にした。 

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