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いたいのいたいのとんでいけ
--お題サイト:afaikさまより--
彼は甘い人間ではない。
それは環境がそうさせるものであり、逃れられない経験が成長をそう促したとも言える。
彼の世界は甘さを持っていればすぐさま喉を食い破られ、その地位と土足で踏み躙られる。
血と硝煙と生と死。
目を閉ざしたくなるほど汚いものがある場所で、彼は背筋を伸ばして誰からも見えるように凛と存在していた。
銃声が鳴り響く中、自身も元・家庭教師から下賜された銃を持った綱吉は、死ぬ気の炎こそ出していないもののドン・ボンゴレとして相応しい覇気を纏っていた。
黒く靡く外套と、最終兵器として身につけられたXグローブ。
白いスーツは比喩でなく火花が散り埃が舞うこの場所でも少しの汚れもない。
視線の少し先では主であるボンゴレX世のために、銘の通り嵐となった同僚が敵を蹴散らしていた。
普段なら自分も彼と並ぶが、今回の了平の立場はそれではない。
立場上ドン・ボンゴレ自らが粛清に赴く回数は少ない。
ボンゴレほどの規模になると一々小競り合い程度で頭が顔を出すのは有り得ない事態で、だからこそ彼は余程大きな対立や彼自身の顔が潰れた場合にのみ姿を出すのが常である。
しかし何事にも例外は存在する。
裏切りを繰り返させないために見せしめが必要だと彼が判断した事態のみ、彼は敵方の規模に関係なく出撃に赴く場合がある。
裏切り者が出るたびに繰り返されるものではないが、周りが油断する寸前に効果的に自分を使うのがボンゴレX世沢田綱吉という男だった。
裏切りは極力なくしたい。
しかしながら強大なファミリーであればあるほど不穏分子を抱え込む隙も大きくなる。
ボンゴレファミリーは余所に比べれば結束は固い方だが、それでも末端まで目が行くわけではない。
仕方がないと言えば仕方がない。当然と言えば当然の結果だ。
だからせめても被害を抑えるために、昔の経験を手痛い学びとして彼は自分を使うのだ。
今回の裏切りは不名誉な事に了平の部隊から起こった。
一週間前新たに迎え入れた直属の部下の行動がおかしいのに気がついたのは、彼が部下になったその日だった。
配属は人事が行ったもので了平の指示が加わったものではないが、裏切りは裏切り。
せめても救いだったのは彼がまだ根を張る前で、ボンゴレが甚大な被害を受ける情報を渡していなかったことだろう。
だが不名誉を受ける羽目になった了平からすれば、それは何も救いではない。
裏切り者だと気付いた時に何らかの処理をしたのではなく、裏切られた挙句に敵に寝返られたとは、幹部として有り得ない失態だ。
今回も粛清のメンバーからは当たり前に外されたのを、何とか粘り連れてきてもらった。
汚名返上の機会は一度しか与えられない。
それをしくじれば彼の信頼は暴落し、名誉挽回には長く時間が掛かるだろう。
自身の武器である拳を固め、リングにいつでも炎を注入できるよう覚悟を定める。
戦いに挑む際の覚悟は千差万別。
今回の了平の覚悟は、『自分の部下だった男を手に掛ける』覚悟だ。
「沢田」
「・・・何だ」
「すまなかった」
謝罪は意味を成さない。
少なくとも謝れば全てが解決するなら警察は要らないし、そもそもマフィアは存在しないだろう。
この場で謝るのは了平のエゴ以外の何物でもなく、それを無言で流したのは綱吉の優しさだろう。
ダイナマイトをばら撒いている獄寺が居たら、今すぐにでも標的になったに違いない。
しかもより確実性を求めて形態変化した武器で赤竜巻の矢を放つだろう。
それくらい了平の言葉は無責任で、誰よりも綱吉に向けていけないものだ。
だが言わずにはいられなかった。
回避できるはずの展開は、了平の甘さで現実となった。
「・・・この展開は想定していた」
「沢田」
「人事に手を回し了平の部下にと選んだのは俺だ。彼が裏切るのは始めからわかっていた」
「・・・なら」
「手を下さなかったのは何故か。それは俺の甘さだ。お前の下なら可能性があると思ったんだ。俺が勝手に期待した、その結果がこれだった」
ぽつりと呟かれた言葉は、酷く重い響きを与える。
結果に期待したというなら、了平はそれを見事に裏切った。
綱吉の言葉は了平に衝撃を与え、一瞬呼吸も止まった。
ショックを受けた様子を隠さない了平を静かな眼差しで見詰めた彼は、僅かに表情を崩す。
「お前にではなく、裏切り者の良心に期待したんだ。お前の部隊は俺の幹部の中でも明るい。良心なんて形にならないものに期待したくなるほど、俺はお前の部隊を信じている。しっぺ返しを喰らったのは俺が甘かったからだ。戦いたくない、殺したくない。そうして逃げて今がある。大事の前の小事と考えてはいけないのにな」
沈痛な面持ちに否定しかけて拳を握る。
甘さを悔やむ彼は、どれだけ時間が経ってもただの優しい人だった。
優しさと甘さの区切りがどこにあるかなんて了平は知らない。
けれど彼のそれを、ただの甘さと切って捨てるには了平は彼を知りすぎた。
唇を噛み締め伝う血の鉄錆び臭い味が口内に広がる。
彼はドン・ボンゴレの仮面を被っているはずなのに、その背後に泣きそうな顔をした子供が見えた気がした。
涙を堪え他人の人生を奪うのに怯えた普通の子供。
綱吉の心の奥に眠る、守らなくてはいけない彼が。
「・・・っ」
喉元まで上がる言葉を無理やり嚥下する。
それは絶対に言ってはいけない。口にしてはいけない。
こんな顔をさせていいはずがないのだ。
彼の日輪であるべき自分が、大空を曇らせていいはずがない。
「俺に」
「・・・・・・」
「俺に命令してくれ、沢田。お前の晴の守護者である、この俺に。今回の失態のさきがけとなった、この俺に」
他の誰かではなく、了平が晴らさなくてはならない。
何故なら他の誰でもなく、この自分が大空を太陽で照らす存在なのだから。
空に雨を降らせてはいけない。
厚く重い雲をのさばらせていけない。
綱吉に似合うのは、綺麗な青空なのだから。
「お前が手を回そうと、これは俺自身の失態だ。名誉挽回のチャンスをくれ」
自分の家族のためだとしても、未だに命令に躊躇う彼を。
涙を流さず悲しむ彼の、背中を押すためそっと囁く。
「俺は死ぬつもりはない。だから俺に命令しろ」
了平は彼ほど優しくなれない。
空が曇れば許せない。雨が落ちれば拭いたい。
その望みを叶えるために、だからこそ彼に言わせたい。
「命令してくれ、ドン・ボンゴレ」
鎮痛に眉を寄せた彼が、ゆるりと唇を持ち上げる。
臆病な彼の言葉に、了平は哂った。
どうしたって何が一番大切かを忘れれない彼を、誰に生きて欲しいか選んでいる彼を、誰かを得るため誰かに命を奪えと命じる彼を。
───慰める術は今日も見つからない。
--お題サイト:afaikさまより--
彼は甘い人間ではない。
それは環境がそうさせるものであり、逃れられない経験が成長をそう促したとも言える。
彼の世界は甘さを持っていればすぐさま喉を食い破られ、その地位と土足で踏み躙られる。
血と硝煙と生と死。
目を閉ざしたくなるほど汚いものがある場所で、彼は背筋を伸ばして誰からも見えるように凛と存在していた。
銃声が鳴り響く中、自身も元・家庭教師から下賜された銃を持った綱吉は、死ぬ気の炎こそ出していないもののドン・ボンゴレとして相応しい覇気を纏っていた。
黒く靡く外套と、最終兵器として身につけられたXグローブ。
白いスーツは比喩でなく火花が散り埃が舞うこの場所でも少しの汚れもない。
視線の少し先では主であるボンゴレX世のために、銘の通り嵐となった同僚が敵を蹴散らしていた。
普段なら自分も彼と並ぶが、今回の了平の立場はそれではない。
立場上ドン・ボンゴレ自らが粛清に赴く回数は少ない。
ボンゴレほどの規模になると一々小競り合い程度で頭が顔を出すのは有り得ない事態で、だからこそ彼は余程大きな対立や彼自身の顔が潰れた場合にのみ姿を出すのが常である。
しかし何事にも例外は存在する。
裏切りを繰り返させないために見せしめが必要だと彼が判断した事態のみ、彼は敵方の規模に関係なく出撃に赴く場合がある。
裏切り者が出るたびに繰り返されるものではないが、周りが油断する寸前に効果的に自分を使うのがボンゴレX世沢田綱吉という男だった。
裏切りは極力なくしたい。
しかしながら強大なファミリーであればあるほど不穏分子を抱え込む隙も大きくなる。
ボンゴレファミリーは余所に比べれば結束は固い方だが、それでも末端まで目が行くわけではない。
仕方がないと言えば仕方がない。当然と言えば当然の結果だ。
だからせめても被害を抑えるために、昔の経験を手痛い学びとして彼は自分を使うのだ。
今回の裏切りは不名誉な事に了平の部隊から起こった。
一週間前新たに迎え入れた直属の部下の行動がおかしいのに気がついたのは、彼が部下になったその日だった。
配属は人事が行ったもので了平の指示が加わったものではないが、裏切りは裏切り。
せめても救いだったのは彼がまだ根を張る前で、ボンゴレが甚大な被害を受ける情報を渡していなかったことだろう。
だが不名誉を受ける羽目になった了平からすれば、それは何も救いではない。
裏切り者だと気付いた時に何らかの処理をしたのではなく、裏切られた挙句に敵に寝返られたとは、幹部として有り得ない失態だ。
今回も粛清のメンバーからは当たり前に外されたのを、何とか粘り連れてきてもらった。
汚名返上の機会は一度しか与えられない。
それをしくじれば彼の信頼は暴落し、名誉挽回には長く時間が掛かるだろう。
自身の武器である拳を固め、リングにいつでも炎を注入できるよう覚悟を定める。
戦いに挑む際の覚悟は千差万別。
今回の了平の覚悟は、『自分の部下だった男を手に掛ける』覚悟だ。
「沢田」
「・・・何だ」
「すまなかった」
謝罪は意味を成さない。
少なくとも謝れば全てが解決するなら警察は要らないし、そもそもマフィアは存在しないだろう。
この場で謝るのは了平のエゴ以外の何物でもなく、それを無言で流したのは綱吉の優しさだろう。
ダイナマイトをばら撒いている獄寺が居たら、今すぐにでも標的になったに違いない。
しかもより確実性を求めて形態変化した武器で赤竜巻の矢を放つだろう。
それくらい了平の言葉は無責任で、誰よりも綱吉に向けていけないものだ。
だが言わずにはいられなかった。
回避できるはずの展開は、了平の甘さで現実となった。
「・・・この展開は想定していた」
「沢田」
「人事に手を回し了平の部下にと選んだのは俺だ。彼が裏切るのは始めからわかっていた」
「・・・なら」
「手を下さなかったのは何故か。それは俺の甘さだ。お前の下なら可能性があると思ったんだ。俺が勝手に期待した、その結果がこれだった」
ぽつりと呟かれた言葉は、酷く重い響きを与える。
結果に期待したというなら、了平はそれを見事に裏切った。
綱吉の言葉は了平に衝撃を与え、一瞬呼吸も止まった。
ショックを受けた様子を隠さない了平を静かな眼差しで見詰めた彼は、僅かに表情を崩す。
「お前にではなく、裏切り者の良心に期待したんだ。お前の部隊は俺の幹部の中でも明るい。良心なんて形にならないものに期待したくなるほど、俺はお前の部隊を信じている。しっぺ返しを喰らったのは俺が甘かったからだ。戦いたくない、殺したくない。そうして逃げて今がある。大事の前の小事と考えてはいけないのにな」
沈痛な面持ちに否定しかけて拳を握る。
甘さを悔やむ彼は、どれだけ時間が経ってもただの優しい人だった。
優しさと甘さの区切りがどこにあるかなんて了平は知らない。
けれど彼のそれを、ただの甘さと切って捨てるには了平は彼を知りすぎた。
唇を噛み締め伝う血の鉄錆び臭い味が口内に広がる。
彼はドン・ボンゴレの仮面を被っているはずなのに、その背後に泣きそうな顔をした子供が見えた気がした。
涙を堪え他人の人生を奪うのに怯えた普通の子供。
綱吉の心の奥に眠る、守らなくてはいけない彼が。
「・・・っ」
喉元まで上がる言葉を無理やり嚥下する。
それは絶対に言ってはいけない。口にしてはいけない。
こんな顔をさせていいはずがないのだ。
彼の日輪であるべき自分が、大空を曇らせていいはずがない。
「俺に」
「・・・・・・」
「俺に命令してくれ、沢田。お前の晴の守護者である、この俺に。今回の失態のさきがけとなった、この俺に」
他の誰かではなく、了平が晴らさなくてはならない。
何故なら他の誰でもなく、この自分が大空を太陽で照らす存在なのだから。
空に雨を降らせてはいけない。
厚く重い雲をのさばらせていけない。
綱吉に似合うのは、綺麗な青空なのだから。
「お前が手を回そうと、これは俺自身の失態だ。名誉挽回のチャンスをくれ」
自分の家族のためだとしても、未だに命令に躊躇う彼を。
涙を流さず悲しむ彼の、背中を押すためそっと囁く。
「俺は死ぬつもりはない。だから俺に命令しろ」
了平は彼ほど優しくなれない。
空が曇れば許せない。雨が落ちれば拭いたい。
その望みを叶えるために、だからこそ彼に言わせたい。
「命令してくれ、ドン・ボンゴレ」
鎮痛に眉を寄せた彼が、ゆるりと唇を持ち上げる。
臆病な彼の言葉に、了平は哂った。
どうしたって何が一番大切かを忘れれない彼を、誰に生きて欲しいか選んでいる彼を、誰かを得るため誰かに命を奪えと命じる彼を。
───慰める術は今日も見つからない。
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行ってらっしゃい、きっとこの腕の中にお帰りなさい
--お題サイト:afaikさまより--
子供はいつだって容赦ない。
経験の少なさからどの道を選ぶか躊躇いがないし、思い切りもいい。
いつしかそんな行動を青いといい、後ろを振り返らないでいられなくなった銀時は、子供のそんな行動を眩しく思っていた。
諦めを覚えるのが大人になるということじゃないけれど、死んだ魚の目など似合わない子供がそれを覚えるのはまだずっと先で良い。
少なくとも、旅立ちのこの日に湿っぽい空気は似合わない。
来たときと同じ紺色の番傘を片手に父親とお揃いのマントとヘルメットをした少女は、その姿を誇らしげに胸を張るとにいっと笑う。
愛らしい顔に不似合いなそれはけれどいかにも少女らしいもので、この生意気な態度すらこれからは懐かしくなるのかと思うと感慨深いものがあった。
銀時の生活に文字通り土足で上がりこんできたクソガキは、狭い地球から飛び出て宇宙へと活躍の場を広げる。
小さい見た目をしながらも大きな器を持つ彼女には、世界を股にかける生活はきっとあっているだろう。
幾年もしない内に彼女の名は宇宙に広がるに違いない。
そうなったら、テレビに出てるあいつは昔俺んとこで面倒見てやってたんだと、魔女の出てくる名作映画でデッキブラシを貸してやったと嘯くおじさんのように通行人に訴えるのもいいかもしれない。
「じゃーな、マダオ。私が居なくなっても元気にやるヨロシ」
「じゃーな、クソガキ。宇宙行ってまで酢昆布広めるんじゃねぇぞ」
酷く可愛げのない口調で、今生の別れになるかもしれないのに素っ気無い態度。
けど、これでいい。
彼女───神楽との別れは、これでいい。
銀時の居場所は、神楽の止まり木。
いつか空を飛ぶのに疲れたとき、彼女はまた銀時の元へと帰ってくる。
そして疲れが癒えたなら、彼女はまた飛び立つのだろう。
それはとても神楽らしい生き方で、この関係は一生ものに違いない。
だから銀時は笑って見送る。
ここに居場所はあるのだと、自分はどこにも行かないと、宇宙へ羽ばたく神楽が納得するように。
いつだってここに止まり木はあると、自分は微塵も変わらないと、どこにだって行って来いと背中を押して笑ってみせる。
「宇宙にでっかい華を咲かせて来い」
頬を指先で擽ると、心地良さそうに目を細めた子供は首を竦めて笑った。
「当然ネ!こんなちっさい星からでも、仰げるでかい華になるアル!」
惜しむべきは華を咲かせる瞬間を、見逃してしまうことだけだ。
今はまだ蕾の少女が美しく咲き綻ぶ未来を想い。
「害虫は連れてくるなよ。銀さん、駆逐する気満々だから」
「?判ったアル。虫は駆除してから帰るアル」
「───おう。そうしろ」
ぴん、と秀でた額を指先で弾く。
『帰る』と告げられるだけで、それだけで大丈夫だ。
神楽はどれだけ時間が掛かろうと絶対に『帰って』くる。
その時の成長が楽しみで、ほんの少しだけ寂しい。
「行って来い、神楽」
「うん!行ってくる、銀ちゃん!」
こちらを振り返らない背中が愛しく嬉しい。
子供の成長を見守るのが大人の務めだとして、大きくなる背中に幸せと少しばかりの切なさを感じる自分は確かに年を取ったのだろう。
再会へのカウントダウンを早々に開始して、ターミナルから飛ぶ船を気分よく見送った。
--お題サイト:afaikさまより--
子供はいつだって容赦ない。
経験の少なさからどの道を選ぶか躊躇いがないし、思い切りもいい。
いつしかそんな行動を青いといい、後ろを振り返らないでいられなくなった銀時は、子供のそんな行動を眩しく思っていた。
諦めを覚えるのが大人になるということじゃないけれど、死んだ魚の目など似合わない子供がそれを覚えるのはまだずっと先で良い。
少なくとも、旅立ちのこの日に湿っぽい空気は似合わない。
来たときと同じ紺色の番傘を片手に父親とお揃いのマントとヘルメットをした少女は、その姿を誇らしげに胸を張るとにいっと笑う。
愛らしい顔に不似合いなそれはけれどいかにも少女らしいもので、この生意気な態度すらこれからは懐かしくなるのかと思うと感慨深いものがあった。
銀時の生活に文字通り土足で上がりこんできたクソガキは、狭い地球から飛び出て宇宙へと活躍の場を広げる。
小さい見た目をしながらも大きな器を持つ彼女には、世界を股にかける生活はきっとあっているだろう。
幾年もしない内に彼女の名は宇宙に広がるに違いない。
そうなったら、テレビに出てるあいつは昔俺んとこで面倒見てやってたんだと、魔女の出てくる名作映画でデッキブラシを貸してやったと嘯くおじさんのように通行人に訴えるのもいいかもしれない。
「じゃーな、マダオ。私が居なくなっても元気にやるヨロシ」
「じゃーな、クソガキ。宇宙行ってまで酢昆布広めるんじゃねぇぞ」
酷く可愛げのない口調で、今生の別れになるかもしれないのに素っ気無い態度。
けど、これでいい。
彼女───神楽との別れは、これでいい。
銀時の居場所は、神楽の止まり木。
いつか空を飛ぶのに疲れたとき、彼女はまた銀時の元へと帰ってくる。
そして疲れが癒えたなら、彼女はまた飛び立つのだろう。
それはとても神楽らしい生き方で、この関係は一生ものに違いない。
だから銀時は笑って見送る。
ここに居場所はあるのだと、自分はどこにも行かないと、宇宙へ羽ばたく神楽が納得するように。
いつだってここに止まり木はあると、自分は微塵も変わらないと、どこにだって行って来いと背中を押して笑ってみせる。
「宇宙にでっかい華を咲かせて来い」
頬を指先で擽ると、心地良さそうに目を細めた子供は首を竦めて笑った。
「当然ネ!こんなちっさい星からでも、仰げるでかい華になるアル!」
惜しむべきは華を咲かせる瞬間を、見逃してしまうことだけだ。
今はまだ蕾の少女が美しく咲き綻ぶ未来を想い。
「害虫は連れてくるなよ。銀さん、駆逐する気満々だから」
「?判ったアル。虫は駆除してから帰るアル」
「───おう。そうしろ」
ぴん、と秀でた額を指先で弾く。
『帰る』と告げられるだけで、それだけで大丈夫だ。
神楽はどれだけ時間が掛かろうと絶対に『帰って』くる。
その時の成長が楽しみで、ほんの少しだけ寂しい。
「行って来い、神楽」
「うん!行ってくる、銀ちゃん!」
こちらを振り返らない背中が愛しく嬉しい。
子供の成長を見守るのが大人の務めだとして、大きくなる背中に幸せと少しばかりの切なさを感じる自分は確かに年を取ったのだろう。
再会へのカウントダウンを早々に開始して、ターミナルから飛ぶ船を気分よく見送った。
>>ぴよりん様
こんばんは、ぴよりん様!
お返事が遅くなりましてすみません!
また書けない書けない病を発病し、L2Love&LooPというゲームに逃避しておりました。
じれがシステム的にかなり微妙で、シナリオもところどころおかしくない?と疑問を持つゲームですが、かなりはまってやりこんでます。
美味しいところは残す自分は、サブキャラから攻略してました。
サブキャラの数がコーエー並です。何より絵が大好きで、この絵のために買ったといっても過言じゃないです。
メインキャラを残したままEDを周りから固めているんですが、メインキャラヤバイです。
このゲーム公式で逆ハーレムEDがあるのですが、もう、本当に逆ハーレムを隠してないですw
五人メインキャラが居て、彼ら火花散って終わってます。
これは絶対に残りのキャラをクリアした後、サイト内で萌えを発散させると思います!
今のところかなり熱く誓ってます!
マイナーだけど、マイナーですけど、かなり熱いです!!
お兄ちゃんと一緒も感想ありがとうございます!
あの話は基本エースの執着があって、そこから色々派生してます。
ヤンデレ寸前の兄ですが、ヤンデレにはしません。
ヤンデレ怖いですし(苦笑)
サンジは普通の高校生で、ゾロは付き合いが長いだけ色々勘づいてるんのでエースを敵認識してます。
サンジはまだ苦手認識で止まってる最中です。
私のサイトはエースあまり出てこなくてイメージが未だに掴みにくいんですけど、このシリーズはマイペースに続ける予定ですので、これからもお願いします!
言われて気付いたのですが、確かにこのシリーズのエースは復活の獄寺君に通じてますよねw
盲目的に誰かを見詰めるキャラが好きなので、そうなってしまうのかもしれないです。
抽選はもう番外が出来ていて、そこまでに中々続けられないです(汗)
一日終わるのが長いでしょう、自分と突っ込みつつ書いてます。
拝啓メインに進めようと、心から諦めてきました。
でも拝啓も一日が長いので、ふうと一つため息吐いて続きを書きます★
復活ゲームはシナリオは出来たものの、ゲーム配布に問題があったら微妙かと配布は止めちゃいました。
でもシナリオは出来てるので、コピー本にして出しちゃおうかなと思案してます(苦笑)
マイペースに頑張りますので、また是非遊びにいらして下さいw
Web拍手、ありがとうございました!
こんばんは、ぴよりん様!
お返事が遅くなりましてすみません!
また書けない書けない病を発病し、L2Love&LooPというゲームに逃避しておりました。
じれがシステム的にかなり微妙で、シナリオもところどころおかしくない?と疑問を持つゲームですが、かなりはまってやりこんでます。
美味しいところは残す自分は、サブキャラから攻略してました。
サブキャラの数がコーエー並です。何より絵が大好きで、この絵のために買ったといっても過言じゃないです。
メインキャラを残したままEDを周りから固めているんですが、メインキャラヤバイです。
このゲーム公式で逆ハーレムEDがあるのですが、もう、本当に逆ハーレムを隠してないですw
五人メインキャラが居て、彼ら火花散って終わってます。
これは絶対に残りのキャラをクリアした後、サイト内で萌えを発散させると思います!
今のところかなり熱く誓ってます!
マイナーだけど、マイナーですけど、かなり熱いです!!
お兄ちゃんと一緒も感想ありがとうございます!
あの話は基本エースの執着があって、そこから色々派生してます。
ヤンデレ寸前の兄ですが、ヤンデレにはしません。
ヤンデレ怖いですし(苦笑)
サンジは普通の高校生で、ゾロは付き合いが長いだけ色々勘づいてるんのでエースを敵認識してます。
サンジはまだ苦手認識で止まってる最中です。
私のサイトはエースあまり出てこなくてイメージが未だに掴みにくいんですけど、このシリーズはマイペースに続ける予定ですので、これからもお願いします!
言われて気付いたのですが、確かにこのシリーズのエースは復活の獄寺君に通じてますよねw
盲目的に誰かを見詰めるキャラが好きなので、そうなってしまうのかもしれないです。
抽選はもう番外が出来ていて、そこまでに中々続けられないです(汗)
一日終わるのが長いでしょう、自分と突っ込みつつ書いてます。
拝啓メインに進めようと、心から諦めてきました。
でも拝啓も一日が長いので、ふうと一つため息吐いて続きを書きます★
復活ゲームはシナリオは出来たものの、ゲーム配布に問題があったら微妙かと配布は止めちゃいました。
でもシナリオは出来てるので、コピー本にして出しちゃおうかなと思案してます(苦笑)
マイペースに頑張りますので、また是非遊びにいらして下さいw
Web拍手、ありがとうございました!
好きだったよ、君が知っているより
--お題サイト:afaikさまより--
「さよならの言葉を聞きたくなかったと言ったら、それは愚かだと思うか?」
微苦笑を浮かべた幼馴染に、恋次は肩を竦める。
せいれいていを見下ろす丘の上で、夕日が沈むのを眺めながら囁きに似た言葉に何か返すか少しだけ迷い───結局何も言わぬまま風に靡く黒髪を見詰める。
ルキアの雰囲気は酷く凪いでいた。
それは死神になるのを決めた瞬間ととても似て、けれど絶対的に違う寂寥感が漂っていた。
自分の髪と同じ赤色の夕日が沈むのを、瞬きすら惜しんで眺めるルキアの心は今何を思っているのだろう。
今の時間よりもう少し前に見れた太陽の色の髪をした少年がルキアの心に影を残したのは判るのに、結局最後まで彼がどの程度ルキアの心を占めるか判断できなかった。
恋次やルキアより遥かに子供で、その分真っ直ぐで、頑固で前を見る強さを持った子供だった。
大人の論理など無視して、何が大事か見極められる、恋次が諦めた何かを持ち続けた少年だった。
子供だ、餓鬼だと言ったけれど、彼に憧れなかったと言えば嘘になる。
負け犬さながら尻尾を巻いて星に吠えるだけの自分に渇を入れ、何が一番大切か強制的に思い出させた悪友だった。
ルキアに笑顔を戻した男。
ルキアの命を救った男。
ルキアに心を思い出させた男。
本当なら全部してやりたい何もかもを、彼はルキアに甦らせた。
あの子供はルキアに救われたと言っていたけれど、同じだけ、否それ以上にルキアは救われていた。
腹の底から笑うルキアなど、もう何十年も見ていなかった恋次には奇跡に近い所業で、羨望を交え嫉妬した。
だがそれ以上に───彼には感謝していた。
幼馴染はきっと何も言わない。
彼をどう思っていたか、どの種類で好きだったのか。
本心を誰かに語る事無く、魂が散るのを待つのだろう。
静かに想いをしたためるのはこの幼馴染らしいが、引きずりやすい彼女は根っこまで想いを持ったまま普段は微塵も出さぬそれを、例えば太陽が眩しくて目を細めた瞬間や、月が冴え冴えと輝く夜空を見て、不意に思い出し微笑むのだろう。
彼女が彼を思い出して笑う瞬間、隣に在れたらいいと思う。
彼女が微笑んだ瞬間に、ああいう奴も居たなと二人で笑いあえればいいと思う。
それはきっと、きっととても幸せだと思うから。
紫紺色の瞳を細めうっとりと夕日を見送る少女に、恋次は笑った。
そして癖の強いしっとりした黒髪に手を潜らせると、思い切りわしゃわしゃと撫ぜる。
何をする、と噛み付いた彼女に微笑むと、闇の色が濃くなり始めた空を見上げた。
「さよならを聞きたいと、嘘をつくより愚かじゃねえな」
「・・・そうか」
ぽつりと呟き、彼女はまた黙り込む。
二人の時間はとても自然で、それが恋次の胸を高鳴らせた。
とても、とても幸せだ。
隣にこの温もりが存在するだけで今までの何もかもが報われる。
恋次の基点で恋次の全て。
嬉しいや幸せ、優しいや愛しいを具現化して人型を取らせた幼馴染は、ほうと一つため息を吐く。
そして切なさを籠めた声で、そっと囁いた。
「まだまだこの場に来るなよ、クソ餓鬼。お前の顔は当分見たくない。静かにくらしたい故、存分に現世を楽しんでからにしろ」
全く持って素直じゃない宣言に、恋次は声を大にして笑った。
天邪鬼な幼馴染は、きっとあの可愛くない子供が来ても健在に違いない。
--お題サイト:afaikさまより--
「さよならの言葉を聞きたくなかったと言ったら、それは愚かだと思うか?」
微苦笑を浮かべた幼馴染に、恋次は肩を竦める。
せいれいていを見下ろす丘の上で、夕日が沈むのを眺めながら囁きに似た言葉に何か返すか少しだけ迷い───結局何も言わぬまま風に靡く黒髪を見詰める。
ルキアの雰囲気は酷く凪いでいた。
それは死神になるのを決めた瞬間ととても似て、けれど絶対的に違う寂寥感が漂っていた。
自分の髪と同じ赤色の夕日が沈むのを、瞬きすら惜しんで眺めるルキアの心は今何を思っているのだろう。
今の時間よりもう少し前に見れた太陽の色の髪をした少年がルキアの心に影を残したのは判るのに、結局最後まで彼がどの程度ルキアの心を占めるか判断できなかった。
恋次やルキアより遥かに子供で、その分真っ直ぐで、頑固で前を見る強さを持った子供だった。
大人の論理など無視して、何が大事か見極められる、恋次が諦めた何かを持ち続けた少年だった。
子供だ、餓鬼だと言ったけれど、彼に憧れなかったと言えば嘘になる。
負け犬さながら尻尾を巻いて星に吠えるだけの自分に渇を入れ、何が一番大切か強制的に思い出させた悪友だった。
ルキアに笑顔を戻した男。
ルキアの命を救った男。
ルキアに心を思い出させた男。
本当なら全部してやりたい何もかもを、彼はルキアに甦らせた。
あの子供はルキアに救われたと言っていたけれど、同じだけ、否それ以上にルキアは救われていた。
腹の底から笑うルキアなど、もう何十年も見ていなかった恋次には奇跡に近い所業で、羨望を交え嫉妬した。
だがそれ以上に───彼には感謝していた。
幼馴染はきっと何も言わない。
彼をどう思っていたか、どの種類で好きだったのか。
本心を誰かに語る事無く、魂が散るのを待つのだろう。
静かに想いをしたためるのはこの幼馴染らしいが、引きずりやすい彼女は根っこまで想いを持ったまま普段は微塵も出さぬそれを、例えば太陽が眩しくて目を細めた瞬間や、月が冴え冴えと輝く夜空を見て、不意に思い出し微笑むのだろう。
彼女が彼を思い出して笑う瞬間、隣に在れたらいいと思う。
彼女が微笑んだ瞬間に、ああいう奴も居たなと二人で笑いあえればいいと思う。
それはきっと、きっととても幸せだと思うから。
紫紺色の瞳を細めうっとりと夕日を見送る少女に、恋次は笑った。
そして癖の強いしっとりした黒髪に手を潜らせると、思い切りわしゃわしゃと撫ぜる。
何をする、と噛み付いた彼女に微笑むと、闇の色が濃くなり始めた空を見上げた。
「さよならを聞きたいと、嘘をつくより愚かじゃねえな」
「・・・そうか」
ぽつりと呟き、彼女はまた黙り込む。
二人の時間はとても自然で、それが恋次の胸を高鳴らせた。
とても、とても幸せだ。
隣にこの温もりが存在するだけで今までの何もかもが報われる。
恋次の基点で恋次の全て。
嬉しいや幸せ、優しいや愛しいを具現化して人型を取らせた幼馴染は、ほうと一つため息を吐く。
そして切なさを籠めた声で、そっと囁いた。
「まだまだこの場に来るなよ、クソ餓鬼。お前の顔は当分見たくない。静かにくらしたい故、存分に現世を楽しんでからにしろ」
全く持って素直じゃない宣言に、恋次は声を大にして笑った。
天邪鬼な幼馴染は、きっとあの可愛くない子供が来ても健在に違いない。
【6日目】
「・・・貴方が十代目」
ぽつりと呟かれた言葉に琥珀色の瞳を僅かに見開いたその人は、しゃがみ込むと淡い微笑を浮かべた。
八の字に眉を下げているが、雰囲気は酷く穏やかだ。
年齢は違うがそっくりな顔が二つ並び、獄寺はうっとりと手を組んでその様子を眺めた。
本当ならカメラとビデオを装備したかったが、その装備はドン・ボンゴレの執務室では許可されていない。
だから代わりに心のメモリーに刻み込むことにした。
例え体が死しても、魂は永久に忘れないだろう。
夢のような光景は幸せと陶酔を獄寺にもたらす。
「十代目?どうしてこの子が俺を十代目って呼ぶのさ、リボーン」
「そりゃ育て親が獄寺だからな。学習しちまったんだろ」
「あー・・・獄寺君が親。親ね」
どこか遠い目をした綱吉に、隣に居たリボーンが楽しそうに口角を上げる。
室内でも手放さないボルサリーノを指先で上げると、その秀麗な顔をさらししげしげと子供を覗き込んだ。
そんなリボーンの様子も無視した子供は、ただ一心に綱吉だけを見詰める。
リボーンは先ほどとは違う笑みを一瞬だけ浮かべると、ボルサリーノで表情を隠した。
「さすが獄寺が育てた餓鬼だな。お前しか見ねぇ」
「・・・あー・・・獄寺君が育てた子供だもんねぇ。いくら俺の炎が元でも獄寺君混じってるもんねぇ」
「そんなっ、俺と十代目が混じってるなんて、俺、俺」
「変な意味じゃないから。君が想像してる意味じゃないから」
何処か疲れた様子の綱吉に、ククッと喉を鳴らして笑ったリボーンが獄寺を見る。
隣に並ぶのが自然に見える彼らの関係は獄寺の憧れで、同時に目標であった。
自分が綱吉の右腕の自覚はある。
誰よりも崇拝する主がそれを宣言し、そして獄寺自身がそれを喜び勇んで享受していた。
それはとても光栄で幸せな現実だが、獄寺の目標は彼の全幅の信頼を得ることだ。
リボーンと綱吉の関係はまさしくそれを表しており、獄寺にとって二人の関係は理想だった。
リボーン以外の誰かがその地位にあるなら激しく嫉妬しただろうが、彼が相手なら今更嫉妬も沸かない。
それくらい綱吉のリボーンに対する信頼は絶大で、羨ましいほど絶対だった。
「それにしても・・・この匣アニマルは、死ぬ気の炎を宿してるときのツナだな。間抜け面が少しは引き締まって見える」
「失礼な」
「何だ?否定できるのか?」
「───否定できないから、失礼だって言ってるんだよ」
一つため息を吐いた綱吉は、片腕に乗せるようにして子供を抱き上げる。
そうして瓜二つな顔立ちの子供を覗き込むと複雑な顔で苦笑した。
「それで、獄寺君。何故君はこの子を俺に会わせたかったの?」
「え?それは、その、ウーノさんが十代目に会いたがったからで・・・」
「ウーノさん?」
「はい。Un'ombraからとって、ウーノさんです」
「Un'ombra・・・影、か。中々いいネーミングセンスだが、ミニツナじゃダメだったのか?お前ならそう呼ぶかと思ったが」
「そうですね。リボーンさんが仰る通りウーノさんは十代目にそっくりです。ですが、十代目ではない。だから、ウーノさんなんです」
「・・・大した忠誠心だ」
くつくつと哂ったリボーンに、獄寺も僅かに口角を上げて見せた。
そう、この子供はどこまで行ってもUn'ombraでしかない。
他の誰が認めようと、獄寺にとってその事実は変わらない。
静かな眼差しを向ける子供に胸も痛まない。
それが、獄寺が獄寺たる所以だから。
子供は獄寺の闇すらも見透かすように目を細め、そして自分を抱き上げるその人に顔を向けた。
大人しいが何処か老成した雰囲気もあり、確かに彼は死ぬ気の炎を纏った綱吉に似ているかもしれない。
喜怒哀楽を前面に出すでもなく、ただ静かに存在した。
「俺が、隼人に頼んだ。俺が、十代目に会いたかった」
「───それは何故?」
「俺の、最後の成長のために、貴方の炎を分けてください」
彼の言葉に、獄寺は大きく目を見張った。
「・・・貴方が十代目」
ぽつりと呟かれた言葉に琥珀色の瞳を僅かに見開いたその人は、しゃがみ込むと淡い微笑を浮かべた。
八の字に眉を下げているが、雰囲気は酷く穏やかだ。
年齢は違うがそっくりな顔が二つ並び、獄寺はうっとりと手を組んでその様子を眺めた。
本当ならカメラとビデオを装備したかったが、その装備はドン・ボンゴレの執務室では許可されていない。
だから代わりに心のメモリーに刻み込むことにした。
例え体が死しても、魂は永久に忘れないだろう。
夢のような光景は幸せと陶酔を獄寺にもたらす。
「十代目?どうしてこの子が俺を十代目って呼ぶのさ、リボーン」
「そりゃ育て親が獄寺だからな。学習しちまったんだろ」
「あー・・・獄寺君が親。親ね」
どこか遠い目をした綱吉に、隣に居たリボーンが楽しそうに口角を上げる。
室内でも手放さないボルサリーノを指先で上げると、その秀麗な顔をさらししげしげと子供を覗き込んだ。
そんなリボーンの様子も無視した子供は、ただ一心に綱吉だけを見詰める。
リボーンは先ほどとは違う笑みを一瞬だけ浮かべると、ボルサリーノで表情を隠した。
「さすが獄寺が育てた餓鬼だな。お前しか見ねぇ」
「・・・あー・・・獄寺君が育てた子供だもんねぇ。いくら俺の炎が元でも獄寺君混じってるもんねぇ」
「そんなっ、俺と十代目が混じってるなんて、俺、俺」
「変な意味じゃないから。君が想像してる意味じゃないから」
何処か疲れた様子の綱吉に、ククッと喉を鳴らして笑ったリボーンが獄寺を見る。
隣に並ぶのが自然に見える彼らの関係は獄寺の憧れで、同時に目標であった。
自分が綱吉の右腕の自覚はある。
誰よりも崇拝する主がそれを宣言し、そして獄寺自身がそれを喜び勇んで享受していた。
それはとても光栄で幸せな現実だが、獄寺の目標は彼の全幅の信頼を得ることだ。
リボーンと綱吉の関係はまさしくそれを表しており、獄寺にとって二人の関係は理想だった。
リボーン以外の誰かがその地位にあるなら激しく嫉妬しただろうが、彼が相手なら今更嫉妬も沸かない。
それくらい綱吉のリボーンに対する信頼は絶大で、羨ましいほど絶対だった。
「それにしても・・・この匣アニマルは、死ぬ気の炎を宿してるときのツナだな。間抜け面が少しは引き締まって見える」
「失礼な」
「何だ?否定できるのか?」
「───否定できないから、失礼だって言ってるんだよ」
一つため息を吐いた綱吉は、片腕に乗せるようにして子供を抱き上げる。
そうして瓜二つな顔立ちの子供を覗き込むと複雑な顔で苦笑した。
「それで、獄寺君。何故君はこの子を俺に会わせたかったの?」
「え?それは、その、ウーノさんが十代目に会いたがったからで・・・」
「ウーノさん?」
「はい。Un'ombraからとって、ウーノさんです」
「Un'ombra・・・影、か。中々いいネーミングセンスだが、ミニツナじゃダメだったのか?お前ならそう呼ぶかと思ったが」
「そうですね。リボーンさんが仰る通りウーノさんは十代目にそっくりです。ですが、十代目ではない。だから、ウーノさんなんです」
「・・・大した忠誠心だ」
くつくつと哂ったリボーンに、獄寺も僅かに口角を上げて見せた。
そう、この子供はどこまで行ってもUn'ombraでしかない。
他の誰が認めようと、獄寺にとってその事実は変わらない。
静かな眼差しを向ける子供に胸も痛まない。
それが、獄寺が獄寺たる所以だから。
子供は獄寺の闇すらも見透かすように目を細め、そして自分を抱き上げるその人に顔を向けた。
大人しいが何処か老成した雰囲気もあり、確かに彼は死ぬ気の炎を纏った綱吉に似ているかもしれない。
喜怒哀楽を前面に出すでもなく、ただ静かに存在した。
「俺が、隼人に頼んだ。俺が、十代目に会いたかった」
「───それは何故?」
「俺の、最後の成長のために、貴方の炎を分けてください」
彼の言葉に、獄寺は大きく目を見張った。
更新内容
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(03/25)
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