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零れる吐息は熱を持ち、黒目がちな瞳は僅かに潤む。
長い睫毛に彩られるその目が放つ魔力は著しく琉夏の思考を低下させ、誘蛾灯に引き寄せられる蛾のようにふらふらと引き寄せられる。
色白の頬が桜色に染まり、ぷっくりとした赤い唇がとても美味しそうだった。
近づけば確実に火傷すると判っていても、逆らうには魅力があり過ぎる。
「る、か・・・くん」
普段よりも掠れ、ハスキーになった声が色っぽく、喉がごくりと自然に鳴る。
我慢出来ずに足を踏み出し、伸ばされた自分よりも一回り以上小さな柔らかい手を握る。
すると、安心したように目を細め、嬉しげに彼女は微笑んだ。
ゆっくりと顔を近づけると、彼女の瞼も閉じていく。
互いの呼吸が掛かる距離に近づけば、果実の熟した甘い香がふんわりと漂った。
「って、何してんだお前は!」
側頭部に予期せぬ鈍い痛みが走り、同時に床に転がされる。
繋がれていた手は解かれ鈍痛だけが琉夏に残った。
頭を押さえて床を転がると、無慈悲に背中を踏み潰される。
ぐえっと蛙が潰れたときのような声を漏らした琉夏に、足を乗せた張本人である琥一は容赦なく力を入れた。
「病人相手に発情してんじゃねえよ!ちょっと目を放せばこれか、この馬鹿が!」
小声で怒鳴るという離れ業を披露する琥一を何とか首だけ回して見上げ、へらり、と邪気の無い笑みを浮かべる。
だがそれが気に障ったらしく、足に篭る力を増やされギブギブと掌で床を叩いた。
両手に土鍋と薬を飲む水を置いたトレイを抱えた琥一は、ふんと鼻息荒く息を吐き出すと、最後にもう一度琉夏を踏み潰し冬姫へと向き直る。
床に寝転んだままそれを見送った琉夏は、漸く開放された痛みにほうっと長い息を吐き出した。
「だってさ。冬姫色っぽいんだもん」
「色っぽいんだもん、じゃねえよ。苦しそうに眉根を寄せてるし、息だってこんだけ荒いじゃねえか。汗くらい拭ってやれよ」
「───他のとこも触ってよければやる」
「やめれ。もういい。お前には頼まねぇ。土鍋にかゆが入ってるから蓋開けて冷ませ」
「コウ、手が滑ったとかありがちなネタはやめろよ」
「お前じゃねえよ!!」
唾を飛ばしながら怒鳴る兄から器用に身を離すと、言われたとおりに土鍋の蓋を開け熱を冷ます。
ふうふうと吐息をかけながら琥一の動向を見守ると、一緒に持ってきた冷えたお絞りを手にし、少し躊躇した後顔を拭い始めた。
おっかなびっくり触る手つきは繊細で、見ていて少し面白い。
厳つい顔をした大男が華奢な美少女相手に気を使う様はなんだか甘酸っぱい感じだった。
冬姫の様子を見て僅かに顔を赤らめる兄に眉を寄せるものの、実際は琉夏はその手の内容に関して琥一以上に信じている相手は居ない。
琥一は琉夏と同じくらい冬姫にぞっこん惚れているので、彼女の同意がないと何も出来ないに違いないから。
その辺は要領がいい琉夏としては、もらえるなら貰っちゃえと考えてしまうので兄の方が硬派で堅物なのだろう。
くくくっと喉を鳴らして笑うと、そっと背後から琥一に忍び寄る。
「ねえ、コウ」
「あんだよ」
「こんな風にさ、息を荒げて頬を染めてる冬姫を見るとさ」
「?」
「───あの時を想像しちゃわない?」
「!!?っ、この馬鹿!」
一瞬で首から耳から顔全体を赤く染め上げた琥一は、振り向き様に手にしたお絞りを琉夏の顔に全力で投げつけると、視界を奪われた琉夏が動けずに居る内にその頭に拳を振り下ろした。
ごつん、と脳まで響くいい音がして、琉夏は無言で蹲る。
「いい加減にしろ、この下ネタ男」
「───コウだって言ってる意味すぐ判ったんだから同類だろ。むっつりめ」
「───っ、この!」
再び拳を振り上げた琥一の手を避けると、そのまま冬姫の顔を覗きこむ。
「冬姫、起きてる?」
「こんなに騒いでちゃ、眠れないよ」
囁きで問いかければ、うっすらと瞼が持ち上がった。
目元が桃色に染まって、やはり何とも色っぽい。
正直に反応してしまいそうな己の野生を何とか宥めると、土鍋をトレイごと手にして正座した膝に置く。
「おかゆあるよ。俺が食べさせてあげる。薬飲むために、少しでも食べて」
「うん」
苦しげな息の元、微笑みらしきものを浮かべた冬姫に、琉夏は眉を下げた。
色っぽい冬姫もたまにはいいが、やはり普段の晴れやかな笑顔が好きだ。
「俺の元気を分けてあげるから、早く元気になって。そんで、コウと三人で遊びに行こう」
「・・・うん」
「それまではゆっくりと休むこったな。治るまでは傍に居てやる」
「うん」
いつの間にか隣に座った琥一が苦笑しながら前髪を掻き上げてやれば、子供みたいな無邪気な笑顔を彼女は浮かべた。
不意打ちなそれに二人はぐっと息を呑む。
そして互いに赤くなった顔を見合わせると、そっと小さく笑った。
シックでありながらもそこかしこに女の子らしさが漂う部屋は、三人だけの箱庭だった。
小さな棚の上に飾られた三人の写真が、満面の笑みでこちらを見ていた。
長い睫毛に彩られるその目が放つ魔力は著しく琉夏の思考を低下させ、誘蛾灯に引き寄せられる蛾のようにふらふらと引き寄せられる。
色白の頬が桜色に染まり、ぷっくりとした赤い唇がとても美味しそうだった。
近づけば確実に火傷すると判っていても、逆らうには魅力があり過ぎる。
「る、か・・・くん」
普段よりも掠れ、ハスキーになった声が色っぽく、喉がごくりと自然に鳴る。
我慢出来ずに足を踏み出し、伸ばされた自分よりも一回り以上小さな柔らかい手を握る。
すると、安心したように目を細め、嬉しげに彼女は微笑んだ。
ゆっくりと顔を近づけると、彼女の瞼も閉じていく。
互いの呼吸が掛かる距離に近づけば、果実の熟した甘い香がふんわりと漂った。
「って、何してんだお前は!」
側頭部に予期せぬ鈍い痛みが走り、同時に床に転がされる。
繋がれていた手は解かれ鈍痛だけが琉夏に残った。
頭を押さえて床を転がると、無慈悲に背中を踏み潰される。
ぐえっと蛙が潰れたときのような声を漏らした琉夏に、足を乗せた張本人である琥一は容赦なく力を入れた。
「病人相手に発情してんじゃねえよ!ちょっと目を放せばこれか、この馬鹿が!」
小声で怒鳴るという離れ業を披露する琥一を何とか首だけ回して見上げ、へらり、と邪気の無い笑みを浮かべる。
だがそれが気に障ったらしく、足に篭る力を増やされギブギブと掌で床を叩いた。
両手に土鍋と薬を飲む水を置いたトレイを抱えた琥一は、ふんと鼻息荒く息を吐き出すと、最後にもう一度琉夏を踏み潰し冬姫へと向き直る。
床に寝転んだままそれを見送った琉夏は、漸く開放された痛みにほうっと長い息を吐き出した。
「だってさ。冬姫色っぽいんだもん」
「色っぽいんだもん、じゃねえよ。苦しそうに眉根を寄せてるし、息だってこんだけ荒いじゃねえか。汗くらい拭ってやれよ」
「───他のとこも触ってよければやる」
「やめれ。もういい。お前には頼まねぇ。土鍋にかゆが入ってるから蓋開けて冷ませ」
「コウ、手が滑ったとかありがちなネタはやめろよ」
「お前じゃねえよ!!」
唾を飛ばしながら怒鳴る兄から器用に身を離すと、言われたとおりに土鍋の蓋を開け熱を冷ます。
ふうふうと吐息をかけながら琥一の動向を見守ると、一緒に持ってきた冷えたお絞りを手にし、少し躊躇した後顔を拭い始めた。
おっかなびっくり触る手つきは繊細で、見ていて少し面白い。
厳つい顔をした大男が華奢な美少女相手に気を使う様はなんだか甘酸っぱい感じだった。
冬姫の様子を見て僅かに顔を赤らめる兄に眉を寄せるものの、実際は琉夏はその手の内容に関して琥一以上に信じている相手は居ない。
琥一は琉夏と同じくらい冬姫にぞっこん惚れているので、彼女の同意がないと何も出来ないに違いないから。
その辺は要領がいい琉夏としては、もらえるなら貰っちゃえと考えてしまうので兄の方が硬派で堅物なのだろう。
くくくっと喉を鳴らして笑うと、そっと背後から琥一に忍び寄る。
「ねえ、コウ」
「あんだよ」
「こんな風にさ、息を荒げて頬を染めてる冬姫を見るとさ」
「?」
「───あの時を想像しちゃわない?」
「!!?っ、この馬鹿!」
一瞬で首から耳から顔全体を赤く染め上げた琥一は、振り向き様に手にしたお絞りを琉夏の顔に全力で投げつけると、視界を奪われた琉夏が動けずに居る内にその頭に拳を振り下ろした。
ごつん、と脳まで響くいい音がして、琉夏は無言で蹲る。
「いい加減にしろ、この下ネタ男」
「───コウだって言ってる意味すぐ判ったんだから同類だろ。むっつりめ」
「───っ、この!」
再び拳を振り上げた琥一の手を避けると、そのまま冬姫の顔を覗きこむ。
「冬姫、起きてる?」
「こんなに騒いでちゃ、眠れないよ」
囁きで問いかければ、うっすらと瞼が持ち上がった。
目元が桃色に染まって、やはり何とも色っぽい。
正直に反応してしまいそうな己の野生を何とか宥めると、土鍋をトレイごと手にして正座した膝に置く。
「おかゆあるよ。俺が食べさせてあげる。薬飲むために、少しでも食べて」
「うん」
苦しげな息の元、微笑みらしきものを浮かべた冬姫に、琉夏は眉を下げた。
色っぽい冬姫もたまにはいいが、やはり普段の晴れやかな笑顔が好きだ。
「俺の元気を分けてあげるから、早く元気になって。そんで、コウと三人で遊びに行こう」
「・・・うん」
「それまではゆっくりと休むこったな。治るまでは傍に居てやる」
「うん」
いつの間にか隣に座った琥一が苦笑しながら前髪を掻き上げてやれば、子供みたいな無邪気な笑顔を彼女は浮かべた。
不意打ちなそれに二人はぐっと息を呑む。
そして互いに赤くなった顔を見合わせると、そっと小さく笑った。
シックでありながらもそこかしこに女の子らしさが漂う部屋は、三人だけの箱庭だった。
小さな棚の上に飾られた三人の写真が、満面の笑みでこちらを見ていた。
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