×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
「マーモール、あーそーぼ」
聞こえた声に、鬼道の眉根がじとりと寄せられたのを冬香は確かに見た。
食堂の窓から外を眺めると、声の主の姿があった。
濃い蒼色の瞳をくりくりと輝かせたイタリアの白い流星と、もう一人。
不貞腐れたように唇を尖らせそっぽを向いた姿は、覚えているもの重ならない。
子供っぽい態度に瞳を瞬いていると、隣に座っていた鬼道が苛立たしげに舌打ちした。
「あー、フィディオだ」
食べていた料理を丁度食べ終わったらしい円堂は、ご馳走様と手を合わせると席を立つ。
片手に器の乗ったトレイを持つと窓の縁へと手を置く。
「おーい、フィディオ!」
「あ、マモル!ねえ、一緒に遊ぼうよ!」
「二人で?」
「エドガーも来てるよ!」
「エドガーも?」
「そう。イギリスエリアの美味しい紅茶屋さんに案内してくれるんだって。スコーンとダージリンが最高らしいよ」
どうしようかな、と腕を組み思案する円堂を他所に、辛抱堪らんとばかりに音を立てて鬼道が椅子から立ち上がった。
きょとんとした視線が彼に集中する中、普段の冷静さをかなぐり捨てた鬼道は円堂の隣から顔を出すと叫んだ。
「姉さんは、今日は俺と一緒に宿舎で過ごす!悪いが遠慮してもらおう!!」
「え?俺、有人と約束してたっけか?」
「してないけど、してます!」
今日はアニマルプリントのパーカーにショートパンツと、ボーイッシュな格好の円堂の上着を手が白くなるほど握り締め、駄々っ子のように頬を膨らます。
初めてのときは驚いたが、今では円堂限定で取られる子供っぽい態度に冬香も慣れた。
「って言うわけだから、俺出かけるの無理そうだわ」
「大丈夫!何となくユウトがそう言いそうな気がして、もう紅茶セット買ってきた!お茶淹れるからお邪魔してもいい?」
「いいぞ。でも俺の部屋にキッチンはついてないから食堂になるけど?」
「マモルと一緒なら何処でもいいよ!なあ、エドガー」
「・・・私は別に」
「エドガーも行きたいって!」
口に手を当てて視線を逸らしたエドガーの手をぐいぐいと引っ張ったフィディオは姿を消し、間もなく『お邪魔します』とこの上ない日本的な挨拶の後食堂へ現れた。
姿を見せた二人に鬼道が唇を切れるんじゃないかと思えるくらい唇を噛み締めている。
まるで飼い主を守ろうと必死に警戒心を露にする小型犬のようだ、と冷静な眼差しで冬香は評価した。
とりあえず、今食堂に人数が少ないのを祝うべきだろう。
自主トレに付き合ったおかけで食堂にいるのは、冬香と鬼道、そして豪炎寺のみ。
他のマネージャーは別の仕事をしているし、イナズマジャパンの残りの面々は各々の時間を過ごしているはずだ。
ちなみに豪炎寺は冬香と同じく席に着き、無言で食事を続けながら展開を見守っていた。
「Ciao! Come stai?」
「Ciao! Non c'e male, Grazie. E tu?」
「Bene,grazie!!」
自然な様子で挨拶を交わして二人はハグをする。
親しげに抱き合い、フィディオが円堂の頬に唇を寄せようとした瞬間、彼女の体が不自然に傾いた。
「・・・人の許婚に気軽に触れるな」
「違う。姉さんはもうエドガーの許婚じゃない」
「それなら君の姉君ではもないだろう。それにしては昔の甘え癖が抜けていないようだがな」
ちりちりと視線が火花を散らす。
間に無理やり入れられた円堂を苦笑して眺めていたフィディオが、助け舟を出す。
「二人とも。とりあえずマモルのフードを放して上げなよ。微妙に苦しそうだ」
「いや、フィディオ。微妙どころじゃあない。エドガーのお陰で吊るし上げ状態だ」
「私だけの所為だというのか」
「別にそうは言ってないだろ。ただ有人なら身長差がそんなにないからまだマシだけど、お前と俺の身長差は結構あるだろ。そこを自覚しろって言ってんだよ」
「身長差、身長差ね」
二度呟いたエドガーはフードを放すと腕を組み、意地の悪い笑みを浮かべた。
その表情に密かに冬香は瞳を丸める。
直接話をしたのは一度きりだが、とても紳士で優しげな感じだったに、鬼道を眺める姿はとても同一人物とは思えなかった。
多くを語られなくとも侮辱されたのを感じたらしい鬼道も、円堂のフードから手を放すとエドガーと対峙する。
「何が言いたい」
「いや、別に?」
「はっきりと口にしろ。気味が悪い」
「そこまで言うのなら仕方がないな。何、詮無きことだ。君は相変わらずマモルとほとんど身長が変わらないのだなと思っただけの話だ」
「───どういう意味だ」
「だから別に大したことではないと言っているだろう?それではマモルが君を庇護の対象にしか見ないわけだ」
「黙れ。貴様など身長が高くとも姉さんに歯牙にも掛けられていないくせに」
「何?」
「そうだろう?何せ許婚を解消されているのにも関わらずねちねちねちねちとしつこい。日本にはな、しつこい男は嫌われるという格言があるんだぞ」
ばちばちと火花を散らす二人に、泥沼なドラマみたいだとデザートのヨーグルトを口に運びながら内心で呟く。
「・・・凄いな。真昼にやってる泥沼劇場みたいになってる」
「マモル、何それ?」
「日本じゃな、昼にやるドラマは以上にどろどろとしてるんだ。その内容がな」
不意に隣から聞こえた声に、目を丸くして振り返る。
いつの間に来ていたのか、ちゃっかりと難を逃れたフィディオがスコーンを並べた皿を、円堂が紅茶ポットと余人分のティーカップを片手に席に座っていた。
とぽとぽと湯気の立つ紅茶をカップに注いだ円堂は、そつなく冬香と豪炎寺の前にも並べる。
「ゴールデンドロップ入りは冬っぺ用ね」
「・・・ありがとう」
「おい、円堂。あっちは放っておいていいのか?」
「ああ、別に構わないな。な、フィディオ」
「そうだね。ああ見えてあの二人は似たもの同士だから放っておいて大丈夫だよ。こんなあからさまに対立するのは初めて見たけど、火種は昔から転がってたし」
「昔から?」
「ああ。エドガーってさ、女の子には誰にでも優しいけど、惚れ抜いてるのはマモルだけだし、ユウトの場合は見てすぐ判るように超ど級のシスコンだし。ま、今はシスコンプラスアルファって感じだけど。とにかく互いにマモルの特別の位置を持ってる相手を気に入らないんだよな。ね、マモル」
「そこで俺にふるの、フィディオ」
「だって原因はいつだってマモルじゃないか」
「俺はノーコメント。・・・それにしても、この紅茶本当に美味いな」
「そりゃエドガーがマモルのために厳選したものだもん。ちゃんとあとでお礼を言いなよ」
「・・・判ってるよ」
珍しく年相応の顔で不貞腐れた円堂に、冬香はまた驚きで瞳を丸くする。
いつだって飄々としている円堂が素直に表情を表すのは実は少なく、冬香の正面に座る豪炎寺も瞳を丸くしていた。
そして苦々しく表情を歪めると、ぼそりと小さく呟く。
「付き合いの長さ故の態度か。・・・羨ましいな」
あちらで角を突き合わせている鬼道とエドガー。
こちらでは淡い苦笑を浮かべてそれを見物するフィディオと円堂。
幼馴染の彼らだからこそ醸し出せるのだろう賑々しくも穏やかな空気に、冬香も微笑した。
「本当ね」
ぽつりと呟いた声が聞こえたらしく、不思議そうな顔で円堂が冬香の顔を覗く。
黒縁眼鏡を指の腹で押し上げた彼女にしがみ付くと、驚いて奇声を上げた円堂に笑った。
円堂の声に我に返ったらしい鬼道とエドガーがこちらに駆け寄る。
どちらが隣に座るか、なんて小さなことでまた喧嘩を始めた二人に、彼らの子供時代を見た気がして、羨ましいな、ともう一度だけぽそりと呟いた。
聞こえた声に、鬼道の眉根がじとりと寄せられたのを冬香は確かに見た。
食堂の窓から外を眺めると、声の主の姿があった。
濃い蒼色の瞳をくりくりと輝かせたイタリアの白い流星と、もう一人。
不貞腐れたように唇を尖らせそっぽを向いた姿は、覚えているもの重ならない。
子供っぽい態度に瞳を瞬いていると、隣に座っていた鬼道が苛立たしげに舌打ちした。
「あー、フィディオだ」
食べていた料理を丁度食べ終わったらしい円堂は、ご馳走様と手を合わせると席を立つ。
片手に器の乗ったトレイを持つと窓の縁へと手を置く。
「おーい、フィディオ!」
「あ、マモル!ねえ、一緒に遊ぼうよ!」
「二人で?」
「エドガーも来てるよ!」
「エドガーも?」
「そう。イギリスエリアの美味しい紅茶屋さんに案内してくれるんだって。スコーンとダージリンが最高らしいよ」
どうしようかな、と腕を組み思案する円堂を他所に、辛抱堪らんとばかりに音を立てて鬼道が椅子から立ち上がった。
きょとんとした視線が彼に集中する中、普段の冷静さをかなぐり捨てた鬼道は円堂の隣から顔を出すと叫んだ。
「姉さんは、今日は俺と一緒に宿舎で過ごす!悪いが遠慮してもらおう!!」
「え?俺、有人と約束してたっけか?」
「してないけど、してます!」
今日はアニマルプリントのパーカーにショートパンツと、ボーイッシュな格好の円堂の上着を手が白くなるほど握り締め、駄々っ子のように頬を膨らます。
初めてのときは驚いたが、今では円堂限定で取られる子供っぽい態度に冬香も慣れた。
「って言うわけだから、俺出かけるの無理そうだわ」
「大丈夫!何となくユウトがそう言いそうな気がして、もう紅茶セット買ってきた!お茶淹れるからお邪魔してもいい?」
「いいぞ。でも俺の部屋にキッチンはついてないから食堂になるけど?」
「マモルと一緒なら何処でもいいよ!なあ、エドガー」
「・・・私は別に」
「エドガーも行きたいって!」
口に手を当てて視線を逸らしたエドガーの手をぐいぐいと引っ張ったフィディオは姿を消し、間もなく『お邪魔します』とこの上ない日本的な挨拶の後食堂へ現れた。
姿を見せた二人に鬼道が唇を切れるんじゃないかと思えるくらい唇を噛み締めている。
まるで飼い主を守ろうと必死に警戒心を露にする小型犬のようだ、と冷静な眼差しで冬香は評価した。
とりあえず、今食堂に人数が少ないのを祝うべきだろう。
自主トレに付き合ったおかけで食堂にいるのは、冬香と鬼道、そして豪炎寺のみ。
他のマネージャーは別の仕事をしているし、イナズマジャパンの残りの面々は各々の時間を過ごしているはずだ。
ちなみに豪炎寺は冬香と同じく席に着き、無言で食事を続けながら展開を見守っていた。
「Ciao! Come stai?」
「Ciao! Non c'e male, Grazie. E tu?」
「Bene,grazie!!」
自然な様子で挨拶を交わして二人はハグをする。
親しげに抱き合い、フィディオが円堂の頬に唇を寄せようとした瞬間、彼女の体が不自然に傾いた。
「・・・人の許婚に気軽に触れるな」
「違う。姉さんはもうエドガーの許婚じゃない」
「それなら君の姉君ではもないだろう。それにしては昔の甘え癖が抜けていないようだがな」
ちりちりと視線が火花を散らす。
間に無理やり入れられた円堂を苦笑して眺めていたフィディオが、助け舟を出す。
「二人とも。とりあえずマモルのフードを放して上げなよ。微妙に苦しそうだ」
「いや、フィディオ。微妙どころじゃあない。エドガーのお陰で吊るし上げ状態だ」
「私だけの所為だというのか」
「別にそうは言ってないだろ。ただ有人なら身長差がそんなにないからまだマシだけど、お前と俺の身長差は結構あるだろ。そこを自覚しろって言ってんだよ」
「身長差、身長差ね」
二度呟いたエドガーはフードを放すと腕を組み、意地の悪い笑みを浮かべた。
その表情に密かに冬香は瞳を丸める。
直接話をしたのは一度きりだが、とても紳士で優しげな感じだったに、鬼道を眺める姿はとても同一人物とは思えなかった。
多くを語られなくとも侮辱されたのを感じたらしい鬼道も、円堂のフードから手を放すとエドガーと対峙する。
「何が言いたい」
「いや、別に?」
「はっきりと口にしろ。気味が悪い」
「そこまで言うのなら仕方がないな。何、詮無きことだ。君は相変わらずマモルとほとんど身長が変わらないのだなと思っただけの話だ」
「───どういう意味だ」
「だから別に大したことではないと言っているだろう?それではマモルが君を庇護の対象にしか見ないわけだ」
「黙れ。貴様など身長が高くとも姉さんに歯牙にも掛けられていないくせに」
「何?」
「そうだろう?何せ許婚を解消されているのにも関わらずねちねちねちねちとしつこい。日本にはな、しつこい男は嫌われるという格言があるんだぞ」
ばちばちと火花を散らす二人に、泥沼なドラマみたいだとデザートのヨーグルトを口に運びながら内心で呟く。
「・・・凄いな。真昼にやってる泥沼劇場みたいになってる」
「マモル、何それ?」
「日本じゃな、昼にやるドラマは以上にどろどろとしてるんだ。その内容がな」
不意に隣から聞こえた声に、目を丸くして振り返る。
いつの間に来ていたのか、ちゃっかりと難を逃れたフィディオがスコーンを並べた皿を、円堂が紅茶ポットと余人分のティーカップを片手に席に座っていた。
とぽとぽと湯気の立つ紅茶をカップに注いだ円堂は、そつなく冬香と豪炎寺の前にも並べる。
「ゴールデンドロップ入りは冬っぺ用ね」
「・・・ありがとう」
「おい、円堂。あっちは放っておいていいのか?」
「ああ、別に構わないな。な、フィディオ」
「そうだね。ああ見えてあの二人は似たもの同士だから放っておいて大丈夫だよ。こんなあからさまに対立するのは初めて見たけど、火種は昔から転がってたし」
「昔から?」
「ああ。エドガーってさ、女の子には誰にでも優しいけど、惚れ抜いてるのはマモルだけだし、ユウトの場合は見てすぐ判るように超ど級のシスコンだし。ま、今はシスコンプラスアルファって感じだけど。とにかく互いにマモルの特別の位置を持ってる相手を気に入らないんだよな。ね、マモル」
「そこで俺にふるの、フィディオ」
「だって原因はいつだってマモルじゃないか」
「俺はノーコメント。・・・それにしても、この紅茶本当に美味いな」
「そりゃエドガーがマモルのために厳選したものだもん。ちゃんとあとでお礼を言いなよ」
「・・・判ってるよ」
珍しく年相応の顔で不貞腐れた円堂に、冬香はまた驚きで瞳を丸くする。
いつだって飄々としている円堂が素直に表情を表すのは実は少なく、冬香の正面に座る豪炎寺も瞳を丸くしていた。
そして苦々しく表情を歪めると、ぼそりと小さく呟く。
「付き合いの長さ故の態度か。・・・羨ましいな」
あちらで角を突き合わせている鬼道とエドガー。
こちらでは淡い苦笑を浮かべてそれを見物するフィディオと円堂。
幼馴染の彼らだからこそ醸し出せるのだろう賑々しくも穏やかな空気に、冬香も微笑した。
「本当ね」
ぽつりと呟いた声が聞こえたらしく、不思議そうな顔で円堂が冬香の顔を覗く。
黒縁眼鏡を指の腹で押し上げた彼女にしがみ付くと、驚いて奇声を上げた円堂に笑った。
円堂の声に我に返ったらしい鬼道とエドガーがこちらに駆け寄る。
どちらが隣に座るか、なんて小さなことでまた喧嘩を始めた二人に、彼らの子供時代を見た気がして、羨ましいな、ともう一度だけぽそりと呟いた。
PR
更新内容
|
(06/28)
(04/07)
(04/07)
(04/07)
(03/31)
(03/30)
(03/30)
(03/30)
(03/30)
(03/25)
(03/25)
(03/25)
(03/25)
(03/24)
(03/24)
(03/24)
(03/23)
(03/14)
(03/14)
(03/13)
(03/13)
(03/13)
(03/11)
(03/10)
(03/08)
カテゴリー
|
リンク
|
フリーエリア
|