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好きなんだからしょうがない
「エドガーは、行かなくていいのか?」
不意に横から掛けられた声に、エドガーは視線を送る。
切れ長な瞳に静かな色を湛えた少年、豪炎寺は、じっとエドガーの目を見詰めてきた。
強すぎる視線に微かに嘆息する。
好奇心の奥に見え隠れする感情は自覚がないもののようだが、エドガー自身昔から幾度となく向けられてきたので正確に意味が理解できた。
余計なお世話だと切って捨てるのは簡単だが、それでは赦さないと静かでありながら強い色をした瞳が告げる。
もう一度嘆息すると、仕方無しに口を開いた。
「構わない」
たった一言の回答に、豪炎寺の瞳が驚きで見開かれる。
そしてエドガーから、すぐ近くでコントに近い遣り取りをしている三人に向けられた。
円堂の服の裾を掴み警戒心の強い猫のように威嚇する鬼道。
鬼道の苛立ちを判っているのかいないのか。否、判っていてあえて流しているのだろう、笑顔の絶えないフィディオ。
そんな彼らの間に立ち、どちらともない中立の立場で苦笑する円堂。
懐かしさすら覚える光景だ。
昔の鬼道ならここまであからさまに噛み付かなかったろうが、それでもあの目は見覚えがある。
『姉弟』という立場ではなくなり、それでも尚あからさまにむき出しな独占欲はエドガーの心の奥深い場所にある何かを刺激するが、我慢しきれないほどではない。
それより懐かしさすら覚える光景に、安堵するほうが先立った。
「見ているだけでいいのか?お前は、円堂が好きなのだろう?」
唖然と呟く豪炎寺に、少しだけ笑う。
それはお前のほうだろう、と問いかけたら、彼はどんな表情をするのだろうか。
もっともやぶを突いて蛇を出すほどエドガーは間抜けではなかったので、余計な言葉を口にする代わりに別の言葉で挿げ替えた。
「見ているだけでも幸せだと言えば、驚くか?」
「・・・何?」
「私とマモルは二年間全く顔を合わせていなかった。それどころか生死不明の状態が続き、気がつけば両親に取り上げられ許婚としての立場も失っていた。生きていて欲しいと、姿だけでも見たいと、声を聞きたいと願ったあの頃に比べれば、今の状態は格段にいいものだ。だから私は、見ているだけでも構わない」
「・・・・・・」
「多分私は、君が思うより遥かにマモルを想っているのだろうな。悔しいし業腹だが、ずっと昔から彼女の代わりなんてひとりも居ない」
自然と微苦笑が浮かぶ。
本当にどうしてと自分の趣味の悪さを疑わずに居られないが、こればかりは仕方ない。
どうしたって彼女を好きで、好きなままで居たいと願い続けたのも自分なのだから。
「本当に、仕方ないな。例えマモルの優先順位の一番にユウトがいても、例えマモルが心を赦して肩を並べる相棒がフィディオだとしても、例えマモルが可愛くない態度でしか接してくれずとも、それでも、彼女が好きなんだ」
熱い吐息が自然と漏れる。
そう、結局はその一言に尽きてしまう。
エドガーにとって女性は敬うべき存在で、守り、礼儀を持って接する対象だ。
けれど唯一、円堂だけは隣に並んで立って欲しいと願う存在だった。
もう随分と昔から、頑固で一途な望みは変わらない。
「・・・それにしては、報われていないようにも見えるがな」
「そう見えるか?だが存外に、そうでもない」
惚気かと呆れ混じりにため息を吐き出した少年に笑いかければ、丁度のタイミングで声が掛かった。
「エドガー!見てないで助けろよ!!」
あの日とは違い、黒縁眼鏡の奥から怒りを湛えて栗色の瞳が訴える。
苛立ちを含んだ素直な感情は、実のところ、昔から円堂を知るエドガーにしか容易には露にされないのをきちんと知っていた。
今の今まで放っておいたくせに都合よく助けろといきなり訴える彼女に驚く豪炎寺を他所に、エドガーは呆れを含んだため息を落とした。
仕方がないというポーズを取っているが、内心では『頼られる』事実に喜んでいる。
彼女の『我侭』を叶えられる『居場所』がある自分を、正確に知っているから。
「全く、放っておけと言ったり助けろと言ったり、君も忙しいものだな」
「苦情は後で聞くから早くしろ!有人の皇帝ペンギン1号とフィディオのオーディンソードが激突したら食堂の被害は甚大になるぞ!?」
「───本当に、仕方ない」
横に居る豪炎寺ではなく、栗色の瞳はエドガーだけを映している。
目移りせずに自分に助けを求める昔から変わらぬ円堂に微笑すると、もう一度だけわざとらしくため息を吐き伸ばされた掌を取った。
久方ぶりに繋いだ掌は、覚えている頃と同じ温もりを伝えてきて、彼女を諦められない自分を嫌になるほど自覚する。
「ほら、な。存外に報われているだろう?」
他人が見ている上辺と、心の奥は全く違う。
それを理解するからこそ、互いの素直じゃない態度も認め合える自分たちを、誰かに理解してもらいたいとは欠片も思わないけれど。
「エドガーは、行かなくていいのか?」
不意に横から掛けられた声に、エドガーは視線を送る。
切れ長な瞳に静かな色を湛えた少年、豪炎寺は、じっとエドガーの目を見詰めてきた。
強すぎる視線に微かに嘆息する。
好奇心の奥に見え隠れする感情は自覚がないもののようだが、エドガー自身昔から幾度となく向けられてきたので正確に意味が理解できた。
余計なお世話だと切って捨てるのは簡単だが、それでは赦さないと静かでありながら強い色をした瞳が告げる。
もう一度嘆息すると、仕方無しに口を開いた。
「構わない」
たった一言の回答に、豪炎寺の瞳が驚きで見開かれる。
そしてエドガーから、すぐ近くでコントに近い遣り取りをしている三人に向けられた。
円堂の服の裾を掴み警戒心の強い猫のように威嚇する鬼道。
鬼道の苛立ちを判っているのかいないのか。否、判っていてあえて流しているのだろう、笑顔の絶えないフィディオ。
そんな彼らの間に立ち、どちらともない中立の立場で苦笑する円堂。
懐かしさすら覚える光景だ。
昔の鬼道ならここまであからさまに噛み付かなかったろうが、それでもあの目は見覚えがある。
『姉弟』という立場ではなくなり、それでも尚あからさまにむき出しな独占欲はエドガーの心の奥深い場所にある何かを刺激するが、我慢しきれないほどではない。
それより懐かしさすら覚える光景に、安堵するほうが先立った。
「見ているだけでいいのか?お前は、円堂が好きなのだろう?」
唖然と呟く豪炎寺に、少しだけ笑う。
それはお前のほうだろう、と問いかけたら、彼はどんな表情をするのだろうか。
もっともやぶを突いて蛇を出すほどエドガーは間抜けではなかったので、余計な言葉を口にする代わりに別の言葉で挿げ替えた。
「見ているだけでも幸せだと言えば、驚くか?」
「・・・何?」
「私とマモルは二年間全く顔を合わせていなかった。それどころか生死不明の状態が続き、気がつけば両親に取り上げられ許婚としての立場も失っていた。生きていて欲しいと、姿だけでも見たいと、声を聞きたいと願ったあの頃に比べれば、今の状態は格段にいいものだ。だから私は、見ているだけでも構わない」
「・・・・・・」
「多分私は、君が思うより遥かにマモルを想っているのだろうな。悔しいし業腹だが、ずっと昔から彼女の代わりなんてひとりも居ない」
自然と微苦笑が浮かぶ。
本当にどうしてと自分の趣味の悪さを疑わずに居られないが、こればかりは仕方ない。
どうしたって彼女を好きで、好きなままで居たいと願い続けたのも自分なのだから。
「本当に、仕方ないな。例えマモルの優先順位の一番にユウトがいても、例えマモルが心を赦して肩を並べる相棒がフィディオだとしても、例えマモルが可愛くない態度でしか接してくれずとも、それでも、彼女が好きなんだ」
熱い吐息が自然と漏れる。
そう、結局はその一言に尽きてしまう。
エドガーにとって女性は敬うべき存在で、守り、礼儀を持って接する対象だ。
けれど唯一、円堂だけは隣に並んで立って欲しいと願う存在だった。
もう随分と昔から、頑固で一途な望みは変わらない。
「・・・それにしては、報われていないようにも見えるがな」
「そう見えるか?だが存外に、そうでもない」
惚気かと呆れ混じりにため息を吐き出した少年に笑いかければ、丁度のタイミングで声が掛かった。
「エドガー!見てないで助けろよ!!」
あの日とは違い、黒縁眼鏡の奥から怒りを湛えて栗色の瞳が訴える。
苛立ちを含んだ素直な感情は、実のところ、昔から円堂を知るエドガーにしか容易には露にされないのをきちんと知っていた。
今の今まで放っておいたくせに都合よく助けろといきなり訴える彼女に驚く豪炎寺を他所に、エドガーは呆れを含んだため息を落とした。
仕方がないというポーズを取っているが、内心では『頼られる』事実に喜んでいる。
彼女の『我侭』を叶えられる『居場所』がある自分を、正確に知っているから。
「全く、放っておけと言ったり助けろと言ったり、君も忙しいものだな」
「苦情は後で聞くから早くしろ!有人の皇帝ペンギン1号とフィディオのオーディンソードが激突したら食堂の被害は甚大になるぞ!?」
「───本当に、仕方ない」
横に居る豪炎寺ではなく、栗色の瞳はエドガーだけを映している。
目移りせずに自分に助けを求める昔から変わらぬ円堂に微笑すると、もう一度だけわざとらしくため息を吐き伸ばされた掌を取った。
久方ぶりに繋いだ掌は、覚えている頃と同じ温もりを伝えてきて、彼女を諦められない自分を嫌になるほど自覚する。
「ほら、な。存外に報われているだろう?」
他人が見ている上辺と、心の奥は全く違う。
それを理解するからこそ、互いの素直じゃない態度も認め合える自分たちを、誰かに理解してもらいたいとは欠片も思わないけれど。
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