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「君が、円堂君かい?」
瞳を眇めてこちらを『観察』してきた財前に、にこりと無邪気に見える笑みを浮かべた。
情報の中に彼は大のサッカー好きとあった。
もしかしたら過去の円堂の活動を知っているのかもしれない。
「初めまして、財前総理。円堂守と申します。雷門中サッカー部のキャプテンで、今回のイナズマイレブンでも同じくキャプテンを務めてます」
「・・・そうか。そうだな。私もあの試合見させてもらった。君のプレイは素晴らしかったよ」
「ありがとうございます」
にこり、と笑顔で牽制する。
余計な会話は情報を引き出される危険性を増すだけだ。
ならば最小限の会話で済まそうと差し出された右手を握って握手を交わす。
「うん、いい目をしている。塔子が君達と一緒に行きたがる理由が判るよ。娘をよろしく頼む」
「・・・はい」
「私は私で出来ることをする。だから君たちも力を貸して欲しい」
「過分な言葉、痛み入ります。こちらこそよろしくお願いいたします。大丈夫です、俺たちは絶対に勝利を収めてみせます」
にいっと口角を持ち上げて笑うと、空いている手で眼鏡のつるを持ち上げる。
そうして握手していた右手を離し、きっちりと九十度に頭を下げた。
もう一度だけ視線を絡めると、踵を返しバスへと戻る。
塔子も二人きりの別れがしたいだろうと配慮したのだが、予想以上に早く彼女はバスへ戻ってきた。
「何だ、早いな。もういいのか?」
「うん!一生の別れでもないしね。次に会うのは全部が終ってからだ。ありがとう、円堂」
猫のように釣りあがった瞳を悪戯っぽく輝かせた塔子に、釣られて笑う。
勝気でありながらお茶目な部分があり、とても可愛い。
もし自分が男ならなと考えつつ、微笑ましい気分で頭を撫でてやればきょとんと不思議そうに小首を傾げた。
「とにかく、これからもよろしく頼むな!」
「おう!よーし、皆出発だ!」
一人増えた仲間に歓迎の意を唱えると、バスの座席に歩き出す。
昨夜と同じ席順で、円堂は自然と風丸の隣に座った。
すると前の席の鬼道がひょこりと顔を出してこちらを恨めしそうな眼差しで見詰める。
「・・・どうして、また風丸の隣なんですか」
「なんでって、昨日からそうだったし。な、ちろた」
「ちろたは止めろ」
「いいじゃん、別に。お前も昔みたいにまも姉って呼んでいいぞ」
「遠慮する!───とにかく、円堂がいいって言ってるんだ。鬼道が口出しすることじゃないだろう」
「風丸には聞いてない。俺は姉さんに聞いてるんだ」
走り出した車内での言い争いを気にする仲間は今更居ない。
それくらい風丸と鬼道の口喧嘩は頻繁で、間に一之瀬が居ない分今日はまだマシな方だからだ。
仲間はそれぞれ好きな話題を話しておりこちらに注意を向けるものは居なかった─── 一人を除いて。
「なあなあ」
「ん?どうした、塔子?そんな変なバランスだとこけたとき危ないぞ」
「大丈夫!ちゃんとシートベルトしてるし、鬼道よりマシだから。じゃなくてさ、聞きたいことあったんだけどいいか?」
「何?」
「前から思ってたんだけどさ、なんで円堂が『姉さん』なんだ?円堂は男だろ?」
当たり前と言えば当たり前な塔子の発言に、三人は思わず顔を合わせた。
自分たちにとって自然だったので口にしてなかったが、そう言えば彼女には何も説明をしていない。
どう説明すればいいかと黙り込んでしまった年少組みに苦笑すると、きょとりと瞬きした塔子に説明を始めた。
「あー・・・実はな、俺は男じゃなくて女だ」
「ええ!?円堂が女!!?フットボールフロンティアに参加できるのは男だけだろ?」
「いや、色々と事情があって、俺は特別枠の参加なんだ。もっとも事情を知るのは大会の運営委員会でも一握りだろうけどね」
「じゃあ、姉さんっていうのは?円堂はあたしたちと同じ学年だろ?」
「まあ学年は同じなんだけどね、俺留年してるんだ」
「留年?」
「そ。本当なら、俺は中学三年生。つまりお前より年上。よって、『姉さん』」
「ふーん。そうなのか」
色々と省いたが塔子は納得してくれたらしい。
例えばどうして『先輩』と呼ばずに『姉さん』なのか、とか、どうして留年したんだとか聞かれたら、また説明が面倒なのでありがたいと言えばありがたいけれど。
「そんでもってこの二人は昔なじみだ」
「と言っても、俺と鬼道が対面したのは最近だ。俺は鬼道の存在を知っていたが、鬼道は違う」
「姉さんは俺には何も教えてくれてなかったけどな」
「だからそれは事情があったって言ってるだろ。有人はいつまでも拗ねるなぁ」
「拗ねてない」
塔子は唇を尖らせてそっぽを向いた鬼道に瞳を丸め、そして噴出した。
けらけらと笑う彼女に驚いたらしく、鬼道は動きを止める。
そんな彼の肩をばんばんと叩くと、可愛らしい笑顔で爆弾を落とした。
「あははは!つまり鬼道は、風丸にやきもち妬いちゃうほど円堂が好きなんだな!」
「なっ!!?」
唐突な言葉に声を詰まらせた鬼道は、徐々に首筋から赤くなった。
肌の色が白い所為で赤くなるとすぐ判る弟は、可哀想に茹蛸のになっている。
金魚みたいにぱくぱくと口を動かす鬼道に、不機嫌になった風丸が低い声で呟いた。
「俺の方がずっとまも姉を想ってる」
嫉妬ゆえの発言を聞かなかったフリをしながら、円堂は苦笑した。
普段は年齢以上に落ち着いている二人なのに、自分が間に入ると昔に戻ってしまう二人に挟まれるとどうにも不思議な感覚に陥る。
まるで自分の時間も昔のままだと錯覚してしまいそうになる。
首を振って下らない妄想を振り払うと、笑い続ける塔子の頭を撫でてやる。
「どうかした?」
「いーや?塔子は可愛いなって思ってな」
「・・・ありがと、円堂」
はにかむように礼を告げた彼女の頭をもう一度撫でると、精々意地の悪い笑顔を意識して浮かべる。
恨めしげな眼差しでこちらを見詰める二人に、わざとらしくため息を落とした。
「やっぱ、素直な子が一番可愛いよな」
その後みるみると剥れた二人の機嫌を直すのは手間だったが、新たな友情が築けたのでよしとした。
白恋中へ向けての旅はまだ暫く続きそうだ。
瞳を眇めてこちらを『観察』してきた財前に、にこりと無邪気に見える笑みを浮かべた。
情報の中に彼は大のサッカー好きとあった。
もしかしたら過去の円堂の活動を知っているのかもしれない。
「初めまして、財前総理。円堂守と申します。雷門中サッカー部のキャプテンで、今回のイナズマイレブンでも同じくキャプテンを務めてます」
「・・・そうか。そうだな。私もあの試合見させてもらった。君のプレイは素晴らしかったよ」
「ありがとうございます」
にこり、と笑顔で牽制する。
余計な会話は情報を引き出される危険性を増すだけだ。
ならば最小限の会話で済まそうと差し出された右手を握って握手を交わす。
「うん、いい目をしている。塔子が君達と一緒に行きたがる理由が判るよ。娘をよろしく頼む」
「・・・はい」
「私は私で出来ることをする。だから君たちも力を貸して欲しい」
「過分な言葉、痛み入ります。こちらこそよろしくお願いいたします。大丈夫です、俺たちは絶対に勝利を収めてみせます」
にいっと口角を持ち上げて笑うと、空いている手で眼鏡のつるを持ち上げる。
そうして握手していた右手を離し、きっちりと九十度に頭を下げた。
もう一度だけ視線を絡めると、踵を返しバスへと戻る。
塔子も二人きりの別れがしたいだろうと配慮したのだが、予想以上に早く彼女はバスへ戻ってきた。
「何だ、早いな。もういいのか?」
「うん!一生の別れでもないしね。次に会うのは全部が終ってからだ。ありがとう、円堂」
猫のように釣りあがった瞳を悪戯っぽく輝かせた塔子に、釣られて笑う。
勝気でありながらお茶目な部分があり、とても可愛い。
もし自分が男ならなと考えつつ、微笑ましい気分で頭を撫でてやればきょとんと不思議そうに小首を傾げた。
「とにかく、これからもよろしく頼むな!」
「おう!よーし、皆出発だ!」
一人増えた仲間に歓迎の意を唱えると、バスの座席に歩き出す。
昨夜と同じ席順で、円堂は自然と風丸の隣に座った。
すると前の席の鬼道がひょこりと顔を出してこちらを恨めしそうな眼差しで見詰める。
「・・・どうして、また風丸の隣なんですか」
「なんでって、昨日からそうだったし。な、ちろた」
「ちろたは止めろ」
「いいじゃん、別に。お前も昔みたいにまも姉って呼んでいいぞ」
「遠慮する!───とにかく、円堂がいいって言ってるんだ。鬼道が口出しすることじゃないだろう」
「風丸には聞いてない。俺は姉さんに聞いてるんだ」
走り出した車内での言い争いを気にする仲間は今更居ない。
それくらい風丸と鬼道の口喧嘩は頻繁で、間に一之瀬が居ない分今日はまだマシな方だからだ。
仲間はそれぞれ好きな話題を話しておりこちらに注意を向けるものは居なかった─── 一人を除いて。
「なあなあ」
「ん?どうした、塔子?そんな変なバランスだとこけたとき危ないぞ」
「大丈夫!ちゃんとシートベルトしてるし、鬼道よりマシだから。じゃなくてさ、聞きたいことあったんだけどいいか?」
「何?」
「前から思ってたんだけどさ、なんで円堂が『姉さん』なんだ?円堂は男だろ?」
当たり前と言えば当たり前な塔子の発言に、三人は思わず顔を合わせた。
自分たちにとって自然だったので口にしてなかったが、そう言えば彼女には何も説明をしていない。
どう説明すればいいかと黙り込んでしまった年少組みに苦笑すると、きょとりと瞬きした塔子に説明を始めた。
「あー・・・実はな、俺は男じゃなくて女だ」
「ええ!?円堂が女!!?フットボールフロンティアに参加できるのは男だけだろ?」
「いや、色々と事情があって、俺は特別枠の参加なんだ。もっとも事情を知るのは大会の運営委員会でも一握りだろうけどね」
「じゃあ、姉さんっていうのは?円堂はあたしたちと同じ学年だろ?」
「まあ学年は同じなんだけどね、俺留年してるんだ」
「留年?」
「そ。本当なら、俺は中学三年生。つまりお前より年上。よって、『姉さん』」
「ふーん。そうなのか」
色々と省いたが塔子は納得してくれたらしい。
例えばどうして『先輩』と呼ばずに『姉さん』なのか、とか、どうして留年したんだとか聞かれたら、また説明が面倒なのでありがたいと言えばありがたいけれど。
「そんでもってこの二人は昔なじみだ」
「と言っても、俺と鬼道が対面したのは最近だ。俺は鬼道の存在を知っていたが、鬼道は違う」
「姉さんは俺には何も教えてくれてなかったけどな」
「だからそれは事情があったって言ってるだろ。有人はいつまでも拗ねるなぁ」
「拗ねてない」
塔子は唇を尖らせてそっぽを向いた鬼道に瞳を丸め、そして噴出した。
けらけらと笑う彼女に驚いたらしく、鬼道は動きを止める。
そんな彼の肩をばんばんと叩くと、可愛らしい笑顔で爆弾を落とした。
「あははは!つまり鬼道は、風丸にやきもち妬いちゃうほど円堂が好きなんだな!」
「なっ!!?」
唐突な言葉に声を詰まらせた鬼道は、徐々に首筋から赤くなった。
肌の色が白い所為で赤くなるとすぐ判る弟は、可哀想に茹蛸のになっている。
金魚みたいにぱくぱくと口を動かす鬼道に、不機嫌になった風丸が低い声で呟いた。
「俺の方がずっとまも姉を想ってる」
嫉妬ゆえの発言を聞かなかったフリをしながら、円堂は苦笑した。
普段は年齢以上に落ち着いている二人なのに、自分が間に入ると昔に戻ってしまう二人に挟まれるとどうにも不思議な感覚に陥る。
まるで自分の時間も昔のままだと錯覚してしまいそうになる。
首を振って下らない妄想を振り払うと、笑い続ける塔子の頭を撫でてやる。
「どうかした?」
「いーや?塔子は可愛いなって思ってな」
「・・・ありがと、円堂」
はにかむように礼を告げた彼女の頭をもう一度撫でると、精々意地の悪い笑顔を意識して浮かべる。
恨めしげな眼差しでこちらを見詰める二人に、わざとらしくため息を落とした。
「やっぱ、素直な子が一番可愛いよな」
その後みるみると剥れた二人の機嫌を直すのは手間だったが、新たな友情が築けたのでよしとした。
白恋中へ向けての旅はまだ暫く続きそうだ。
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