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晴れた太陽が気持ちよくて歩いていたら、目の前に珍しい光景を見つけ目を瞬かせる。
きっちりと背筋を伸ばして歩く少年はよく見知っていたが、無表情に近い顔で淡々と両腕に抱えるものがそぐわない。
いや、目の抱擁になるくらい美少年に花は似合っていたが、少年───豪炎寺が自分から花を求めるタイプではないと知っているだけに意外に思えた。
大胆に花束を持ちながら全く照れが伺えないのが豪炎寺らしいと言えばらしいが、一体どうしたというのだろう。
好奇心がうずうずと沸き起こり、スピードを上げて前を行く少年に追いつくと。


「ごーうえんじー」


どん、と思い切り背中に圧し掛かった。
不意打ちされたことでたたらを踏んだ豪炎寺は、それでも何とか体勢を戻すと首だけをこちらに向ける。
切れ長の瞳で幾度か瞬きすると、ふわりと彼独特の淡い微笑を浮かべた。


「円堂。どうかしたのか?」
「いや、どうかしたのはお前だろ?どうしたんだよ、その両手いっぱいの花束」
「これか?これは夕香へのバレンタインプレゼントだ」
「バレンタイン?俺の記憶だと日本じゃ女から渡すのがメインじゃなかったか?」
「別に男から渡しても構わないだろう?最近では逆チョコが流行るくらいだ、花束くらい普通だ」
「そうか?」
「そうだ」


こくり、と頷く豪炎寺は心持ち楽しそうだった。
最愛の妹に贈り物が出来るのが嬉しいに違いない。円堂とて彼の気持ちはよくわかる。
目に入れても痛くない可愛い弟妹を口実をつけて構いたいと思うのは長子の特権だろう。
それに彼の場合は夕香が不幸に見舞われて、その原因は自分の所為だと思い込みながら抑圧した生活を送っていただけに反動が大きいのかもしれない。
どちらにせよ妹にプレゼントすると言う豪炎寺が嬉しそうなので、まあ別に理由はどうでも構わないかと円堂も笑った。

豪炎寺の両腕いっぱいに抱え込まれた花束には、季節を問わず可愛らしい花が並んでいる。
温室のお陰で最近の花屋では色々な種類の花を扱っているが、赤、白、ピンク、黄と目に鮮やかで可愛らしい様子は同じ女として喜ばれるのは間違いないと確信できた。


「夕香ちゃん、喜んでくれるといいな」
「ああ」
「そうだ、後で俺も友チョコ持ってくから。夕香ちゃんはケーキと生チョコとどっちが好きだ?」
「多分、円堂からもらえるなら、どちらでもいいと思う」
「そか。じゃあ、お前は?」
「え?」
「お前はって聞いてるんだよ、豪炎寺。今日はバレンタインでーだろ?日本じゃ女の子が男の子にチョコをやる日のはずだ。違う?」
「いや、違わないが」
「俺、女の子。豪炎寺、男の子。それで、お前はどっちがいい?」
「───生チョコで」
「ん、了解」


瞳を大きくしながらも、呆然とした様子で答えた彼に頷いた。
用意してあるチョコは包むだけなので、包装紙は何色にしようかと思案する。
豪炎寺のイメージカラーはオレンジがかった赤だろうか。それともイナズマジャパンにあわせて青にしようか。
プレゼントを贈った時の反応を想い喉を震わせると、いつの間にか立ち止まっていた豪炎寺からすっと何かを差し出された。


「ん?」
「・・・本当は、渡そうか迷っていたが」
「俺に?」
「ああ。イメージを伝えたら、花屋が作ってくれた」
「夕香ちゃんのより小さいな。やっぱ、愛の違い?」
「なっ!!?」
「冗談、じょーだんだって。本気にすんなよ、豪炎寺」


軽口にかっと頬を赤らめた豪炎寺に、ぱちりとウィンクをする。
クールな見た目と違い、中身は初心で生真面目な彼は素直で可愛い。
同年代の少女には近寄りがたい空気を発しているが、果たして彼の素顔を見つけるのはどんな女の子なのだろうか。

見た目ではなく、彼の中身を好む円堂は、手渡された花束を腕に抱くと微笑んだ。
中心に置かれ目を引く鮮やかなアネモネは、ほんのりと甘い香りがした。




自覚のない想いの色は


アネモネの花言葉・・・はかない恋、清純無垢、無邪気
赤のアネモネ・・・君を愛す
白のアネモネ・・・真心
紫のアネモネ・・・あなたを信じて待つ

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