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えらくタイムリーな形で入った情報に従った先の奈良で出会った少女は、自信満々に胸を張って挑戦的に睨んできた。
幾度もテレビで見かけた少女は、きっちりとした黒のスーツにミスマッチな帽子を被り、きりきりと柳眉を吊り上げている。
赤みがかった癖のある髪を肩を越すくらいまで伸ばし、じっとこちらを見詰める眼差しはとても強い。
「お前ら、宇宙人だろ!」
腰に手を当てて強気な発言をするその少女のつり上がり気味のアーモンドアイが不安に揺れているのを敏感に察すると、円堂は小さく笑って宇宙人だ、いや違うといい合いをしている彼らの間に入った。
唐突な行動に驚き戸惑っている仲間たちを尻目に、少女───総理大臣財前の娘の塔子相手ににっと笑いかけた。
「随分とご慧眼じゃない、財前塔子ちゃん」
「!!?お前、なんであたしの名前をっ」
「中学生だってテレビくらい見るよ。財前総理に付き従ってる姿を何回か見たことがある。名前だって少し時事に詳しけりゃ知ってる奴なんて五万と居る有名人だろ?」
「───そう。あたしを知ってるなら、どうしてあんたたちを問い詰めるのかも理解できるよね?」
「まぁね。父親が浚われたら実の娘なら平静でいられない。───で?君は君が宇宙人であると決めた俺たちと何をしたいわけ?」
唇を噛み締めている塔子に問いかける。
仲間は気づかなかったようだが、目の前の少女が円堂たちを『宇宙人』とやらに仕立て上げてまで何かをさせようとしているのは、少し離れた場所で遣り取りを観察して理解した。
そもそもサッカー好きの財前総理の娘である塔子が、こちらの正体を知らないとは考えにくい。
後ろの大人たちならともかく、子供である塔子は同年代のサッカー情報は詳しそうだ。
それを踏まえた上で試すように『宇宙人』と口にするからには、目的があるはず。
腕を組んで塔子の様子を観察していると、俯きがちだった少女は顔を上げてびしりと円堂を指さした。
人に指を向けるのは礼儀違反だぞ、なんて心の中で暢気に考える。
こちらの心中など一切察しない少女は、凛と背筋を伸ばして宣言した。
「お前たちが宇宙人じゃないって、証明してもらおうか」
「証明?」
想像通りの展開に一応小首を傾げると、深々と頷いた塔子はついて来いと手を振った。
「・・・で?なんでサッカーなんだ、守?」
「いや、俺に聞かれても。証明方法を指定したのはあっちだし」
胡乱な眼差しを向ける一之瀬に苦笑して肩を竦めると、意味が判らないと仲間たちも首を傾げる。
正直、どうしてサッカーなのかと言われれば、『腕試し』が一番しっくりくるだろうが、別に口に出して言うほどのことでもない。
騒ぎ立てる仲間を宥めつつ、ちらりと視線を瞳子に送る。
「監督は今回の試合は許可を下さるんですか?」
「───そうね。やって損はないわ。大人相手に何処まであなたたちが通用するか見てみたいもの」
「そうですか」
相変わらず辛辣でいながら的を得た発言に頷く。
監督の許可があるなら、自分たちは挑まれた勝負にいつもどおりにプレイすればいいだけだ。
もっとも、それが出来ればの話だけれど。
少しだけ難しい表情をしている数人の仲間を視線でひと撫ですると、何も言い出さないのに嘆息する。
自分自身のコンディションを過失しているのに気づいていないのかそれともあえて無視しているのか。
とりあえずは様子見だなと決めると、仲間たちを呼び集めた。
「相手が大人だってやることは変わらない。俺たちは俺たちのサッカーをするだけだ」
「ああ、どんどんゴールを決めてやる」
「でも相手が相手だけに、体力的に差がある。ペース配分には注意しなきゃな」
「しかもこっちは一人足りないしな」
「足りないものを嘆いても仕方ねぇよ。全員で空いてる分をカバーするだけだ」
「あっさり言ってくれるよなぁ、ホント。円堂が言うと大変なことも簡単に聞こえるぜ」
「お得感があるだろ?」
「言ってろ」
シリアスな表情をしていた面々は、冗談交じりの言葉に小さく笑う。
どんな緊迫した場面でも、笑う余裕があるなら大丈夫だ。普段の自分たちのプレイも出来る。
パソコンで情報を検索していた春奈が顔を上げた。
「相手はSPフィクサーズ。大のサッカーファンである財前総理のボディーガードでもあるサッカーチームです」
大体の予想はしていたが、ぴたりと当てはまる回答に腕を組む。
彼らが財前総理のSPと名乗った瞬間からチームの予想は出来ていた。
ある程度の地位がある人間の間で彼らの存在は有名で、総理大臣のSPを勤める傍らサッカーで己とチームプレイを鍛える特殊な部隊だ。
自身を鍛える目的でプレイしているので他チームとの対戦経歴はないが、それでも相当な腕前の持ち主だろう。
パソコンで調べたデータを読み上げる声を右から左に流しつつ、情報を得たことで大人相手だと実感したのか不安が過ぎったらしい後輩組みが瞳子へ詰め寄る。
だが必死の表情の二人は呆気なく袖にされた。
「とりあえず、君たちの思うようにやってみて」
「えぇ~?」
「そんなぁ」
情けなく眉根を下げた壁山と栗松に苦笑する。
大体予想できた結果だが、ある意味彼らのめげない態度は天晴れだ。
初日にあれだけ辛辣に評価されたのに、未だに彼女のあり方がわかっていない。
「どうする?」
そんな二人の様子を静かに眺めていた風丸が問いかける。
しかしその問いに答えたのは円堂ではなく、弟の鬼道だった。
「あの人は俺たちがどんなサッカーをするのか見たいんだろう。そう思いませんか、姉さん」
「うん、俺も有人の意見に同意。初めて指揮する試合だしね。多分、あの人俺たちの情報を前もって得てないんじゃないかな」
「───どうしてそう思うんだ?」
「わかんない?豪炎寺。俺たちの特徴を知ってるなら、それにあった戦略を打ち立ててると思うよ、あの人なら」
「そうか?」
「そうだよ」
大人との対戦で実力を測らずともある程度の情報を持っていたなら、勝つため、成長するための戦略を立てようとするだろう。
しかし彼女はきっと円堂たちがどう動くのか、どんなサッカーをするのかは知らない気がする。
推測と言うより直感に近いが、外れていないだろう。
何も言わずに傍観の位置を取った瞳子は、フィールドが見渡せる場所に立ち静かに見物を始めている。
自由にプレイしろとは、各々の個性を見せろと言われたも同意だ。
彼女がこちらを試す気ならば、円堂も彼女を試させてもらうまでの話。
仲間たちを預けてもいい監督か、見極めさせてもらうだけ。
「それじゃ十人でのフォーメーションはどうする?」
「・・・ミッドフィルダーに風丸と土門をあげて、オフェンスを強化する」
「有人?」
「なるほど、攻撃型の布陣にする気か」
「こういうときこそ先取点が大事なんだ」
「そうか。守りに入っていては点を取るチャンスは減るってわけか」
「ああ。それに俺たちのゴールは姉さんが守ってるんだ。安心して攻撃に集中できる。そうだろ、皆!」
鬼道の声に、先ほどまで不安げな表情をしていた後輩たちも含めて頷いた。
力強く活気が戻った瞳は煌いて、始まる試合を心待ちにしているようだった。
だが、それでは勝てない。
弟の立てた戦略は通常なら有効なものだが、大きな落とし穴がある。
天才ゲームメイカーとして名を馳せる鬼道の言葉だからと頷く仲間も含め、彼らは少しばかり己を過信しているらしい。
気がつかない方も気がつかない方だが、言い出さない方も言い出さない方だ。
己の不調を隠している数名を眺めてから緩く首を振ると、今の状態で勝つつもりらしい彼らに苦笑した。
「どうかしたんですか、姉さん?」
「いいや。別にどうもしていない」
彼らの不調によるプレイの乱れはすぐに明らかになるだろう。
戦略を立てる前からのミスだと指摘するのは容易だが、試合を外れろと今言ったところで聞く耳は持たないに違いない。
口で言うより身を持って実感するほうが早いと決めると、いつの間にか円陣を組んでいた仲間たちに笑いかけた。
「よし、皆!やるぞ!」
『おう!!』
鬨の声を勢い良く上げると、それぞれのポジションに散った。
痛みや自己管理も成長へ必要だからと知っているからこその判断は、果たして吉と出るか凶と出るか。
高らかに鳴らされたホイッスルを耳に、円堂はすっと笑顔を消した。
幾度もテレビで見かけた少女は、きっちりとした黒のスーツにミスマッチな帽子を被り、きりきりと柳眉を吊り上げている。
赤みがかった癖のある髪を肩を越すくらいまで伸ばし、じっとこちらを見詰める眼差しはとても強い。
「お前ら、宇宙人だろ!」
腰に手を当てて強気な発言をするその少女のつり上がり気味のアーモンドアイが不安に揺れているのを敏感に察すると、円堂は小さく笑って宇宙人だ、いや違うといい合いをしている彼らの間に入った。
唐突な行動に驚き戸惑っている仲間たちを尻目に、少女───総理大臣財前の娘の塔子相手ににっと笑いかけた。
「随分とご慧眼じゃない、財前塔子ちゃん」
「!!?お前、なんであたしの名前をっ」
「中学生だってテレビくらい見るよ。財前総理に付き従ってる姿を何回か見たことがある。名前だって少し時事に詳しけりゃ知ってる奴なんて五万と居る有名人だろ?」
「───そう。あたしを知ってるなら、どうしてあんたたちを問い詰めるのかも理解できるよね?」
「まぁね。父親が浚われたら実の娘なら平静でいられない。───で?君は君が宇宙人であると決めた俺たちと何をしたいわけ?」
唇を噛み締めている塔子に問いかける。
仲間は気づかなかったようだが、目の前の少女が円堂たちを『宇宙人』とやらに仕立て上げてまで何かをさせようとしているのは、少し離れた場所で遣り取りを観察して理解した。
そもそもサッカー好きの財前総理の娘である塔子が、こちらの正体を知らないとは考えにくい。
後ろの大人たちならともかく、子供である塔子は同年代のサッカー情報は詳しそうだ。
それを踏まえた上で試すように『宇宙人』と口にするからには、目的があるはず。
腕を組んで塔子の様子を観察していると、俯きがちだった少女は顔を上げてびしりと円堂を指さした。
人に指を向けるのは礼儀違反だぞ、なんて心の中で暢気に考える。
こちらの心中など一切察しない少女は、凛と背筋を伸ばして宣言した。
「お前たちが宇宙人じゃないって、証明してもらおうか」
「証明?」
想像通りの展開に一応小首を傾げると、深々と頷いた塔子はついて来いと手を振った。
「・・・で?なんでサッカーなんだ、守?」
「いや、俺に聞かれても。証明方法を指定したのはあっちだし」
胡乱な眼差しを向ける一之瀬に苦笑して肩を竦めると、意味が判らないと仲間たちも首を傾げる。
正直、どうしてサッカーなのかと言われれば、『腕試し』が一番しっくりくるだろうが、別に口に出して言うほどのことでもない。
騒ぎ立てる仲間を宥めつつ、ちらりと視線を瞳子に送る。
「監督は今回の試合は許可を下さるんですか?」
「───そうね。やって損はないわ。大人相手に何処まであなたたちが通用するか見てみたいもの」
「そうですか」
相変わらず辛辣でいながら的を得た発言に頷く。
監督の許可があるなら、自分たちは挑まれた勝負にいつもどおりにプレイすればいいだけだ。
もっとも、それが出来ればの話だけれど。
少しだけ難しい表情をしている数人の仲間を視線でひと撫ですると、何も言い出さないのに嘆息する。
自分自身のコンディションを過失しているのに気づいていないのかそれともあえて無視しているのか。
とりあえずは様子見だなと決めると、仲間たちを呼び集めた。
「相手が大人だってやることは変わらない。俺たちは俺たちのサッカーをするだけだ」
「ああ、どんどんゴールを決めてやる」
「でも相手が相手だけに、体力的に差がある。ペース配分には注意しなきゃな」
「しかもこっちは一人足りないしな」
「足りないものを嘆いても仕方ねぇよ。全員で空いてる分をカバーするだけだ」
「あっさり言ってくれるよなぁ、ホント。円堂が言うと大変なことも簡単に聞こえるぜ」
「お得感があるだろ?」
「言ってろ」
シリアスな表情をしていた面々は、冗談交じりの言葉に小さく笑う。
どんな緊迫した場面でも、笑う余裕があるなら大丈夫だ。普段の自分たちのプレイも出来る。
パソコンで情報を検索していた春奈が顔を上げた。
「相手はSPフィクサーズ。大のサッカーファンである財前総理のボディーガードでもあるサッカーチームです」
大体の予想はしていたが、ぴたりと当てはまる回答に腕を組む。
彼らが財前総理のSPと名乗った瞬間からチームの予想は出来ていた。
ある程度の地位がある人間の間で彼らの存在は有名で、総理大臣のSPを勤める傍らサッカーで己とチームプレイを鍛える特殊な部隊だ。
自身を鍛える目的でプレイしているので他チームとの対戦経歴はないが、それでも相当な腕前の持ち主だろう。
パソコンで調べたデータを読み上げる声を右から左に流しつつ、情報を得たことで大人相手だと実感したのか不安が過ぎったらしい後輩組みが瞳子へ詰め寄る。
だが必死の表情の二人は呆気なく袖にされた。
「とりあえず、君たちの思うようにやってみて」
「えぇ~?」
「そんなぁ」
情けなく眉根を下げた壁山と栗松に苦笑する。
大体予想できた結果だが、ある意味彼らのめげない態度は天晴れだ。
初日にあれだけ辛辣に評価されたのに、未だに彼女のあり方がわかっていない。
「どうする?」
そんな二人の様子を静かに眺めていた風丸が問いかける。
しかしその問いに答えたのは円堂ではなく、弟の鬼道だった。
「あの人は俺たちがどんなサッカーをするのか見たいんだろう。そう思いませんか、姉さん」
「うん、俺も有人の意見に同意。初めて指揮する試合だしね。多分、あの人俺たちの情報を前もって得てないんじゃないかな」
「───どうしてそう思うんだ?」
「わかんない?豪炎寺。俺たちの特徴を知ってるなら、それにあった戦略を打ち立ててると思うよ、あの人なら」
「そうか?」
「そうだよ」
大人との対戦で実力を測らずともある程度の情報を持っていたなら、勝つため、成長するための戦略を立てようとするだろう。
しかし彼女はきっと円堂たちがどう動くのか、どんなサッカーをするのかは知らない気がする。
推測と言うより直感に近いが、外れていないだろう。
何も言わずに傍観の位置を取った瞳子は、フィールドが見渡せる場所に立ち静かに見物を始めている。
自由にプレイしろとは、各々の個性を見せろと言われたも同意だ。
彼女がこちらを試す気ならば、円堂も彼女を試させてもらうまでの話。
仲間たちを預けてもいい監督か、見極めさせてもらうだけ。
「それじゃ十人でのフォーメーションはどうする?」
「・・・ミッドフィルダーに風丸と土門をあげて、オフェンスを強化する」
「有人?」
「なるほど、攻撃型の布陣にする気か」
「こういうときこそ先取点が大事なんだ」
「そうか。守りに入っていては点を取るチャンスは減るってわけか」
「ああ。それに俺たちのゴールは姉さんが守ってるんだ。安心して攻撃に集中できる。そうだろ、皆!」
鬼道の声に、先ほどまで不安げな表情をしていた後輩たちも含めて頷いた。
力強く活気が戻った瞳は煌いて、始まる試合を心待ちにしているようだった。
だが、それでは勝てない。
弟の立てた戦略は通常なら有効なものだが、大きな落とし穴がある。
天才ゲームメイカーとして名を馳せる鬼道の言葉だからと頷く仲間も含め、彼らは少しばかり己を過信しているらしい。
気がつかない方も気がつかない方だが、言い出さない方も言い出さない方だ。
己の不調を隠している数名を眺めてから緩く首を振ると、今の状態で勝つつもりらしい彼らに苦笑した。
「どうかしたんですか、姉さん?」
「いいや。別にどうもしていない」
彼らの不調によるプレイの乱れはすぐに明らかになるだろう。
戦略を立てる前からのミスだと指摘するのは容易だが、試合を外れろと今言ったところで聞く耳は持たないに違いない。
口で言うより身を持って実感するほうが早いと決めると、いつの間にか円陣を組んでいた仲間たちに笑いかけた。
「よし、皆!やるぞ!」
『おう!!』
鬨の声を勢い良く上げると、それぞれのポジションに散った。
痛みや自己管理も成長へ必要だからと知っているからこその判断は、果たして吉と出るか凶と出るか。
高らかに鳴らされたホイッスルを耳に、円堂はすっと笑顔を消した。
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