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困ったな、小指一本あげられないとは思わなかった
--お題サイト:afaikさまより--
「久し振り、XANXUS」
「失せろ、ドカス」
「うわっ」
暢気な顔をしてのうのうと室内に足を踏み入れた輩に、手近にあった置物を握り締め全力投球する。音を立てる勢いで目標に迫ったそれは、だが残念にも目標撃破ならずするりと避けられドアに当たって砕け散った。
これが部下のカス鮫なら今の一撃は当たっていたはずだが、腐っても鯛かと彼の国の諺を思い出し益々苦い気分になる。
苛立ちに紛れさらに手元にあるあれそれを投げたが、一つもヒットするものはなく余計にXANXUSを苛立たせた。
情けなく眉を下げ瞳を細めて笑う男は、真っ白なスーツに締められた濃い色のネクタイを指先で整える。その男が誰であるか、XANXUSは良く知っていたが、敬意を表す気など欠片もない。
自分より頭一つ分は低い位置にある琥珀色の瞳を下から覗き込むなど奇異な経験だと思いながら、近づくその男を睨んでいた。
「よくも、のうのうと俺の前に顔を出せたな」
「あれ?何か駄目だった?」
「カッ消すぞ、ドカス」
銃のセーフティを外し照準を男───綱吉の額の真ん中に定める。引き金を引けば終わり。しかも持ち手は残虐で有名なXANXUS。
それなのに余裕の態度を崩さない彼は、ぴくりとも揺れない瞳でXANXUSを眺める。
「逃げないのか?」
「逃げる必要があるの?」
「俺に聞くな」
昔は貧相な子供だった。今も華奢だが、それとは違う次元で小さかった。見た目も軟弱だが中身も軟弱で、XANXUSを見上げては涙目で震える、そんな弱い子供だったのに。
いつの間に、彼は真っ直ぐXANXUSの目を覗き込むようになったのか。どれほど憤怒を籠めようと、どれほど殺気を込めようと、綱吉は正面から全てを受け止めるようになった。XANXUSより一回りは小さな体で背筋を伸ばし、凛とした雰囲気を纏う男になった。
綱吉に負けた事実は今でも屈辱としてXANXUSの中に残っている。彼が隙を見せれば容赦なく喉笛を噛み千切る用意はあるし、殺すのに躊躇いはない。
それをしないのはひとえに綱吉がXANXUSの野望を忠実に実行するからで、だからこそいつでも殺せる彼を今でも生かしてやっている。
認めがたいが、綱吉以上にXANXUSの心を理解できる存在はいない。すぐにでも殺してやりたいが、利用価値を見出せるほど彼の存在は大きい。
綱吉はXANXUSの忠実な部下ではない。忠誠心の厚さでスクアーロに劣る。容赦ない殺戮手段でベルフェゴールに劣る。忠実さではレヴィに劣る。狡猾さではマーモンやフランにも劣る。残酷さではルッスーリアにも劣る。
XANXUSの傍に居る事すらしないくせに、そのくせふと気が付くと寄り添っている。
気に喰わない男だ、沢田綱吉は。
「俺に殺されない自信があるのか」
「そりゃ、なけりゃ間抜けに突っ立ってないでしょ。俺だって若い身空で死にたくないし」
「・・・言っておくが、引き金を引くのに躊躇はない」
「知ってるよ。俺と違ってそんな甘さを認めないのがお前だからね。だからこそ、俺はお前に何も残さなくて済む」
「お前が俺の為に何か残すなら、全部カッ消す」
「あはは!そりゃいい。もし俺が死んだなら、お前は俺の為した何もかもをぶっ壊して俺の場所に立てばいい」
「───馬鹿にしてんのか?」
「本心だよ。俺の色に染まったものは、お前には似合わない」
いつの間にか、目の前の男は軟弱さをかなぐり捨て覇王の気配を纏っていた。
瞳の色が濃くなり口角がゆるりと持ち上がる。伏せ目がちの瞳は油断なく光り、爪を研ぐ獣のような鋭さが生まれた。
ぞくり、と背筋を駆け上るのは、快感にも似た拒絶。この存在を頭から喰らい殺したいと願う自分と、そのまま眺め続けたいと望む自分が対立し、暫し迷った後仕方なしに銃口を下げた。
「もういいの?」
「───煩ぇ。今、消されたいのかドカス」
「いやいやいや。奇跡の生還ってのをしたばかりだから、今すぐは遠慮しておくよ」
ひらひらと手を振り笑った綱吉は、年よりも随分と幼く見えて、そのくせ酷く喰えない雰囲気を醸し出した。あの子供がここまで化けるとは昔は思わなかった。家庭教師がアルコバレーノだったとしても、元の素養がなければ無理だっただろう。
だがこうでなくてはいけない。この喰えない糞餓鬼はこのままでなければいけない。殺しても容易に死なない、化け物じみた存在でなければいけない。
「そろそろ帰るよ」
「結局何しに来たんだ、貴様は」
「何って・・・顔を見せに」
「・・・・・・」
「俺に会いたかったでしょ?」
にっと悪戯っぽく笑う綱吉に、今度こそ迷わず銃を発砲した。
甲高い破裂音が響き、影を打ち抜く。憤怒の炎こそ出さないものの、手加減抜きで狙い撃ちした。それなのにいつの間にかちゃっかりと重厚な扉の影に隠れた彼は、傷一つないまま笑顔を向ける。
腹立たしい。本気で狙ったのに未だにぴんぴんしてる綱吉が。苛立ち、憤怒に似た何かが腹の底から湧き上がるのに、同時に酷く高揚している。
「じゃ、XANXUS。これからも宜しく。あ、仕事の割り振りはお前の机の上に今置いといたから、確認しておいて」
「ふざけるな、ドカス。勝手に置くな」
「ちゃんと破くのも見越してスクアーロの分も用意してあるから無駄だよ。精々ボンゴレの為に身を粉にして働いてくれ」
チャオと彼の元・家庭教師を髣髴とさせる挨拶をして扉を閉める姿が見えなくなり、完全に気配が消えるとどかりと椅子に腰掛けた。
「お前が死んだら、何もかもぶっ壊してかっ消してやる。お前が残した何かなんて、俺には必要ねえ」
くつり、と喉を震わせながら密やかに呟く。
彼がドン・ボンゴレとして君臨し続ける今にこそ意味がある。
死骸は不要だ。残りカスすら必要ない。
目の前に立ち塞がる邪魔者が最強であるために必要だというのなら───彼は死んでも生き続けなければならない。
金も権力も人脈も───何も残す必要なんてない。
生きて最強で居続けることこそ、XANXUSが彼に課した義務なのだから。
最強の象徴である男の帰還に、緩やかに口の端を持ち上げた。
--お題サイト:afaikさまより--
「久し振り、XANXUS」
「失せろ、ドカス」
「うわっ」
暢気な顔をしてのうのうと室内に足を踏み入れた輩に、手近にあった置物を握り締め全力投球する。音を立てる勢いで目標に迫ったそれは、だが残念にも目標撃破ならずするりと避けられドアに当たって砕け散った。
これが部下のカス鮫なら今の一撃は当たっていたはずだが、腐っても鯛かと彼の国の諺を思い出し益々苦い気分になる。
苛立ちに紛れさらに手元にあるあれそれを投げたが、一つもヒットするものはなく余計にXANXUSを苛立たせた。
情けなく眉を下げ瞳を細めて笑う男は、真っ白なスーツに締められた濃い色のネクタイを指先で整える。その男が誰であるか、XANXUSは良く知っていたが、敬意を表す気など欠片もない。
自分より頭一つ分は低い位置にある琥珀色の瞳を下から覗き込むなど奇異な経験だと思いながら、近づくその男を睨んでいた。
「よくも、のうのうと俺の前に顔を出せたな」
「あれ?何か駄目だった?」
「カッ消すぞ、ドカス」
銃のセーフティを外し照準を男───綱吉の額の真ん中に定める。引き金を引けば終わり。しかも持ち手は残虐で有名なXANXUS。
それなのに余裕の態度を崩さない彼は、ぴくりとも揺れない瞳でXANXUSを眺める。
「逃げないのか?」
「逃げる必要があるの?」
「俺に聞くな」
昔は貧相な子供だった。今も華奢だが、それとは違う次元で小さかった。見た目も軟弱だが中身も軟弱で、XANXUSを見上げては涙目で震える、そんな弱い子供だったのに。
いつの間に、彼は真っ直ぐXANXUSの目を覗き込むようになったのか。どれほど憤怒を籠めようと、どれほど殺気を込めようと、綱吉は正面から全てを受け止めるようになった。XANXUSより一回りは小さな体で背筋を伸ばし、凛とした雰囲気を纏う男になった。
綱吉に負けた事実は今でも屈辱としてXANXUSの中に残っている。彼が隙を見せれば容赦なく喉笛を噛み千切る用意はあるし、殺すのに躊躇いはない。
それをしないのはひとえに綱吉がXANXUSの野望を忠実に実行するからで、だからこそいつでも殺せる彼を今でも生かしてやっている。
認めがたいが、綱吉以上にXANXUSの心を理解できる存在はいない。すぐにでも殺してやりたいが、利用価値を見出せるほど彼の存在は大きい。
綱吉はXANXUSの忠実な部下ではない。忠誠心の厚さでスクアーロに劣る。容赦ない殺戮手段でベルフェゴールに劣る。忠実さではレヴィに劣る。狡猾さではマーモンやフランにも劣る。残酷さではルッスーリアにも劣る。
XANXUSの傍に居る事すらしないくせに、そのくせふと気が付くと寄り添っている。
気に喰わない男だ、沢田綱吉は。
「俺に殺されない自信があるのか」
「そりゃ、なけりゃ間抜けに突っ立ってないでしょ。俺だって若い身空で死にたくないし」
「・・・言っておくが、引き金を引くのに躊躇はない」
「知ってるよ。俺と違ってそんな甘さを認めないのがお前だからね。だからこそ、俺はお前に何も残さなくて済む」
「お前が俺の為に何か残すなら、全部カッ消す」
「あはは!そりゃいい。もし俺が死んだなら、お前は俺の為した何もかもをぶっ壊して俺の場所に立てばいい」
「───馬鹿にしてんのか?」
「本心だよ。俺の色に染まったものは、お前には似合わない」
いつの間にか、目の前の男は軟弱さをかなぐり捨て覇王の気配を纏っていた。
瞳の色が濃くなり口角がゆるりと持ち上がる。伏せ目がちの瞳は油断なく光り、爪を研ぐ獣のような鋭さが生まれた。
ぞくり、と背筋を駆け上るのは、快感にも似た拒絶。この存在を頭から喰らい殺したいと願う自分と、そのまま眺め続けたいと望む自分が対立し、暫し迷った後仕方なしに銃口を下げた。
「もういいの?」
「───煩ぇ。今、消されたいのかドカス」
「いやいやいや。奇跡の生還ってのをしたばかりだから、今すぐは遠慮しておくよ」
ひらひらと手を振り笑った綱吉は、年よりも随分と幼く見えて、そのくせ酷く喰えない雰囲気を醸し出した。あの子供がここまで化けるとは昔は思わなかった。家庭教師がアルコバレーノだったとしても、元の素養がなければ無理だっただろう。
だがこうでなくてはいけない。この喰えない糞餓鬼はこのままでなければいけない。殺しても容易に死なない、化け物じみた存在でなければいけない。
「そろそろ帰るよ」
「結局何しに来たんだ、貴様は」
「何って・・・顔を見せに」
「・・・・・・」
「俺に会いたかったでしょ?」
にっと悪戯っぽく笑う綱吉に、今度こそ迷わず銃を発砲した。
甲高い破裂音が響き、影を打ち抜く。憤怒の炎こそ出さないものの、手加減抜きで狙い撃ちした。それなのにいつの間にかちゃっかりと重厚な扉の影に隠れた彼は、傷一つないまま笑顔を向ける。
腹立たしい。本気で狙ったのに未だにぴんぴんしてる綱吉が。苛立ち、憤怒に似た何かが腹の底から湧き上がるのに、同時に酷く高揚している。
「じゃ、XANXUS。これからも宜しく。あ、仕事の割り振りはお前の机の上に今置いといたから、確認しておいて」
「ふざけるな、ドカス。勝手に置くな」
「ちゃんと破くのも見越してスクアーロの分も用意してあるから無駄だよ。精々ボンゴレの為に身を粉にして働いてくれ」
チャオと彼の元・家庭教師を髣髴とさせる挨拶をして扉を閉める姿が見えなくなり、完全に気配が消えるとどかりと椅子に腰掛けた。
「お前が死んだら、何もかもぶっ壊してかっ消してやる。お前が残した何かなんて、俺には必要ねえ」
くつり、と喉を震わせながら密やかに呟く。
彼がドン・ボンゴレとして君臨し続ける今にこそ意味がある。
死骸は不要だ。残りカスすら必要ない。
目の前に立ち塞がる邪魔者が最強であるために必要だというのなら───彼は死んでも生き続けなければならない。
金も権力も人脈も───何も残す必要なんてない。
生きて最強で居続けることこそ、XANXUSが彼に課した義務なのだから。
最強の象徴である男の帰還に、緩やかに口の端を持ち上げた。
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