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「いけ、オーディンソード」
「・・・マジン・ザ・ハンド!!」
渾身のシュートは宙に浮かんだ黄金色の巨大な掌に受け止められた。
それを当たり前に操って見せた少女は、栗色の瞳を濃くしてフィディオを見詰めると唇を持ち上げる。
オレンジ色のバンダナの上に括られたツインテールがオーディンソードの余波で揺れ、暫くの後落ち着いた。
片腕一本で受け止められたシュートに眉根が寄る。未完であっても威力はお墨付きで、チームメイトのGKも両手で受け止めていたのに。
唇を噛み締めて俯き、ため息と共に気持ちを吐き出す。
顔を上げたときには淡い苦笑が浮べ、目の前の努力家の天才を賞賛した。
「マモル、君俺のチームにGKで移籍しなよ」
「ふはっ、お前にしたらブラックユーモアだなフィディオ。お誘いはありがたいが、俺は今のチームでMFをするのが楽しいんだ。悪いな」
「・・・俺のシュートを片手で受け止めた挙句、袖にするわけ?」
「まあな。って言うか、お前あれじゃん。漸くゴールに入れれるようになったけど、それだけじゃん。コントロールを重視するあまり威力が落ちてんだよ。これじゃ俺じゃなくても止めれるぜ」
「MFの癖に」
「そのMFに止められてどーすんだよ」
ぽんぽんと片手でボールを弄ぶ守は、キーパーとして堂に入っていた。
使い込まれたキーパーグローブと、先日とは違い背中にギャングな顔つきのウサギがプリントされた黒いジャージの守は、顎に手を当てて眉根を寄せる。
「俺もまだまだだ。あと少しって感じなのになー、どうして出ないんだ魔人」
「魔人?さっきから出てるのは巨大な掌だよな?」
「感じが似てる気がしてゴッドハンドから発展させようとしてるんだけど、どうも違うんだよなー・・・」
人差し指にボールを乗せて器用に回転させている守は、考え込むように地下修練場の天上を見る。
幾つも取り付けられた照明を直接目にするのは瞳に悪そうだが、敢えて何も言わずにフィディオも倣った。
何かが足りない。きっと、それは二人の共通認識だ。
コップから溢れる寸前の水のように水面張力で引っ張られている気分だ。
初めて練習をしてから、早10日。今日は平日だが翌日が祝日なので泊まりで特訓に来た。
明日の昼にはチーム練習があるので帰らなくてはいけないが、それまでに何か掴みたい。
切欠を得れるとしたら、観察眼が鋭い彼女のアドバイスは必要だ。
実際回を過ぎるごとに完成度は上がっている。
反して守はイメージどおりの技が出せないらしい。
ゴッドハンド、熱血パンチと幾つも繰り出す技の威力は上がっているが、魔人など出てきていない。
「ちょっと休憩するか、フィディオ」
「───そうだな、水分補給もしなきゃ」
額から出る汗を拭い、休憩用のスペースに移る。
守のために作られたらしい修練場に整えられた一角には、水分補給のためのミネラルウォーターを冷やすクーラーがあり、椅子とテレビも置いてあった。
DVDも設置され、いつでも試合や録画された練習風景を見れるようになっている。
二つある椅子の一つに腰掛けると、タオルで汗を拭きながら水を飲む守はリモコンを操作してテレビをつける。
DVDの電源も入れ、お前もちょっと見てと声を掛けられた。
水を飲みながらテレビを見ていると、不意に映ったのは白熱した試合だった。
背中に日の丸を背負ったチームをメインに撮られた映像は、彼らの際立つ技術力や統率力を捕らえている。
思わず熱中していると、相手チームにシュートチャンスが来た。
一気にゴールまでドリブルで持ち込んだFWの動きに拳を握り息を呑む。
完璧なタイミングと、憧れるほどの威力のシュート。
さすがプロと頷きたくなる鮮やかなシュートがノーマークで放たれた。
受けるのは難しい、となれば弾くのかとGKの動きを見ていれば、彼は不意に左手を握りこんだ。
体から溢れ出した金色のオーラが左の掌に集まっていく。
鼓動するように大きくなったり小さくなったりと蠢く。
そして唐突に膨れ上がったそれはオレンジ色の魔人へと姿を変え、腰だめに掌を突っ張った彼の動きに連動してボールを受け止めた。
あまりの威力に、唖然と空いた口が閉じなくなる。
こんな技、イタリアのプロリーグでも見たことなかった。
「この技は『マジン・ザ・ハンド』。彼、円堂大介が編み出した伝説の必殺技だ」
「・・・凄い、凄いよマモル!この技があれば、止めれないシュートなんてないよ!」
「かもな。けど、俺じゃ何かが足りない。何が足りないか、判らないんだ。分析されたデータも読み込んだ。映像だって脳裏に刻み込まれてる。それでも何かが違う。───なあ、フィディオ。お前は今の技を見てどう思った?」
リモコン操作しながら画面に視線を送り続ける守は、珍しく難しい表情を崩さない。
机に肘を突いて顎を掌に乗せた彼女は、不貞腐れているみたいだ。
瞬きを繰り返して年相応の姿を眺めると、思わず笑ってしまった。
何しろ彼女は普段からどこか食えない部分を常に抱き続けているのに、今は年よりも幼く見える。
噴出したフィディオを睨み付ける姿すら笑いを誘い、けれど慌てて堪えるとむっと唇を尖らせた。
「ごめん、拗ねないでよマモル」
「・・・別に拗ねてない」
「マモルが年相応に悩んでるのが珍しかったんだ。真面目に考えるから、許して」
「・・・・・・さり気無く失礼だな、お前。まるで俺に悩みがないみたいじゃないか」
「ははは」
本格的に拗ね始めたらしい守からリモコンを奪うと、テレビ画面を操作する。
繰り返し繰り返し映像を見て、やはり気になったのは鼓動するように動くオーラだった。
「ね、マモル」
「何だよ」
「あれ、不思議だよね」
「あれって?」
「彼の纏うオーラだよ。まるで、そう、まるで心臓の鼓動みたいに脈動してる」
「・・・心臓の鼓動?」
「そう。ほら、このシーン」
巻き戻しして気になるシーンを再生する。
気を溜めるように左手を握り込むと、体中に蠢くオーラが収束される。
まるで全身の力を練りこみながら左手へ収めているようだ。
無言になった守が幾度も幾度も再生を繰り返し、がたりといきなり椅子から立ち上がった。
「マモル?」
「───悪い、フィディオ。付き合ってくれ。判ったんだ、『マジン・ザ・ハンド』の原理が」
「『マジン・ザ・ハンド』の原理?」
「そう。俺はあの技に利き手である右手を使おうとしてた。けど、そもそもそれが間違ってたんだ。ノートに書かれてたゴッドハンドや熱血パンチと根本から違ったんだ、あの技は」
興奮したように栗色の瞳を輝かせた彼女は、フィディオへ手を差し伸べた。
思わず掌を重ねると引っ張られ、バランスを崩しながらもなんとか立ち上がる。
走り出した守にたたらを踏みながらもついていくと、ボールを手渡された。
「打ってくれよ、オーディンソード。俺の考えが正しけりゃ、今度こそ魔人が出るはずだ」
「・・・判った」
真剣な目をした守に頷くとボールから僅かに距離を取る。
助走をつけると、右足に気を溜めて振りぬいた。
「オーディンソード!!」
コントロールに遠慮していた先ほどまでより思い切りよくキックしたボールは、呻りを上げてゴールへ向かう。
技を開発してから一番の会心の出来に拳を握りガッツポーズすると、風を切って向かボールに守は笑った。
獰猛な獣のような好戦的な眼差しに、背筋をぞくりとしたものが走り抜ける。
まさか、と観察すれば、先ほど映像で見たオレンジ色のオーラが彼女の全身を包み込んだ。
ゴッドハンドを出していたときは、もっと金に近い色だったはずだが、どうしてと小首を傾げる。
すると脈動するように波打ち始めたオーラは、するすると左手へと流れた。
「これが『マジン・ザ・ハンド』だ!!」
腰だめに構えて天に向かい吼えると、守のオーラがオレンジ色の魔人へと変貌する。
驚きで固まったフィディオを尻目に突き出された左手に連動し、魔人も左手を突き出した。
圧倒的な威圧感を篭めた魔人が微動だにせずにボールを受け止める。
立ち消えた後には、左手でボールを受け止め楽しげに笑う守が居た。
「凄いじゃないか、マモル!今まで一回も魔人なんて出せなかったのに、どうやったんだ!?」
「ヒントはお前の言葉だ。『まるで心臓の鼓動みたいに脈動してる』。そりゃそうだ。円堂大介が編み出したあの技は、心臓に溜めた気を使っていたんだ」
「心臓に溜めた気を?」
「そうだ。彼はそれまでの技は右手で出していた。映像にもあったろ?」
「・・・そう言えば」
「けど、『マジン・ザ・ハンド』だけは左手で放ってた。それは溜めた気をダイレクトに左手へ流し込むためだ。心臓から離れた右手より、より近い左手に集める方が容易で早い。短い時間で爆発的に集めた力を解放し、魔人を出現させていたんだ」
駆け寄ったフィディオに嬉しげに笑いながら種明かしを解説してくれた。
言われた原理は理解できるが、ヒントを得ただけで実行に移す才能があるからこそ完成しただろう技に呻り声しかでない。
腕を組んで渋い顔をしていると、不意にボールを投げられ慌てて受け取る。
「これって、お前の技のヒントにもならないか?」
「え?」
「心臓ってのは全身に血流を送るポンプみたいなもんだ。ものすごい力を秘めていて、溜め込んだ気を勢い良く吐き出せば技の威力だって上がる。俺が左手に流し込めたんだ。お前の足にだって、力を流せるんじゃないかな」
「───そうか。今までは漠然と一点集中していた気を、一度心臓に溜めてから送ることで勢いをつけるんだな?」
「そういうこと」
ぱちり、とウィンクした守に頷くと、ボールを地面へと置く。
予想外の発想だが、試してみる価値は十分あった。
「言っとくけど、加減出来ないよ」
「そんなもん、無用だ。俺には『マジン・ザ・ハンド』があるからな」
挑発的に口の端を上げた守に、フィディオも同じような笑みを返した。
「行くよ」
「来い!」
心臓に気を練りこみ、ポンプの力で一気に足へと力を押し出すイメージを明確に脳裏に浮かべ、必殺技を繰り出す。
高らかと声を上げて出現した魔人に、敵として不足なしと元来の負けず嫌いを発揮しつつ、ボールへ足を伸ばした。
「・・・マジン・ザ・ハンド!!」
渾身のシュートは宙に浮かんだ黄金色の巨大な掌に受け止められた。
それを当たり前に操って見せた少女は、栗色の瞳を濃くしてフィディオを見詰めると唇を持ち上げる。
オレンジ色のバンダナの上に括られたツインテールがオーディンソードの余波で揺れ、暫くの後落ち着いた。
片腕一本で受け止められたシュートに眉根が寄る。未完であっても威力はお墨付きで、チームメイトのGKも両手で受け止めていたのに。
唇を噛み締めて俯き、ため息と共に気持ちを吐き出す。
顔を上げたときには淡い苦笑が浮べ、目の前の努力家の天才を賞賛した。
「マモル、君俺のチームにGKで移籍しなよ」
「ふはっ、お前にしたらブラックユーモアだなフィディオ。お誘いはありがたいが、俺は今のチームでMFをするのが楽しいんだ。悪いな」
「・・・俺のシュートを片手で受け止めた挙句、袖にするわけ?」
「まあな。って言うか、お前あれじゃん。漸くゴールに入れれるようになったけど、それだけじゃん。コントロールを重視するあまり威力が落ちてんだよ。これじゃ俺じゃなくても止めれるぜ」
「MFの癖に」
「そのMFに止められてどーすんだよ」
ぽんぽんと片手でボールを弄ぶ守は、キーパーとして堂に入っていた。
使い込まれたキーパーグローブと、先日とは違い背中にギャングな顔つきのウサギがプリントされた黒いジャージの守は、顎に手を当てて眉根を寄せる。
「俺もまだまだだ。あと少しって感じなのになー、どうして出ないんだ魔人」
「魔人?さっきから出てるのは巨大な掌だよな?」
「感じが似てる気がしてゴッドハンドから発展させようとしてるんだけど、どうも違うんだよなー・・・」
人差し指にボールを乗せて器用に回転させている守は、考え込むように地下修練場の天上を見る。
幾つも取り付けられた照明を直接目にするのは瞳に悪そうだが、敢えて何も言わずにフィディオも倣った。
何かが足りない。きっと、それは二人の共通認識だ。
コップから溢れる寸前の水のように水面張力で引っ張られている気分だ。
初めて練習をしてから、早10日。今日は平日だが翌日が祝日なので泊まりで特訓に来た。
明日の昼にはチーム練習があるので帰らなくてはいけないが、それまでに何か掴みたい。
切欠を得れるとしたら、観察眼が鋭い彼女のアドバイスは必要だ。
実際回を過ぎるごとに完成度は上がっている。
反して守はイメージどおりの技が出せないらしい。
ゴッドハンド、熱血パンチと幾つも繰り出す技の威力は上がっているが、魔人など出てきていない。
「ちょっと休憩するか、フィディオ」
「───そうだな、水分補給もしなきゃ」
額から出る汗を拭い、休憩用のスペースに移る。
守のために作られたらしい修練場に整えられた一角には、水分補給のためのミネラルウォーターを冷やすクーラーがあり、椅子とテレビも置いてあった。
DVDも設置され、いつでも試合や録画された練習風景を見れるようになっている。
二つある椅子の一つに腰掛けると、タオルで汗を拭きながら水を飲む守はリモコンを操作してテレビをつける。
DVDの電源も入れ、お前もちょっと見てと声を掛けられた。
水を飲みながらテレビを見ていると、不意に映ったのは白熱した試合だった。
背中に日の丸を背負ったチームをメインに撮られた映像は、彼らの際立つ技術力や統率力を捕らえている。
思わず熱中していると、相手チームにシュートチャンスが来た。
一気にゴールまでドリブルで持ち込んだFWの動きに拳を握り息を呑む。
完璧なタイミングと、憧れるほどの威力のシュート。
さすがプロと頷きたくなる鮮やかなシュートがノーマークで放たれた。
受けるのは難しい、となれば弾くのかとGKの動きを見ていれば、彼は不意に左手を握りこんだ。
体から溢れ出した金色のオーラが左の掌に集まっていく。
鼓動するように大きくなったり小さくなったりと蠢く。
そして唐突に膨れ上がったそれはオレンジ色の魔人へと姿を変え、腰だめに掌を突っ張った彼の動きに連動してボールを受け止めた。
あまりの威力に、唖然と空いた口が閉じなくなる。
こんな技、イタリアのプロリーグでも見たことなかった。
「この技は『マジン・ザ・ハンド』。彼、円堂大介が編み出した伝説の必殺技だ」
「・・・凄い、凄いよマモル!この技があれば、止めれないシュートなんてないよ!」
「かもな。けど、俺じゃ何かが足りない。何が足りないか、判らないんだ。分析されたデータも読み込んだ。映像だって脳裏に刻み込まれてる。それでも何かが違う。───なあ、フィディオ。お前は今の技を見てどう思った?」
リモコン操作しながら画面に視線を送り続ける守は、珍しく難しい表情を崩さない。
机に肘を突いて顎を掌に乗せた彼女は、不貞腐れているみたいだ。
瞬きを繰り返して年相応の姿を眺めると、思わず笑ってしまった。
何しろ彼女は普段からどこか食えない部分を常に抱き続けているのに、今は年よりも幼く見える。
噴出したフィディオを睨み付ける姿すら笑いを誘い、けれど慌てて堪えるとむっと唇を尖らせた。
「ごめん、拗ねないでよマモル」
「・・・別に拗ねてない」
「マモルが年相応に悩んでるのが珍しかったんだ。真面目に考えるから、許して」
「・・・・・・さり気無く失礼だな、お前。まるで俺に悩みがないみたいじゃないか」
「ははは」
本格的に拗ね始めたらしい守からリモコンを奪うと、テレビ画面を操作する。
繰り返し繰り返し映像を見て、やはり気になったのは鼓動するように動くオーラだった。
「ね、マモル」
「何だよ」
「あれ、不思議だよね」
「あれって?」
「彼の纏うオーラだよ。まるで、そう、まるで心臓の鼓動みたいに脈動してる」
「・・・心臓の鼓動?」
「そう。ほら、このシーン」
巻き戻しして気になるシーンを再生する。
気を溜めるように左手を握り込むと、体中に蠢くオーラが収束される。
まるで全身の力を練りこみながら左手へ収めているようだ。
無言になった守が幾度も幾度も再生を繰り返し、がたりといきなり椅子から立ち上がった。
「マモル?」
「───悪い、フィディオ。付き合ってくれ。判ったんだ、『マジン・ザ・ハンド』の原理が」
「『マジン・ザ・ハンド』の原理?」
「そう。俺はあの技に利き手である右手を使おうとしてた。けど、そもそもそれが間違ってたんだ。ノートに書かれてたゴッドハンドや熱血パンチと根本から違ったんだ、あの技は」
興奮したように栗色の瞳を輝かせた彼女は、フィディオへ手を差し伸べた。
思わず掌を重ねると引っ張られ、バランスを崩しながらもなんとか立ち上がる。
走り出した守にたたらを踏みながらもついていくと、ボールを手渡された。
「打ってくれよ、オーディンソード。俺の考えが正しけりゃ、今度こそ魔人が出るはずだ」
「・・・判った」
真剣な目をした守に頷くとボールから僅かに距離を取る。
助走をつけると、右足に気を溜めて振りぬいた。
「オーディンソード!!」
コントロールに遠慮していた先ほどまでより思い切りよくキックしたボールは、呻りを上げてゴールへ向かう。
技を開発してから一番の会心の出来に拳を握りガッツポーズすると、風を切って向かボールに守は笑った。
獰猛な獣のような好戦的な眼差しに、背筋をぞくりとしたものが走り抜ける。
まさか、と観察すれば、先ほど映像で見たオレンジ色のオーラが彼女の全身を包み込んだ。
ゴッドハンドを出していたときは、もっと金に近い色だったはずだが、どうしてと小首を傾げる。
すると脈動するように波打ち始めたオーラは、するすると左手へと流れた。
「これが『マジン・ザ・ハンド』だ!!」
腰だめに構えて天に向かい吼えると、守のオーラがオレンジ色の魔人へと変貌する。
驚きで固まったフィディオを尻目に突き出された左手に連動し、魔人も左手を突き出した。
圧倒的な威圧感を篭めた魔人が微動だにせずにボールを受け止める。
立ち消えた後には、左手でボールを受け止め楽しげに笑う守が居た。
「凄いじゃないか、マモル!今まで一回も魔人なんて出せなかったのに、どうやったんだ!?」
「ヒントはお前の言葉だ。『まるで心臓の鼓動みたいに脈動してる』。そりゃそうだ。円堂大介が編み出したあの技は、心臓に溜めた気を使っていたんだ」
「心臓に溜めた気を?」
「そうだ。彼はそれまでの技は右手で出していた。映像にもあったろ?」
「・・・そう言えば」
「けど、『マジン・ザ・ハンド』だけは左手で放ってた。それは溜めた気をダイレクトに左手へ流し込むためだ。心臓から離れた右手より、より近い左手に集める方が容易で早い。短い時間で爆発的に集めた力を解放し、魔人を出現させていたんだ」
駆け寄ったフィディオに嬉しげに笑いながら種明かしを解説してくれた。
言われた原理は理解できるが、ヒントを得ただけで実行に移す才能があるからこそ完成しただろう技に呻り声しかでない。
腕を組んで渋い顔をしていると、不意にボールを投げられ慌てて受け取る。
「これって、お前の技のヒントにもならないか?」
「え?」
「心臓ってのは全身に血流を送るポンプみたいなもんだ。ものすごい力を秘めていて、溜め込んだ気を勢い良く吐き出せば技の威力だって上がる。俺が左手に流し込めたんだ。お前の足にだって、力を流せるんじゃないかな」
「───そうか。今までは漠然と一点集中していた気を、一度心臓に溜めてから送ることで勢いをつけるんだな?」
「そういうこと」
ぱちり、とウィンクした守に頷くと、ボールを地面へと置く。
予想外の発想だが、試してみる価値は十分あった。
「言っとくけど、加減出来ないよ」
「そんなもん、無用だ。俺には『マジン・ザ・ハンド』があるからな」
挑発的に口の端を上げた守に、フィディオも同じような笑みを返した。
「行くよ」
「来い!」
心臓に気を練りこみ、ポンプの力で一気に足へと力を押し出すイメージを明確に脳裏に浮かべ、必殺技を繰り出す。
高らかと声を上げて出現した魔人に、敵として不足なしと元来の負けず嫌いを発揮しつつ、ボールへ足を伸ばした。
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