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別れることはあるでしょう、失うことはありません
--お題サイト:afaikさまより--
「おかえり、綱吉」
「ただいま、雲雀さん」
つい先日まで見ていた薄茶色ではなく、限りなく金色に近くなった癖の強い髪を揺らし、琥珀の瞳を濃くした綱吉は情けなく眉を下げて笑う。
緊張感のない笑顔は覚えているそのままで、彼が帰ってきたのだと漸く実感が沸いた。
最後に判れた時と同じ、白のクラシコイタリアのスーツに緋色のシャツと紺色のネクタイ。ボンゴレの意匠の刻まれたカフスをつけた彼は、ドン・ボンゴレに相応しい見目をしている。
自分自身を過小評価している彼は、守護者たちの上に立つ自分がこんなに冴えなくていいのかと言っているが、守護者の一人として、そしてボンゴレファミリーの幹部として言わせて貰えば、彼の見た目は十分に鑑賞に堪えるもので、むしろボンゴレ十世として振舞っている姿は綺麗だとさえ思う。
普段の情けなく下げられた眉と、怯えたような眼差しも小動物のようで嫌いじゃないが、傲慢な笑みにふてぶてしい態度に図々しい命令に慣れた口調と強者であるのを前面に押し出した肉食動物然とした態度も嫌いじゃなかった。
嫌いじゃないだけで気に喰わなければ容赦なく牙を剥くが、それを飄々とかわす彼を気に入ってすらいた。
だから、だろうか。
群れるのは嫌いだと訴える心を宥めすかし、消えた彼を追いかけてしまった。
誰に繋がれるのも嫌だと本能が喚くのに、彼の守護者の証を捨てられなかった。
目の前でへらへら笑う馬鹿な男を見捨てれなかった。
それは心や本能を凌駕する、魂に刻まれた何かで、彼を助けろと雲雀の奥から『誰か』が訴える。
その『誰か』が誰だか雲雀は知らないし、これからも知る気はない。
訴えが誰のものであっても、結局判断し行動するのは雲雀だし、このもどかしくも鬱陶しい感情も雲雀のものだ。
死の瀬戸際から帰った彼の手には、大空のリングが嵌められている。
守護者の自分たちのものと合わせて『ボンゴレリング』と称されるそれは、本来の持ち主の元で鈍く輝いていた。
「何者にもとらわれず我が道をいく浮雲」
「急に何?」
「いいえ、貴方を見ていて不意に思い出したんです。雲の守護者のリングを貴方がつけてくれる未来なんて、昔は想像してなかったと言ったら呆れます?」
「妄想していたなら、むしろ呆れるね」
「そうですか」
くすくすと笑う彼は、やはり昔より図太くなった。
そして内も外も綺麗に、強くなった。
泣きながら逃げ出そうとしていた中学生は其処に居ない。彼は覚悟を決めて、沢山の命を背負う男だ。
『見てろ、雲雀。十年後のあいつは今とは比べ物にならないくらいに化けるぞ』
いつか自信満々に、赤ん坊の癖にニヒルな笑みを浮かべた男が雲雀に宣言した。
蛹が蝶に羽化するように、あるいは蕾が艶やかに花開くように、彼の予言は現実になった。
今の彼を見てダメツナと罵れる存在など、片手に満たないだろう。
それが面白くて、少しだけ自慢だ。
「僕はそろそろ行くよ。イタリアで片付ける仕事は終わった。日本支部の指揮を執らなきゃ」
「そうですか。こちらからも物資を送ります。必要事項はメールで知らせてください」
「判った」
頷き、ドン・ボンゴレの執務室から退出すべくドアの前まで歩いていく。
重厚な作りの扉のノブに手を置くと、思い出したように振り返った。
「綱吉」
「はい?」
「落ち着いたら借りを取り立てに行くから、ちゃんと体を鍛えておくんだよ。僕への謝礼は高くつくから」
「はははは・・・覚悟してます」
さらりと告げれば、幽霊にあったような顔で彼は手を振った。
「ありがとう、雲雀さん。俺を戦えるほどに鍛えてくれて」
「ただの仕事さ」
今度こそ振り返らずに扉を潜れば、もう一度『ありがとう』と聞こえた気がした。
誰も居ない廊下で小さく笑うと、己の本拠地へ戻るべく雲雀は前に進んだ。
僕たちの道は常に重なるものではない。
けれど有事の際には、誰よりも頼りになる味方になろう。
--お題サイト:afaikさまより--
「おかえり、綱吉」
「ただいま、雲雀さん」
つい先日まで見ていた薄茶色ではなく、限りなく金色に近くなった癖の強い髪を揺らし、琥珀の瞳を濃くした綱吉は情けなく眉を下げて笑う。
緊張感のない笑顔は覚えているそのままで、彼が帰ってきたのだと漸く実感が沸いた。
最後に判れた時と同じ、白のクラシコイタリアのスーツに緋色のシャツと紺色のネクタイ。ボンゴレの意匠の刻まれたカフスをつけた彼は、ドン・ボンゴレに相応しい見目をしている。
自分自身を過小評価している彼は、守護者たちの上に立つ自分がこんなに冴えなくていいのかと言っているが、守護者の一人として、そしてボンゴレファミリーの幹部として言わせて貰えば、彼の見た目は十分に鑑賞に堪えるもので、むしろボンゴレ十世として振舞っている姿は綺麗だとさえ思う。
普段の情けなく下げられた眉と、怯えたような眼差しも小動物のようで嫌いじゃないが、傲慢な笑みにふてぶてしい態度に図々しい命令に慣れた口調と強者であるのを前面に押し出した肉食動物然とした態度も嫌いじゃなかった。
嫌いじゃないだけで気に喰わなければ容赦なく牙を剥くが、それを飄々とかわす彼を気に入ってすらいた。
だから、だろうか。
群れるのは嫌いだと訴える心を宥めすかし、消えた彼を追いかけてしまった。
誰に繋がれるのも嫌だと本能が喚くのに、彼の守護者の証を捨てられなかった。
目の前でへらへら笑う馬鹿な男を見捨てれなかった。
それは心や本能を凌駕する、魂に刻まれた何かで、彼を助けろと雲雀の奥から『誰か』が訴える。
その『誰か』が誰だか雲雀は知らないし、これからも知る気はない。
訴えが誰のものであっても、結局判断し行動するのは雲雀だし、このもどかしくも鬱陶しい感情も雲雀のものだ。
死の瀬戸際から帰った彼の手には、大空のリングが嵌められている。
守護者の自分たちのものと合わせて『ボンゴレリング』と称されるそれは、本来の持ち主の元で鈍く輝いていた。
「何者にもとらわれず我が道をいく浮雲」
「急に何?」
「いいえ、貴方を見ていて不意に思い出したんです。雲の守護者のリングを貴方がつけてくれる未来なんて、昔は想像してなかったと言ったら呆れます?」
「妄想していたなら、むしろ呆れるね」
「そうですか」
くすくすと笑う彼は、やはり昔より図太くなった。
そして内も外も綺麗に、強くなった。
泣きながら逃げ出そうとしていた中学生は其処に居ない。彼は覚悟を決めて、沢山の命を背負う男だ。
『見てろ、雲雀。十年後のあいつは今とは比べ物にならないくらいに化けるぞ』
いつか自信満々に、赤ん坊の癖にニヒルな笑みを浮かべた男が雲雀に宣言した。
蛹が蝶に羽化するように、あるいは蕾が艶やかに花開くように、彼の予言は現実になった。
今の彼を見てダメツナと罵れる存在など、片手に満たないだろう。
それが面白くて、少しだけ自慢だ。
「僕はそろそろ行くよ。イタリアで片付ける仕事は終わった。日本支部の指揮を執らなきゃ」
「そうですか。こちらからも物資を送ります。必要事項はメールで知らせてください」
「判った」
頷き、ドン・ボンゴレの執務室から退出すべくドアの前まで歩いていく。
重厚な作りの扉のノブに手を置くと、思い出したように振り返った。
「綱吉」
「はい?」
「落ち着いたら借りを取り立てに行くから、ちゃんと体を鍛えておくんだよ。僕への謝礼は高くつくから」
「はははは・・・覚悟してます」
さらりと告げれば、幽霊にあったような顔で彼は手を振った。
「ありがとう、雲雀さん。俺を戦えるほどに鍛えてくれて」
「ただの仕事さ」
今度こそ振り返らずに扉を潜れば、もう一度『ありがとう』と聞こえた気がした。
誰も居ない廊下で小さく笑うと、己の本拠地へ戻るべく雲雀は前に進んだ。
僕たちの道は常に重なるものではない。
けれど有事の際には、誰よりも頼りになる味方になろう。
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