×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
木戸川清修との準決勝からどうにも調子が悪い体に、柔らかなウォーターベッドに顔を埋めつつ舌打ちした。
最近少々無理をし過ぎたのかも知れない。
理事長にだけ全ての事情を話しレポートや課題で出席しなかった分の授業を特例で免除してもらっているが、代わりとして全国模試は必ず上位三位まで入り学校の実績を伸ばしている。
全国模試の結果は学校内で張り出されないし、そもそも受けるかどうかすら有志だ。
円堂からすれば今更中学二年生の内容程度模試のトップを取ることは容易で、鬼道の父が三年生になるまで弟に全国模試を受けさせる必要がないと考えているからこそ得れる成果だった。
どちらにしよ、最近はサッカーもプライベートも楽しくて調子に乗っていたかもしれない。
授業をサボっているのは体調の調節に必要だと知りつつ、ついノリで一緒に体育に出たりしたのもまずかった。
動かない体を呪いつつ、布団の中で小さくなってガタの来た体を抱きしめる。
今日は豪炎寺は家に泊まっていない。
お陰で最悪の醜態を見られずに済みそうだが、薬を飲んでもご飯時までに不調が収まらなければ病院直行コースだ。
脳天に長い釘を打ち込まれ無遠慮に抉りまわされるような不快感を堪え嘆息した。
こんな日は、いつだって嫌な予感が当たるのだ。
「私たちは、神だ」
薄い色をした髪を靡かせて微笑む少年は、確かにその美貌から神を語っても過言じゃない気がした。
不可思議な空気を持つ子だ、とゴール際から腕を組んで観察した円堂は、ぎりりと奥歯を噛み締める。
豪炎寺と鬼道、そして風丸が彼らの前で対峙しているが、口を挟まずにそれを見ながらも消化不良な感情が胸中に渦巻いていた。
普段と様子の違う円堂の態度を敏感に察した一之瀬が駆け寄り耳ともで囁く。
「大丈夫、守」
「・・・ああ、なんとかな」
吐息交じりの掠れ声で苦笑を浮かべるのが精一杯だ。
自身を律しきれない未熟さに情けなくなるが、それでも腸から沸いて出る憤怒に己を忘れそうだ。
目の前に居る少年は『神』を語る。
それは『円堂守』が、いいや、『鬼道守』が憎むべき敵。
『守』から全てを搾取し遥かな天上で笑っている、哀しき簒奪者。
渦巻く感情は今にも破裂してしまいそうで、胸を押さえて身を凝らせた。
「君」
「・・・俺か?」
「そう、君だよ。円堂守。雷門の守護神であり、───『総帥』が固執する唯一の存在。私は世宇子中のアフロディ、初めまして」
「どうやら、自己紹介は不要のようだな。やっぱりあの人の差し金か?相変わらず悪趣味だ」
「余裕だね」
風丸とはまた種類の違う綺麗な顔に笑みを浮かべた少年は、世離れした仕草で首を傾げた。
さらり、と靡く髪を淡々として眺めながら眼鏡のつるを指で押し上げる。
ずくずくと痛む胸と頭を無視し、己の矜持をこれほど擽るものも居ないとゆったりと笑顔を浮かべた。
相変わらず悪趣味な人に嗤ってしまう。
他の誰に屈したとしても、『神』を名乗る相手につく膝はない。
態々円堂のためだけに『神』を名乗る少年を寄越すなど、捻くれた愛情に反吐が出そうだ。
憎しみの相手を実体化させ、彼は自分に何をさせたいのか。
くつりと喉を震わすと、雰囲気を僅かに変えて小首を傾げた。
無邪気に見えても付け入る隙のない、修羅場に慣れた堂々とした態度。
ごくりと喉を鳴らしたのは、果たして仲間の誰だったのか。
「人間は『神』には勝てないよ」
「どうかな?『神』が勝ち続けているなら、人は奇跡を信じないんじゃないのか?」
「奇跡すら『神』の気紛れで起こるものだ」
「そうかい。奇跡すら『神』の気まぐれと言うのなら、俺は───ふんぞり返る神様の頭をぶん殴ってでも奇跡を起こしてやるよ」
目の前に居るのは憎むべき『敵』を形にした相手。
円堂は『本物』がどれだけ無情で無慈悲か知っている。
奴は絶対的な力を行使して、人智の及ばぬ至高の場所で胡坐を掻いてこちらを見下ろしてるのだ。
だからこそ、目の前の『偽者』を恐ろしく思う気持ちなど微塵もない。
少年には『守』を自由にする権限はなく、支配される無力さも押さえ込まれる無念さも与える術を持っていないのだ。
「残念だな、少年。俺は神様がキライなんだ」
「私は君に興味がある。君ならこんな弱小の部を捨てて私たちの仲間に入る資格があるのに、何故そうしないんだい?」
「いらねえよ、そんなもん。神様をぶちのめしたい、と思ったことはあっても、神様になりたい、なんて考えたことはないからな」
「君は神の力に怯えているだけじゃないのかい?この力を、好きなだけ執行したいと思わないのか?」
豪炎寺の前にあったボールをトラップすると、アフロディはそのままシュートを放つ。
空気を切り裂いて円堂の体すれすれにゴールに収まったそれは、ネットを破り土を抉って破裂した。
息を呑んでその様子を見守る仲間たちすら無視して、真っ直ぐに射抜くようにして視線を向けるアフロディに微笑む。
「・・・どうしたんだい?手加減したシュートだ。『今の』君でも取れたと思うけれど?」
「そうだな。この程度なら、『今の』俺でも取れる」
馬鹿にしたような発言だが、仲間たちの目は驚きで見開かれた。
今放たれたシュートは日本の中学生にしては超一級のもので、きっと帝国の面々はこの一本で敗れたのだろう。
しかしこの程度のものは経験したことがある。むしろもっと凄いシュートを見てきた。
目の前の少年もきっとそれを知っている。
だから、『今の』と小ばかにしたように告げたのだろう。
「けど君は動かなかった。どうしてだ?」
「お前に関係あるのか?どちらにしろ、今は試合でもない。俺の技を見せてやる必要はないだろう」
「君の技、ね。見せてもらえなくとも、私たちの勝利に翳りはない。楽しみにしてるよ、君との試合を」
「ああ。俺も楽しみにしてるぜ。───『神』を名乗る相手をひざまづかせるのは気分が良さそうだ」
「ふふふ、大胆不敵な態度だね。でも覚えておくといい。いくら君一人が抜きん出ていても勝てない。サッカーはチーム戦だ。点が取れなきゃ勝利はないよ」
楽しげに笑って姿を消した少年に、溜め込んだ怒りを流すようゆるゆると息を吐き出した。
深呼吸を繰り返し新しい酸素を心臓へ送る。
怒りは体調にいい影響を与えない。さっさと忘れて感情を制御下に置く必要があった。
「守・・・?」
顔を覗き込んできた一之瀬の頭を撫でると、心配そうにこちらを窺う仲間に微笑んだ。
その笑顔はいつもと変わらぬもので、雷門の面々はほっと安堵の息を漏らす。
ただ彼女を良く見ている数名だけが微かな違和感を感じたが、それを口に出す前に円堂が先手を打った。
「夏未」
「・・・何かしら」
「俺の申請した内容、許可は得れたか?」
「ええ」
「サンキューな、夏未。響木監督、大丈夫だそうです」
「そうか」
『監督!!?』
のそりと姿を現した響木に驚く仲間に、円堂はにっと笑いかけた。
きょとんとした表情でこちらを窺う彼らは年相応で随分と可愛い。
先ほど現れたアフロディと名乗った少年。
彼の言葉は的を付いている。
サッカーはチーム戦。一人の力が飛びぬけていても、それだけじゃ勝てない。
なら勝つためにどうすればいいか。
答えは一つで、手段はあった。
「皆、合宿だ!」
『合宿~!!?』
きょとりと瞬きを繰り返した彼らに、にひっと笑って頷いた。
相手が『神』を名乗るなら、『神』をも下して進むだけだ。
最近少々無理をし過ぎたのかも知れない。
理事長にだけ全ての事情を話しレポートや課題で出席しなかった分の授業を特例で免除してもらっているが、代わりとして全国模試は必ず上位三位まで入り学校の実績を伸ばしている。
全国模試の結果は学校内で張り出されないし、そもそも受けるかどうかすら有志だ。
円堂からすれば今更中学二年生の内容程度模試のトップを取ることは容易で、鬼道の父が三年生になるまで弟に全国模試を受けさせる必要がないと考えているからこそ得れる成果だった。
どちらにしよ、最近はサッカーもプライベートも楽しくて調子に乗っていたかもしれない。
授業をサボっているのは体調の調節に必要だと知りつつ、ついノリで一緒に体育に出たりしたのもまずかった。
動かない体を呪いつつ、布団の中で小さくなってガタの来た体を抱きしめる。
今日は豪炎寺は家に泊まっていない。
お陰で最悪の醜態を見られずに済みそうだが、薬を飲んでもご飯時までに不調が収まらなければ病院直行コースだ。
脳天に長い釘を打ち込まれ無遠慮に抉りまわされるような不快感を堪え嘆息した。
こんな日は、いつだって嫌な予感が当たるのだ。
「私たちは、神だ」
薄い色をした髪を靡かせて微笑む少年は、確かにその美貌から神を語っても過言じゃない気がした。
不可思議な空気を持つ子だ、とゴール際から腕を組んで観察した円堂は、ぎりりと奥歯を噛み締める。
豪炎寺と鬼道、そして風丸が彼らの前で対峙しているが、口を挟まずにそれを見ながらも消化不良な感情が胸中に渦巻いていた。
普段と様子の違う円堂の態度を敏感に察した一之瀬が駆け寄り耳ともで囁く。
「大丈夫、守」
「・・・ああ、なんとかな」
吐息交じりの掠れ声で苦笑を浮かべるのが精一杯だ。
自身を律しきれない未熟さに情けなくなるが、それでも腸から沸いて出る憤怒に己を忘れそうだ。
目の前に居る少年は『神』を語る。
それは『円堂守』が、いいや、『鬼道守』が憎むべき敵。
『守』から全てを搾取し遥かな天上で笑っている、哀しき簒奪者。
渦巻く感情は今にも破裂してしまいそうで、胸を押さえて身を凝らせた。
「君」
「・・・俺か?」
「そう、君だよ。円堂守。雷門の守護神であり、───『総帥』が固執する唯一の存在。私は世宇子中のアフロディ、初めまして」
「どうやら、自己紹介は不要のようだな。やっぱりあの人の差し金か?相変わらず悪趣味だ」
「余裕だね」
風丸とはまた種類の違う綺麗な顔に笑みを浮かべた少年は、世離れした仕草で首を傾げた。
さらり、と靡く髪を淡々として眺めながら眼鏡のつるを指で押し上げる。
ずくずくと痛む胸と頭を無視し、己の矜持をこれほど擽るものも居ないとゆったりと笑顔を浮かべた。
相変わらず悪趣味な人に嗤ってしまう。
他の誰に屈したとしても、『神』を名乗る相手につく膝はない。
態々円堂のためだけに『神』を名乗る少年を寄越すなど、捻くれた愛情に反吐が出そうだ。
憎しみの相手を実体化させ、彼は自分に何をさせたいのか。
くつりと喉を震わすと、雰囲気を僅かに変えて小首を傾げた。
無邪気に見えても付け入る隙のない、修羅場に慣れた堂々とした態度。
ごくりと喉を鳴らしたのは、果たして仲間の誰だったのか。
「人間は『神』には勝てないよ」
「どうかな?『神』が勝ち続けているなら、人は奇跡を信じないんじゃないのか?」
「奇跡すら『神』の気紛れで起こるものだ」
「そうかい。奇跡すら『神』の気まぐれと言うのなら、俺は───ふんぞり返る神様の頭をぶん殴ってでも奇跡を起こしてやるよ」
目の前に居るのは憎むべき『敵』を形にした相手。
円堂は『本物』がどれだけ無情で無慈悲か知っている。
奴は絶対的な力を行使して、人智の及ばぬ至高の場所で胡坐を掻いてこちらを見下ろしてるのだ。
だからこそ、目の前の『偽者』を恐ろしく思う気持ちなど微塵もない。
少年には『守』を自由にする権限はなく、支配される無力さも押さえ込まれる無念さも与える術を持っていないのだ。
「残念だな、少年。俺は神様がキライなんだ」
「私は君に興味がある。君ならこんな弱小の部を捨てて私たちの仲間に入る資格があるのに、何故そうしないんだい?」
「いらねえよ、そんなもん。神様をぶちのめしたい、と思ったことはあっても、神様になりたい、なんて考えたことはないからな」
「君は神の力に怯えているだけじゃないのかい?この力を、好きなだけ執行したいと思わないのか?」
豪炎寺の前にあったボールをトラップすると、アフロディはそのままシュートを放つ。
空気を切り裂いて円堂の体すれすれにゴールに収まったそれは、ネットを破り土を抉って破裂した。
息を呑んでその様子を見守る仲間たちすら無視して、真っ直ぐに射抜くようにして視線を向けるアフロディに微笑む。
「・・・どうしたんだい?手加減したシュートだ。『今の』君でも取れたと思うけれど?」
「そうだな。この程度なら、『今の』俺でも取れる」
馬鹿にしたような発言だが、仲間たちの目は驚きで見開かれた。
今放たれたシュートは日本の中学生にしては超一級のもので、きっと帝国の面々はこの一本で敗れたのだろう。
しかしこの程度のものは経験したことがある。むしろもっと凄いシュートを見てきた。
目の前の少年もきっとそれを知っている。
だから、『今の』と小ばかにしたように告げたのだろう。
「けど君は動かなかった。どうしてだ?」
「お前に関係あるのか?どちらにしろ、今は試合でもない。俺の技を見せてやる必要はないだろう」
「君の技、ね。見せてもらえなくとも、私たちの勝利に翳りはない。楽しみにしてるよ、君との試合を」
「ああ。俺も楽しみにしてるぜ。───『神』を名乗る相手をひざまづかせるのは気分が良さそうだ」
「ふふふ、大胆不敵な態度だね。でも覚えておくといい。いくら君一人が抜きん出ていても勝てない。サッカーはチーム戦だ。点が取れなきゃ勝利はないよ」
楽しげに笑って姿を消した少年に、溜め込んだ怒りを流すようゆるゆると息を吐き出した。
深呼吸を繰り返し新しい酸素を心臓へ送る。
怒りは体調にいい影響を与えない。さっさと忘れて感情を制御下に置く必要があった。
「守・・・?」
顔を覗き込んできた一之瀬の頭を撫でると、心配そうにこちらを窺う仲間に微笑んだ。
その笑顔はいつもと変わらぬもので、雷門の面々はほっと安堵の息を漏らす。
ただ彼女を良く見ている数名だけが微かな違和感を感じたが、それを口に出す前に円堂が先手を打った。
「夏未」
「・・・何かしら」
「俺の申請した内容、許可は得れたか?」
「ええ」
「サンキューな、夏未。響木監督、大丈夫だそうです」
「そうか」
『監督!!?』
のそりと姿を現した響木に驚く仲間に、円堂はにっと笑いかけた。
きょとんとした表情でこちらを窺う彼らは年相応で随分と可愛い。
先ほど現れたアフロディと名乗った少年。
彼の言葉は的を付いている。
サッカーはチーム戦。一人の力が飛びぬけていても、それだけじゃ勝てない。
なら勝つためにどうすればいいか。
答えは一つで、手段はあった。
「皆、合宿だ!」
『合宿~!!?』
きょとりと瞬きを繰り返した彼らに、にひっと笑って頷いた。
相手が『神』を名乗るなら、『神』をも下して進むだけだ。
PR
更新内容
|
(06/28)
(04/07)
(04/07)
(04/07)
(03/31)
(03/30)
(03/30)
(03/30)
(03/30)
(03/25)
(03/25)
(03/25)
(03/25)
(03/24)
(03/24)
(03/24)
(03/23)
(03/14)
(03/14)
(03/13)
(03/13)
(03/13)
(03/11)
(03/10)
(03/08)
カテゴリー
|
リンク
|
フリーエリア
|