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「キャプテンを、円堂に代える?」
唐突な提案に驚いたのは豪炎寺だけでなく、指名された当の本人を含めたサッカー部員全員だった。
ぽかんと口を開けた円堂は自分を指差し目を瞬かせ、他の部員たちも驚愕した眼差しで風丸を見ていた。
「何言ってんだ、風丸!俺たちはお前をキャプテンとしてここまでやって来たんだぞ!」
「そうでやんす!キャプテンは、風丸さんでやんす!」
「お前が俺たちをサッカーに誘ったんだろ?どうして今更・・・」
「今更なんかじゃない。円堂が入部してからずっと考えてたんだ。俺よりも、お前の方がキャプテンの器だ。俺がサッカーをやってる理由、お前らに話したことなかったよな。俺は───俺は、円堂ともう一度サッカーがしたくて、だからサッカー部を作ってサッカーを続けてた。本当は、俺、中学は陸上部に入ろうと思ってたんだ」
「風丸・・・」
「今すぐ代わると言ってもお前らが納得しないのはわかってる。これが俺の我侭だって言うのも、わかってる。全部わかった上で、俺は円堂をキャプテンに推す。お前らだって円堂の凄さは判ってるだろ」
必死な様子で訴える風丸に、円堂は瞼を閉じた。
彼が本気で訴えているのが痛いほど感じ取れ、その重みに胸が痛む。
風丸はその名のとおりに風のように走るのが好きだった。
誰よりも早く真っ直ぐに駆け抜ける姿を見るのは円堂も好きで、彼がサッカー部を選ぶなど本当に思ってなかった。
陸上と決別した風丸に思うところはある。
だが。
「風丸」
「・・・何だ」
「お前が俺をキャプテンに推したいのはわかった。けどな、それじゃお前の仲間は納得しないよ」
「それでも・・・それでも、俺はお前が全力でサッカーする姿を見たい。お前の指示でプレイしたい。俺よりもお前の方がキャプテンの器だ。プレイヤーとして、司令塔として、全てにおいてお前は俺よりも上だ。皆だってわかってるだろ?この間の帝国との試合も、尾刈斗や野生との試合も、一方的な空気を変えたのは円堂の一言だ。ピンチの時いつだって背中を押してくれたのは、円堂の言葉だろう!?」
「だが今のサッカー部のキャプテンはお前だぜ、風丸。俺たちはお前に誘われてサッカーをやり始めたんだ。俺たちのキャプテンは、お前だ」
「けれど俺はっ」
「やめろ、風丸」
「・・・円堂」
「お前が俺をキャプテンに推すのはどうしてだ?俺は今のままで十分なのに」
「俺は・・・俺は、お前に仲間をやりたい。ずっと一人でプレイしていたお前に。お前が居れば俺たちはもっと強くなれる。お前にここに居て欲しいんだ」
「風丸・・・」
要するに、彼はこの地に自分をとどめる楔を作りたいのかもしれない。
二年前、いきなり姿を消し音信不通となったのは、予想以上に彼の心に深い傷を残したのだろう。
円堂は自分にそこまでの価値を認めないが、風丸はずっと円堂を待っていてくれた。
そして自分が作り上げた雷門中サッカー部という枷をつけ、自分から離れないように縛り付けたいのだ。
無意識なのか意識的なのかわからないが、きっとそれに否を唱える権利はない。
彼は自分の言葉に縛られて二年間もサッカーをいていた。
自分がどれほど必死な眼差しを向けているか、風丸は気づいているのだろうか。
あんな目をして訴える言葉を、拒絶なんて出来っこないのに。
胸の中に渦巻く感情を、長いため息を変えてゆっくりと吐き出す。
綺麗な二重の瞳を心配そうに向けた風丸に微笑みかけると、一つ頷いた。
「風丸。俺は、お前が作った雷門中サッカー部のキャプテンはお前がいいと思っている」
「・・・円堂」
「けど、お前がサッカーを続ける理由が、俺にしかないのなら。お前は皆のためにもキャプテンを辞めた方がいい」
「円堂!!!」
染岡が責めるように睨みつけ、後輩たちも瞳を鋭くする。
集中する視線を無視して真っ直ぐに風丸を見詰めれば、こんな状況でも嬉しげに彼は微笑んだ。
「理由が俺にしかないままでサッカーを続ければ、お前はいつかサッカーを、そして他の皆を恨むときが来る。そんなの俺は耐えられない。俺の好きなサッカーを、お前に憎ませたくない。だから、俺はお前の言葉を受けよう」
顔を輝かせる風丸は、いつか変わってくれるだろうか。
円堂は関係なく、サッカーを愛する日が来るだろうか。
自分がつけてしまった重く錆付いた枷を、脱ぎ捨てて変わってくれるだろうか。
固く瞼を閉じて、心臓の上に掌を置く。
締め付けられるように痛むそこは、どくどくと早鐘のように鳴り響き生きている証を伝えてきた。
「次の御影専農戦を、俺のキャプテン試験にしてもらってもいいか?その試合での俺を見て、俺をキャプテンとして認めれるなら───サッカー、一緒にやろうぜ」
「守、でもそれじゃあ」
「いいんだ、一哉。俺は風丸が選んだ部員が、風丸を選んだ部員がどんな選択をしようと怨まない。皆とサッカー出来て凄く嬉しいし楽しいから、本当はこのままでいいけど、風丸の気持ちも捨てれない」
「・・・守」
「ごめんな、皆。俺たちの我侭に巻き込んで。もし、俺がキャプテンに相応しくないと思ったら、容赦なくそう言ってくれ。皆の意思を押し潰してまで通す意地は俺は持たない。俺はサッカーが好きだ。お前たちとサッカーをするのが好きだ。だから、お前たちが苦しむサッカーはしたくないし、させたくない。本当に、・・・ごめんな」
それぞれ感情を露にした彼らに、微笑みかけると踵を返す。
今日は帰るわ、と鞄を持って部室を後にした。
突然のことだし彼らにも考える時間は必要だ。
背後から駆け寄る気配に首を向ければ、案の定一之瀬のものだった。
眉を八の字に下げ、自分の方が余程辛そうな顔をして、きゅっと服の胸の部分を掴んで立ち止まる。
「いいの?」
「何が?」
「だって、守がここに戻ってきたのは」
「───いいんだ」
「守」
「新参者の俺をあいつらが選ばないなら、それはそれで仕方ないさ。ある意味当たり前の結果だしな」
「けれど、そうしたら」
「雷門を去って別の手を考える。風丸には悪いけど、俺にも譲れないものはあるから」
「・・・ふぅ。しょうがないなぁ、守は。俺より年上の癖に無茶ばっかだ」
「ごめん」
「けど、俺は最後まで付き合うよ。お前が雷門から居なくなるなら、俺も一緒に行く。なんてったって、俺たちは一蓮托生だしな」
「・・・サンキュ、一哉」
手を握り並んだ一之瀬に、ふっと微笑んだ。
彼の存在はとてもありがたく、嬉しく心強い。
自分の選んだ道に、背中を押してもらえるのは迷いを振り切るのに丁度いい。
「でも、俺は一応信じてるんだ。あいつらが俺を仲間として・・・キャプテンとして受け入れてくれるんじゃないかって」
「それって結構自意識過剰じゃない?」
「あははは!俺って基本ポジティブだからな!信じるし、信じたい。あいつらと、サッカーしたいよ」
「・・・そっか」
ふにゃりと表情を崩した一之瀬に、円堂は握る掌に力を篭めた。
御影専農戦後も円堂が笑ってサッカーを続けれたのに一番安堵したのは、きっと彼女の全てを理解する一之瀬だったに違いない。
唐突な提案に驚いたのは豪炎寺だけでなく、指名された当の本人を含めたサッカー部員全員だった。
ぽかんと口を開けた円堂は自分を指差し目を瞬かせ、他の部員たちも驚愕した眼差しで風丸を見ていた。
「何言ってんだ、風丸!俺たちはお前をキャプテンとしてここまでやって来たんだぞ!」
「そうでやんす!キャプテンは、風丸さんでやんす!」
「お前が俺たちをサッカーに誘ったんだろ?どうして今更・・・」
「今更なんかじゃない。円堂が入部してからずっと考えてたんだ。俺よりも、お前の方がキャプテンの器だ。俺がサッカーをやってる理由、お前らに話したことなかったよな。俺は───俺は、円堂ともう一度サッカーがしたくて、だからサッカー部を作ってサッカーを続けてた。本当は、俺、中学は陸上部に入ろうと思ってたんだ」
「風丸・・・」
「今すぐ代わると言ってもお前らが納得しないのはわかってる。これが俺の我侭だって言うのも、わかってる。全部わかった上で、俺は円堂をキャプテンに推す。お前らだって円堂の凄さは判ってるだろ」
必死な様子で訴える風丸に、円堂は瞼を閉じた。
彼が本気で訴えているのが痛いほど感じ取れ、その重みに胸が痛む。
風丸はその名のとおりに風のように走るのが好きだった。
誰よりも早く真っ直ぐに駆け抜ける姿を見るのは円堂も好きで、彼がサッカー部を選ぶなど本当に思ってなかった。
陸上と決別した風丸に思うところはある。
だが。
「風丸」
「・・・何だ」
「お前が俺をキャプテンに推したいのはわかった。けどな、それじゃお前の仲間は納得しないよ」
「それでも・・・それでも、俺はお前が全力でサッカーする姿を見たい。お前の指示でプレイしたい。俺よりもお前の方がキャプテンの器だ。プレイヤーとして、司令塔として、全てにおいてお前は俺よりも上だ。皆だってわかってるだろ?この間の帝国との試合も、尾刈斗や野生との試合も、一方的な空気を変えたのは円堂の一言だ。ピンチの時いつだって背中を押してくれたのは、円堂の言葉だろう!?」
「だが今のサッカー部のキャプテンはお前だぜ、風丸。俺たちはお前に誘われてサッカーをやり始めたんだ。俺たちのキャプテンは、お前だ」
「けれど俺はっ」
「やめろ、風丸」
「・・・円堂」
「お前が俺をキャプテンに推すのはどうしてだ?俺は今のままで十分なのに」
「俺は・・・俺は、お前に仲間をやりたい。ずっと一人でプレイしていたお前に。お前が居れば俺たちはもっと強くなれる。お前にここに居て欲しいんだ」
「風丸・・・」
要するに、彼はこの地に自分をとどめる楔を作りたいのかもしれない。
二年前、いきなり姿を消し音信不通となったのは、予想以上に彼の心に深い傷を残したのだろう。
円堂は自分にそこまでの価値を認めないが、風丸はずっと円堂を待っていてくれた。
そして自分が作り上げた雷門中サッカー部という枷をつけ、自分から離れないように縛り付けたいのだ。
無意識なのか意識的なのかわからないが、きっとそれに否を唱える権利はない。
彼は自分の言葉に縛られて二年間もサッカーをいていた。
自分がどれほど必死な眼差しを向けているか、風丸は気づいているのだろうか。
あんな目をして訴える言葉を、拒絶なんて出来っこないのに。
胸の中に渦巻く感情を、長いため息を変えてゆっくりと吐き出す。
綺麗な二重の瞳を心配そうに向けた風丸に微笑みかけると、一つ頷いた。
「風丸。俺は、お前が作った雷門中サッカー部のキャプテンはお前がいいと思っている」
「・・・円堂」
「けど、お前がサッカーを続ける理由が、俺にしかないのなら。お前は皆のためにもキャプテンを辞めた方がいい」
「円堂!!!」
染岡が責めるように睨みつけ、後輩たちも瞳を鋭くする。
集中する視線を無視して真っ直ぐに風丸を見詰めれば、こんな状況でも嬉しげに彼は微笑んだ。
「理由が俺にしかないままでサッカーを続ければ、お前はいつかサッカーを、そして他の皆を恨むときが来る。そんなの俺は耐えられない。俺の好きなサッカーを、お前に憎ませたくない。だから、俺はお前の言葉を受けよう」
顔を輝かせる風丸は、いつか変わってくれるだろうか。
円堂は関係なく、サッカーを愛する日が来るだろうか。
自分がつけてしまった重く錆付いた枷を、脱ぎ捨てて変わってくれるだろうか。
固く瞼を閉じて、心臓の上に掌を置く。
締め付けられるように痛むそこは、どくどくと早鐘のように鳴り響き生きている証を伝えてきた。
「次の御影専農戦を、俺のキャプテン試験にしてもらってもいいか?その試合での俺を見て、俺をキャプテンとして認めれるなら───サッカー、一緒にやろうぜ」
「守、でもそれじゃあ」
「いいんだ、一哉。俺は風丸が選んだ部員が、風丸を選んだ部員がどんな選択をしようと怨まない。皆とサッカー出来て凄く嬉しいし楽しいから、本当はこのままでいいけど、風丸の気持ちも捨てれない」
「・・・守」
「ごめんな、皆。俺たちの我侭に巻き込んで。もし、俺がキャプテンに相応しくないと思ったら、容赦なくそう言ってくれ。皆の意思を押し潰してまで通す意地は俺は持たない。俺はサッカーが好きだ。お前たちとサッカーをするのが好きだ。だから、お前たちが苦しむサッカーはしたくないし、させたくない。本当に、・・・ごめんな」
それぞれ感情を露にした彼らに、微笑みかけると踵を返す。
今日は帰るわ、と鞄を持って部室を後にした。
突然のことだし彼らにも考える時間は必要だ。
背後から駆け寄る気配に首を向ければ、案の定一之瀬のものだった。
眉を八の字に下げ、自分の方が余程辛そうな顔をして、きゅっと服の胸の部分を掴んで立ち止まる。
「いいの?」
「何が?」
「だって、守がここに戻ってきたのは」
「───いいんだ」
「守」
「新参者の俺をあいつらが選ばないなら、それはそれで仕方ないさ。ある意味当たり前の結果だしな」
「けれど、そうしたら」
「雷門を去って別の手を考える。風丸には悪いけど、俺にも譲れないものはあるから」
「・・・ふぅ。しょうがないなぁ、守は。俺より年上の癖に無茶ばっかだ」
「ごめん」
「けど、俺は最後まで付き合うよ。お前が雷門から居なくなるなら、俺も一緒に行く。なんてったって、俺たちは一蓮托生だしな」
「・・・サンキュ、一哉」
手を握り並んだ一之瀬に、ふっと微笑んだ。
彼の存在はとてもありがたく、嬉しく心強い。
自分の選んだ道に、背中を押してもらえるのは迷いを振り切るのに丁度いい。
「でも、俺は一応信じてるんだ。あいつらが俺を仲間として・・・キャプテンとして受け入れてくれるんじゃないかって」
「それって結構自意識過剰じゃない?」
「あははは!俺って基本ポジティブだからな!信じるし、信じたい。あいつらと、サッカーしたいよ」
「・・・そっか」
ふにゃりと表情を崩した一之瀬に、円堂は握る掌に力を篭めた。
御影専農戦後も円堂が笑ってサッカーを続けれたのに一番安堵したのは、きっと彼女の全てを理解する一之瀬だったに違いない。
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