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いろは順お題
--お題サイト:afaikさまより--
うるるるるゥ グルルルゥうる
夜中に部屋に響く声で目が覚める。
原因が何かは判っているので、枕元に体を丸めて眠る存在に目をやった。
すると眉間に皺を刻み込み、鼻に皺を寄せて唸っている魔獣が一匹そこにいる。
小さな声は寝言だが、ずいぶんとはっきりとしていた。
この魔獣が屋敷に来てから一週間ほどになるが、彼は毎日寝るたびに魘される。
さすがに夢の中まで覗けないし、内容を知りたくとも彼は人語を話せないので無理だ。
恋次に翻訳を頼めばいいのだろうが、緩く首を振った姿はそれを柔らかに拒絶していた。
本性の姿でいる恋次も、タシっと前足をベッドに掛けて魔獣の子供を覗き込んでいる。
「・・・相変わらずひでぇ寝顔だな」
「貴様に言われたくないだろうがな」
「どういう意味だ」
「そのままの意味だ」
狼面で器用にもむっと唇を尖らせた恋次は、瞳を眇めて睨んで来る。
しかし今更そんな顔にも慣れているルキアが怯むはずもなく、視線は鮮やかにスルーした。
恋次よりも今はこの一見子猫な魔獣だ。
ぐるゥ、ルルルぅと喉を鳴らし何度も寝返りを打つ姿は酷く苦しげで、起こした方がいいのか迷う。
しかし最近になって漸く眠れるようになったばかりなので、今は睡眠の邪魔するのは得策ではない。
「やれやれ。今日も徹夜か」
「そんなこと言って貴様昨日は太陽が昇る前に寝てたぞ」
「お前だって浦原さんが起こすまで爆睡だったじゃねぇか」
小声で争いながら魔獣の体に手を添える。
彼の悪夢は変われない。
だがその悪夢から引きずり出す手段はある。
添えた手に意識を集中すると、自分の体から魔獣の体へ力の譲渡を始めた。
魔獣である恋次ならともかく、人であるルキアが、しかも契約していない魔獣相手に魔力を分けるのは至難の業だ。
しかし恋次がいるこの状態で花太郎を出すと面倒が起こるのが目に見えているので、自分でやる方が効率いい。
物言いたげに恋次がこちらを見るが、無視して魔獣に集中する。
諦めたようにため息を吐いた恋次は、ルキアと同じように手を翳した。
二人分の魔力が魔獣に注がれる。
恋次は赤。ルキアは氷のような薄い白。
揺らぎ混じりながら体に吸い込まれていくそれを吸収するたびに、魔獣の呼吸が宥められる。
あまりの子猫の魘されように浦原に相談したら、ある種の飢餓作用と教えられ、魔力を安定させれば少しはましになると言われた。
故に毎晩彼が眠った後処置を施すのだが、器が大きいらしいこの魔獣はどれだけ注いでも果てがない。
じわり、と額に汗が浮く。
それでも止めずにいれば、恋次がとんとルキアの体を鼻で押した。
「もういい、ルキア。後は俺がやる」
「だが、貴様も毎日のことで疲れきっているだろう?」
「俺は昼間寝てるから大丈夫だ。お前は仕事があるだろ」
「でも」
「いいから、寝ろ。もうもたねぇ判ってる」
真剣な恋次の言葉に頷くと、ゆっくりと体をベッドに伏せる。
そしてそのまま掌を猫の頭へと置いた。
力を注ぐためではなく、体温を感じさせるために。
この魔獣はどうやら温もりを好むらしく、そうすると自ら擦り寄ってくる。
先程より眉間の皺がなくなった寝顔に、ルキアは小さく破顔した。
「恋次」
「何だ」
「貴様もほどほどで寝ろ」
「判ってるよ」
笑いを含んだ声で返され、ゆっくりと瞼を閉じる。
掌に感じる温もりが、早く悪夢から開放されますように。
心からそう祈りながらルキアは眠りの中へ旅立った。
--お題サイト:afaikさまより--
うるるるるゥ グルルルゥうる
夜中に部屋に響く声で目が覚める。
原因が何かは判っているので、枕元に体を丸めて眠る存在に目をやった。
すると眉間に皺を刻み込み、鼻に皺を寄せて唸っている魔獣が一匹そこにいる。
小さな声は寝言だが、ずいぶんとはっきりとしていた。
この魔獣が屋敷に来てから一週間ほどになるが、彼は毎日寝るたびに魘される。
さすがに夢の中まで覗けないし、内容を知りたくとも彼は人語を話せないので無理だ。
恋次に翻訳を頼めばいいのだろうが、緩く首を振った姿はそれを柔らかに拒絶していた。
本性の姿でいる恋次も、タシっと前足をベッドに掛けて魔獣の子供を覗き込んでいる。
「・・・相変わらずひでぇ寝顔だな」
「貴様に言われたくないだろうがな」
「どういう意味だ」
「そのままの意味だ」
狼面で器用にもむっと唇を尖らせた恋次は、瞳を眇めて睨んで来る。
しかし今更そんな顔にも慣れているルキアが怯むはずもなく、視線は鮮やかにスルーした。
恋次よりも今はこの一見子猫な魔獣だ。
ぐるゥ、ルルルぅと喉を鳴らし何度も寝返りを打つ姿は酷く苦しげで、起こした方がいいのか迷う。
しかし最近になって漸く眠れるようになったばかりなので、今は睡眠の邪魔するのは得策ではない。
「やれやれ。今日も徹夜か」
「そんなこと言って貴様昨日は太陽が昇る前に寝てたぞ」
「お前だって浦原さんが起こすまで爆睡だったじゃねぇか」
小声で争いながら魔獣の体に手を添える。
彼の悪夢は変われない。
だがその悪夢から引きずり出す手段はある。
添えた手に意識を集中すると、自分の体から魔獣の体へ力の譲渡を始めた。
魔獣である恋次ならともかく、人であるルキアが、しかも契約していない魔獣相手に魔力を分けるのは至難の業だ。
しかし恋次がいるこの状態で花太郎を出すと面倒が起こるのが目に見えているので、自分でやる方が効率いい。
物言いたげに恋次がこちらを見るが、無視して魔獣に集中する。
諦めたようにため息を吐いた恋次は、ルキアと同じように手を翳した。
二人分の魔力が魔獣に注がれる。
恋次は赤。ルキアは氷のような薄い白。
揺らぎ混じりながら体に吸い込まれていくそれを吸収するたびに、魔獣の呼吸が宥められる。
あまりの子猫の魘されように浦原に相談したら、ある種の飢餓作用と教えられ、魔力を安定させれば少しはましになると言われた。
故に毎晩彼が眠った後処置を施すのだが、器が大きいらしいこの魔獣はどれだけ注いでも果てがない。
じわり、と額に汗が浮く。
それでも止めずにいれば、恋次がとんとルキアの体を鼻で押した。
「もういい、ルキア。後は俺がやる」
「だが、貴様も毎日のことで疲れきっているだろう?」
「俺は昼間寝てるから大丈夫だ。お前は仕事があるだろ」
「でも」
「いいから、寝ろ。もうもたねぇ判ってる」
真剣な恋次の言葉に頷くと、ゆっくりと体をベッドに伏せる。
そしてそのまま掌を猫の頭へと置いた。
力を注ぐためではなく、体温を感じさせるために。
この魔獣はどうやら温もりを好むらしく、そうすると自ら擦り寄ってくる。
先程より眉間の皺がなくなった寝顔に、ルキアは小さく破顔した。
「恋次」
「何だ」
「貴様もほどほどで寝ろ」
「判ってるよ」
笑いを含んだ声で返され、ゆっくりと瞼を閉じる。
掌に感じる温もりが、早く悪夢から開放されますように。
心からそう祈りながらルキアは眠りの中へ旅立った。
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(03/30)
(03/30)
(03/30)
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(03/25)
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