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相変わらずメリー号の船首で大の字になって昼寝する船長に、ゾロは呆れを多大に含んだため息を漏らす。
体のいたるところに包帯を巻きながらも、心地良さそうに風に吹かれる姿はとてもらしいが馬鹿だと思う。
ゴムゴムの実を食べたルフィは海に嫌われているのに、その本人は海が好きで仕方ない。
落ちれば怪我もあるしいつもより早く沈むだろうに、あれだけ注意しても回りに誰も居ない状態で転がるルフィに、怒りすら沈む。

それでも放っておいて溺れられたらことなので、つい先日の戦いで負傷した足首をやや引き摺りながら彼女に近づく。
規則正しく上下する胸を見て、頭を掻いてもう一度ため息を吐いた。


「狸寝入りか?」
「んにゃ、休憩してただけだ。お前が寝てるって勝手に勘違いしたんだろ」


器用に首だけこちらに向けたルフィは、しししっと彼女独特の笑みを見せる。
顔にも貼られた絆創膏に眉根を寄せ、その程度に傷が気になる自分に舌打する。
戦うものであればこれからも怪我は負うし、顔に傷を作るのも珍しくない。
しかし彼女の顔に傷が残ると考えるとどうしようもなく腹の収まりが悪い。
苛立つ心を宥めていると、能天気な声に邪魔された。


「なんか悩んでんのか?」
「───なんでそう思う」
「普段よりも眉間の皺が五割増しだ。癖になるぞ、それ」
「ほうっておけ」


見透かされていた事実を隠すために殊更強い口調で訴える。
だがそんなゾロの心境も見透かしたようにルフィは肩を竦めた。


「おれがビビを助けるのが気になるか?」


直球な言葉に声が詰まる。
返事が出来ないのが返事だと、気付いた時には遅かった。
してやられたと睨みつければ、一応の上司は愉快そうに肩を揺らす。

そう。ゾロはルフィがビビを手助けするのを気にしていた。
別にビビを手助けすること事態に異論はない。
ルフィが決めたなら好きにすれば良いと思うし、彼女を補佐するのが自分の役目だと思っている。
しかし先日の巨人がいた島での体験は、少しばかりゾロの心を揺らした。

ルフィの夢は海軍元帥になることだ。
年齢の割りに優秀なルフィは『大佐』という身分にあり、口先だけでなく実力もある。
こいつなら、と思わせる気概もあり、だからゾロはルフィについている。
成り行きで海軍に入ってしまったが後悔していない。
この女の傍にいるのに、後悔なんてするわけない。
だからこそ、ゾロは気になるのだ。
ビビを助けることで出る、ルフィの夢への影響が。

島を出てからの悩みは、どうやら鈍いくせに鋭いルフィに気付かれていたらしい。
いつも飄々としているため騙されがちだが、彼女は決して鈍くない。
鈍いだけだと出世できないだろ、と笑っていたが、確かにその通りなのだろう。
ナミやウソップの前では見せない顔を、ルフィは確かに持っている。


「・・・お前は一応海軍大佐だ」
「おう。一応じゃなく、大佐だな」
「話を聞いただけじゃ実感は沸かなかったが、相手は王下七武海だ」
「そうだな。海賊でありながら海軍に表立っての伝手がある奴らだな」
「───お前、判ってんのか?そいつらを敵に回すって言う意味」
「ししししっ、今更気がついたゾロに言われたくねぇな。お前鈍すぎ」
「何だと!」


本気で心配しているのに、軽く流され憤る。
確かに今更かもしれないが、気がついただけましだろう。
怒りを瞳に宿して睨み付けるものらりくらりと躱された。


「ばっかだなぁ、ゾロ。心配すんな。おれは海軍元帥になる女だ」
「・・・だから心配してんだろうが」
「大丈夫だ。おれはビビに手を貸す。が、海軍大佐としてじゃなく、あくまでモンキー・D・ルフィ個人としてだ」
「海軍を利用して永久指針を取ってきたのにか?」
「あれは正当な報酬だからいいんだよ。それにお前は知らないだろうけどな、鰐が尻尾を出すのは珍しいんだ。焦っているのか油断してるのか、それとも第三者の介入があったか。どれでもいいが、チャンスには違いない」
「相手は王下七武海だぞ?」
「そうだな。そんでもって海賊だ」


しししっと笑ったルフィの目は、決して笑っていなかった。
ぞくり、と背筋を震わせる。
彼女は判っていないから突っ走るのではない。
全てを理解した上で、突っ走ると言っているのだ。


「おれはビビを助けるぞ。もうそう決めた。ビビを助けて、ついでにクロコダイルをしょっ引く」
「・・・ついでかよ」
「おう、ついでだよ。第一は仲間。おれ、ビビが大事だ」


そうして笑う姿は、先ほどまでとは違い年相応の娘のようだった。
ルフィの言葉にゆるゆると息を吐き出し覚悟を決める。
どうせルフィの決めた事に逆らう気はない。


「負ける気は?」
「ないな」


頭の後ろで腕を組んだルフィは、一言告げると視線を前に向けた。


「真っ直ぐ進むぞ、ゾロ。後ろを振り返らずに、まっすぐ、真っ直ぐにだ」


いつものように五月蝿く思えるほど騒がしい声ではなく、何処か淡々とした響きでルフィが言った。
海の先を見詰めるルフィの後ろに立ちながら、見えないと承知しながらゾロも一つ頷いた。

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