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■高杉&神楽
「随分と派手にやられたもんだな。──酢昆布食うか、じゃじゃ馬姫?」
聞こえた声に、ゆっくりと瞼を持ち上げた。ぼんやりとした視界に映ったのは白い天井。背中に当たる硬い感触は安物のベッドかとあたりを付けた。数度瞬きを繰り返し、意識を浮上させていく。
聞こえた声は、ここ数ヶ月で随分と耳に馴染んだもので、それに安堵の息を吐く。どうやら最悪の事態は避けられたらしい自分の悪運にふつふつと笑いがこみ上げたが、その震動が傷に触りくっと息を詰まらせた。
ゆるりと視線だけを動かすと、包帯を巻いた隻眼と目が合う。にいっと、口が裂けるんじゃないかと思わせる笑みを見せた男は、機嫌がいいのか悪いのか判断しかねた。
「死に損ねたな、神楽ァ」
死にかけた鼠をいたぶる猫のような眼差しで神楽をねっとりと眺める。視線に形があったらそれは随分と粘着質なものになっただろう。上品な女物の衣を粋に着こなし、胸元から出した煙管を吹かして紫煙を吐き出す。色の滲んだ白いカーテンよりも白い煙が神楽の上を漂った。それを神楽が厭うているのを知りつつの行為に、じっとりと眉を寄せる。神楽の拒絶を判ってるだろうに、性質の悪い笑みを浮かべた男はさらに息を吸い込んだ。美味そうに吸う意味が判らないが、止めるつもりはないと理解すると睨みつけるのも止める。無駄な体力は残っておらず、疲れることはしたくなかった。
ツキン、と体の奥が痛んだような気がしたが、最後に覚えている時よりは随分と上等な体の具合にベッドに投げ出していた手を胸の辺りまで持ち上げる。握って開いてを数度繰り返すと、手に感覚がゆっくりと戻ってきた。どうやら夜兎の優秀な肉体は神楽の意思に忠実に働いているらしい。
瞬きすらしないで体の様子を確かめた神楽は、無造作に上半身を起こす。痛みは消えてなくとも十分に我慢の範囲内で、意識の外に切り捨てられた。
「ここは何処アルか?」
「オレの隠れ家の一つだよ。ウサギが一人で遊びに出かけて帰ってこないから散歩がてら探しに行ったらぐったりとしてたからな」
「──放っておけば良かったアル」
「そう言うと思ったぜ。だから助けてやったんだ」
「嫌がらせアルか?」
「そうだ。お前は、助けられたくもなかったのに、よりにもよってこのオレに助けられたんだ」
「・・・ありがとう、とでも言って欲しいのカ?弱っているお姫様を助けるのは下郎の役目アル。私に触れただけでもありがたく思えヨ」
「お前こそ、天下の高杉晋助にお姫様抱っこなんてされたんだ。子々孫々まで崇め奉れ」
「ケッ。寝言は寝てから言えヨ、片目」
心底嫌そうな顔をして神楽はベッドから降りた。どのような治療を施したのかは判らないが、いつの間にか着替えていた白い襦袢を捲れば体の傷は桃色の肉が盛り上がりすっかりと塞がっている。大きくは無いが形の良い乳房から細く滑らかな腰の曲線に到るまで数箇所ある傷に新たな一つが追加されたが、全く気にならない。にたにたとだらしない表情で神楽の裸を眺める男と同じくらいには。
夜兎の特色である日に焼けない真白な肌。染み一つ無いそこに刻まれた傷跡は、どれもこれも夜兎の能力をもってしても回復し切れなかった深手だ。女の体に傷なんて、と思うような感傷はとうに捨てた。そんな甘い考えで復讐は成り立たない。
下着姿の体を隠す事もなく神楽は高杉の前に立った。視線を隠さず舐めるように神楽の肢体を見つめた高杉は、口角を上げ喜悦を示す。女性として完成されてない未成熟なそれを、愉しそうに眺める男に神楽は眉根を寄せた。
「何ジロジロ見てんだヨ。ただで見るなんて百年早いネ。私の肌が見たけりゃ、ラーメン10杯持って来いヨ。ちなみに全部大盛りで頼むアル」
「・・・腹、減ってんのか?」
「当然ネ。今が何時か知らないけど、腹時計は正確に時を刻んでいるアル」
言い切った神楽に、高杉は楽しそうに咽喉を鳴らした。
「はッ・・・まあ、いい。メシ食いに連れてってやるよ。ああ、服は着ろよ?そんなカッコじゃ猥褻物陳列罪で捕まるからな」
「ああん?どういう意味だコルァ?私の肌を見たならセクハラで周りが先に捕まるアル」
低い声で返しながらも、神楽は律義にベッド脇に置いてあった服を手に取った。喪服を思い起こさせるような真新しい黒のチャイナ服は相変わらず神楽の体にピッタリだ。スリットが長めに入り、動けば下着が見えそうだったが、少し眉根を寄せるだけで抵抗せずに身につけた。
チャイナ服に着替えると、それまで黙っていた晋助は煙を舌で弄び吐き出すとゆったりと唇を持ち上げた。怠惰な獣が獲物を見つけたときのように、獰猛で剣呑な微笑。産毛も逆立つその笑みに、けれど無表情で神楽は真っ直ぐと視線を返す。
「神楽」
「・・・何アルか?」
「あれだけのチャンスをモノに出来なかったんだ。──お前、ペナルティ決定な」
「・・・・・・」
先程までと同じ口調で、格段に楽しそうに高杉は口にした。悪戯を思いついた子供のような笑顔は幼げですらあるが、その内容は想像していた通りで苦虫を噛み潰した気分になる。遊び半分で告げられたペナルティの言葉の重みに気づかない神楽ではない。
桜色の唇をかみ締めた神楽は、それでも反論せず無言で傍に置いてあった傘に手を伸ばした。
「随分と派手にやられたもんだな。──酢昆布食うか、じゃじゃ馬姫?」
聞こえた声に、ゆっくりと瞼を持ち上げた。ぼんやりとした視界に映ったのは白い天井。背中に当たる硬い感触は安物のベッドかとあたりを付けた。数度瞬きを繰り返し、意識を浮上させていく。
聞こえた声は、ここ数ヶ月で随分と耳に馴染んだもので、それに安堵の息を吐く。どうやら最悪の事態は避けられたらしい自分の悪運にふつふつと笑いがこみ上げたが、その震動が傷に触りくっと息を詰まらせた。
ゆるりと視線だけを動かすと、包帯を巻いた隻眼と目が合う。にいっと、口が裂けるんじゃないかと思わせる笑みを見せた男は、機嫌がいいのか悪いのか判断しかねた。
「死に損ねたな、神楽ァ」
死にかけた鼠をいたぶる猫のような眼差しで神楽をねっとりと眺める。視線に形があったらそれは随分と粘着質なものになっただろう。上品な女物の衣を粋に着こなし、胸元から出した煙管を吹かして紫煙を吐き出す。色の滲んだ白いカーテンよりも白い煙が神楽の上を漂った。それを神楽が厭うているのを知りつつの行為に、じっとりと眉を寄せる。神楽の拒絶を判ってるだろうに、性質の悪い笑みを浮かべた男はさらに息を吸い込んだ。美味そうに吸う意味が判らないが、止めるつもりはないと理解すると睨みつけるのも止める。無駄な体力は残っておらず、疲れることはしたくなかった。
ツキン、と体の奥が痛んだような気がしたが、最後に覚えている時よりは随分と上等な体の具合にベッドに投げ出していた手を胸の辺りまで持ち上げる。握って開いてを数度繰り返すと、手に感覚がゆっくりと戻ってきた。どうやら夜兎の優秀な肉体は神楽の意思に忠実に働いているらしい。
瞬きすらしないで体の様子を確かめた神楽は、無造作に上半身を起こす。痛みは消えてなくとも十分に我慢の範囲内で、意識の外に切り捨てられた。
「ここは何処アルか?」
「オレの隠れ家の一つだよ。ウサギが一人で遊びに出かけて帰ってこないから散歩がてら探しに行ったらぐったりとしてたからな」
「──放っておけば良かったアル」
「そう言うと思ったぜ。だから助けてやったんだ」
「嫌がらせアルか?」
「そうだ。お前は、助けられたくもなかったのに、よりにもよってこのオレに助けられたんだ」
「・・・ありがとう、とでも言って欲しいのカ?弱っているお姫様を助けるのは下郎の役目アル。私に触れただけでもありがたく思えヨ」
「お前こそ、天下の高杉晋助にお姫様抱っこなんてされたんだ。子々孫々まで崇め奉れ」
「ケッ。寝言は寝てから言えヨ、片目」
心底嫌そうな顔をして神楽はベッドから降りた。どのような治療を施したのかは判らないが、いつの間にか着替えていた白い襦袢を捲れば体の傷は桃色の肉が盛り上がりすっかりと塞がっている。大きくは無いが形の良い乳房から細く滑らかな腰の曲線に到るまで数箇所ある傷に新たな一つが追加されたが、全く気にならない。にたにたとだらしない表情で神楽の裸を眺める男と同じくらいには。
夜兎の特色である日に焼けない真白な肌。染み一つ無いそこに刻まれた傷跡は、どれもこれも夜兎の能力をもってしても回復し切れなかった深手だ。女の体に傷なんて、と思うような感傷はとうに捨てた。そんな甘い考えで復讐は成り立たない。
下着姿の体を隠す事もなく神楽は高杉の前に立った。視線を隠さず舐めるように神楽の肢体を見つめた高杉は、口角を上げ喜悦を示す。女性として完成されてない未成熟なそれを、愉しそうに眺める男に神楽は眉根を寄せた。
「何ジロジロ見てんだヨ。ただで見るなんて百年早いネ。私の肌が見たけりゃ、ラーメン10杯持って来いヨ。ちなみに全部大盛りで頼むアル」
「・・・腹、減ってんのか?」
「当然ネ。今が何時か知らないけど、腹時計は正確に時を刻んでいるアル」
言い切った神楽に、高杉は楽しそうに咽喉を鳴らした。
「はッ・・・まあ、いい。メシ食いに連れてってやるよ。ああ、服は着ろよ?そんなカッコじゃ猥褻物陳列罪で捕まるからな」
「ああん?どういう意味だコルァ?私の肌を見たならセクハラで周りが先に捕まるアル」
低い声で返しながらも、神楽は律義にベッド脇に置いてあった服を手に取った。喪服を思い起こさせるような真新しい黒のチャイナ服は相変わらず神楽の体にピッタリだ。スリットが長めに入り、動けば下着が見えそうだったが、少し眉根を寄せるだけで抵抗せずに身につけた。
チャイナ服に着替えると、それまで黙っていた晋助は煙を舌で弄び吐き出すとゆったりと唇を持ち上げた。怠惰な獣が獲物を見つけたときのように、獰猛で剣呑な微笑。産毛も逆立つその笑みに、けれど無表情で神楽は真っ直ぐと視線を返す。
「神楽」
「・・・何アルか?」
「あれだけのチャンスをモノに出来なかったんだ。──お前、ペナルティ決定な」
「・・・・・・」
先程までと同じ口調で、格段に楽しそうに高杉は口にした。悪戯を思いついた子供のような笑顔は幼げですらあるが、その内容は想像していた通りで苦虫を噛み潰した気分になる。遊び半分で告げられたペナルティの言葉の重みに気づかない神楽ではない。
桜色の唇をかみ締めた神楽は、それでも反論せず無言で傍に置いてあった傘に手を伸ばした。
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