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『家・・・を助け・・・か』

フラッシュバックする光景。
夜の道。電柱。見慣れぬ異形の存在。
そして目の前の華奢な女。

そこまで考え己に問う。
何故、女だと判るのか。
目の前に居る存在は、白い靄に覆われ辛うじて輪郭を現しているだけに過ぎない。
声にも酷くノイズが入り、何を言っているのかも判り難い。

だが一護には、目の前の袴を着た人が、女であると判っていた。

『貴様が、・・・になれ』

もやは徐々に晴れ、黒い袴に相反する白い肌が現れる。
少し癖のある黒髪に、高くも低くもない玲瓏な声。
今まさに死に掛けているのに、その声は酷く落ち着いていて、だから一護の焦りも静まる。
知らず知らず口角を持ち上げた。
彼女を信頼するのは当たり前で、信用するのも当たり前だ。
何故なら、彼女は───。

『刀を寄越せ、死神』

そう、死神。
一護に力を分け与え、小さな背を凛と伸ばし、いつだって紫紺色の瞳で前を見定める綺麗な女。
普段は冷静なくせに、一護の前では傲慢で意地っ張りで天邪鬼で、でも頼りになる強い女。

『死神ではない。朽木ルキアだ』

少しだけその相貌が綻ぶ。
瞳だけで笑うなんて、随分と器用なものだと思い、一護も笑い返した。

そう、彼女は『朽木ルキア』。
一護に命を懸けて戦う力を分け与えた優しい死神。





一護は怒り狂っていた。
それこそ、嘗てないほどに。
頭から湯気が出るってこんな感じかもしれないと、頭の隅に居る自分が呟くが、そんなことはどうでもよかった。
頭には寝癖が残っているし、着てる服はパジャマ代わりのジャージの上下。
靴の代わりにサンダルを引っ掛けた姿は、年頃の男子高校生が外を爆走するには相応しくない格好であったが、一護にそれを気にする余裕はない。

入れ替わっていないがコンと同じくらいの健脚を発揮し、彼は目的地を目指した。
そしてついに目的地を発見すると、勢い良くジャンプする。
玄関を破壊した彼は、その騒々しさに顔を覗かせた住民の中から一人を選び出し、びしり、と指を突きつけた。

「何、いきなり人の記憶奪ってやがんだ、この野郎!!」

叫んだと同時に履いていたサンダルを引っつかみ、メジャーリーグの投手並のフォームで投げつけた。

「おやおやー?もう、記憶は戻ったんすねぇ」

しかしながら全力投球したサンダルは、へらりと曖昧な笑みをした男に橋で摘まれ。
チクショウ、とその無念さに、思わず床を殴ってしまった。

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