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男には絶対に譲れないものがある。
涼やかな瞳に熱い闘志を宿し、琉夏は不敵に微笑んだ。
目の前の男は自分が誰よりも信頼し尊敬する相手。
浅黒い肌に精悍な顔立ちの彼は、琉夏の挑発を受けるように口の端を持ち上げるとニヒルに笑う。
少し悪そうな笑顔がこの上なく似合い、今度は含みなく笑った。
「───俺は負けない、コウ」
囁いた瞬間、兄の瞳が悪戯っぽく煌いた気がした。
「──────てか、早くして欲しいんだけど」
ピンボールで対決している二人を後ろから眺め、冬姫は一つため息を吐く。
はっきり言って、何が彼らをここまで駆り立てるのかさっぱりと理解できない。
ついでに理解する気もない。
格闘ゲームやレーシングゲームならともかく、何故ピンボールでここまで熱くなるか。
あの桜井兄弟の異名を知る人間がまだいるらしく、ぼそぼそとしたささやきの中距離を微妙に置かれるのも居心地の悪さを倍増させる。
熱くなる兄弟から僅かに離れた場所で一人ぽつねんと佇む冬姫は、大してゲームが好きなわけでもないのでかなり浮いていた。
「まだ終わらないの、琥一君」
「まだだな。この負けず嫌いな弟に言ってやれよ」
「───琉夏君?」
「コウがしつこいんだ」
話す間も視線をボールから放さない兄弟に、呆れたと肩を竦める。
そもそも勝負の原因を作ったのは冬姫だったが、かれこれ一時間付き合っているのだからもう勘弁してくれてもいいのではないか。
鞄に手をやると原因となったそれを掴む。
「折角遊園地のチケットゲットしたんだけどなぁ」
商店街のくじ引きで引き当てたペアのチケット。
たまたま一緒に居た兄弟が、それを原因に勝負を始めたのは運命だったのだろうか。
どちらにせよこれを手に入れたときの輝かしい気持ちは今は随分と薄れ、もうどうでも良くなってきた。
きっと彼らも勝負の原因など空の彼方に飛んで行っているに違いない。
これは長い付き合いから出た経験による結論だ。
「コウ、俺の勝ちー」
「何!?もう一度だ、ルカ!!」
普段の兄らしい態度をかなぐり捨て大人気なく叫ぶ琥一に、余裕たっぷりにシュールな笑みを浮かべる琉夏。
二人はどう考えても冬姫の存在を忘れている。
どうしたものかと遠い目をすると、不意に携帯電話が鳴った。
取り出してみると着信は大好きな親友からで、幼馴染の争いを横目にさくっと電話に出る。
「みよちゃん?」
『こんにちは、バンビ。今、暇かしら?映画を観に行きたいんだけどどう?』
誘いの言葉に迷ったのは一瞬で、すぐさま是と応える。
そして握っていたチケットを、近くに居たカップルに差し出した。
「これ、どうぞ」
にこり、と微笑み反論を許さずすかさず渡す。
そして未だに冬姫の行動に気づかない兄弟を一瞥すると、そのままゲームセンターから足早に去った。
兄弟が冬姫の不在に気づくのはそれからさらに一時間が経過した後で、携帯の電源を切っていた冬姫を日付が変わるまで慌てて捜索した彼らは自宅で睡眠中の冬姫をたたき起こす羽目になる。
そしてそれが原因で珍しくも喧嘩をした彼らが一週間は口を利かなくなるのだが───それはまた別の話。
涼やかな瞳に熱い闘志を宿し、琉夏は不敵に微笑んだ。
目の前の男は自分が誰よりも信頼し尊敬する相手。
浅黒い肌に精悍な顔立ちの彼は、琉夏の挑発を受けるように口の端を持ち上げるとニヒルに笑う。
少し悪そうな笑顔がこの上なく似合い、今度は含みなく笑った。
「───俺は負けない、コウ」
囁いた瞬間、兄の瞳が悪戯っぽく煌いた気がした。
「──────てか、早くして欲しいんだけど」
ピンボールで対決している二人を後ろから眺め、冬姫は一つため息を吐く。
はっきり言って、何が彼らをここまで駆り立てるのかさっぱりと理解できない。
ついでに理解する気もない。
格闘ゲームやレーシングゲームならともかく、何故ピンボールでここまで熱くなるか。
あの桜井兄弟の異名を知る人間がまだいるらしく、ぼそぼそとしたささやきの中距離を微妙に置かれるのも居心地の悪さを倍増させる。
熱くなる兄弟から僅かに離れた場所で一人ぽつねんと佇む冬姫は、大してゲームが好きなわけでもないのでかなり浮いていた。
「まだ終わらないの、琥一君」
「まだだな。この負けず嫌いな弟に言ってやれよ」
「───琉夏君?」
「コウがしつこいんだ」
話す間も視線をボールから放さない兄弟に、呆れたと肩を竦める。
そもそも勝負の原因を作ったのは冬姫だったが、かれこれ一時間付き合っているのだからもう勘弁してくれてもいいのではないか。
鞄に手をやると原因となったそれを掴む。
「折角遊園地のチケットゲットしたんだけどなぁ」
商店街のくじ引きで引き当てたペアのチケット。
たまたま一緒に居た兄弟が、それを原因に勝負を始めたのは運命だったのだろうか。
どちらにせよこれを手に入れたときの輝かしい気持ちは今は随分と薄れ、もうどうでも良くなってきた。
きっと彼らも勝負の原因など空の彼方に飛んで行っているに違いない。
これは長い付き合いから出た経験による結論だ。
「コウ、俺の勝ちー」
「何!?もう一度だ、ルカ!!」
普段の兄らしい態度をかなぐり捨て大人気なく叫ぶ琥一に、余裕たっぷりにシュールな笑みを浮かべる琉夏。
二人はどう考えても冬姫の存在を忘れている。
どうしたものかと遠い目をすると、不意に携帯電話が鳴った。
取り出してみると着信は大好きな親友からで、幼馴染の争いを横目にさくっと電話に出る。
「みよちゃん?」
『こんにちは、バンビ。今、暇かしら?映画を観に行きたいんだけどどう?』
誘いの言葉に迷ったのは一瞬で、すぐさま是と応える。
そして握っていたチケットを、近くに居たカップルに差し出した。
「これ、どうぞ」
にこり、と微笑み反論を許さずすかさず渡す。
そして未だに冬姫の行動に気づかない兄弟を一瞥すると、そのままゲームセンターから足早に去った。
兄弟が冬姫の不在に気づくのはそれからさらに一時間が経過した後で、携帯の電源を切っていた冬姫を日付が変わるまで慌てて捜索した彼らは自宅で睡眠中の冬姫をたたき起こす羽目になる。
そしてそれが原因で珍しくも喧嘩をした彼らが一週間は口を利かなくなるのだが───それはまた別の話。
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