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後ろからにじり寄る気配に、神楽はため息を吐いた。慣れ親しんだ気配。
満天の星空の下、いつもの公園のベンチに傘を差さずに腰掛けていた神楽は、背後に向かって声をかけた。
「・・・来ちゃったアルか、定春」
「ワンっ」
白く、大きなケモノは嬉しそうに尻尾を振りながら神楽の横に腰掛けた。
ベンチに座っているわけではないが、その体格差ゆえに定春の視線は神楽より大分上にある。それでも、精一杯腕を伸ばして、神楽は定春の顔を撫でた。
「元気にしてたアルか?」
「ワンっ」
「餌、ちゃんと貰ってるカ?」
「ワンっ」
「銀ちゃんたち、ちゃんと定春の散歩に行ってるカ?」
「ワンっ」
神楽の一言一言に、律義に返事を返す定春に、ポーカーフェイスを崩した神楽は優しい苦笑を浮かべた。
「苛められてないカ?」
「ワンっ」
「ま、苛められたら、そいつの頭を噛み砕くヨロシ。お前を苛めるような奴、ロクな大人じゃないネ」
「ワンっ」
そして、しばらく沈黙する。ハッハッという息遣いだけが、夜の公園に響いた。
寒い冬の夜。星空はくっきりと見えるが、こんな中公園に来るのは余程の星好きか酔っ払いくらいのものだろう。誰も見ていないのを確信し、心行くまで定春の毛を撫でると神楽は唐突にベンチから立ち上がった。
「私、もう行くアル」
そして、そのまま歩き出す。その少し後を、当然のように定春も付いて歩いた。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
神楽が止まれば定春も止まる。愛用の傘を片手に、神楽は振り返った。真っ黒な目で、真っ直ぐに神楽を見つめる定春の鼻の辺りを撫でてやる。心地よかったのか、定春は目を細めて尻尾を振った。
「私についてきちゃダメよ、定春」
「・・・・・・」
「私が行くところ、赤い色が一杯ネ」
「・・・・・・」
「お前の、綺麗な白が汚れちゃうアル。それは、私も悲しいアル。だから、お前は銀ちゃんたちの傍に居なきゃダメなのヨ」
「キューン・・・」
「そんな声出してもダメネ。赤い定春なんて、私ヤーヨ」
「・・・・・・・」
「だから、お前は置いていくアル。銀ちゃんの傍なら、お前はずっと白いままネ」
「・・・キュン」
鼻を鳴らした定春に、神楽は小さくキスを落とした。そして、ポンポンと撫でると踵を返す。今度は、定春もついていかない。賢いケモノは振り返らぬ主に向かい尻尾を振り続ける。
「ヒューン、キューン」
哀しい声で、白いケモノは空に啼く。月の出ていない空は、定春の声を何処までも吸い込んだ。
見えなくなっていく主に悲しい目をした定春は、パタリと、最後にもう一度尾を振った。
満天の星空の下、いつもの公園のベンチに傘を差さずに腰掛けていた神楽は、背後に向かって声をかけた。
「・・・来ちゃったアルか、定春」
「ワンっ」
白く、大きなケモノは嬉しそうに尻尾を振りながら神楽の横に腰掛けた。
ベンチに座っているわけではないが、その体格差ゆえに定春の視線は神楽より大分上にある。それでも、精一杯腕を伸ばして、神楽は定春の顔を撫でた。
「元気にしてたアルか?」
「ワンっ」
「餌、ちゃんと貰ってるカ?」
「ワンっ」
「銀ちゃんたち、ちゃんと定春の散歩に行ってるカ?」
「ワンっ」
神楽の一言一言に、律義に返事を返す定春に、ポーカーフェイスを崩した神楽は優しい苦笑を浮かべた。
「苛められてないカ?」
「ワンっ」
「ま、苛められたら、そいつの頭を噛み砕くヨロシ。お前を苛めるような奴、ロクな大人じゃないネ」
「ワンっ」
そして、しばらく沈黙する。ハッハッという息遣いだけが、夜の公園に響いた。
寒い冬の夜。星空はくっきりと見えるが、こんな中公園に来るのは余程の星好きか酔っ払いくらいのものだろう。誰も見ていないのを確信し、心行くまで定春の毛を撫でると神楽は唐突にベンチから立ち上がった。
「私、もう行くアル」
そして、そのまま歩き出す。その少し後を、当然のように定春も付いて歩いた。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
神楽が止まれば定春も止まる。愛用の傘を片手に、神楽は振り返った。真っ黒な目で、真っ直ぐに神楽を見つめる定春の鼻の辺りを撫でてやる。心地よかったのか、定春は目を細めて尻尾を振った。
「私についてきちゃダメよ、定春」
「・・・・・・」
「私が行くところ、赤い色が一杯ネ」
「・・・・・・」
「お前の、綺麗な白が汚れちゃうアル。それは、私も悲しいアル。だから、お前は銀ちゃんたちの傍に居なきゃダメなのヨ」
「キューン・・・」
「そんな声出してもダメネ。赤い定春なんて、私ヤーヨ」
「・・・・・・・」
「だから、お前は置いていくアル。銀ちゃんの傍なら、お前はずっと白いままネ」
「・・・キュン」
鼻を鳴らした定春に、神楽は小さくキスを落とした。そして、ポンポンと撫でると踵を返す。今度は、定春もついていかない。賢いケモノは振り返らぬ主に向かい尻尾を振り続ける。
「ヒューン、キューン」
哀しい声で、白いケモノは空に啼く。月の出ていない空は、定春の声を何処までも吸い込んだ。
見えなくなっていく主に悲しい目をした定春は、パタリと、最後にもう一度尾を振った。
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