忍者ブログ
初回の方は必ずTOPの注意事項をご確認ください。 本家はPCサイトで、こちらはSSSのみとなります。
Calendar
<< 2025/06 >>
SMTWTFS
1234 567
891011 121314
15161718 192021
22232425 262728
2930
Recent Entry
Recent Comment
Category
123   122   121   120   119   118   117   116   115   114   113  
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

■近藤&神楽

「くくっ・・・来いよ」
「高杉・・・もう、逃げられんぞ」
「威勢だけはいいなぁ」

 ゆるりと唇を持ち上げた晋助に、近藤は目を眇めた。
 晋助の周りは、土方や沖田を中心とした近藤の最も信頼する部下たちが囲んで一部の隙もなく刀を構えている。一歩でも動けば躊躇なく攻撃を開始する。突きつけた刀に迷いは微塵もない。だが、圧倒的不利な状況でも晋助の余裕は崩れない。ニヤニヤと薄ら笑いをし、刀を片手にこの状況を楽しんでいた。

「・・・何、笑ってやがる」
 
状況を楽しむように哂う晋助に向け、歯をむき出しにして近藤は笑った。
 その壮絶な笑みは、普段はお惚けている彼からは想像もつかないもの。真選組の局長を務める男に相応しい笑い方。

「いい面するじゃねぇか」
「そりゃ、ありがとうよ」

 近藤は怒っていた。晋助が、彼の一番大事なものに手を出したことに。そして、彼女を最も効果的に傷つけたことに。
 先日の晋助と神楽の襲撃の後、お妙は元気がない。普段通りに振舞おうとする姿は痛々しいままだ。
 晋助の行動は、お妙から笑顔を奪った。過激派の攘夷志士でなかったとしても、それだけで近藤にとって目の前の男は許しがたい存在だ。

「お前も年貢の納め時だ。しょっぴいてやるから覚悟しろ。なに、腕の一本や二本なくなっても構わねぇ。病院に運んでやるよ」
「・・・随分と大きく出たな」
「その実力があるからな」

 多勢に無勢かもしれない。しかし捕り物に卑怯も糞もなく優先されるべきは目の前の男を確保だ。
 油断なく刀を構えていた近藤は、次の瞬間の晋助の行動に少なからず驚いた。晋助は持っていた獲物を鞘に収めたのだ。

「・・・降伏する気か」

 刀を下ろす事無く聞いてみる。
 だがその問に、晋助は心底愉快な冗談を聞いたとばかりに面白そうに笑った。ゆったりとした動きで着物の中に手を入れるとキセルを取り出す。

「いや?ただ、オレの最大の武器がコレじゃないだけだ」
「・・・?」

 余裕たっぷりに告げられたその言葉に首をかしげた瞬間。激しい音と共に、部下の一人が吹っ飛んだ。

「山崎!?」

 監察と言う任務上山崎はそれほど刀の上手ではない。だが、それでもこの場に同行を許す程度には強かったはずだ。驚いている間にも、一人また一人と弾き飛ばされ着実に人数は減っていった。
 あっという間に、近藤と土方、沖田以外の隊員は地に這い蹲る羽目になり、あまりにもあまりな展開に渋い表情になる。先ほどまでの有利は瞬きする間に覆され、それを成し遂げた桃色の髪の少女は、無感動に声を発した。

「ココに居たアルか、晋助。何時まで遊んでいるつもりネ?お前の所為で、また子に夕飯を取り上げられたダロ。さっさと帰って卵かけご飯を食うアル」
「・・・何だよ、じゃじゃ馬。たまには素直に心配したとかって言えないのか?」
「ハァ?心配?誰の心配をしろって言うアルカ?お前なんか殺しても死なないダロ。むしろ、自分を刺した刀をアクセサリーにしちまうネ」
「はっ。それもまた良いな」

 信じられないことに慈しむようにも見える優しげな仕草で神楽の頭を撫でた晋助は、驚きの表情で自分達を見る近藤に視線をやった。

「何驚いてるんだ?お前、この間もコイツを見ただろ?」
「・・・・・・チャイナ」
「何ネ?またこいつらカヨ?他に遊び相手がいないアルカ?」
「こいつらの方からオレを追いかけて来るんだよ」
「ホモ?こいつら、ホモ?やっベー。変なモン見せられる前に帰るに越した事はないアル」
「・・・・・・」

 脱力するようなやり取りを始めた神楽に、じりっと一歩踏み出したのはやはりと言うべきか、沖田だった。爛々と輝く瞳孔の開いた目に、神楽だけを映しにいっと性質の良くない笑みを浮かべる。

「よう、チャイナ。また会ったな」
「・・・うわ、最悪。また手前カヨ、クソガキ」
「へっ。嫌よ嫌よも好きの内。お前だってホントは嬉しいんだろ?」
「真人間の私は正直な気持ちしか口にしないアル。したがって本当にお前と会うのはいやアル」
「つれない事を言いなさんな。オレはお前と会えて、嬉しい限りですぜ?」

 言葉と同時に、沖田は抜く手も見せぬ早業で抜刀した。先日と同様に容赦のない剣技は、神楽を殺す事に躊躇いはない。

「総悟!」
「何でぇ、土方さん。オレを止める気ですかィ?相手は、高杉に組するウサギですぜ?」

 嘲るように言った沖田を止めたのは、声を張り上げた土方ではなかった。

「・・・・・・やめろ、総悟」
「・・・・・・」

 静かな、それでいて何処か抗いがたい声で近藤は命じた。近藤の一言に、躊躇いなく振るわれていた沖田の腕が止まる。
だがその瞳孔は開いたままで、戦闘モードは解除されていない。滾る殺気を抑えずに、ゆっくりと近藤を振り返った。しかし訴えるように無言で見詰める沖田を無視し、柔らかな眼差しを神楽に向ける。

「戻ってくる気はないか、チャイナさん。アンタがいないとお妙さんが寂しがる」
「・・・・・・」

 その言葉に、神楽は一瞬目を伏せた。

「私には私の正義があるネ。それを成さない限り戻る事は出来ないアル」

 そして、寂しげに苦笑する。それは諦観を含んだ幼い容姿に合わない微笑。

「最も、それを成し遂げたら、今度は別の意味で会うことは出来なくなるけどナ」
「見逃すのは一回だけだ。次は、お妙さんが泣こうとどうしようとお前をしょっ引く」
「・・・出切るならやってみろヨ」
「ああ。泣いて謝るまで、ケツを叩いてやるから覚悟しとけ」

その一言に、神楽はふっと笑った。万事屋にいた頃は良く見た、優しい、懐かしい笑顔で。

「・・・お前、結構いい男ヨ。パピーには適わないケドナ」
「そりゃ、ありがとうよ」
「じゃあ、な」

 背を向ける彼女に、躊躇いはない。片目の隣に立ち歩く姿に、見慣れたくはないなと近藤は思った。
 

拍手[2回]

PR

フリーエリア
Template & Icon by kura07 / Photo by Abundant Shine
Powered by [PR]
/ 忍者ブログ