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うはうはとだらしない笑い声が漏れそうになり慌てて両手で口を塞ぐ。
だが噛んでも殺してもだらしない笑みは絶え間なくあがり、結局制御するのを諦め欲望のままに手を伸ばした。

「もっふもふー」
「あー・・・天国だよな。マジパねぇ」
「全くだ」

そう、ここは天国だった。
肉球と毛皮で装備した彼らをハーレム状に囲うことが出来る、『わんにゃん動物園』。
そこは犬猫大好き人間には限りなく天国に近い場所だ。
柔らかな毛皮を持つゴールデンレトリバーに顔を埋めて息を吐く。
近くに居る二人も同じように陶酔に浸っているのだろう。
声が普段よりゆったりとして何処か浮ついていた。

「幸せだねぇ」
「ああ、幸せだ」
「本当に幸せー」

今回一緒に動物園へと足を伸ばした二人、嵐と旬平は冬姫と同類の人間であった。
すなわちとんでもなく動物好き。
ゆるゆるに緩んだ頬と、よーしよしよしとわしゃわしゃ犬の頭を掻き混ぜる仕草は酷似してるに違いない。
嵐はカーリーコーテッド・レトリーバーのくるくるに巻いた黒毛に顔を摺り寄せているし、旬平はにやけた顔で膝の上のパピヨンの耳元をくりくりと掻いている。

和む。この場所は本当に天国だ。

「やっぱり、動物園はいいよね」
「うんうん。俺、動物園大好き」
「アルパカも面白いしな。不思議動物、ぶさ可愛い」

部活中はきびきびと掛けられる声も、場の雰囲気でゆったりとしている。
獣が休憩中に手足を伸ばしだらりと体を崩しているのと似ているかもしれない。
否、大分違うか。
纏まらない思考は目の前の可愛すぎる天使の所為だ。

普段休日に三人で出かける時は大体幼馴染二人が多いが、極稀に目の前で寛いでいる二人とも出かける。
部活が終わった後に世間話から流れる時もあれば、三人の内の誰かが態々言い出すこともあった。
二年続けて同じクラスの嵐と冬姫が教室で柔道雑誌を読みながら約束する場合もあれば、二人で遊んでいた嵐と旬平が冬姫を呼び出す場合もあるし、廊下で声を掛けられた旬平と冬姫が盛り上がり嵐を誘うときもある。
今回は部活前に三人で話していたところで、旬平から動物園の新しい施設の話が上がり、じゃあ三人で行ってみようと相成った。

動物園に初めて三人で来たときの感動は忘れない。
それより前に幼馴染と来たときのクールな反応があったので、余計にそうかもしれない。
嵐は淡々とした表情でありながら目を輝かせていたし、旬平はくるくるよく変わる表情で百面相に忙しかった。
動物好きの人間は動物好きに気を許しやすい。
故に動物園へは以来必ずこの二人と来るようにしている。

「今度の柔道の試合で勝てたらさ、奮発して撮影会しない?」
「あの子犬たちとも写真が取れるっていう奴?」
「そうそう。んで動物園の象やキリンとも写真を撮ろう」
「それ、いいな。今日はカメラないし、ご褒美方式だと一層やる気が出る」
「でしょ?」

もふもふに癒されながら提案するとすぐさま賛同の声が上がる。

のんびりと過ごした休日に、たまにはこんな日も良いと目を細めた。
服は毛だらけになったが、それ以上の充足感に三人の緩んだ頬は中々戻らなかった。

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