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■銀時→神楽


「ごめんヨ、銀ちゃん」

 月光に照らされて、神楽は立っていた。元々白い肌が、いっそう透ける様に白い。赤い血溜まりだまりの中、赤に濡れる事無く、トレードマークの傘を無造作に差して立っていた。
 そこには普段ある生き生きとした表情はない。絶対的な無表情。感情を凍りつかせたように冷めた眼差しを向けていた。
 足をすり足で動かし、ジャリ、と音を立てて、獲物が届くくらいの距離まで近づいてくる。
 だが、それでも。銀時は獲物に手を掛けることすら出来ないでいた。

(嘘だろ、オイ・・・)

悪夢のようだ。いっそ、夢ならどれほど救われるだろう。現実を否定する心がそれを望むが、それが夢でない事くらい理解していた。

「・・・私の中の、夜兎の血が騒ぐネ。抑える事が出来ないヨ」

 寂しそうに笑う姿は、確かに自分の知っているものなのに、凍りついたように、体が動かない。
 焦る意思とは裏腹のそれは、彼女をここまで駆り立てた理由を知っているからだろうか。

「パピーを殺した幕府を、許すことが出来ないネ。だから、私もう銀ちゃんと一緒にいられないネ」

 淡々と口に出す。
 感情を豊かに表現する彼女らしくもない顔で。

「──ここにいたのか、じゃじゃ馬姫」
「晋助・・・」

 神楽の声に応えるように、女物の着物を羽織った、眼帯の男が神楽の隣に立つ。
 そして、銀時を見てニヤリと笑った。

「よう、銀時。久しぶりだな」

 愉快だ、と言う感情を隠さぬままに、優越感丸だしの表情で晋助は哂う。死体の中で悠然と立つ二人には、赤がとてもよく似合った。
 作られた一対のように並び立つ姿を見て、湧き上がるのは黒い感情。

(そこは、お前の場所じゃねぇ)

 人が殺されているのを見ても、何とも思わなかったのに、ただ、神楽の隣に立つ姿を見せられるだけで、一気に沸点近くまで感情が沸騰した。それがおかしいとの判断は銀時には出来なかった。

「ここは、終わったか。神楽」
「うん。早く次に行くネ。トロトロしてんじゃねぇぞ、眼帯」
「・・・くくっ。あいつはもういいのか?」
「・・・うん。お別れは、もうすんだネ。私の心は決まってるアル」
「だとよ、銀時。コイツは、お前じゃなくてオレの隣にいることを選ぶとさ」
「・・・・・・・・・・・・・」

 心底楽しそうに哂う晋助に、先程までは抜く事が出来なかった木刀に手を掛けた。
だが。

「──止めるネ、銀ちゃん。コイツに手を出すなら、私の傘が火を噴くネ」
「神楽・・・」

 澄んだ空のように綺麗な青が、一直線に銀時を射る。その目に迷いなど、欠片も見つけられなくて、信じたくない現実に動く事など出来なかった。

「あばよ、銀時。・・・次はもっと楽しい所で会いたいなぁ」
「バイバイ、銀ちゃん。・・・できればもう、会いたくないアルな」

 対照的なことを言い、同時に背を翻す二人に。
ピクリと動いた腕は、それでもとうとう静止をかけることはなかった。

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