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■土方→神楽


「おや?大串君じゃないアルか」

 ポンと肩を叩かれ、土方は眉間に皺を寄せた。
こんな呼び方をするのは、死んだ目をしたような男と。

「・・・お前か。オレは大串じゃなくて土方だ」

目の前の、チャイナ娘しかいない。
 少しの警戒心をこめて睨むと、ひょいと肩を竦めた神楽は。

「機嫌悪そうアルな、大串君。もしかして、女の子の日アルか?」
「違うぅぅぅぅ!オレは、男!男だから!そしてお前は人の話を聞けぇ!」

 思わず声を大にして否定する。
 目の前の少女は可憐な見た目と正反対で、中身は中年の親父よりも酷い。

「でもイライラが取れないんダロ?隠すことないアル」
「だから、違うってぇぇぇ!!」

 叫んで、いかんいかんと首を振った。
 この目の前の少女は総悟と同じくらいに口が悪い。少しでもペースを乱したら、後は下に落ちるだけ。聞きたいことがあるのに、それでは前に進めない。
 ポケットからタバコを出し、ライターで火をつける。その仕草が珍しかったのか、じっと神楽は黙って見つめていた。大人しくなった神楽に、ようやく土方も心を落ち着ける。

「──お前に、聞きたいことがある」

 タバコの煙を一度肺まで吸い込んで、苦い気持ちと一緒に吐き出しながら口にした。

「先日、幕府の重要人物が殺された」

 極秘事項となっているそれを、躊躇いもなく口にする。
 目の前の少女は、トレードマークの傘をくるりと回してそれに相槌を打った。見た限りでは、少しの動揺もない。

「・・・その場にいたヤツは、どいつもこいつも頭を粉砕されて死んでた。そんなこと、人間には出来るわけがねぇ。天人でも中々見ることが出来ないだろうな」

 じっと澄んだ青を見つめる。

「最近は、高杉の野郎が派手に動き回ってるらしい。──何でも、めっぽう強い兎を手に入れたって噂だ」
「ふぅん」

 土方の言葉に、対して感慨を受けたでもなくいつものポーカーフェイスで神楽は頷いた。興味なさそうなその姿は、いつもと全く変わりがない。

「──お前がやったのか?」

 ストレートな問に、神楽の目が丸くなった。

「随分率直に聞いてくるアルな」
「回りくどく言っても仕方ねぇだろ」
「──私、お前のそう言うところ意外に嫌いじゃないネ」
「そりゃ、どうも」

 で、どうなんだ。
 目を逸らす事無く彼女を見つめ、そして、ようやく気づく。
 彼女の服の色が、いつもの暖色系のチャイナ服ではなく、黒一色で統一されていたものだということに。今までの神楽なら着なかっただろうシックな装いは、それでも彼女の白い肌によく映えた。

「そうアルよ」
 ニコリともしないで頷かれ、間髪入れず刀を抜き放った。抜く手も見せないほどの早業は、それでもあっさりと避けられる。

「いきなり、危ないアルな」

 傘を差した彼女は、コクンと首を傾げた。
 無邪気な様子は変わりがないのに、どうしようもない違和感が胸に巣食う。

「何故、殺した」
低く唸るような声に、神楽はこの日初めての笑顔を見せた。

「何で、殺しちゃダメアルか?」

 無垢な子供のような様子に一瞬言葉を失った。

「夜兎は戦闘種族アル。自分の親が殺されたのに、反撃をしないはずがないネ」
「・・・・・・」

 その言葉に、土方は黙り込んだ。
 神楽の父親が幕府に殺されたのは、土方も知っている。

「──あの男も、知ってんのか?」

 辛うじて出された言葉に、神楽は考え込むように首を傾げた。暫くの間を置くと、徐にポンと手を打つ。

「あの男って、銀ちゃんアルか?」
「ああ。あの男が、お前の行動を許したのか?」
「・・・・・・銀ちゃんは、関係ないアル。これ、私が勝手にやったこと。私が自分で考えた事ネ。万事屋の皆、関係ないアル」
「・・・・・・」
「私がもう、あそこにいない事お前も知ってるダロ。私は、もう、あそこに戻るつもりはないネ」
「お前は──」

 コクリと唾液を飲み下しながら土方は口を開いた。

「お前は、それでいいのか?今なら、まだ戻れる。戻れるんだ」

 真剣な土方の様子に、神楽は苦笑した。
 くるくると変わる神楽の表情に土方はうっそりと眉を寄せる。自分の所のS王子同様にポーカーフェイスが売りのはずなのに、今日は随分と色々な顔を見せてくれる。

「もう、戻れないアルよ。私の血が、止まれないネ。全部を殺すまで終わりはないヨ」
「・・・・・・」
「晋助が待ってるアル。行かなきゃ」

 くるりと踵を返すと、神楽は駆け出した。だが何かを思い出したらしく、途中で再び振り返る。

「──銀ちゃんのこと、よろしく頼むアルな!!」

 ぶんぶんと、まるで友達にするように手を振って満面の笑顔を向けると、今度こそそのまま走り去った。

「・・・何が、銀ちゃんのこと頼む、だ。オレはあいつの友達でも何でもねぇぞ。・・・それに」

 お前の代わりなんて、誰も出来るわけねぇだろうが。
内心の呟きは、口から出る前に紫煙にまぎれて消えた。

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