忍者ブログ
初回の方は必ずTOPの注意事項をご確認ください。 本家はPCサイトで、こちらはSSSのみとなります。
Calendar
<< 2025/06 >>
SMTWTFS
1234 567
891011 121314
15161718 192021
22232425 262728
2930
Recent Entry
Recent Comment
Category
81   82   83   84   85   86   87  
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

「よう、坊(ぼん)。何でそんなに泣いてんだ?」

泣きはらした顔を上げれば、浅黒い肌をした金髪の美青年の姿。
良く知る人の登場に、子供はぱっと顔を輝かせた。

「ちあきくん!」

嬉しくて手を伸ばせば、にっと唇を上げた彼は心得たとばかりに子供を抱き上げる。
彼の腕にすっぽりと納まった子供は、千秋の肩口に顔をつけるとぼろぼろとまた涙を零し始めた。

「どうしたんだよ、坊?お前が泣いてるのにかなでは何処に行ったんだ?」
「おかあはんはおかいもの」
「んじゃ、蓬生は?」
「おとんなんてしらん!」

ぷいっと顔を背ければ、またかよと呆れ交じりの微笑を浮かべる。
定期的に遊びに来る彼が、またかよと言うくらいに彼ら親子は下らない喧嘩を繰り返していた。
原因はいつも同じで、彼にとっての母親で父にとっての妻に当たる人物だ。
今度はどうしたと優しく促す声に、子供は勢いよく口を開いた。

「きいてよ、ちあきくん!おとんはおれとおかあはんはけっこんできひんっていうんや!おれはおかあはんとずっといっしょにいたいのに!」
「何だよ、今回はそんなんか。ま、でもいつか来ると思ってた話だな」
「ちあきくんはそんなこといわへんよね?おれとおかあはんはずっといっしょっていうてくれるよね!」

ぼろぼろと泣きながら訴える子供に暫し思案し、千秋はゆっくりと口を開いた。

「あんな、坊。母親と結婚は出来ないが、お前はずっと家族でかなでの大事な子供だ。それじゃ駄目なのか?」
「やって!おかあはんなだけやと、おとんがおかあはんをひとりじめしようとするもん!」
「───あの馬鹿、子供にこんなこと言わせるくらい独占しとるんかい」

呆れ交じりの吐息に、子供は勢いよく頷く。
その姿を見て千秋は悪戯を思いついたような顔でにっと笑った。

「それなら、俺がおとんになってやろうか?そしたら、お前もかなでも平等に可愛がってやるぞ」
「ほんま?」
「おう。かなでをお前にもちゃんと貸してやる」
「ほんまに、ほんま?」
「ほんまや。な、俺がおとんになる手伝いしてみるか?」
「───うん!!」


それがどれだけ重大な内容か気づかぬまま、子供は嬉しげにこくりと頷く。
リビングから泣いている子供を迎えに来た蓬生が、ありえない子供の発言に度肝を抜かれ、尚且つ要らぬ知恵を植えつけた千秋に怒るのはこのすぐ後。
意外に子煩悩な父親であることを、可愛がられる本人だけは未だに気づいていなかった。

拍手[25回]

PR
弁慶は年に似合わず早熟な子供だった。
それは生まれ持っての聡い感覚であったり、家庭環境だったりと色々と理由があるがともかく同世代の子供とは一線を画した存在だ。
彼の特異性は自分が特異と理解しつつ周囲に馴染みこんでいるところにある。
ずば抜けて知能の高い子供である我ゆえに出来ることだが、同時に彼は子供らしさがない子供であった。
それも当然だろう。
幼稚園の年長でありながら読み書きどころか三桁の掛け算までマスターしている彼にとって、ボタンが締めれないだのトイレに一人で行けないだの下らない理由で泣き喚く五月蝿い存在と同等に見られるのはこの上ない侮辱である。
普段笑顔で隠している分、その胸の内は計り知れないものがあった。
しかし幼稚園での受けはすこぶる良い。
常に穏やかに微笑んでいる手のかからない子供。
一人で食事も片付けも着替えもトイレも出来、泣くことも我侭を言うこともせず同じクラスの他の子の面倒も進んで見る。

呆気ないほどに簡単に掌で転がる。
それが弁慶の狭い世界の内情だった。



「さわらないで」

涙で瞳に膜を張った少女は、笑顔の弁慶を睨み付けた。
差し出された手は振り払われきりきりと釣りあがった目は射抜くように鋭い。
艶やかな長い黒髪に大きな翡翠の瞳。
人形のように整った顔立ちの少女は、頬を赤く染め上げ激怒していた。
無表情に赤くなった手を眺める。
これだから子供は嫌なのだ。
大人が聞けば渋い顔をしそうな感想を内心で抱き少女を見詰めた。

表情を消した弁慶を警戒するように、腕に抱いたものを護るように身を引く。
怪我をした小鳥は力なく少女の腕の中で声を上げているが、弁慶にはその先が判っていた。
猫にでもやられたのだろう。
殺される寸前まで追いやられ、それでも無残に生き延びた小鳥は小さな掌の中で必死に羽ばたく。
だが翼は折れ所々から血が出ている姿は間もなく来る死を予感させた。

緑の瞳を怒りに染め上げた少女は弁慶から目を離さぬまま後ろへ下がる。
まるで目を離した途端襲い掛かられるとでも思っているかのような警戒のしように唇が歪んだ。


弁慶がその少女を見かけたのは幼稚園の敷地の端だった。
砂場へと誘われ足を向ける最中にしゃがみ込む姿を見つけ、近づいたのは珍しく好奇心が過ぎったからだ。
何をしているのだろうと首を傾げ、誘ったクラスメイトを先に行かせると弁慶は少女へと近づいた。
そして泣きそうな目をした少女が抱えた厄介な存在に、眉を顰めて忠告した。

『それは、もうだめですよ』

弁慶からしたら親切心だった。
助かる見込みがない存在に心を砕いても仕方がないし、何より後になって傷つくのは少女であろう。
情が移るのは見て取れたし、小鳥にとっても延命処置をするより死なせてやった方が楽に決まっている。
だが教えてやった途端、延ばした掌は弾かれた。
子供を護る親のように、動物であれば全身の毛を逆立て怒り狂ってる様子で警戒し距離を取られた。
良かれと思って教えたのに、何故ここまでされなければいけないのか。

「あなたなんて、きらい」

怒りできらきらと輝く瞳が弁慶だけを映し、可愛らしいぷっくりとした赤い唇が開くと同時に罵倒が飛ぶ。
下らない、と眉を寄せる。
だから子供は嫌いだと、滅多に見せない渋い表情を浮かべた。

「べつにすかれなくともかまいません。ですが、そのこはおいていきなさい」
「いや」
「───へたにくるしみをあたえるだけです」
「なにもしないでしぬのをみるのなんていや!あなたなんて、きらい!!」

もう一度、今度は大きな声で叫ぶと少女は踵を返し去っていった。
その後姿を見て一つため息を落とす。
馬鹿な子供だ。
何故かきゅうきゅうと痛む胸を無視して、弁慶もその場を立ち去った。



数日後、泣きながら先日会った場所にしゃがみ込む少女を見つけた。
隣には癖毛がちの髪を持つ男の子の姿。
泣いている少女の髪を幾度も幾度も梳き、慰めるように何かを言っている。

(ほら、みなさい)

だから、忠告したのにと弁慶は苦く思う。
泣くと思ったから教えてあげたのに、やはり馬鹿な子供だ。
忠告に従っていれば、一時の罪悪感と引き換えに胸が張り裂けるような悲しみは得なかった。
ぼろぼろと大粒の涙を零す少女の瞳は兔のように真っ赤だ。

(ばかなこです)

苦く考える弁慶の脳裏には、何故か泣きじゃくる少女の姿が焼き付けられるように鮮やかに残った。

拍手[5回]

「もう、いいかい」

「まーだだよ」

「もういいかい」

「もういいよ」


クスクスと笑いあう声が何処からともなく聞こえる。
視線でひと撫でしても声の主たちの姿は見当たらず、琥一はふうと一つ息を吐き出した。
どうやら今日も彼らは上手く隠れたらしい。
教会の向こうで夕日が沈みかけている。きっと、これは今日最後のかくれんぼ。
そしてその結末がどうあるかも琥一は知っていた。

彼の弟と、妹のような幼馴染は最後にはいつも二人で手を繋いで隠れている。
見つけるのは容易ではないが、それでも決して難しくない。
時々琥一は思う。もしかしたら、二人は見つかるために隠れているのではないかと。
可愛らし容姿をした二人は、琥一よりも余程兄弟に見えた。

少女が来れば琥一と琉夏の遊びは何時だってかくれんぼに変わる。
正義のヒーローごっこも、カンフーアクションも、映画のヒーローにもなれない。
それが琥一には少し不満だが、琉夏はそれでも良いと笑う。

「おーい。どこだ」

態と声を張り上げれば、また何処かでクスクスと笑い声。
近くだとわかっているのに、やはり彼らの姿は見えない。
きっといつもと同じで、中途半端に隠れた少女の手を引いた琉夏と額をつき合わせて笑っているのだろう。
それに混じりたいと琥一は思わない。
隠れるのは彼らで、見つけるのは琥一の役目。
彼らは二人でいることが、琥一にとって意味があった。

「みーつけた」

案の定それほど離れていない場所で、サクラソウに囲まれてしゃがんでいた二人を見つけると、彼らはやはり顔を見合わせて微笑みあった。
しっかりと繋がれた掌。

そんな二人を見て、琥一もゆっくりと顔中に笑顔を浮かべた。

拍手[5回]

茅田冬姫【かやた ふゆき】:マイペースな主人公。顔立ちは可愛いと綺麗の中間で服によって印象が大分変わる。桜井兄弟に怯むことなく何でも物が言える唯一の人物で、それ故に男が近づかないが本人は全く気にしていない。勉強も運動もそつなくこなし、気配りもうまい人。名前の読みが男っぽいのを密かに気にしている。

桜井琉夏:幼馴染兄弟その1。冬姫と仲が良く、彼女に無意識に甘えている。一緒に居て落ち着ける冬姫を特別視していて、彼女に近づく男は笑顔で撃退。笑っているくせに何処か脆い雰囲気を漂わせる。

桜井琥一:幼馴染兄弟その2。昔から仲の良い冬姫と琉夏を呆れながらも見守ってきた人。二人の後始末は大体彼へと回っていくが、怒りながらも無碍には出来ない。二人への感情は複雑で、本人ですら理解しきれていないが、とりあえず目は離せないと想っている。

不二山嵐:主人公を柔道部マネージャーへと勧誘してきた同級生。何気にクラスメイトで数少ない主人公の気の許せる友人。最近は冬姫がいやにキラキラして見えて戸惑っている。

新名旬平:ナンパから冬姫と知り合った一つ年下の後輩。見た目と違い頭が良く、文武両道の今時の子───に見えて、案外と一途な部分がある。冬姫への思いの形が変わるのを自覚しつつ、嵐への義理立てで思ったように動けない。

紺野玉緒:GS1の尽の同級生で級友。尽が実の姉に抱く感情を正確に理解している。実は、GS1の主人公に長いこと憧れていた。でもそれは年上の女性への憧れか淡い初恋だったのか、まだ彼は判断できない。

大迫力:冬姫の担任。GS1の主人公の一年先輩であり、同時期に学生をしていた。在学中何かと目立つGS1主人公に想いを寄せていたがそれは一方的なものであり、GS1の主人公は彼の存在を今でも知らない。

花椿カレン:冬姫を入学式に見初めて以来猫かわいがりする美女。みよと三人で良くつるんでいる。みよには親友として、冬姫にはそれ以上の感情を抱いているが、女の子の特権をフル利用して強かに楽しんでいる。

宇賀神みよ:入学式の翌日冬姫と知り合う。カレンにみよちゃんと呼ばれると怒るが、冬姫にみーちゃんと呼ばれるのはOKな複雑な年頃。二人を親友として慕っている。

拍手[0回]

白川秋姫【しらかわ あき】:才色兼備の主人公。性格は割りとおっとりしているが芯は強い。数度の引越しを経て大阪から三年ぶりに帰ってきた。ノリは悪くないが、気軽に冗談を言えないような雰囲気を持つため友人はそれほど多くない。高嶺の花を絵に描いた人物だが、それを少しばかり悩んでいる。

葉月珪:秋姫の幼馴染その1。ぼんやりしてるようで確信犯な王子様。久方ぶりの再会に無表情の奥で喜んでいる。見た目以上に独占欲が強い人。

姫条まどか:秋姫の幼馴染その2。大阪に住んでいた頃仲良くしていた。秋姫が戻ってくるまでを知っている数少ない人間。何故彼女が長い髪を切ってしまったかも知っているが、それを口にする気は今はない。

鈴鹿和馬:秋姫の幼馴染その3。珪と別れた引越し先で出来た友人。小学校卒業までを共に過ごし、家族ぐるみの付き合いがあった。中学が別れても文通でやりとりは続き、高校で無事に再会。たまに二人でバスケの1ON1を楽しむ。

氷室零一:秋姫の過保護な親戚。子供の頃から秋姫の面倒を見ていて、いい年になっても未だに勉強を見てやったり一緒に出かけたりする。学校では規律を護るが、プライベートでは心配性なお兄ちゃん。

白川尽:秋姫の弟。小学生にして将来が恐ろしい女たらし。しかしながらその実酷いシスコンで、姉に近づく男の選別に予断はない。血の繋がりがある姉に・・・。

花椿吾郎:世界的有名ブランドのデザイナー。常にファッション界をリードし続ける彼だが、実は若い頃は今と違う意味で名が知れていた。デザイナーとして手がける服は幅広いが、原点は小さな所にある。それを知るのは彼の親友だけ。

天之橋一鶴:現在はダンディな路線に走っているが、若い頃は凄かった人。秋姫を子供の頃から知っており『姫』とあだ名をつけて可愛がっていた。今回自分の学校に彼女が入学した事に関しては複雑な想いを抱いている。

拍手[1回]

フリーエリア
Template & Icon by kura07 / Photo by Abundant Shine
Powered by [PR]
/ 忍者ブログ