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「おーい。マネージャー」

廊下側にある開け放たれた窓から身を乗り出して呼びかける。
クラスメイトであり嵐が引き込んだ同士でもある少女は、机に向かっていた顔を上げると、きょろきょろと視線を彷徨わせてから嵐へと焦点を合わせた。
少し癖のある柔らかな髪が日に梳ける。
窓側から三列目、嵐の席の斜め後ろが彼女の座席だ。

長い睫毛に彩られた黒目がちの瞳を向ける彼女へと歩を進め、自分の椅子を引き寄せ座る。
通行人の邪魔かとも思ったが、それぞれ好きなことをしているクラスメイトは、まだグループでおしゃべり中だったので問題ないと判断した。
ちらり、と冬姫の机の上に置いてあったものに目を走らせ小さく微笑む。
『柔道入門』と書かれた本を手に持った冬姫の鞄の中に、他にも数冊図書館や嵐が貸した本が仕舞われているのを知っていた。
ドクログマの書かれたファイルに、それらの本の内容を自分なりにまとめてルーズリーフで止めている冬姫には本当に頭が下がる。
そして同時に、自分の目は節穴じゃなかったと口元が自然と緩む。
当たり前に努力できるこの少女を、嵐はとても気に入っていた。

「どうしたの嵐くん」
「今日の部活、体育館で筋トレにしようかと思ってさ。その相談」
「体育館か。晴れてるのに?」
「あれ?お前天気予報見てないのか?今日は午後から雨だぞ」
「嘘!?私傘持ってきてない」
「そうなのか?じゃあ置き傘は」
「・・・ない」

肩を落とす冬姫に嵐も眉を下げる。
部活の練習はしたいが濡れ鼠になって帰れとはとても言えない。
いざとなれば自分の傘を貸し出そうかと思案してると、何を思いついたのか、彼女はぽんと手を打った。

「今日って火曜だよね?」
「ああ」
「なら大丈夫かも」

にこにこと微笑んだ冬姫は、失礼と断ると携帯を取り出した。

「何してんだ?」
「幼馴染にメールしてるの。もしかしたら傘持ってるかもしれないから」
「ふーん?」
「あ、返信着た。やった、傘持ってるって!・・・嵐くん、今日の練習メンバー増えてもいい?」
「え?別にいいけど・・・でも、筋トレしかしないぞ?」
「大丈夫、大丈夫。筋トレで十分だよ」

ぱちり、と片手で携帯を閉じた冬姫に、嵐は首を傾げる。
彼女の幼馴染は一体部活中に何をするのだろうか。
そもそもこんな華奢な少女の幼馴染は、筋トレを見ていて楽しいのだろうか。
よく判らなかったが、それでも冬姫が良いと言っているなら良いのかと納得した嵐は、部活が始まる前に姿を現した『幼馴染』の正体に驚愕する羽目になる。

嵐が想像したよりもずっと大きく、がっしりとした体格と固い筋肉を持ち合わせた目つきの悪い色黒の『幼馴染』は、予想と違って男であった。

拍手[14回]

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>>朝霞夜月さま

こんばんは、朝霞さま!
初めまして、国高と申します。
GS3サーチから遊びに来てくださってありがとうございますw
しかもトライアングル・ラブの話の感想をいただけて凄く嬉しいです。
未来話を読んでくださったということですが、ED2後の妄想ですけど気に入ってくださって幸せですww
もし創作が活き活きしていたなら、書いてる私がかなり活き活きしているからでしょう(笑)
このシリーズは原則として誰とくっつけるつもりもない、主人公ちゃん総受け気味の桜井兄弟話です。
これからもキャラクターをどんどんと増やし、ゆくゆくはGS1の捏造話とくっつける予定です。
マイペースに頑張りますので、またお時間ございましたら是非遊びにいらしてくださいませww
そして、サイトのURL、ありがとうございます!
絶対にお邪魔させていただきますので、お待ちくださいね!
えと、もし宜しければGS3のお友達になっていただけると嬉しいです。
それれは今度は私から伺いますw
Web拍手、ありがとうございました!!


>>ひねみとさま

こんばんは、ひねみとさま!
また遊びに来てくださってありがとうござますw
捏造未来設定の冥加さん話、読んでくださってありがとうございますww
あの設定の冥加パパは相当な娘馬鹿です。
なのでひねみとさまの仰る通り、例え無意識だったとしても絶対に王子は写っていないに決まってます(笑)
自分似なら絶対に厳格な父親になってそうですよね~。
なのであそこはかなで似の娘が生まれて丁度いいのです★

あと、今日SSSにお約束していた『けっこんしようよ』のかなでサイドをアップしました。話を全面的に被らせるのではなく、ああなる前のかなでちゃんの心境です。
被らせるよりも、そっちの方が何故かなでちゃんがああだったかを想像しやすいかな?と思い、書いてみました。
久しぶりに書いたのでちょっと自信ないですけど、ひねみとさまが気に入ってくださるのを祈るばかりです。

またお時間で来ましたら、是非遊びにいらして下さいw
Web拍手、ありがとうございました!

拍手[1回]

「ねえねえ、冬姫ちゃん」
「ん?何?」

去年試行錯誤して作った柔道部。
その一人目の後輩の声に、部屋を掃除していた手を休めて振り返る。
親友の一人に言わせればレッサーパンダ似の彼は、最近になって漸く部活をサボらなくなってきた。
夏休みも間近の季節、これから練習に集中する時期なのでそれはとてもありがたい。
人を惹き付ける魅力のある旬平に釣られ、見学の人数はぽつぽつと増えて来ている。
それは柔道部を確立させるべく悲願をいつの間にか持っていた冬姫にとって歓迎すべきことだった。

きょろきょろと好奇心に満ちた瞳が特徴的なこの後輩は、少しばかりませた部分があるが憎めない可愛さもある。
年下扱いすると拗ねるところが年下らしく、冬姫も、そしてもう一人の柔道部員の嵐も、彼を弟のように可愛がっていた。
旬平自身も冬姫と嵐によく懐き、今ではたまに一緒に遊びに行くくらいまで仲がいい。

柔道部内でも好奇心旺盛な彼は、きっと新しい噂でも手に入れたのだろう。
全身で聞いて聞いてと訴えている。
ちらり、と視線をもう一人の部員へと向ければ、彼は一直線に雑巾掛けをしている最中で、集中しているのかこちらにまだ気づいていない。
生温い暑さに耐え切れず、最近はずっと窓と入り口を開放しているが、それは些細な抵抗に過ぎず、彼の額からは絶え間なく汗が流れる。
それを確認すると、小さな声でどうしたのと問いかけた。

「あのね、冬姫ちゃん。この学校にいる桜井兄妹って知ってる?」

とても聞き覚えのある名前に、ぱちぱちと目を瞬かせる。
それをどうとったのか、旬平はにっと悪戯っぽく微笑んだ。

「実はね、あの桜井兄弟の幼馴染がこの学校にいるんだけど、知ってた?」
「・・・うん、まぁ。それって割と有名だよね?一年生は知らなかったの?」
「んー・・・桜井兄弟の存在は有名なんだけどさ。そうじゃなくて、実は幼馴染がいるって話。こっちは一年にまで噂が回ったのは割りと最近。何でもあの桜井兄弟は幼馴染を滅茶苦茶大事にしてるらしくってさ。目に入れても痛くない特別扱いなんだって。年下だろうと年上だろうと近づく男はつるし上げ。すっげーよな」
「・・・まぁ、確かに」

心当たりがないでもない。
冬姫の幼馴染は極端に過保護なところがあり、自分たちのテリトリーの中で構おうとするきらいがある。
彼らが袋ネズミかカンガルーであれば、確実に冬姫をポケットに仕舞いこんで連れ歩くだろう。
構いたがりな琉夏は当然に、あれでいてお兄ちゃん気質の抜けない心配性な琥一も絶対に。

「んでね、一年の間で今その幼馴染がどんな人間かって噂が立ってるんだ」
「それはまた・・・」

随分と下らない。
喉奥で言葉を何とか飲み込む。
それを知ってどうするのだろうと思うが、好奇心など理由がないものだろう。
呆れ混じれの眼差しを向ければ、ひょい、と彼は肩を竦める。

「冬樹ちゃんは知ってる?」
「───・・・・・・おい」

きらきらしい眼差しを向けた彼の肩を、ぽん、と嵐が叩く。
可哀想なくらい体をびくつかせた旬平は、恐る恐る振り返った。
ちなみに彼とは違い冬姫に驚きはない。
旬平の背後から静かに怒りを滲ませた嵐が近づいて来るのは見えていたし、彼が本気で怒ってるわけではないと知っているから。
伊達に一年以上ほぼ毎日一緒に部活をしていたのではない。
二人きりの柔道部を支えるために得た感覚は伊達じゃないのだ。
だが未だに嵐の人となりを理解し切れていない旬平の額からは、絶え間なく汗が流れ落ちる。
少し可哀想なくらい怯えている旬平に助け舟を出すか否か。
迷っている間に、第三の選択肢が差し出された。

「冬姫」

開け放しになっているドアの外から聞き慣れた声がして、条件反射で振り返る。
そこには想像通りの二人組みが並んで立っており、自然と微笑みが浮かぶ。

「琉夏君、琥一君」
「よう、冬姫」
「そろそろ部活も終わりだろ?一緒に帰ろう」
「うん。───でも、まだもう少し。雑巾掛けが終わったらゴミを捨てて戸締りをしなきゃ」
「判った。じゃあ俺が持ってってやる。ルカ、お前はこっちを手伝え」
「了解。冬姫、俺にも雑巾頂戴」
「手伝ってくれるの?」
「うん。代わりに、今度おにぎり作って。俺、冬姫のおにぎり大好き」
「はいはい。じゃあ、琥一君のはサンドイッチだね。三人で遊園地に行こうか?」
「いいね。じゃあ、コウの予定も聞いておく」

にこり、と微笑んだ琉夏は、手渡された雑巾を持つとさっさと仕事を始める。
彼の視線は他の二人には向かず、ただ一人冬姫だけを見ていた。
先ほどまでいた琥一も同じであったことに気がつくと、思わず苦笑してしまう。
一年生にも噂が流れるだろう過保護ぶりだ。

手早く雑巾掛けをする琉夏を尻目に、旬平が呆然とその光景を眺める。
口を開いた間抜け面の彼の肩を、嵐がぽんと叩いた。

「一年生は知らないかもしれないが、冬姫が桜井兄弟の幼馴染って言うのは二年生以上には有名な話だ。お前もこれから先柔道部にいる限りは付き合いがあるだろうから覚えとけよ」
「・・・何を?」
「俺が冬姫と柔道部を立ち上げた翌日に、あいつら二人で乗り込んできたんだ。『冬姫の努力を無駄にするなら、いつでも道場破りする』ってさ。全く、過保護な兄弟だよな」
「・・・本当に、すみません」

呆れるでもなく怒るでもなく、淡々とした口調が耳に痛い。
そんなことをしていたなんて初耳だが、聞いても彼らならやるだろうとむしろ納得だ。
一年以上経って新たに知る事実は肩身が狭すぎる。

「気にするな。あいつらがああなのは入学式から知ってる」
「・・・そうですか」

もう、どこを気にしていいか判らない慰めに、眉を下げて苦笑した。

ああ、蝉の声が聞こえる。

拍手[20回]

日本へ帰ってきたのは数ヶ月ぶりだった。
ここ数年で住み慣れたウィーンの下宿から贈られてきたはがきを目を細めて眺める。
懐かしい思い出のある土地に帰ってきたとき、泊まるのはあの古びた寮ではなく、仕事の取引相手が予約してくれる高級ホテルへと変わったのはいつからだったろう。
少なくとも数年前から、頼む前から用意されている。
支払いをしようと思ったら断られ、マネージャーが管理しているから気にするなと注意を受けた。
今では大分その扱いに慣れたとはいえ、居心地がいいものではない。
せめて感謝の気持ちとして、お気に入りのお菓子などを差し入れている。
プロのヴァイオリニストとして働くようになってから、休みはあってなきようなもので、お菓子作りなどからも少し縁が遠くなった。

広すぎるホテルの一室を見渡し一つためを落とす。
いつもよりも寂寥感が強いのは、きっと今日持ちかけられた話の所為だろう。

『ねぇ、小日向さん。もし決まった相手がいないのなら、僕の息子に会ってみない?』

かなでからすれば突拍子もない話しを告げたのは、最近懇意にしてもらっているコンダクターだった。
同じ日本出身というので良く話しかけてくれる彼は、髪に白いものが混じり始めたもののダンディな魅力に溢れる寛厚な人物だ。
流石に長年海外でもまれただけあり、彼は穏やかながらも押しが強い。
笑顔の圧力に負けたのだが、怨むには彼が人が良すぎた。

「・・・結婚か」

自分には関係ないと思ってずっと過ごして来た。
だがどれだけ自分は変わらないと思っても、時は確実に過ぎていく。

胸の奥にあるのは、輝かしく褪せない夏の思い出。
泣いて笑って喧嘩して。今よりも随分と未熟だったけど、あれほど楽しい時間はなかった。
仕事用のブラウスとスカートを脱ぎ、クローゼットを開ける。
一月は泊まる予定のこの部屋には衣装もきっちりと仕舞われていた。

すっと視線を滑らし、黒のシルクのシャツに、同色のパンツを取り出す。
昔なら選ばなかった落ち着いた服装に、ああ、やはり変わってるんだなと自然と口元に苦笑が浮かんだ。

「・・・早く、準備しなきゃね」

メールで約束を交わした相手と会うのも数ヶ月ぶりだ。
髪をアップにし、淡い桃色の口紅をつけた。
彼は元気にしているだろうか。
今でも眉間に皺を寄せ、難しい顔で仕事をこなしているのだろうか。
思い出すと胸がぽっと温かくなりくすくすと自然と笑みが零れた。
学園の理事として働く彼の実績は遠くウィーンにまで響いている。
交換留学制度を確立させた彼には尊敬の念が止まない。

「冥加さんも、いつか結婚するのかな?」

ぽつり、と無意識の内に言葉が突いて出た。
いつか彼の隣に立つ人物は誰か判らないけれど、きっと彼と並んでも見劣りしない綺麗で上品な人なのだろう。
その時自分は笑顔でおめでとうと言えるのだろうか。
胸を指す痛みは、彼と離れてから常に付きまとうもので、何時の頃からかそれを上手にいなす術を覚えた。
何故胸が痛むのか、涙が零れそうになるのか、それを追求する気はない。
きっと理由を知ってしまえば自分は変わってしまうと、本能的に悟っていた。

準備が整うと一つ深呼吸する。
鞄を手に持つと、ルームキーを片手にノブを捻った。
部屋を出る前に、一度だけ振り返り見た室内は、がらんとして寒々しい。
これが新進気鋭と呼ばれるヴァイオリニストになるために、かなでが払った代償だった。
振り切るように瞼を瞑り、静かに部屋のドアを閉じた。



『そう言えば。今度私お見合いするんです』
『・・・・・・』

人生の転機は、すぐそこまで迫っていた。

拍手[23回]

>>aki様

初めまして、aki様!
ようこそいらっしゃいませw
トライアングル・ラブを読んでくださってありがとうございます。
自分の中で燻る想いを書き綴っているので、気に入ってくださると本当に嬉しいですww
設定も少しずつ追加し、これからはGS1のキャラも出てくる展開もありの予定です。
これからも頑張りますので、是非また遊びにいらしてくださいませww
Web拍手、ありがとうございました!!

拍手[0回]

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